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J・J・ジョンソン(J.J.Johnson)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はJ・J・ジョンソンのランキングを作成しました。

この人はジャズ・トロンボーン奏者の第一人者です。

他界して随分経過していますが、今だに彼を超える人は現れていません。

今回はテクニック面だけでなく、プレイの味わい深さにも注目してみました。

 

1位「Hello, Young Lovers」(アルバム:Blue Trombone)

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■曲名:Hello, Young Lovers
■曲名邦題:ハロー・ヤング・ラヴァーズ
■アルバム名:Blue Trombone
■アルバム名邦題:ブルー・トロンボーン
■動画リンク:「Hello, Young Lovers」

この人はジャズ・トロンボーン奏者です。

ジャズ・トロンボニストは他にも何人かいますが、少し珍しいといえるかもしれません。

しかもこの作品は、トロンボーンのワンホーン・アルバムです。

ただでさえ希少な存在なのに、ワンホーンでアルバム1枚任せられるほどの人となると、更に少なくなります。

この曲では普通に演奏しているように聞こえますが、トロンボーンにおいては、その普通にというのが難しいかもしれません。

トロンボーンは構造的にソロ演奏には不向きで、即興が重視されるジャズには向いていないと言われています。

ブラス・バンドなどにおいては、ハーモニー用としては重宝されますが。

楽器の構造については、後で改めて触れたいと思います。

さてこの曲は、映画「王様と私」で使われたスタンダート・ナンバー。

オスカー・ハマースタイン2世(Oscar Hammerstein)とリチャード・ロジャース(Richard Rodgers)によって書かれた曲です。

JJの演奏が良いのは当然として、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のピアノ・ソロもいいですね。

JJのアルバムにはよくフラナガンが参加していますが、お気に入りのピアニストだったのでしょう。

 

2位「Old Devil Moon」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2)

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■曲名:Old Devil Moon
■曲名邦題:オールド・デヴィル・ムーン
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.2
■動画リンク:「Old Devil Moon」

JJといえば先程の「Hello, Young Lovers」が、一番の有名曲です。

しかし彼が演奏する機会が多いのは、こちらの方です。

「Dial J. J. 5」と「First Place」でも取り上げられていました。

ラテンのリズムが特徴的な曲です。

ドラムはビ・バップ仲間のケニー・クラーク(Kenny Clarke)ですが、このラテン・ナンバーを卒なくこなしています。

2:47からのジョン・ルイス(John Lewis)のピアノも小粋ですね。

JJの演奏は、いつも通りの安定感です。

彼のメロディの歌わせ方はそれほどクセがありませんし、フェイクも多用しません。

この人はメロディを素直に解釈をすることが多く好感が持てます。

 

3位「Turnpike」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1)

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■曲名:Turnpike
■曲名邦題:ターンパイク
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.1
■動画リンク:「Turnpike」

彼はハード・バップ以前、技術自慢が集うビ・バップの仲間たちと、腕を競い合っていました。

この曲が演奏された1953年6月22日頃は、ビ・バップの発展形であるハード・バップの黎明期でした。

しかしこの曲は技巧的で、ビ・バップの名残が残っています。

まずテーマの後、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の弾けるようなトランペットから始まっています。

その後1:34からテナーのジミー・ヒース(Jimmy Heath)は、スタン・ゲッツ(Stan Getz)のように、すするような入りがいいですね。

2:21からようやくJJのアドリブが始まります。

やはりJJのテクニックは半端ありません。

ちなみにトロンボーンは、こういう楽器です。

バルブ・トロンボーンもありますが、基本的に持ち手をスライドさせて音を変える楽器です。

指先の動きを腕で行うわけですから、細やかな演奏は難しいのですが、この人の場合そのハンデを感じさせません。

JJは技術だけの人ではありませんが、やはり技術的にも卓越しています。

彼のおかげで、トロンボーンはモダン・ジャズでも使われれるようになりました。

もしこの人がホルンを演奏していたら、ジャズ・ホルン奏者がもっと増えたかもしれませんね。

 

4位「Be My Love」(アルバム:First Place)

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■曲名:Be My Love
■曲名邦題:ビー・マイ・ラヴ
■アルバム名:First Place
■アルバム名邦題:ファースト・プレイス
■動画リンク:「Be My Love」

ジャズは黒さが重視されがちですが、彼の演奏はそれほど黒くはありません。

普通のハード・バップとウェストコースト・ジャズの中間ぐらいが、この人の立ち位置かもしれません。

この曲などは、まさしくそういった感じの演奏ではないでしょうか。

このアルバムは「Blue Trombone」と同じメンバーで録音されています。

ワンホーンなのですが、彼の歌い方を堪能するには、うってつけの作品かもしれません。

テーマ部分から、実に良く歌っていますね。

1:15から彼のソロが始まります。

とても軽快で、トロンボーンの演奏だということを忘れてしまいそうになります。

メロディアスな一方で、高い技術を感じさせる部分もあって、彼の代表的な名演の1つだと思います。

 

5位「Love Is Here to Stay」(アルバム:Dial J. J. 5)

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■曲名:Love Is Here to Stay
■曲名邦題:わが恋はここに
■アルバム名:Dial J. J. 5
■アルバム名邦題:ダイアル J.J. 5
■動画リンク:「Love Is Here to Stay」

このアルバムは「Blue Trombone」と、最高傑作の評価を分け合っています。

私は初期の「The Eminent Jay Jay Johnson」派ですが。

このアルバムには、ボビー・ジャスパー(Bobby Jaspar)のフルートが入っていて、室内楽っぽい曲も収録されています。

そのあたりで評価が割れるかもしれません。

さてこの曲は、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)のブラシが絶品です。

トロンボーンという楽器は、音色が魅力です。

少し無骨で音が割れているようなところや、ほのぼのとした温かみが感じられて、ジャズ以外でもトロンボーンが入っていると、つい耳をそばだててしまいます。

私のような方は、この曲でたっぷりトロンボーンの音を味わってください。

 

6位「Blue Bossa」(アルバム:Quintergy: Live At The Village Vanguard)

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■曲名:Blue Bossa
■曲名邦題:ブルー・ボッサ
■アルバム名:Quintergy: Live At The Village Vanguard
■アルバム名邦題:クインタ―ジ―
■動画リンク:「Blue Bossa」

一時期JJはレコーディングから遠ざかっていた時期がありました。

ディスコグラフィを見ると、1966年から1977年が空白の時期になっています。

ただこの時期はTV音楽などの仕事をしていたようで、必ずしも不遇な時期ではなかったかもしれません。

その後1980年代前半になると、パブロ・レコード(Pablo Records)で数枚のアルバムを発表していたものの、思うような活動ができなかったようです。

そんな中、ライブ・アルバムの企画が持ち上がりました。

伝説のトロンボーン奏者の復活ライブとのふれこみだったようです。

つまり現役のアーティストという扱いではありませんでしたが、そのライブは思いの外良い出来でした。

好評だったため「Standards:Live at the Village Vanguard Vol.2」という続編もリリースされています。

この曲はジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)が書いたジャズ・スタンダートの傑作です。

少し映画音楽的なところが感じられるアレンジが新鮮ですね。

JJはブランクの間アレンジャーとしても活動していましたから、その経験が活きているかもしれません。

 

7位「Too Marvelous for Words」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2)

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■曲名:Too Marvelous for Words
■曲名邦題:トゥー・マーヴェラス・フォー・ワーズ
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.2
■動画リンク:「Too Marvelous for Words」

ジャズメンには当たり外れが大きいタイプと、演奏が安定しているタイプがいます。

当たり外れが大きいタイプは、絶好調だと手が付けられないが、そうでない時との落差があります。

クリフォード・ブラウンみたいに、いつも安定して絶好調な人もいますが。

JJの場合は、後者のタイプのように思います。

ずば抜けたアドリブもありませんが、逆につまらない演奏もほとんどありません。

またカーティス・フラー(Curtis Fuller)と比べて、クールなJJ、味わいのフラーみたいに言われることがあります。

しかし私からしたら、JJも充分味わいの人です。

テクニック面に注目が集まりすぎて、それ以外の面が過小評価されているかもしれません。

この曲でもピアノソロの後、JJがユーモラスに歌っています。

彼の演奏には刹那的な刺激はありませんが、いつまでも聞いていたいと思わせてくれる安心感があります。

 

8位「Sketch 1」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1)

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■曲名:Sketch 1
■曲名邦題:スケッチ1
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.1
■動画リンク:「Sketch 1」

この曲はピアノのジョン・ルイスが書いた曲です。

ジョンの曲は、ヨーロピアン・クラシックなところがジャズらしくないと言われたりもしますが、私は大好物です。

自分の曲のせいか、1:09からのジョンのピアノが絶品ですね。

その後クリフォード・ブラウがミュートを付けて、想像力あふれるアドリブを披露しています。

JJの出番は2:12からですが、曲に合わせた端正な演奏をしています。

ちなみに彼は、1924年1月22日生まれ。

チャーリー・パーカー(Charlie Parker)より4歳年下で、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)より2つ年上です。

彼の音楽キャリアは1941年ですから、意外とビックバンド・ジャズ時代のキャリアが長い人なのですね。

しかし彼は当初から、モダンで洗練された面を持っていたように思います。

 

9位「Chasin’ the Bird」(アルバム:J Is for Jazz)

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■曲名:Chasin’ the Bird
■曲名邦題:チェイシン・ザ・バード
■アルバム名:J Is for Jazz
■アルバム名邦題:J・イズ・フォー・ジャズ
■動画リンク:「Chasin’ the Bird」

JJのアルバムでは、同じトロンボニストであるカイ・ウィンディング(Kai Winding)と共演した盤が有名です。

その名盤「ザ・グレート・カイ&J.J.(The Great Kai & J. J.)」から、1曲ご紹介しておきましょう。

J.J.Johnson – This Could Be The Start of Something

トロンボーンはハード・バップでも、テーマのハーモニーに厚みを出したい時、三管の一角に入ることがあります。

しかしこの人の場合、そういう使われ方だけではありません。

もちろんハーモニーに加わることもありますが、この人の場合ソロ奏者としての実力が高く評価されています。

名盤として名高い「スティット、パウエル&J.J.(Sonny Stitt, Bud Powell & J.j.)」でも、驚異的なテクニックを聞かせてくれていました。

この曲もソロ演奏が光る曲。

そもそもこの曲のテーマ部はコーラスではなく、ボビー・ジャスパーとの軽快な交流から始まっていますし。

確かにJJは卓越したテクニックを持っていますが、それが活きるのは速い曲の時だけではありません。

私はこういう軽快な曲でこそ、彼の良さが活きるように思います。

 

10位「My Old Flame」(アルバム:J. J. in Person!)

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■曲名:My Old Flame
■曲名邦題:マイ・オールド・フレイム
■アルバム名:J. J. in Person!
■アルバム名邦題:J.J. イン・パーソン!
■動画リンク:「My Old Flame」

このアルバムがリリースされた1958年、JJに災難が降りかかってきました。

彼は注射針の所持で逮捕され、ジャズ・クラブで演奏するのに必要なキャバレー・カードを没収されてしまいました。

ミュージシャンとして食べていけなくなるので、死活問題です。

彼は訴訟で、自分の権利を奪われたことを切々と訴えました。

その法廷では彼の妻や友人たちが次々に彼を援護し、ついにはキャバレー・カードを取り戻しました。

彼の人望の勝利だといえるでしょう。

この曲は彼の人柄が伺える朴訥とした演奏です。

ライブ・アルバムから選曲してみました。

2:28あたりから高音を織り交ぜての演奏が、とてもいい感じですね。

意外性があるわけでもなく、何気ない演奏なのですが、心に響くものがあります。

今回は主にJJの味わいに着目して、選曲してみました。

彼には他にも「J.J.Inc.」など、数多くの名演があります。

これをきっかけに、JJとトロンボーンの魅力を再確認していただければ幸いです。

 

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