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ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はウェイン・ショーターのランキングを作成しました。

この記事では、以下の在籍期間を対象外にしています。

アート・ブレイキー & ジャズメッセンジャーズ(Art Blakey & Jazz Messengers)
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)
ウェザー・リポート(Weather Report)

アート・ブレイキーとウェザー・リポートについては、それぞれ別記事をご用意しています。

興味のある方は、記事下にある関連記事からご覧ください。

ソロ名義のアルバム限定で、選りすぐりの名演をご紹介しました。

 

1位「Ponta de Areia」(アルバム:Native Dancer)

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■曲名:Ponta de Areia
■曲名邦題:ポンタ・ジ・アレイア
■アルバム名:Native Dancer
■アルバム名邦題:ネイティヴ・ダンサー
■動画リンク:「Ponta de Areia」

ゲスト・ボーカルとしてこの曲に参加しているミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)は、ブラジルのミナス地方を代表するシンガーです。

ミナスのアーティストは、摩訶不思議なメロディとコード進行、しかしナチュラルな美しさが特徴のアーティストを数多く輩出しています。

ミルトン・ナシメントはそのミナスを代表する人。

もしかしたら両者は、少し似た資質を持つ者同士かもしれません。

マジカルだけど美しい音楽を特徴とする2人。

この曲はミルトンが書いた曲で、冒頭からミルトンのファルセット・ボーカルが美の極みです。

ミルトンのボーカルの後1:29からショーターは、ロングトーン中心にミナスの音楽に溶け込もうとしています。

この曲の聞きどころは、ショーターのソプラノ・サックスとミルトンのファルセットが交錯する最後の部分。

似た資質と同じ高みにある2人が共振し、共鳴し合っています。

これほど美しい音楽はめったにありません。

 

2位「Speak No Evil」(アルバム:Speak No Evil)

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■曲名:Speak No Evil
■曲名邦題:スピーク・ノー・イーヴル
■アルバム名:Speak No Evil
■アルバム名邦題:スピーク・ノー・イーヴル
■動画リンク:「Speak No Evil」

ショーターは、アート・ブレイキーとマイルス・デイヴィスという2大名門ジャズ・バンドで音楽監督を努めていました。

彼はプレイヤーであるだけでなく、一流の音楽スタイリストです。

当時の彼はモード・ジャズを主戦場にしていました。

モード・ジャズにも様々なものがありますが、ショーターのスタイルを説明するとこんな感じでしょうか。

演奏を油抜きをしてあっさりさせる一方で、摩訶不思議な味付けを施す。

一方で音数を少なくして、少ない音をもってリスナーの想像力を喚起する。

ちなみにアルバム名の「Speak No Evil」とは、日本で言うところの「見ざる、言わざる、聞かざる」の「言わざる」のこと。

どうりで音数が少ないはずです(笑)

しかし音数が少ないのにもかかわらず、濃密な音楽空間を構築しています。

彼はこの作品でその路線を突き詰めた後「ジ・オール・シーイング・アイ(The All Seeing Eye)」から、また次の変化を模索し始めました。

 

3位「Yes or No」(アルバム:JuJu)

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■曲名:Yes or No
■曲名邦題:イエス・オア・ノー
■アルバム名:JuJu
■アルバム名邦題:ジュジュ
■動画リンク:「Yes or No」

ウェイン・ショーターは、よくジョン・コルトレーン(John Coltrane)と比較されます。

両者は共にマイルス・デイヴィスのバンド出身で、モード・ジャズを得意とするサックス奏者という共通点があります。

コルトレーンの演奏は、とにかく突破力がありました。

一方ショーターは、本来そういうタイプではありません。

私が考える両者の違いは、自分の活かし方です。

コルトレーンは圧倒的な個の力で、共演者を従え、ひたすら前に進んでいこうとしました。

しかしショーターは少し引き気味で、常にグループ表現全体を考えていたように感じます。

もしかしたらまず最初に音楽全体のビジョンを描き、そこから逆算して自分の即興演奏をしていたように感じるほど。

この曲を聞く限り、彼のソロイストとしての実力は申し分ありません。

ただコルトレーンは良い演奏をすること、ショーターは良い音楽をつくり上げること。

そんな違いがあるように思います。

 

4位「Black Nile」(アルバム:Night Dreamer)

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■曲名:Black Nile
■曲名邦題:ブラック・ナイル
■アルバム名:Night Dreamer
■アルバム名邦題:ナイト・ドリーマー
■動画リンク:「Black Nile」

一般的なショーターのイメージは「ミステリアス」「黒魔術」「オカルト」あたりかもしれません。

とらえどころのない彼の音楽を表現した言葉の数々。

彼の音楽はメロディや音の間合いに、ある種の含みがあるように感じます。

その含みは、よく理解できない人にも魅力的に響きました。

ただその方法論は、彼以外では成立しにくいかもしれません。

それは思わせぶりなことを言うだけでは、魅力的な人にはならないのと同じです。

たとえば昔の映画に登場する女スパイでも、知性と美貌を備えた女性が謎めいたことを言うからこそ、男性もほっておけませんし。

ウェイン・ショーターの演奏も同じです。

その一例として、この曲の46秒から始まるショーターのアドリブをお聞きください。

それに比べると、次に演奏するリー・モーガン(Lee Morgan)のアドリブは、すばらしい演奏ですが謎めいていません。

こちらは謎めいていない美女といったところでしょうか。

そうした謎めいたショーター音楽の傾向は、このアルバムあたりから強まりました。

 

5位「Adam’s Apple」(アルバム:Adam’s Apple)

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■曲名:Adam’s Apple
■曲名邦題:アダムス・アップル
■アルバム名:Adam’s Apple
■アルバム名邦題:アダムス・アップル
■動画リンク:「Adam’s Apple」

この曲は、彼にしては珍しいジャズ・ファンクです。

そういえば「Wayning Moments」には「黒いオルフェ(Black Orpheus)」というボサノヴァの曲が収録されていました。

セールスを気にしたレコード会社の意向か、又は本人の希望か分かりません。

ただ私はショーターの音楽に、表現者としてのエゴを感じません。

それが音楽の押しの弱さに繋がっているかもしれませんが、彼は地力の高さでその欠点を感じさせません。

この曲はショーター版踊れるジャズですが、得意不得意を超えて良い仕上がりです。

さてこのアルバムには、彼が書いた中でも特に有名な曲が収録されています。

Wayne Shorter – Footprints

後年彼は「Footprints Live!」という、この曲名を冠したライブ・アルバムを発表しました。

このアルバムは、あまり気張らずに聞けます。

「スキッツォフリーニア(Schizophrenia)」と並んで、構えず気楽に聞ける魅力を持ったアルバムです。

 

6位「Super Nova」(アルバム:Super Nova)

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■曲名:Super Nova
■曲名邦題:スーパー・ノヴァ
■アルバム名:Super Nova
■アルバム名邦題:スーパー・ノヴァ
■動画リンク:「Super Nova」

私はアーティスト毎に、全盛期と考えている時期が決まっています。

ただこの人については、いまだに2つの時期で揺れ動いています。

1つは「Night Dreamer」「JuJu」「Speak No Evil」の時期。

もう1つは「Moto Grosso Feio」「Odyssey of Iska」「Native Dancer」の時期。

最高傑作を1枚選べと言われたら「Speak No Evil」か「Native Dancer」のどちらかと答える煮え切らなさです。

このアルバムは、2つ目の全盛期のさきがけとなったアルバム。

確かに風雲急を告げる演奏です。

ショーターは、マイルス・デイヴィスから挑戦することの重要性を学びました。

マイルスと話した後、ショーターは以下のように語ったそうです。

本当に意外なもの、未知の世界のものを目指すとしたら? そういう挑戦なのだ。本当に恐れることなく、未知のもの、予想外のものと向き合っていくことが必要な時代。見たこともない状況と向き合わなければならないのだ

ウェイン・ショーター ウィキペディア

彼は圧倒的な個の力を持ちながら、グループ表現を重視していました。

しかしこの曲で彼は自らの演奏で、未来の扉をこじ開けようとしています。

 

7位「All or Nothing At All」(アルバム:Wayning Moments)

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■曲名:All or Nothing At All
■曲名邦題:オール・オア・ナッシング・アット・オール
■アルバム名:Wayning Moments
■アルバム名邦題:ウェイニング・モーメンツ
■動画リンク:「All or Nothing At All」

彼のバラードの中でも特に好きな曲です。

このアルバムが録音された1961年、彼はアート・ブレイキーのバンドに参加していました。

彼の加入によってブレイキーのバンドは、モーダルとハードバップを融合した新機軸を打ち出しました。

その頃の曲をご紹介しましょう。

Art Blakey & Jazz Messengers – Children Of The Night

その手腕に注目したマイルス・デイヴィスは、ブレイキーのバンドを脱退した彼に声をかけました。

マイルスのバンド時代の曲もご紹介しておきましょう。

先程同じ曲をショーターのバージョンでご紹介しましたが、こちらはマイルスのアルバムに収録されたバージョンです。

Miles Davis – Footprints

 

8位「Montezuma」(アルバム:Moto Grosso Feio)

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■曲名:Montezuma
■曲名邦題:モンテズマ
■アルバム名:Moto Grosso Feio
■アルバム名邦題:モト・グロッソ・フェイオ (アマゾン河)
■動画リンク:「Montezuma」

この頃の彼はECMっぽいといいますか、スピリチュアル色を強めていました。

彼はマイルスと同じように黒さに依存しすぎず、知的な方法論を実践しました。

ただそのアプローチには、意図的にカオスを取り込むことも含まれています。

このアルバムが録音された1970年は、激動する時代の変わり目でした。

1970年4月、ジャズ界を震撼させる問題作が発表されました。

それは、マイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)」

ショーターはそのアルバムのレコーディングに参加していましたので、時代に風穴を開ける現場を目撃していたはずです。

1970年ショーターはその経験をふまえ、このアルバムと「Odyssey of Iska」を録音しました。

その後彼はジョー・ザヴィヌル(Joe Zawinul)と一緒に、電化マイルス路線を継承したウェザー・リポートを結成しました。

 

9位「The Ruby And The Pearl」(アルバム:Second Genesis)

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■曲名:The Ruby And The Pearl
■曲名邦題:ザ・ルビー・アンド・ザ・パール
■アルバム名:Second Genesis
■アルバム名邦題:セカンド・ジェネシス
■動画リンク:「The Ruby And The Pearl」

ショーターの音楽は映画のサントラ的で、映像喚起力にすぐれています。

その点ではチック・コリア(Chick Corea)に似た部分があるかもしれません。

つまりファンキー・ジャズとか哀愁のハードバップとは違った、少し異端のジャズでした。

しかしこの曲はその例外で「若かりし日(And when we are young)」のフィル・ウッズ(Phil Woods)を思わせる狂おしい演奏です。

初期のこの頃彼は、良くも悪くも個性が固まっていません。

ハードバップとモード・ジャズ、その間で揺れ動いています。

しかしそれは魅力的なモラトリアムの時期でもありました。

この後彼は静的なモード・ジャズ路線で、独自のスタイルを確立しました。

しかしその「Night Dreamer」「JuJu」「Speak No Evil」の傑作群には、成熟と引き換えに失ったものがあったかもしれません。

それはスタイリッシュすぎることの弊害。

たとえば田舎から上京して間もない、純朴でがむしゃらなイケメン俳優がいたとします。

その後彼が洗練され、スーツが似合う完璧な俳優に成長しとしたら、昔の方が良かったと思う人もいることでしょう。

初期ならではの魅力を持ったこの曲は、それと少し似ているかもしれません。

 

10位「De Pois Do Amor, O Vazio (After Love, Emptiness)」(アルバム:Odyssey of Iska)

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■曲名:De Pois Do Amor, O Vazio (After Love, Emptiness)
■曲名邦題:デ・ポワ・ド・アモール・オ・ヴァッジオ
■アルバム名:Odyssey of Iska
■アルバム名邦題:オデッセイ・オブ・イスカ
■動画リンク:「De Pois Do Amor, O Vazio (After Love, Emptiness)」

このアルバムの作風は、一般的なブルーノート・レコード(Blue Note Records)のイメージとは違うかもしれません。

ただブルーノートのすごさは、荒れ球の見極め力とコントロール力にあります。

このアルバムは実験的な音楽性でしたが、ストライクゾーンのギリギリに入っていたので、リスナーは迷子になりませんでした。

「ストーム(Storm)」のような激しくも魅力的な曲もありますが、この曲のように穏やかで甘めの曲もあります。

いい塩梅のバランス感覚を感じる作品です。

この曲が気に入った方は、私の好きなポール・ウィンターの曲も合わせてお聞きください。

Paul Winter Consort – Icarus

今回の記事は、コロムビア・レコード(Columbia Records)移籍第一弾「Native Dancer」までを対象にしました。

その後彼は「アトランティス(Atlantis)」「ファントム・ナビゲーター(Phantom Navigator)」など、聞きやすいフュージョンの作品をリリースしています。

彼は晩年まで何度もグラミー賞を受賞しています。

もしかしたら晩年の方が、音楽的に安定感があるかもしれません。

しかしこの記事では彼がジャズの最前線で試行錯誤し、ヒリヒリする中で変貌する過程をご紹介してみました。

もし続きの時期に興味のある方は、下の関連記事からウェザー・リポートの記事をどうぞ。

 

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