今回はクリフォード・ブラウンのランキングを作成しました。
この人で特筆すべきは、平均品質の高さです。
これほど高い水準を維持した人は稀かもしれません。
どの曲にもハードバップの魅力があふれています。
- 1 1位「Cherokee」(アルバム:Study in Brown)
- 2 2位「Joy Spring」(アルバム:Clifford Brown & Max Roach)
- 3 3位「Love Is a Many-Splendored Thing」(アルバム:Clifford Brown and Max Roach at Basin Street)
- 4 4位「Bellarosa」(アルバム:Memorial Album)
- 5 5位「Lover Come Back to Me」(アルバム:Memorial)
- 6 6位「Salute to the Band Box(Master Take)」(アルバム:Complete Paris Sessions Vol.2)
- 7 7位「I Get a Kick out of You」(アルバム:Brown and Roach Incorporated)
- 8 8位「Donna Lee」(アルバム:The Beginning and the End)
- 9 9位「Jordu」(アルバム:Max Roach and Clifford Brown In Concert)
- 10 10位「Move」(アルバム:Jam Session)
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1位「Cherokee」(アルバム:Study in Brown)
■曲名:Cherokee
■曲名邦題:チェロキー
■アルバム名:Study in Brown
■アルバム名邦題:スタディ・イン・ブラウン
■動画リンク:「Cherokee」
レイ・ノーブル(Ray Noble)が、チェロキー族のインディアンのメロディを借りて書いた曲です。
この曲は技術を披露する目的で取り上げられることが多いかもしれません。
チャーリー・パーカー(Charlie Parker)からジョン・マクラフリン(John McLaughlin)まで、腕自慢のプレイヤーに好まれています。
この曲はジャズ・トランペットでは、ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)の演奏がよく知られています。
ウィントンの演奏は、このクリフォードの演奏を参考にしているかもしれません。
この演奏の聞きどころは、1:17からのトランペット・ソロです。
この人の演奏は、速いテンポでも余裕が感じられます。
エレガントといえるほどかもしれません。
2位「Joy Spring」(アルバム:Clifford Brown & Max Roach)
■曲名:Joy Spring
■曲名邦題:ジョイ・スプリング
■アルバム名:Clifford Brown & Max Roach
■アルバム名邦題:クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ
■動画リンク:「Joy Spring」
この頃はクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットという双頭バンドでした。
クリフォード以外のメンバーは、以下の通りです。
・マックス・ローチ(Max Roach):ドラム
・ジョージ・モロウ(George Morrow):ベース
・ハロルド・ランド(Harold Land):テナー・サックス
・リッチー・パウエル(Richie Powell):ピアノ
※バド・パウエルの弟
エマーシー・レコード(EmArcy Records)を代表するアルバムです。
名作ぞろいのエマーシーの諸作の中でも、私はこのアルバムが一番好きです。
他にも「デライラ(Delilah)」「ダフード(Daahoud)」「パリジャン・ソロウフェア(Parisian Thoroughfare)」など、名演がそろっていますし。
1:45から23歳のクリフォードのトランペットソロが始まりますが、実に聞きごたえのある演奏です。
3位「Love Is a Many-Splendored Thing」(アルバム:Clifford Brown and Max Roach at Basin Street)
■曲名:Love Is a Many-Splendored Thing
■曲名邦題:慕情
■アルバム名:Clifford Brown and Max Roach at Basin Street
■アルバム名邦題:アット・ベイズン・ストリート
■動画リンク:「Love Is a Many-Splendored Thing」
この曲は映画「慕情(Love Is a Many-Splendored Thing)」の主題歌です。
メロディの解釈が絶妙です。
31秒のところからトランペット・ソロが始まりますが、実にはつらつとした演奏ですね。
このアルバムではハロルド・ランドに代わって、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)がテナー・サックスを担当しています。
ロリンズは、このアルバムでは少し低調だと言われています。
ロリンズが大好きな私も、正直認めざるを得ません。
この作品は1956年1月と2月録音ですが、同年6月ロリンズは傑作「サキソフォン・コロッサス(Saxophone Colossus)」で完全復活を遂げました。
さてこのアルバムは前半に強力な曲が多く「恋とは何でしょう(What Is This Thing Called Love?)」「四月の思い出(I’ll Remember April)」など、同等の名演が目白押しです。
ただ私の持っているCDでは、別テイクの「フロッシー・ルー(Flossie Lou)」が4曲連続入っていて、さすがに4曲連続はきついです。
4位「Bellarosa」(アルバム:Memorial Album)
■曲名:Bellarosa
■曲名邦題:ベラローサ
■アルバム名:Memorial Album
■アルバム名邦題:メモリアル・アルバム
■動画リンク:「Bellarosa」
先程の「Memorial」とまぎわらしいですが、「Memorial」はレーベルがプレスティッジ(Prestige)、「Memorial Album」はブルーノート(Blue Note)です。
どちらもブラウニーの死後に企画されたアルバム。
この曲を選んだ理由は楽曲の良さで、エルモ・ホープ(Elmo Hope)が書いた曲です。
楽天的な曲調は、抜けの良いクリフォードのトランペットと相性が良いですね。
彼のトランペットの音色は、ブリリアントと評されます。
音の張りがあるという意味ですが、音色に艶があると言い換えてもいいかもしれません。
演奏以前の問題として、トランペットの音が輝いていること。
それがクリフォードの最大の武器かもしれません。
5位「Lover Come Back to Me」(アルバム:Memorial)
■曲名:Lover Come Back to Me
■曲名邦題:恋人よ我に帰れ
■アルバム名:メモリアル
■アルバム名邦題:Memorial
■動画リンク:「Lover Come Back to Me」
今回はバラードを取り上げませんでした。
クリフォードには「クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス(Clifford Brown with Strings)」というバラード集がありますが、今回は選外にしました。
どうしてもストリングスが邪魔に思えてしまいます。
演奏自体は良い出来ですが、今ひとつおもしろみに欠けると思ってしまいます。
もちろん私の聞き込みが浅いだけかもしれませんが。
その代わりにこの曲をご紹介したいと思います。
バラード寄りの曲ですが、クリフォードの演奏は鋭角的で興味深いです。
6位「Salute to the Band Box(Master Take)」(アルバム:Complete Paris Sessions Vol.2)
■曲名:Salute to the Band Box(Master Take)
■曲名邦題:サリュート・トゥ・ザ・バンド・ボックス(マスター・テイク)
■アルバム名:Complete Paris Sessions Vol.2
■アルバム名邦題:コンプリート・パリ・セッション Vol.2
■動画リンク:「Salute to the Band Box(Master Take)」
クリフォードは早い時期から「ファッツ・ナバロの再来」と呼ばれていたようです。
彼は引っ張りだこで、この曲の前にはタッド・ダメロン(Tadd Dameron)バンドにも参加していました。
この演奏はライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)楽団の一員として渡仏した時、ひそかにレコーディングされたものです。
ライオネル・ハンプトンは、メンバーが勝手にホテルを抜け出さないよう、ロビーに見張りまで置いていたそうですが、クリフォードたちは裏口から抜け出すことに成功しました。
この録音はアンリ・ルノー(Henri Renaud)らによって準備されていて、クリフォードは同僚ジジ・グライス(Gigi Gryce)などと一緒に、このレコーディングに参加しました。
まるで修学旅行で先生の目をかいくぐり、女子生徒の部屋に行く男子高校生のようですね。
このパリ録音は1集から3集まであって、よほどのファンでない限り集める必要はないかもしれません。
ちなみにこの曲は「The Clifford Brown Sextet in Paris」にも入っていますが、そちらは現在廃盤です。
7位「I Get a Kick out of You」(アルバム:Brown and Roach Incorporated)
■曲名:I Get a Kick out of You
■曲名邦題:君にこそ心ときめく
■アルバム名:Brown and Roach Incorporated
■アルバム名邦題:ブラウン・ローチ・インコーポレイテッド
■動画リンク:「I Get a Kick out of You」
このアルバムは代表作として取り上げられる機会が少ないように思います。
クリフォードが参加していない曲があることや、マックス・ローチのドラム・ソロが長い曲が多いせいかもしれません。
この曲でもマックス・ローチのドラム・ソロが長めです。
この曲ではハロルド・ランドとリッチー・パウエルの演奏も、そこそこの出来だと思います。
しかしそれにも関わらずこの曲をおすすめするのは、クリフォードのソロがすばらしいから。
00:55~3:11が彼のソロですが、彼の特徴である早いテンポでも余裕を感じさせるすばらしい演奏です。
トランペットは高い音になると苦し気でやせた音になりがちですが、そうはなってはいません。
速い中でもほころびがなく、優雅さを感じる演奏です。
8位「Donna Lee」(アルバム:The Beginning and the End)
■曲名:Donna Lee
■曲名邦題:ドナ・リー
■アルバム名:The Beginning and the End
■アルバム名邦題:ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド
■動画リンク:「Donna Lee」
彼の初録音と最後の録音を収録しているという企画色の強いアルバムです。
ただ最後の録音と言われている方は、事実とは異なるという証言が出ていますから、話半分と考えた方がいいかもしれません。
まず初期の録音では「アイ・カム・フロム・ジャマイカ(I Come from Jamaica)」に注目です。
これは1952年の録音ですね。
クリス・パウエル(Chris Powell)というラテン色の強いR&Bバンドで演奏していますが、既に個性が確立されています。
しかし一番の聞きどころは、最後の録音?と言われている「チュニジアの夜(A Night in Tunisia)」とこの曲。
彼は1956年自動車事故で命を落としています。
享年25歳。
彼の死を受けてベニー・ゴルソン(Benny Golson)は「アイ・リメンバー・クリフォード(I Remember Clifford)」という追悼曲を書きました。
その曲を演奏して台頭したのがリー・モーガン(Lee Morgan)ですが、リーも33歳の若さで亡くなりました。
ファッツ・ナヴァロも26歳で早死にしていますし、天才トランペット奏者は夭折が多いのですね。
9位「Jordu」(アルバム:Max Roach and Clifford Brown In Concert)
■曲名:Jordu
■曲名邦題:ジョードゥ
■アルバム名:Max Roach and Clifford Brown In Concert
■アルバム名邦題:マックス・ローチ=クリフォード・ブラウン・イン・コンサート
■動画リンク:「Jordu」
この曲は「Clifford Brown & Max Roach」に入っているバージョンが有名ですが、私はこちらを推薦します。
クリフォードは、アドリブの構成力がすばらしいと言われています。
アドリブの構成力がどういうものか、少し分かりにくいかもしれません。
文章でいえば、伏線を回収したり、起承転結がしっかりしているイメージかもしれません。
演奏においては場当たり的に吹いているのではなく、飽きさせないような展開力がある曲を指すことが多いです。
構成力に欠けた演奏は、フレーズを垂れ流しているように聞こえてしまいます。
この曲ではまず00:58から3:12あたりをお聞きください。
このアルバムはライブですので、基本的に出たとこ勝負で演奏していると思われます。
それにも関わらず彼は、タンギングでひと盛り上がりをつくったかと思えば、その後時々早いフレーズを織り交ぜながら、緩急に富んだ演奏をしています。
緊張と緩和のバランスが良い演奏になっていますね。
10位「Move」(アルバム:Jam Session)
■曲名:Move
■曲名邦題:ムーヴ
■アルバム名:Jam Session
■アルバム名邦題:ジャム・セッション
■動画リンク:「Move」
私は基本的にジャズにくつろぎを求めるタイプのリスナーです。
火が出るようなアドリブという売り文句を見ると、買うのをためらってしまう方です。
一般にそういう曲は早い曲が多いですが、曲のテンポが速くなると音の幅が狭まったり、細かなニューアンスが難しくなるもの。
車の運転と少し似ています。
そのせいかテンポの速い演奏では、想像力に欠ける部分をテンションの高さで押し切った演奏が多いかもしれません。
しかしクリフォードの場合、早いリズムの中でも想像力を失いませんでした。
優等生キャラなのに、ストリート・ファイトに滅法強い生徒会長みたいな感じです。
この曲はほとんど「パンク・ジャズ」「喧嘩ジャズ」とでも言えそうな、ラフなジャムセッションです。
しかしこんな曲でも、彼は想像力に富んだ演奏をしていますね。
確かに彼の技術面でも優れていますが、本当のすごさはそこではありません。
どんな曲でもイマジネーションと優雅さを失わないこと。
それがこの人の一番の美点だと思います。
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