今回はソニー・ロリンズのランキングを作成しました。
この人は私が一番好きなテナーサックス奏者です。
普段どんなジャンルを聞いている方も、一度聞いておいて損はありません。
天衣無縫の極みという形容がふさわしい、至高のジャズ・ジャイアントです。
- 1 1位「A Night In Tunisia (Afternoon)」(アルバム:Night at the Village Vanguard)
- 2 2位「Moritat (Mack the Knife)」(アルバム:Saxophone Colossus)
- 3 3位「On a Slow Boat to China」(アルバム:Sonny Rollins With the Modern Jazz Quartet)
- 4 4位「There’s No Business Like Show Business」(アルバム:Work Time)
- 5 5位「Solitude」(アルバム:Way Out West)
- 6 6位「Way You Look Tonight」(アルバム:Thelonious Monk & Sonny Rollins)
- 7 7位「I’ve Told Ev’ry Little Star」(アルバム:Sonny Rollins and the Contemporary Leaders)
- 8 8位「You Stepped Out of a Dream」(アルバム:Sonny Rollins, Vol.2)
- 9 9位「Brown Skin Girl」(アルバム:What’s New?)
- 10 10位「The Night Has a Thousand Eyes」(アルバム:What’s New?)
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1位「A Night In Tunisia (Afternoon)」(アルバム:Night at the Village Vanguard)
■曲名:A Night In Tunisia (Afternoon)
■曲名邦題:チュニジアの夜
■アルバム名:Night at the Village Vanguard
■アルバム名邦題:コンプリート・ヴィレッジ・ヴァンガードの夜
■動画リンク:「A Night In Tunisia (Afternoon)」
私が昔、大学の卒業旅行にニューヨークを選んだのは、行きたい場所があったからです。
それはパンクの聖地CBGB、そしてこの曲が録音されたヴィレッジ・ヴァンガード。
そのぐらい私はこのアルバムに感銘を受けました。
ロリンズはアルバム全編に渡って、ドラムのエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)とバチバチやりあっています。
その緊張感がたまりません。
エルヴィンの存在によって、ロリンズのポテンシャルが引き出されています。
ロック系のリスナーの方は、普段こういうドラムを聞く機会が少ないかもしれません。
ジャズでは楽器間の相互触発が重視されます。
この曲などは、その一例といえるかもしれません。
ジャズのスリルは時に不穏な空気感として伝わってきますが、それこそがジャズを聞く醍醐味だといえるでしょう。
2位「Moritat (Mack the Knife)」(アルバム:Saxophone Colossus)
■曲名:Moritat (Mack the Knife)
■曲名邦題:モリタート
■アルバム名:Saxophone Colossus
■アルバム名邦題:キソフォン・コロッサス
■動画リンク:「Moritat (Mack the Knife)」
このアルバムは、ジャズ歴史において屈指の名盤です。
ジャズ・ファンはよく「ジャズの史上最高のアルバムは何か」というお題で盛り上がります。
もちろん答えが出るはずがありません。
ただそれについて語ること自体が楽しかったりするのですね。
さてこのアルバムはその種の企画では、トップ3の常連。
このアルバムには他にも、カリプソ調の「セント・トーマス(St. Thomas)」、深みのあるバラード「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ(You Don’t Know What Love Is)」など名演ぞろいです。
5曲ともタイプが全く違いますが、どれも最高レベルの名演です。
どの曲を選ぶかはお好みですが、私はこの曲が一番かもしれません。
汲めども尽きせぬフレーズが次々と繰り出されています。
3:53からのトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のピアノ・ソロも最高です。
3位「On a Slow Boat to China」(アルバム:Sonny Rollins With the Modern Jazz Quartet)
■曲名:On a Slow Boat to China
■曲名邦題:スロー・ボート・トゥ・チャイナ
■アルバム名:Sonny Rollins With the Modern Jazz Quartet
■アルバム名邦題:ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット
■動画リンク:「On a Slow Boat to China」
この曲は村上春樹の小説のタイトルにもなっています。
有名な話ですが、村上春樹は元々ジャズを流すお店をやっていました。
つまりジャズを選曲するプロだった彼が、自分の本のタイトルにしてもいいと思ったぐらいの演奏だということです。
この頃ロリンズは、まだ駆け出しのサックス奏者でした。
この頃のロリンズは、マイルス・デイビス(Miles Davis)のお膳立てで、初レコーディングを経験したばかりでした。
それにもかかわらず、既に個性が確立していますね。
ロリンズの演奏を一言で言い表すと「究極の鼻歌」です。
この演奏などはその典型で気負った様子がなく、自然に出てきたメロディそのままといった趣きがありますが、ただそれだけで最高です。
演奏に作為や苦心の形跡がありません。
4位「There’s No Business Like Show Business」(アルバム:Work Time)
■曲名:There’s No Business Like Show Business
■曲名邦題:ショウほど素敵な商売はない
■アルバム名:Work Time
■アルバム名邦題:ワークタイム
■動画リンク:「There’s No Business Like Show Business」
私がロリンズにはまるきっかけとなった曲です。
私は若い頃、ロリンズの良さを理解できませんでした。
そこでこの曲を繰り返し聞いてみることにしました。
そうすると次第にロリンズのすごさが実感できるようになりました。
ロリンズはタイム感覚が独特で、フレーズを伸び縮みさせたり、後ノリからキャッチアップしたり自由自在です。
メトロノームのようなタイム感覚では収まりきらない、独特のノリがあります。
私は当時聞きすぎて、今でもこの曲のアドリブを鼻歌で歌えます。
ただこの曲を聞きながら鼻歌で歌っても、タイミングを合わせられません。
よく耳コピして初めて演奏のすごさが分かったと言う人がいます。
ロリンズ節を支える独特のタイム感は、身体で理解する必要があるかもしれません。
5位「Solitude」(アルバム:Way Out West)
■曲名:Solitude
■曲名邦題:ソリチュード
■アルバム名:Way Out West
■アルバム名邦題:ウェイ・アウト・ウエスト
■動画リンク:「Solitude」
デューク・エリントン(Duke Ellington)が作曲したジャズ・スタンダードです。
今回バラードは1曲だけですが、他にも多くの名曲があります。
ロリンズはミディアムテンポ以上の曲では雄弁ですが、スローでは少し朴訥な演奏が多いかもしれません。
雄弁さは彼の特徴の1つですが、雄弁でなくてもロリンズはロリンズです。
さてこのアルバムはピアノが参加していない、ピアノレスの作品。
ロリンズはピアノレスの編成を好むと言われていますが、確かに名演が多いように思います。
ロリンズの素朴な魅力を楽しめる曲です。
6位「Way You Look Tonight」(アルバム:Thelonious Monk & Sonny Rollins)
■曲名:Way You Look Tonight
■曲名邦題:今宵の君は
■アルバム名:Thelonious Monk & Sonny Rollins
■アルバム名邦題:セロニアス・モンク・アンド・ソニー・ロリンズ
■動画リンク:「Way You Look Tonight」
ロリンズの傑作が生まれやすい条件を整理してみました。
・ピアノレス
・ピアノやギターが饒舌すぎない
・攻めに強いタイプのドラムとの共演
彼は自分以外に雄弁な人がいる状況が苦手なのかもと思うことがあります。
自分は雄弁に語るけれど、相手には一歩引いてもらいたいタイプかもしれません。
彼がクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)のグループにいた時も、同じく雄弁系のクリフォードがいたせいか、ロリンズは精彩を欠いていました。
しかしセロニアス・モンクは、音のすき間を埋めるタイプのピアニストではありません。
むしろモンクは音のすき間をつくり出し、間合いの妙で聞かせるタイプの人です。
漫才でいうと、独特の間合いを持ったボケ担当みたいな人です。
最良のボケ人材を得て、ロリンズが思う存分好きにブロウしていることが、この曲の勝因かもしれません。
7位「I’ve Told Ev’ry Little Star」(アルバム:Sonny Rollins and the Contemporary Leaders)
■曲名:I’ve Told Ev’ry Little Star
■曲名邦題:アイヴ・トールド・エヴリー・リトル・スター
■アルバム名:Sonny Rollins and the Contemporary Leaders
■アルバム名邦題:コンテンポラリー・リーダーズ
■動画リンク:「I’ve Told Ev’ry Little Star」
ロリンズの演奏は、男性的でおおらかと表現されることが多いです。
またユーモラスと言われることもあります。
確かにこの曲の出だしは、ゆるいコントのBGMみたいですね。
このアルバムのタイトルは「Sonny Rollins and the Contemporary Leaders」つまり「ロリンズと現代のリーダーたち」というタイトル。
「Contemporary」とは、このアルバムを発売したレーベルの名前です。
それと同時にバーニー・ケッセル(Barney Kessel)、シェリー・マン(Shelly Manne)、ハンプトン・ホーズ(Hampton Hawes)など、このアルバムに参加した有名プレイヤーーのことも指しています。
しかしロリンズはそんなことお構いなしなのですね。
こんな脱力の極みのような演奏をして、わざわざアルバムの1曲目に置いているのですから。
8位「You Stepped Out of a Dream」(アルバム:Sonny Rollins, Vol.2)
■曲名:You Stepped Out of a Dream
■曲名邦題:ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム
■アルバム名:Sonny Rollins, Vol.2
■アルバム名邦題:ソニー・ロリンズ Vol.2
■動画リンク:「You Stepped Out of a Dream」
このアルバムの収録曲はどれもすばらしく「ホワイ・ドント・アイ(Why Don’t I)」など、他にも名演が目白押しです。
レーベルはご存知Blue Noteです。
ちなみにジョー・ジャクソン(Joe Jackson)は「ボディ・アンド・ソウル(Body & Soul)」というアルバムで、このジャケットを真似ていました。
さてこの曲のドラムは、アート・ブレイキー(Art Blakey)。
ブレイキーの演奏は、単純だとかワンパターンとか無駄に派手だとか言われることがあります。
しかしブレイキーには、攻めろとチームを鼓舞する闘将みたいところがあるかもしれません。
懐が深く、細かい気配りで共演者をうまく盛り立てていくリーダーシップもあります。
そのブレイキーの献身的なプッシュが、このロリンズの名演を支えています。
他にはJ・J・ジョンソン(J.J.Johnson)のトロンボーンも良い絡みをしていますね。
9位「Brown Skin Girl」(アルバム:What’s New?)
■曲名:Brown Skin Girl
■曲名邦題:ブラウンスキン・ガール
■アルバム名:What’s New?
■アルバム名邦題:ホワッツ・ニュー
■動画リンク:Brown Skin Girl
この少し前、ロリンズはジャズ界を引退してしまいます。
絶頂期の引退は多くの人に惜しまれました。
演奏から想像しがたいかもしれませんが、彼は意外と繊細でストイックな人です。
神秘サークルの薔薇十字会に入会したり、禅やヨガをやったりなど、常に自分を見つめ直そうとしてきました。
その彼が2年ぶりに復活して、リリースされたのがこのアルバムです。
心なしかふっきれたような明るい印象を受けますね。
この曲はジャズっぽい曲ではありません。
しかし天衣無縫なロリンズの持ち味は健在です。
私は本来はロック・リスナーですが、ジャズも聞く人です。
昔あるジャズ好きに本来私はロック寄りだと言ったところ、少し微妙なリアクションが返ってきたことがありました。
ただ私のような人間が、ジャズを紹介する意義もあるのではないかと思います。
この曲のようなロリンズは、ジャズ専門の人ほど素通りするかもしれません。
私は私なりの観点で、ジャズの魅力をお伝えしていきたいと思っています。
10位「The Night Has a Thousand Eyes」(アルバム:What’s New?)
■曲名:The Night Has a Thousand Eyes
■曲名邦題:夜は千の目を持つ
■アルバム名:What’s New?
■アルバム名邦題:ホワッツ・ニュー
■動画リンク:「The Night Has a Thousand Eyes」
当初私はアルバムから1曲ずつという制約を設けました。
そういう風に決めないと、50枚近い中から選びきれないと思ったからです。
しかしこのアルバムからは、どうしても2曲選びたくなりました。
この曲ではジム・ホール(Jim Hall)が大活躍しています。
ジム・ホールは引きの美学を感じる、とても趣味の良いギタリストです。
一方ロリンズも快調で、この曲でも天真爛漫な歌心が爆発していますね。
ちなみにロリンズは後年、ローリング・ストーンズ(The Rolling Stone)の名曲「友を待つ(Waiting On A Friend)」に客演しました。
当時曲にサックスが必要となった時、ミック・ジャガー(Mick Jagger)がチャーリー・ワッツに、誰が世界最高のジャズ・テナーか尋ねたそうです。
チャーリーがロリンズだと答えたところ、後日ロリンズがスタジオにいて、チャーリーが驚いたという逸話があります。
ロリンズが世界最高のテナーだという意見には、私も賛成です。
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