今回はハード・バップのランキングを作成しました。
黄金期と呼ばれる1950~60年代の演奏ばかりです。
単独でランキング記事を予定している人は対象外とした為、結果的にB級ハードバップ特集みたいになりました。
ただB級といっても、どれもA級、いや特A級の名演ばかりです。
名前ではなく、音そのもので魅了してくれます。
主にジャズ初心者を想定した内容ですが、お詳しい方もぜひ立ち寄ってみてください。
- 1 1位 Blue Mitchell「I’ll Close My Eyes」(アルバム:Blue’s Moods)
- 2 2位 Booker Ervin「The Lamp Is Low」(アルバム:The Song Book)
- 3 3位 Thad Jones「April in Paris」(アルバム:The Magnificent Thad Jones)
- 4 4位 Louis Smith「Tribute To Brownie」(アルバム:Here Comes Louis Smith)
- 5 5位 John Jenkins「From This Moment On」(アルバム:John Jenkins With Kenny Burrell)
- 6 6位 Sam Jones「Just Friends」(アルバム:The Soul Society)
- 7 7位 Benny Golson「Autumn Leaves」(アルバム:Gone with Golson)
- 8 8位 Johnny Coles「Hobo Joe」(アルバム:Little Johnny C)
- 9 9位 Tina Brooks「The Ruby and the Pearl」(アルバム:Back To The Tracks)
- 10 10位 Kenny Clarke「Play Fiddle Play」(アルバム:Klook’s Clique)
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1位 Blue Mitchell「I’ll Close My Eyes」(アルバム:Blue’s Moods)
■アーティスト名:Blue Mitchell
■アーティスト名カナ:ブルー・ミッチェル
■曲名:I’ll Close My Eyes
■曲名邦題:アイル・クローズ・マイ・アイズ
■アルバム名:Blue’s Moods
■アルバム名邦題:ブルーズ・ムーズ
■動画リンク:Blue Mitchell「I’ll Close My Eyes」
この人は、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)のグループに在籍していたことで知られています。
テナー・サックスのジュニア・クック(Junior Cook)と、ミッチェルのトランペットという2管は、ホレス・シルヴァー・グループの看板でした。
彼は平行してソロ活動もしていました。
その中でもっとも名高いのが、1960年リバーサイド・レコード(Riverside Records)からリリースされたこのアルバムです。
この曲は1945年、ビリー・リード(Billy Reid)が書いたスタンダード・ナンバーです。
元々はボーカルで取り上げられることの多い曲でした。
しかしこの決定的な名演後、プレイヤーがこの曲を演奏する機会が増えました。
その際のメロディの解釈は、明らかにこのブルー・ミッチェルの演奏を下地にしています。
名演とは原曲の魅力を引き出すことだとしたら、この演奏はそういう役割を充分果たしたように思います。
2位 Booker Ervin「The Lamp Is Low」(アルバム:The Song Book)
■アーティスト名:Booker Ervin
■アーティスト名カナ:ブッカー・アーヴィン
■曲名:The Lamp Is Low
■曲名邦題:ザ・ランプ・イズ・ロウ
■アルバム名:The Song Book
■アルバム名邦題:ザ・ソング・ブック
■動画リンク:Booker Ervin「The Lamp Is Low」
この曲はジョン・コルトレーン(John Coltrane)みたいな音色のサックスで始まります。
狂おしい演奏も、どことなくコルトレーンっぽいかもしれません。
典型的なハードバップとは少し違いますが、どうしてもここでご紹介したいと思いました。
しかし一途でひたむきな演奏ですね。
この直情的な演奏を聞くと、私はいつも心を打たれてしまいます。
トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のピアノも、テンポが早い中でも端正さを失っていません。
ベースソロ、ドラムソロと続いて、6分32秒から待ちきれないと言わんばかりに、再度サックスが演奏を再開します。
どことなくジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)にも似た、どうしてもこれだけは言っておきたいという情熱を感じる演奏です。
3位 Thad Jones「April in Paris」(アルバム:The Magnificent Thad Jones)
■アーティスト名:Thad Jones
■アーティスト名カナ:サド・ジョーンズ
■曲名:April in Paris
■曲名邦題:パリの四月
■アルバム名:The Magnificent Thad Jones
■アルバム名邦題:ザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ
■動画リンク:Thad Jones「April in Paris」
彼はジャズ一家の出身です。
ピアニストのハンク・ジョーンズを兄に、ドラマーのエルヴィン・ジョーンズを弟に持ち、3兄弟の次男として育つ。
プレイヤー気質の他の兄弟と違って、この人はオーケストラを中心に活動していました。
サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ(Thad Jones-Mel Lewis The Jazz Orchestra)では、多くの傑作を残しています。
しかし小規模の編成でも「デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション(Detroit – New York Junction)」など、いくつかの名盤があります。
中でも最高傑作といえるのが「鳩のサド・ジョーンズ」と呼ばれるこのアルバム。
まずマックス・ローチ(Max Roach)によるブラシが鳥肌ものです。
5:03からブラシがクローズアップされ、サドのトランペットが入り、5:38からブラシを止めています。
場面に合わせたブラシの使い分けが見事です。
4位 Louis Smith「Tribute To Brownie」(アルバム:Here Comes Louis Smith)
■アーティスト名:Louis Smith
■アーティスト名カナ:ルイ・スミス
■曲名:Tribute To Brownie
■曲名邦題:ブラウニーに捧ぐ(トリビュート・トゥ・ブラウニー)
■アルバム名:Here Comes Louis Smith
■アルバム名邦題:ヒア・カムズ・ルイ・スミス
■動画リンク:Louis Smith「Tribute To Brownie」
このアルバムは彼のデビュー・アルバムで、1958年にリリースされています。
この曲の邦題「ブラウニーに捧ぐ」ですが、「ブラウニー」とはクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)のことです。
クリフォード・ブラウンは不世出のジャズ・トランペット奏者で、後続のプレイヤーに多大な影響を与えました。
興味がある方は、以下の記事をご覧ください。
クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の名曲名盤10選
クリフォード・ブラウンは、1956年自動車事故で亡くなりました。
彼の死はジャズ界に大きな衝撃を与え、「アイ・リメンバー・クリフォード」などの追悼曲が書かれました。
この曲もその中の1曲ですが、作曲はデューク・ピアソン(Duke Pearson)であって、ルイ・スミスではありません。
ただこの演奏を聞けば、クリフォード・ブラウンへの憧れがよく分かります。
イントロのはつらつとしたトランペットを聞いただけで、彼がブラウニーを目指していたことが明らかではないでしょうか。
ちなみにルイ・スミスのいとこは、同じくトランペット奏者のブッカー・リトル(Booker Little)らしいです。
5位 John Jenkins「From This Moment On」(アルバム:John Jenkins With Kenny Burrell)
■アーティスト名:John Jenkins
■アーティスト名カナ:ジョン・ジェンキンス
■曲名:From This Moment On
■曲名邦題:フロム・ディス・モーメント・オン
■アルバム名:John Jenkins With Kenny Burrell
■アルバム名邦題:ジョン・ジェンキンス・ウィズ・ケニー・バレル
■動画リンク:John Jenkins「From This Moment On」
この人は、ジャッキー・マクリーン激似と言われているアルト・サックス奏者です。
しかしよく聞くとジョン・ジェンキンスとマクリーンも、少しプレイ・スタイルが異なります。
たとえばこの演奏です。
マクリーンと同様のひたむきさと、同じくチャーリー・パーカー(Charlie Parker)の影響を感じる演奏です。
しかしジョン・ジェンキンスは、よりクールで直線的なプレイです。
なぜその違いが分かるかというと、私はマクリーンを理解しようと、集中的に聞いた時期があるからです。
B級ハードバップを聞く楽しみは、どれも同じように思える演奏から、プレイヤーのクセを聞き取ることかもしれません。
この曲ではケニーバレル(Kenny Burrell)のブルージーなギターもすばらしいです。
ジャッキー・マクリーンとケニー・バレルを掘り下げたい方は、以下の記事を読んでみてください。
ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)の名曲名盤10選
ケニー・バレル(Kenny Burrell)の名曲名盤10選
6位 Sam Jones「Just Friends」(アルバム:The Soul Society)
■アーティスト名:Sam Jones
■アーティスト名カナ:サム・ジョーンズ
■曲名:Just Friends
■曲名邦題:ジャスト・フレンズ
■アルバム名:The Soul Society
■アルバム名邦題:ザ・ソウル・ソサエティ
■動画リンク:Sam Jones「Just Friends」
ここで趣向を変えて、ベース主体の曲をご紹介します。
ホーンも入っていますが、ここまでベース主体の演奏は珍しいかもしれません。
サム・ジョーンズは、ジャズ・ベーシストです。
なぜこんな曲をご紹介したかというと、ベースの魅力をお伝えしたいと思ったからです。
ハードバップは、ジャズの保守本流です。
ジャズにおいてはホーンやピアノなど、とかく上モノばかりに注目が集まりがちです。
しかしジャズらしさのコアはベースにあるかもしれません。
実際ベースの魅力に開眼すると、俄然ジャズを聞くのが楽しくなってきます。
この曲では珍しくベースがメロディ楽器として前面に出ていますが、私はこのベースの音に惚れています。
理屈抜きに音の魅力を楽しむのも、ジャズの醍醐味だと思います。
7位 Benny Golson「Autumn Leaves」(アルバム:Gone with Golson)
■アーティスト名:Benny Golson
■アーティスト名カナ:ベニー・ゴルソン
■曲名:Autumn Leaves
■曲名邦題:枯葉
■アルバム名:Gone with Golson
■アルバム名邦題:ゴーン・ウィズ・ゴルソン
■動画リンク:Benny Golson「Autumn Leaves」
このブログの選曲は、常に初心者を意識しています。
今回はハードバップをこれから聞いてみようという人を想定しています。
そういう方には、メロディを知っているというだけで、興味を持ってもらえるかもしれません。
この有名曲を選んだのは、そういう意図からです。
とはいえ数多い「枯葉」の中でも、とびっきりの名演を選んでみました。
ベニー・ゴルソンは、アート・ブレイキー(Art Blakey)のグループで音楽監督を務めていた人です。
独特のふくらみと哀愁漂う和音は「ゴルソン・ハーモニー」などと言われています。
このアルバムはカーティス・フラー(Curtis Fuller)の名盤「ブルースエット(Blues-ette)」と同じ2管で、続編的アルバムといえるでしょう。
テナー・サックスとトロンボーンという低音域のハーモニーを堪能したい逸品です。
8位 Johnny Coles「Hobo Joe」(アルバム:Little Johnny C)
■アーティスト名:Johnny Coles
■アーティスト名カナ:ジョニー・コールズ
■曲名:Hobo Joe
■曲名邦題:ホーボー・ジョー
■アルバム名:Little Johnny C
■アルバム名邦題:リトル・ジョニー・C
■動画リンク:Johnny Coles「Hobo Joe」
1曲だけハンク・モブレー(Hank Mobley)の「リカード・ボサノヴァ(Recado Bossa Nova)」みたいな曲を入れたいと思いました。
そこで様々な曲を思い出してみましたが、思い浮かぶのはビック・ネームばかりです。
今回は単独で記事を書けそうな人は対象外にしています。
さてどうしたものかと考えていた時に、この曲が思い浮かびました。
昔ロンドンで巻き起こったジャズで踊るムーブメントでも、人気曲はこういう曲ばかりでした。
こういう曲は雰囲気を楽しめれば、それだけOKです。
ジャズというと、アドリブを理解しなくてはいけないと思うかもしれません。
今でこそ私もこのアドリブは云々と書いていますが、昔は心地よいかそうでないかでしか分かりませんでした。
この曲などは、むしろそういう聞き方がいいと思います。
踊る必要はありませんが、試しに身体を揺らしながら聞いてみてください。
たまにジャズ喫茶で身体を揺らしている人を見かけることがあります。
視界に入ると目障りだと思うかもしれませんが、そういう人は間違いなくジャズを楽しめている人だと思います。
9位 Tina Brooks「The Ruby and the Pearl」(アルバム:Back To The Tracks)
■アーティスト名:Tina Brooks
■アーティスト名カナ:ティナ・ブルックス
■曲名:The Ruby and the Pearl
■曲名邦題:ザ・ルビー・アンド・ザ・パール
■アルバム名:Back To The Tracks
■アルバム名邦題:バック・トゥ・ザ・トラックス
■動画リンク:Tina Brooks「The Ruby And The Pearl」
ブルーノートの裏番長こと、ティナ・ブルックスの曲です。
しかもこのアルバムは、一度リリースを見送られた経緯もあって、一時は「幻の名盤」と言わていました。
ブルーノートは当時としては珍しく、リハーサルにもギャラを支払うレーベルでした。
リハーサルを重ねると、未発表曲や別テイクが多くなります。
ブルーノートにはすごい未発表曲が眠っていると言われていて、私の友人はそれを「ブルーノート伝説」と呼んでいます。
このアルバムがリリースされたことが、その伝説に真実味を持たせました。
このアルバムでは「ストリート・シンガー(Street Singer)」「フォー・ヘヴンズ・セイク(For Heaven’s Sake)」など、実に味わい深い曲が収録されています。
フロントはティナのテナー・サックスとブルー・ミッチェルのトランペットという2管で、いずれもB級ハードバップの雄です。
この曲は2管が奏でるエキゾチックなテーマが、実にハードバップらしいですね。
今回ご紹介した中で、最もハードバップらしい曲かもしれません。
10位 Kenny Clarke「Play Fiddle Play」(アルバム:Klook’s Clique)
■アーティスト名:Kenny Clarke
■アーティスト名カナ:ケニー・クラーク
■曲名:Play Fiddle Play
■曲名邦題:プレイ・フィドル・プレイ
■アルバム名:Klook’s Clique
■アルバム名邦題:クルックス・クリーク
■動画リンク:Kenny Clarke「Play Fiddle Play」
今回ご紹介した中で最も知名度が低い曲かもしれません。
極私的名演としてご紹介してみました。
ケニー・クラークは、ビ・バップとハードバップを代表するドラマーです。
このアルバムは1956年サヴォイ・レコード(Savoy Records)からリリースされましたが、この頃では前年の「ボヘミア・アフター・ダーク(Bohemia After Dark)」の方が有名です。
このアルバムではトランペットにドナルド・バード(Donald Byrd)参加していて、それがなかったら私も買っていません。
しかしこの曲の主役は、アルト・サックスのジョン・ラポータ(John LaPorta)です。
なんでもない演奏かもしれませんが、個人的には哀愁のメロディがツボです。
ハードバップの哀愁を代表する曲として選んでみました。
今回はここまでとさせていただきますが、まだ聞きたい方に向けて、もう2曲リンクを貼っておきましょう。
■Harold Land – Klactoveedsedstene
※ハロルド・ランドの「ウエスト・コースト・ブルース!(West Coast Blues!)」に収録
■Doug Watkins – Return to Paradise
※ダグ・ワトキンスの「ワトキンス・アット・ラージ(Watkins At Large)」に収録
それでも聞き足りない方は、以下の記事もチェックしてみてください。
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