今回はソニー:ロリンズのランキングを作成しました。
おそらくこのブログを見に来る方の多くは、ジャズファンではないと思います。
実際私がこのブログで取り上げているアーテイストは、ロックやポップス系の人たちばかりです。
ただ私はそういうリスナーの方に、ジャズをつまみ食いすることをご提案したいと思います。
もしジャズは興味ないという方がいたら、最後の2曲だけでも聞いていただければうれしいです。
ジャズファンには渋い顔をされる曲かもしれませんが、幅広い人にアピールできそうな曲を選んでみました。
その2曲がまあまあだなと思ったら、1曲目からお聞きください。
ジャズファンはまっすぐ1位の曲からどうぞ。
ソニー・ロリンズのようなジャズの巨人は、一聴の価値があると思います。
- 1 1位「A Night In Tunisia (Afternoon)」(アルバム:Night at the Village Vanguard)
- 2 2位「Moritat (Mack the Knife)」(アルバム:Saxophone Colossus)
- 3 3位「On a Slow Boat to China」(アルバム:Sonny Rollins With the Modern Jazz Quartet)
- 4 4位「There’s No Business Like Show Business」(アルバム:Work Time)
- 5 5位「Solitude」(アルバム:Way Out West)
- 6 6位「Way You Look Tonight」(アルバム:Thelonious Monk & Sonny Rollins)
- 7 7位「I’ve Told Ev’ry Little Star」(アルバム:Sonny Rollins and the Contemporary Leaders)
- 8 8位「You Stepped Out of a Dream」(アルバム:Sonny Rollins, Vol.2)
- 9 9位「Brown Skin Girl」(アルバム:What’s New?)
- 10 10位「The Night Has a Thousand Eyes」(アルバム:What’s New?)
1位「A Night In Tunisia (Afternoon)」(アルバム:Night at the Village Vanguard)
■曲名:A Night In Tunisia (Afternoon)
■曲名邦題:チュニジアの夜
■アルバム名:Night at the Village Vanguard
■アルバム名邦題:コンプリート・ヴィレッジ・ヴァンガードの夜
■動画リンク:「A Night In Tunisia (Afternoon)」
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この曲をロックファンに聞いてもらうだけで、私の目的の半分が達成されるような気がします。
それほど多くないかもしれませんが、ある一定割合の人は食いついてくれるのではないかと。
ジャズについて、おしゃれだとか雰囲気のある音楽みたいに考える風潮はないでしょうか。
この曲はそういうものとは異なる、野性味あふれるジャズです。
ただ私は硬派なジャズファンでありません。
そんな私からしても、この演奏の生々しさや熱気は尋常ではないと思い、どうしてもおすすめしたくなりました。
この演奏に感銘を受けた私は、ニューヨークに行った時、舞台となったお店に行ってみたぐらいです。
聞いてのとおりライブアルバムです。
ロリンズのテナーサックスとエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)のドラムが、バチバチやりあっています。
このアルバムでのロリンズは、リミッターを外した即興演奏をしています。
表面的にこの曲よりも激しい演奏は、他にもたくさんあるかもしれません。
しかし上辺の激しさではなく、圧倒的なイマジネーションにおいて、この曲に匹敵する演奏はほとんどありません。
ドラムをやっている人は、エルヴィンのプレイに注目です。
2位「Moritat (Mack the Knife)」(アルバム:Saxophone Colossus)
■曲名:Moritat (Mack the Knife)
■曲名邦題:モリタート
■アルバム名:Saxophone Colossus
■アルバム名邦題:キソフォン・コロッサス
■動画リンク:「Moritat (Mack the Knife)」
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一般的にこのアルバムは、ジャズの名盤中の名盤と呼ばれています。
ジャズファンはよく「ジャズの史上最高のアルバムは何か」という、答えが出そうもない話題で盛り上がることがあります。
雑誌や本でも頻繁に特集されています。
その種の企画で、このアルバムはトップ3の常連です。
このアルバムでは他にも、カリプソ調の「セント・トーマス(St. Thomas)」、深みのあるバラード「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ(You Don’t Know What Love Is)」など名曲ばかりです。
全くタイプの違う5曲が、それぞれに最高レベルの名演です。
どれを選ぶかは人によって異なるでしょうが、私はこの曲が一番好きです。
この曲はいかにもロリンズらしい曲です。
ミディアムテンポの中、ゆったりとリラックスした演奏ですが、コクの深いフレーズが次から次へと繰り出されています。
1位の曲は少しテンション高めすぎて、普段着のロリンズとはいえなかったかもしれません。
その点こちらはロリンズっぽさしかありません。
汲めども尽きせぬフレーズを聞くと、なぜ彼がジャズの巨人と呼ばれるのか、理由が分かると思います。
また3:53からのトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のピアノソロも最高です。
最初聞いた時は物足りないと思いましたが、聞き返す度に輝きが増してきます。
いぶし銀の演奏とはこういう演奏のことをいうのでしょうね。
3位「On a Slow Boat to China」(アルバム:Sonny Rollins With the Modern Jazz Quartet)
■曲名:On a Slow Boat to China
■曲名邦題:スロー・ボート・トゥ・チャイナ
■アルバム名:Sonny Rollins With the Modern Jazz Quartet
■アルバム名邦題:ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット
■動画リンク:「On a Slow Boat to China」
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この曲は村上春樹の小説のタイトルにもなっています。
有名な話ですが、村上春樹は元々ジャズを流すお店をやっていました。
つまりジャズのプロだった彼が、自分の本のタイトルにしてもいいと思ったぐらいの演奏だということです。
この頃ロリンズは、まだ駆け出しのサックス奏者でした。
ちなみにアルバムタイトルでは「Modern Jazz Quartet」とありますが、この曲では共演していません。
この時の彼はマイルス・デイビス(Miles Davis)のお膳立てで、初レコーディングを経験して間もない頃でした。
それにもかかわらず、既に彼の個性が確立しています。
先程のモリタートと同じタイプの演奏といえるかもしれません。
この曲が好ましいのは短さです。
ジャズとしては破格に短い2:48の中に、彼の魅力がぎっしり凝縮されています。
ロリンズの演奏を一言で表すと「究極の鼻歌」です。
この演奏などはその典型で、気負った様子がなく、自然に出てきたメロディがたまたま名演になったかのような趣きがあります。
そういうところがロリンズの天才性です。演奏に苦心の跡が見られません。
簡単なようでいて、不思議と表現の深みまで獲得しています。
この曲については過去に別ブログでも取り上げています。お時間のある方はどうぞ。
Sonny Rollins「On a Slow Boat to China」(アルバム:Sonny Rollins with M.J.Q)
4位「There’s No Business Like Show Business」(アルバム:Work Time)
■曲名:There’s No Business Like Show Business
■曲名邦題:ショウほど素敵な商売はない
■アルバム名:Work Time
■アルバム名邦題:ワークタイム
■動画リンク:「There’s No Business Like Show Business」
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この曲は、私がロリンズにはまるきっかけとなった曲です。
私は最初、ロリンズの良さを理解できませんでした。
ロリンズの演奏は、テクニック的にはそれほど難しくないかもしれません。
しかし彼の音楽には単純なことしかやっていなさそうなのに、誰も真似ができないようなところがあります。
私は昔良さを理解できなかったので、この曲をひたすら何度も聞いてみることにしました。
当時私はロックを中心に聞いていて、他にも聞かなければいけないアルバムがたくさんありました。
つまみ食いジャンルの音楽に、いつまでも足止めをくらう訳にはいかないと、少し焦り気味だったかもしれません。
しぶしぶ繰り返し聞いていたある日、みんなが言っているのはこういうことかと、一瞬にして理解できたような気がしました。
ロリンズはタイム間隔がかなり独特で、フレーズを伸び縮みさせたり、後ノリからキャッチアップしたり、まさに自由自在です。
メトロノームのようなタイム間隔では収まりきらないクセのようなものが、細部にまで宿っています。
私は当時聞きすぎて、今でもこの曲のロリンズのアドリブを鼻歌で歌えます。
しかしこの曲を聞きながら鼻歌を歌っても、なかなかタイミングが合わせられません。
よく楽器の練習をしている人が、耳コピをして初めて曲の真価が分かったと言っていることがありますが、それに似ているかもしれません。
5位「Solitude」(アルバム:Way Out West)
■曲名:Solitude
■曲名邦題:ソリチュード
■アルバム名:Way Out West
■アルバム名邦題:ウェイ・アウト・ウエスト
■動画リンク:「Solitude」
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デューク・エリントン(Duke Ellington)が作曲した曲です。
スタンダードナンバーともいえる曲ですが、本来それほど歌いやすい曲ではありません。
それにもかかわらずザ・ザ(The The)など、ロック・ポップス系の人にも意外とカバーされています。
ジャズプレイヤーにもカバーされていますが、その頂点の1つが、ロリンズのこのバージョンです。
ロリンズのバラードはこれしかランキングに入れていませんが、他にも名曲がたくさんあります。
おしゃれなジャズバーみたいな感じにしたくないという思いから、無意識に除外してしまったかもしれません。
ロリンズはアップテンポやミディアムテンポの曲ではとても雄弁ですが、スローでは寡黙で朴訥な面が表れることがあります。
逆にいえばメリハリがあるといえるかもしれません。
このアルバムはピアノが参加していない、いわゆるピアノレスのアルバムです。
音のすき間を埋めるピアノがいない分だけ、朴訥感が際立っています。
この曲はバラードですが、甘いだけの演奏にはなっていません。
ロリンズの素朴な魅力を楽しめる曲です。
6位「Way You Look Tonight」(アルバム:Thelonious Monk & Sonny Rollins)
■曲名:Way You Look Tonight
■曲名邦題:今宵の君は
■アルバム名:Thelonious Monk & Sonny Rollins
■アルバム名邦題:セロニアス・モンク・アンド・ソニー・ロリンズ
■動画リンク:「Way You Look Tonight」
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このアルバムはセロニアス・モンクとの共同名義です。
ロリンズはセロニアス・モンクと相性が良く、このアルバムに限らず数多くの傑作で共演しています。
ロリンズの傑作が生まれやすいパターンを考えてみました。
・ピアノレス
・ピアノやギターが饒舌すぎないこと
・攻めに強いドラムとの共演
ロリンズは自分以外に歌いすぎる人がいる状況を、苦手にしているのではないかと思うことがあります。
自分は雄弁に語るけれど、相手には一歩引いてもらって、聞き上手になってもらいたいタイプなのかもしれません。
そういえばロリンズがクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)のグループに加入した時も、同じ雄弁系のクリフォードがいたせいか、ロリンズは精彩を欠いていました。
しかしセロニアス・モンクは、音のすき間を埋めてしまうタイプのピアニストではありません。
この曲ではロリンズの背後でバッキングらしき演奏をしていますが、モンク流のヘタウマな演奏です。
そもそもモンクとは、音の間合いの妙で聞かせてくれるタイプの人です。
漫才でいうと、独特の間合いがあるボケ担当の人みたいなものです。
最良のボケ人材を得て、ロリンズが思う存分好きにブロウしていることが、この曲の勝因だと思います。
7位「I’ve Told Ev’ry Little Star」(アルバム:Sonny Rollins and the Contemporary Leaders)
■曲名:I’ve Told Ev’ry Little Star
■曲名邦題:アイヴ・トールド・エヴリー・リトル・スター
■アルバム名:Sonny Rollins and the Contemporary Leaders
■アルバム名邦題:コンテンポラリー・リーダーズ
■動画リンク:「I’ve Told Ev’ry Little Star」
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ロリンズの演奏では、男性的でおおからと表現されることが多いように思います。
またユーモラスと言われることもあります。
さしずめこの曲などはその筆頭の1曲でしょう。
まず出だしのテーマ部分から、ゆるいコントのBGMになりそうな風情が漂っています。
このアルバムは「Sonny Rollins and the Contemporary Leaders」つまり、「ロリンズと現代のリーダーたち」というタイトルです。
「Contemporary」とはこのアルバムを発売したレーベルの名前です。
同時に、バーニー・ケッセル(Barney Kessel)、シェリー・マン(Shelly Manne)、ハンプトン・ホーズ((Hampton Hawes)など、このアルバムで共演したビックネーム達のことも指しています。
しかしロリンズはそんなことお構いなしです。
こんな脱力の極みのような演奏をして、アルバムの冒頭に置いています。
心なしかジャケットも、ややドヤ顔に見えてしまうのは気のせいでしょうか。
8位「You Stepped Out of a Dream」(アルバム:Sonny Rollins, Vol.2)
■曲名:You Stepped Out of a Dream
■曲名邦題:ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム
■アルバム名:Sonny Rollins, Vol.2
■アルバム名邦題:ソニー・ロリンズ Vol.2
■動画リンク:「You Stepped Out of a Dream」
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このアルバムはロリンズの中でも代表作の1つと言われています。
収録された曲はどれもすばらしい演奏ばかりで、「ホワイ・ドント・アイ(Why Don’t I)」など、他にも名曲が目白押しです。
レーベルはBlue Noteです。
Blue Noteは手がたいところがあって、収録する曲や録音、アルバムジャケットなどにも手を抜きません。
ちなみにジョー・ジャクソン(Joe Jackson)も「ボディ・アンド・ソウル(Body & Soul)」というアルバムで、このジャケットを真似ています。
このアルバムには先程挙げた成功の3つの要因の内、2つが含まれています。
セロニアス・モンクとの共演と、攻めに強いドラムの存在です。
この曲のドラムは、アート・ブレイキー(Art Blakey)です。
ブレイキーは、単純とかワンパターンとか無駄に派手だとか言われることがあります。
確かにエルヴィン・ジョーンズのような才気とか、新しい感覚は感じられません。
しかしブレイキーには、まるでチームを鼓舞して、攻めろと後押しをするような闘将みたいなところがあります。
細かいところですが、私は3:37からのブレイキーの演奏がすばらしいと思います。
古いタイプのドラマーみたいに言う人もいますが、意外と懐が深い人で、細かい気配りで共演者をうまく盛り立てていくようなところがあります。
ブレイキーの献身的なプッシュが、この名演を支えています。
他にはJ・J・ジョンソン(J.J.Johnson)のトロンボーンが、ところどころでロリンズに絡んでいて、とても効果的です。
9位「Brown Skin Girl」(アルバム:What’s New?)
■曲名:Brown Skin Girl
■曲名邦題:ブラウンスキン・ガール
■アルバム名:What’s New?
■アルバム名邦題:ホワッツ・ニュー
■動画リンク:Brown Skin Girl」
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ここからはジャズ以外の人にもアピールできる曲を選んでみました。
ジャズファンの方も、もう少しだけお付き合いください。
この曲はラテンっぽい曲です。
このアルバムの少し前にロリンズは、一度ジャズ界から引退してしまいます。
絶頂期の引退は多くの人に惜しまれました。
陽性の演奏から想像しがたいかもしれませんが、ロリンズは意外と繊細で求道的な人です。
神秘サークルの薔薇十字会に入会したり、禅やヨガをやったりなど、常に自分を見つめ直そうとしている人です。
その彼が2年ぶりに復活して、リリースされたのがこのアルバムです。
心なしかふっきれたような明るい印象を受けます。
ここでのロリンズの演奏は、いわゆるジャズっぽいものではありません。
しかし伸びやかなこの曲の演奏は、天衣無縫なロリンズの持ち味そのままです。まさに無勝手流ロリンズの誕生です。
私はロックを中心に聞くリスナーですが、一方でジャズファンでもあります。
昔あるジャズファンと熱く語った後に、本来はロックファンだと言ったところ、とても残念そうなリアクションがありました。
ただ私のような本来は異ジャンルの人が、ジャズを紹介する意義もあるのではないかと思います。
この曲のようなロリンズの魅力は、ジャズに忠実な人ほど素通りしてしまうかもしれません。
私は私なりの方法で、ジャズの魅力をお伝えしていきたいと思っています。
10位「The Night Has a Thousand Eyes」(アルバム:What’s New?)
■曲名:The Night Has a Thousand Eyes
■曲名邦題:夜は千の目を持つ
■アルバム名:What’s New?
■アルバム名邦題:ホワッツ・ニュー
■動画リンク:「The Night Has a Thousand Eyes」
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当初私は、アルバムから1曲ずつという制約を設けていました。
というのは、私が持っているロリンズのアルバムは40枚以上で、しかも傑作ぞろいですから、そういう風に決めてしまわないと紹介しきれないと思ったからです。
しかしこのアルバムからは、どうしても2曲選びたくなりました。
この曲はボッサジャズとかジャズサンバみたいな演奏です。
ジャズファンからは素通りされがちなアルバムですが、私は隠れた名盤ではないかと思っています。
この曲ではジム・ホール(Jim Hall)が大活躍しています。
ジム・ホールはやろうと思えばワイルドな演奏もできますが、引きの美学を持つ趣味の良いギタリストです。
一方ロリンズも快調で、天真爛漫な歌心が爆発しています。
ちなみにロリンズは後年、ローリング・ストーンズ(The Rolling Stone)の名曲「友を待つ(Waiting On A Friend)」でも、歌心あふれる演奏を残しています。
当時曲にサックスが必要となった時、ミック・ジャガー(Mick Jagger)がチャーリー・ワッツに、誰がジャズテナーで1番か尋ねたのだそうです。
チャーリーは呼べるはずがないと思いながらもソニー・ロリンズだと伝えたところ、後日レコーディングにロリンズが来て驚いたという逸話があります。
チャーリー・ワッツも憧れたロリンズの圧倒的な歌心をお楽しみください。