今回はJ・J・ジョンソンのランキングを作成しました。
この人はジャズ・トロンボーン奏者の第一人者です。
他界して随分経過しましたが、今だに彼を超える人は現れていません。
この記事ではテクニック面だけでなく、プレイの味わい深さにも注目してみました。
- 1 1位「Hello, Young Lovers」(アルバム:Blue Trombone)
- 2 2位「Old Devil Moon」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2)
- 3 3位「Turnpike」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1)
- 4 4位「Be My Love」(アルバム:First Place)
- 5 5位「Love Is Here to Stay」(アルバム:Dial J. J. 5)
- 6 6位「Blue Bossa」(アルバム:Quintergy: Live At The Village Vanguard)
- 7 7位「Too Marvelous for Words」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2)
- 8 8位「Sketch 1」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1)
- 9 9位「Chasin’ the Bird」(アルバム:J Is for Jazz)
- 10 10位「My Old Flame」(アルバム:J. J. in Person!)
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1位「Hello, Young Lovers」(アルバム:Blue Trombone)
■曲名:Hello, Young Lovers
■曲名邦題:ハロー・ヤング・ラヴァーズ
■アルバム名:Blue Trombone
■アルバム名邦題:ブルー・トロンボーン
■動画リンク:「Hello, Young Lovers」
この人はジャズ・トロンボーン奏者です。
ジャズ・トロンボニストは他にもいますが、トランペットやサックスと比べて絶対数が多くありません。
しかもこの作品は、トロンボーンのワンホーン・アルバムです。
ただでさえ少ないのに、ワンホーンでアルバム1枚任せられるとなると、更に絞り込まれます。
この曲では普通に演奏しているように聞こえますが、トロンボーンにおいては、その普通にというのが難しいかもしれません。
トロンボーンは構造的にソロ演奏には不向きで、即興が重視されるジャズには向いていないと言われています。
ブラス・バンドにおいては、ハーモニー用としては重宝されますが。
楽器の構造については、後で改めて触れたいと思います。
さてこの曲は、映画「王様と私」で使われたスタンダート・ナンバー。
オスカー・ハマースタイン2世(Oscar Hammerstein)とリチャード・ロジャース(Richard Rodgers)によって書かれた曲です。
JJの演奏が良いのは当然として、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のピアノ・ソロもいいですね。
JJのアルバムにはよくフラナガンが参加していますが、お気に入りのピアニストだったのでしょう。
2位「Old Devil Moon」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2)
■曲名:Old Devil Moon
■曲名邦題:オールド・デヴィル・ムーン
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.2
■動画リンク:「Old Devil Moon」
JJといえば先程の「Hello, Young Lovers」が、一番の有名曲です。
しかし彼が演奏する機会が多いのは、こちらの方です。
「Dial J. J. 5」と「First Place」でも取り上げられていました。
ラテンのリズムが魅力の曲です。
ドラムはビ・バップ仲間のケニー・クラーク(Kenny Clarke)が卒なくこなしています。
2:47からのジョン・ルイス(John Lewis)のピアノも小粋ですね。
JJの演奏は、いつも通りの安定感です。
彼のメロディの歌わせ方はそれほどクセがありませんし、フェイクもそれほど多用しません。
メロディを素直に解釈をすることが多く、個人的にはその点で好感が持っています。
3位「Turnpike」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1)
■曲名:Turnpike
■曲名邦題:ターンパイク
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.1
■動画リンク:「Turnpike」
彼はハード・バップ以前にテクニック自慢ぞろいのビ・バップの仲間たちと、アフター・アワーズに腕を競い合っていました。
この曲が演奏された1953年6月22日頃は、ビ・バップの発展形ハード・バップの黎明期でした。
しかしこの曲は技巧的で、ビ・バップの名残が残っています。
まずテーマの後、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の弾けるようなトランペットから始まります。
その後1:34からテナーのジミー・ヒース(Jimmy Heath)は、スタン・ゲッツ(Stan Getz)のように、すするような入り方がいいですね。
2:21からようやくJJのアドリブが始まります。
やはりJJのテクニックは半端ありません。
ちなみにトロンボーンは、こういう楽器です。
バルブ・トロンボーンもありますが、基本的に持ち手をスライドさせて演奏する楽器です。
指先の動きを腕で行うわけですから、細やかな演奏は難しいのですが、JJの場合そのハンデを感じさせません。
JJは技術だけの人ではありませんが、やはり技術的にも卓越しています。
彼のおかげで、トロンボーンはモダン・ジャズでも使われれるようになりました。
もし彼がホルンを演奏していたら、ジャズ・ホルン奏者がもっと増えていたかもしれません。
4位「Be My Love」(アルバム:First Place)
■曲名:Be My Love
■曲名邦題:ビー・マイ・ラヴ
■アルバム名:First Place
■アルバム名邦題:ファースト・プレイス
■動画リンク:「Be My Love」
ジャズは黒さが重視されがちですが、彼の演奏はそれほど黒くはありません。
普通のハード・バップとウェストコースト・ジャズの中間ぐらいが、この人の立ち位置かもしれません。
この曲などは、まさしくそういった感じの演奏ではないでしょうか。
このアルバムは「Blue Trombone」と同じメンバーで録音されています。
ワンホーンなのですが、彼の歌い方を味わうにはうってつけの作品かもしれません。
テーマ部分から、実に気持ちよく歌っていますね。
とても軽快で、トロンボーンの演奏だということを忘れてしまいそうになりますね。
メロディアスな一方で、高い技術を感じさせる部分もあって、彼の代表的な名演の1つだと思います。
5位「Love Is Here to Stay」(アルバム:Dial J. J. 5)
■曲名:Love Is Here to Stay
■曲名邦題:わが恋はここに
■アルバム名:Dial J. J. 5
■アルバム名邦題:ダイアル J.J. 5
■動画リンク:「Love Is Here to Stay」
このアルバムは「Blue Trombone」と最高傑作の評価を分け合っています。
ちなみに私は初期の「The Eminent Jay Jay Johnson」派ですが。
このアルバムにはボビー・ジャスパー(Bobby Jaspar)のフルートが入っていて、室内楽っぽい曲も収録されています。
そのあたりで評価が割れるかもしれません。
さてこの曲は、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)のブラシが絶品です。
トロンボーンという楽器は音色が魅力です。
少し無骨で音が割れているようなところや、ほのぼのとした温かみが感じられて、ジャズ以外でもトロンボーンが入っていると、つい耳をそばだててしまいます。
私のような方は、この曲でたっぷりトロンボーンの音色を味わってください。
6位「Blue Bossa」(アルバム:Quintergy: Live At The Village Vanguard)
■曲名:Blue Bossa
■曲名邦題:ブルー・ボッサ
■アルバム名:Quintergy: Live At The Village Vanguard
■アルバム名邦題:クインタ―ジ―
■動画リンク:「Blue Bossa」
一時期JJはレコーディングから遠ざかっていました。
ディスコグラフィを見ると、1966年から1977年が空白の時期になっています。
ただこの時期はTV音楽などの仕事をしていたようで、必ずしも不遇な時期ではなかったかもしれませんが。
その後1980年代前半になると、パブロ・レコード(Pablo Records)で数枚のアルバムを発表していたものの、思うような活動はできなかったようです。
そんな中、ライブ・アルバムの企画が持ち上がりました。
伝説のトロンボーン奏者の復活ライブとのふれこみだったようです。
つまり現役のアーティストという扱いではありませんでしたが、そのライブは思いの外良い出来でした。
好評だったため「Standards:Live at the Village Vanguard Vol.2」という続編もリリースされています。
この曲はジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)が書いたジャズ・スタンダートの傑作です。
少し映画音楽的なアレンジが新鮮ですね。
JJはブランクの間アレンジャーとしても活動していましたから、その経験が活きているかもしれません。
7位「Too Marvelous for Words」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2)
■曲名:Too Marvelous for Words
■曲名邦題:トゥー・マーヴェラス・フォー・ワーズ
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson, Vol. 2
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.2
■動画リンク:「Too Marvelous for Words」
ジャズメンには当たり外れが大きいタイプと、演奏が安定しているタイプがいます。
当たり外れが大きいタイプは、絶好調だと手が付けられないが、そうでない時とは落差があります。
クリフォード・ブラウンみたいに、いつも安定して絶好調な人もいますが。
JJの場合は、後者のタイプのように思います。
ずば抜けたアドリブもありませんが、逆につまらない演奏もほとんどありません。
またカーティス・フラー(Curtis Fuller)と比べて、クールなJJ、味わいのフラーみたいに言われることがあります。
しかし私からしたら、JJも充分味わいの人です。
テクニック面ばかりに注目が集まりすぎて、それ以外の側面が過小評価されているかもしれません。
この曲でもピアノソロの後、JJがユーモラスに歌っています。
彼の演奏には外面的な刺激はありませんが、いつまでも聞いていたいと思わせてくれる安心感があります。
8位「Sketch 1」(アルバム:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1)
■曲名:Sketch 1
■曲名邦題:スケッチ1
■アルバム名:The Eminent Jay Jay Johnson Vol.1
■アルバム名邦題:ジ・エミネント・J.J.ジョンソンVol.1
■動画リンク:「Sketch 1」
この曲はピアノのジョン・ルイスが書いた曲です。
ジョンの曲は、ヨーロピアン・クラシックなところがジャズらしくないと言われたりもしますが、私は大好物です。
自分の曲のせいか、1:09からのジョンのピアノが絶品ですね。
その後クリフォード・ブラウがミュートを付けて、想像力あふれるアドリブを披露しています。
JJの出番は2:12からですが、曲に合わせた端正な演奏をしています。
ちなみに彼は、1924年1月22日生まれ。
チャーリー・パーカー(Charlie Parker)より4歳年下で、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)より2つ年上です。
彼の音楽キャリアは1941年ですから、意外とビックバンド・ジャズ時代のキャリアが長い人なのですね。
しかし彼は早くからモダンで洗練されていたように思います。
9位「Chasin’ the Bird」(アルバム:J Is for Jazz)
■曲名:Chasin’ the Bird
■曲名邦題:チェイシン・ザ・バード
■アルバム名:J Is for Jazz
■アルバム名邦題:J・イズ・フォー・ジャズ
■動画リンク:「Chasin’ the Bird」
JJのアルバムでは、同じトロンボニストであるカイ・ウィンディング(Kai Winding)と共演した盤が有名です。
その名盤「ザ・グレート・カイ&J.J.(The Great Kai & J. J.)」から、1曲ご紹介しておきましょう。
J.J.Johnson – This Could Be The Start of Something
トロンボーンはハード・バップでも、テーマのハーモニーに厚みを出したい時、三管の一角に入ることがあります。
しかしこの人の場合、そういう使われ方だけではありません。
もちろんハーモニーに加わることもありますが、この人の場合ソロ奏者としての実力が高く評価されています。
名盤として名高い「スティット、パウエル&J.J.(Sonny Stitt, Bud Powell & J.j.)」でも、驚異的なテクニックを聞かせてくれていました。
この曲もソロ演奏が光る曲。
そもそもこの曲のテーマ部はコーラスではなく、ボビー・ジャスパーとの軽快な交流から始まっていますし。
「ジェリー・マリガン・カルテット(The Gerry Mulligan Quartet)」でのジェリー・マリガンを思い起こさせます。
10位「My Old Flame」(アルバム:J. J. in Person!)
■曲名:My Old Flame
■曲名邦題:マイ・オールド・フレイム
■アルバム名:J. J. in Person!
■アルバム名邦題:J.J. イン・パーソン!
■動画リンク:「My Old Flame」
このアルバムがリリースされた1958年、JJに災難が降りかかりました。
彼は注射針の所持で逮捕され、ジャズ・クラブで演奏するのに必要なキャバレー・カードを没収されてしまいました。
ミュージシャンとして食べていけなくなる死活問題です。
彼は訴訟で、自分の権利を奪われたと主張しました。
その法廷では彼の妻や友人たちが次々に彼を援護し、ついにはキャバレー・カードを取り戻しました。
彼の人望の勝利といえるでしょう。
この曲は彼の人柄が伺える朴訥とした演奏です。
ライブ・アルバムから選曲してみました。
2:28あたりから高音を織り交ぜての演奏が、とてもいい感じですね。
意外性があるわけでもなく何気ない演奏なのですが、心に響くものがあります。
今回は主にJJの味わいに着目して、選曲してみました。
彼には他にも「J.J.Inc.」など、数多くの名盤があります。
これをきっかけに、JJとトロンボーンの魅力を再確認していただければ幸いです。
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