今回はアート・ブレイキーのランキングを作成しました。
選曲にあたっては、以下の3点に留意しました。
・演奏より楽曲の魅力を重視
・熱気のある曲に偏らない
・私的名曲を多め
熱気はジャズの魅力の1つです
しかし熱気だけに頼った演奏は、今の時代に合わなくなってきているかもしれません。
そもそもブレイキーは、豪快一辺倒の人ではありませんし。
ジャズを体現する男の演奏をご堪能ください。
- 1 1位「Split Kick」(アルバム:A Night at Birdland Vol. 1)
- 2 2位「Are You Real」(アルバム:Moanin’)
- 3 3位「Children of the Night」(アルバム:Mosaic)
- 4 4位「Like Someone in Love」(アルバム:Au Club St Germain, Vol.2)
- 5 5位「Pensativa」(アルバム:Free for All)
- 6 6位「Along Came Betty」(アルバム:Moanin’)
- 7 7位「Off the Wal」(アルバム:A Night in Tunisia)
- 8 8位「Moanin’」(アルバム:Moanin’)
- 9 9位「Gone with the Wind」(アルバム:At the Cafe Bohemia, Vol. 2)
- 10 10位「Obirin African」(アルバム:The African Beat)
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1位「Split Kick」(アルバム:A Night at Birdland Vol. 1)
■曲名:Split Kick
■曲名邦題:スプリット・キック
■アルバム名:A Night at Birdland Vol. 1
■アルバム名邦題:バードランドの夜 Vol.1
■動画リンク:「Split Kick」
とはいえ、ブレイキーの熱も感じていただきたいと思います。
ハードバップ・ジャズは、このアルバムから始まったと言われています。
それより前は一部の血気盛んな若いジャズメンが、ビバップというスタイルで演奏していました。
ビバップはアドリブのスリルはあるけれど、表現の幅広さに限界が感じられるスタイルでした。
刹那的なアドリブに依存したアヴァンギャルドな音楽だったのですね。
それに対してハードバップは、より曲のテンポを落として、音楽的ふくらみを持たそうとしました。
今ジャズと言われている音楽の多くは、ハードバップ・ジャズです。
アルト・サックスのルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)、トランペットのクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の演奏には、新しい音楽を始めようとする気概を感じますね。
ピー・ウィー・マーケットの紹介の後にテーマのメロディが始まります。
原点にして最高峰といえる決定的名演です。
2位「Are You Real」(アルバム:Moanin’)
■曲名:Are You Real
■曲名邦題:アー・ユー・リアル
■アルバム名:Moanin’
■アルバム名邦題:モーニン
■動画リンク:「Are You Real」
私は高校生まではお金がなく、ジャズまで手が回りませんでした。
バイトしまくって買っていたのはロックのCDばかりで、ジャズのCDを掘り下げるようになったのは大学からでした。
このアルバムは高校までに所有していた数少ないジャズのアルバム。
当時何度聞いたか分かりません。
若い頃の刷り込みはすごいもので、それからブレイキーのどんな名盤を聞いても、これを超えているとは思えませんでした。
今回他のアルバムを聞きなおしましたが、やはりこれが一番だと思います。
ただ「ドラム・サンダー組曲(The Drum Thunder Suite)は、いつも飛ばして聞いていますけどね。
高校生の私を惹きつけたのは、アドリブではなく曲の魅力だったと思います。
これからジャズを聞き始める方は、まず楽曲そのものの魅力に注目して、それから演奏の魅力に気付くという順序がいいかもしれません。
3位「Children of the Night」(アルバム:Mosaic)
■曲名:Children of the Night
■曲名邦題:チルドレン・オブ・ザ・ナイト
■アルバム名:Mosaic
■アルバム名邦題:モザイク
■動画リンク:「Children of the Night」
その後金銭的に余裕ができると、私はジャズのアルバムを買いまくりました。
すると今度はあまりに買いまくりすぎて、じっくり聞き込む余裕はありませんでした。
ブレイキーは良さを理解するのが難しい音楽ではありません。
既に「Moanin’」を聞き狂っていたせいか、自分でも分かってつもりになっていました。
そういう時に出会ったのがこのアルバムです。
最初に聞いた時に、自分の知っているブレイキーとは少し違うと感じました。
この当時のバンドはホーンの三管でした。メンバーは以下の通りです。
フレディ・ハバード(Freddie Hubbard):トランペット
ウェイン・ショーター(Wayne Shorter):テナーサックス
カーティス・フラー(Curtis Fuller):トロンボーン
豪華なメンバーですが、以前とは少し違ったクールな魅力を持った人たちです。
またピアノのシダー・ウォルトン(Cedar Walton)もハードバップ系のピアニストですが、コテコテなタイプではありません。
当時聞かなければいけないCDが積み上がっていく中で、私はあえて立ち止まってこのアルバムを聞いたものです。
中でもこの曲が一番好きです。
ブレイキーは熱気ばかりではないという着眼点は、その時の経験から生まれました。
4位「Like Someone in Love」(アルバム:Au Club St Germain, Vol.2)
■曲名:Like Someone in Love
■曲名邦題:ライク・サムワン・イン・ラブ
■アルバム名:Au Club St Germain, Vol.2
■アルバム名邦題:サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ Vol.2
■動画リンク:「Like Someone in Love」
高揚感のあるファンキー路線のアルバムです。
数ある彼らのライブアルバムでも「A Night at Birdland」と並ぶ人気作です。
しかし通して聞くには長すぎることもあって、余り聞き返す気にはなれませんでした。
まるで分厚いステーキが美味しいと分かっているけれど、こってりしすぎるのに腰が引けているみたいなものです。
そこでこのアルバムは、サイコロステーキ的に1曲ずつ聞き返すようにしました。
よく聞いてみると、スローやミディアムにも良い曲があります。
中でも私が繰り返して聞く機会が多いのはこの曲。
イントロのボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)のピアノの導かれて、リー・モーガン(Lee Morgan)とベニー・ゴルソン(Benny Golson)が、リラックスした演奏を繰り広げています。
ただ中でも私が一番好きなのは、7:17からのボビー・ティモンズのピアノソロ。
あまりにもソウルフルなこのピアノを聞きたくて、その部分だけを何度も聞き返すことがあります。
5位「Pensativa」(アルバム:Free for All)
■曲名:Pensativa
■曲名邦題:ペンサティヴァ
■アルバム名:Free for All
■アルバム名邦題:フリー・フォー・オール
■動画リンク:「Pensativa」
このアルバムは、彼らのアルバムの中でも屈指の人気作です。
今回私は熱気だけでブレイキーを語るまいというテーマです。
しかしこのアルバムのタイトル曲などは、取り上げておくべきではないかと迷いました。
フリーキーに走らずとも、聞いているだけで熱くなる演奏です。
しかし今回は「Pensativa」の方を選びました。
こちらはハンク・モブレイ(Hank Mobley)の「リカード・ボサノヴァ(Recado Bossa Nova)」みたいな曲です。
ブレイキーはいかにもボサノヴァが似合わなそうですが、意外と無難にこなしています
ブレイキーはマイルス・デイヴィス(Miles Davis)と違って、自分の考えている音楽をメンバーに強いるタイプではありません。
むしろメンバーの意見を吸い上げて、それをバックアップしようとするタイプ。
仕事でいえば部下に権限を譲渡して、後方支援する上司みたいな人かもしれません。
この曲でも部下が持ってきたボサノヴァ案件を、献身的にサポートしていますね。
上司にしたいジャズメンのナンバーワンです。
6位「Along Came Betty」(アルバム:Moanin’)
■曲名:Along Came Betty
■曲名邦題:アロング・ケイム・ベティ
■アルバム名:Moanin’
■アルバム名邦題:モーニン
■動画リンク:「Along Came Betty」
さて私が青春時代に聞き狂ったモーニンからの曲です。
この曲はベニー・ゴルソンが書いた曲です。
ベニー・ゴルソンはサックス奏者としては、評価があまり高くありません。
ベニーがジャズファンから評価されているのは、主に彼の作曲面においてです。
この曲も彼の作ですし、他にはジャズスタンダードになっている「ウィスパー・ノット(Whisper Not)」などが有名です。
しかしアレンジや音楽監督としては、それ以上の働きをしているかもしれません。
彼独特のハーモニーは「ゴルソン・ハーモニー」と呼ばれています。
この曲の出だしはまさしく「ゴルソン・ハーモニー」の典型例ですが、後半のアレンジでも良い仕事をしていますね。
所々でブレイキーの「ナイアガラ・ロール」を入れて、ボスの見せ場もつくっています。
当時この人は名番頭といえる存在でした。
7位「Off the Wal」(アルバム:A Night in Tunisia)
■曲名:Off the Wal
■曲名邦題:オフ・ザ・ウォール
■アルバム名:A Night in Tunisia
■アルバム名邦題:チュニジアの夜
■動画リンク:「Off the Wal」
CDを沢山買っている人は、同じCDを二度買ってしまったことはないでしょうか。
私はあります。
自分では把握しているつもりでも、思い違いをするものです。
このCDを買った時は、そこから再逆転がありました。
つまり間違えて同じCDを買ってしまったと思ったら、その後違うアルバムだと判明して、胸をなでおろしたというわけです。
天国→地獄→天国という展開でしょうか。
ブレイキーには「A Night in Tunisia」というアルバムが2枚あります。
一般的にはこのアルバムではない方が有名で、そちらにも「ソー・タイアード (So Tired)」という名演がありますが、どちらにしようか迷いました。
ちなみにこの頃も三管ですが、先程取り上げた時期とはメンバーが違います。
ビル・ハードマン(Bill Hardman):トランペット
ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin):テナーサックス
ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean):アルトサックス
有名曲ではありませんが、私はこの曲のメロディが好みです。
8位「Moanin’」(アルバム:Moanin’)
■曲名:Moanin’
■曲名邦題:モーニン
■アルバム名:Moanin’
■アルバム名邦題:モーニン
■動画リンク:「Moanin’」
さてこの曲をこの順位に置いていいのかと思われるかもしれません。
知名度でいえばブレイキーの曲の中でもダントツの人気曲です。
しかしビートルズ(The Beatles)のランキングで、イエスタデイ(Yesterday)を1位に挙げるような気恥しさを感じてしまい、この順位にしました。
ブレイキーはジャズファンからすると当たり前すぎて、話題になりにくい面があります。
この人の話題が出る時は、誰々はブレイキーのバンド出身ということばかりです。
またブレイキーはマイルスと違って、確固たる音楽的なビジョンを持っていなさそうに見えます。
良くも悪くも現場監督的といいますか。
しかしこの人はフュージョン全盛期にも、頑固に昔ながらのハードバップを守り続けてきました。
頑固な職人気質の人かもしれません。
不遇の1970年代を経て、その後ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)という俊英をバンドに迎え入れ、晩年もしぶとく健在ぶりを示しました。
ただ時代に迎合しようと思えばできたはずで、やせ我慢もあったはず。
アルバムを発表する間隔が開きライブに呼ばれなくなった時期は、心中穏やかではなかったと思います。
一途なジャズに打ち込んだ頑固親父の代表曲をとくとご堪能ください。
9位「Gone with the Wind」(アルバム:At the Cafe Bohemia, Vol. 2)
■曲名:Gone with the Wind
■曲名邦題:風とともに去りぬ
■アルバム名:At the Cafe Bohemia, Vol. 2
■アルバム名邦題:カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ Vol.2
■動画リンク:「Gone with the Wind」
この頃はケニー・ドーハム(Kenny Dorham)とハンク・モブレイという、地味な2人がフロントでした。
申し訳ありませんが、ツヤ、ハリ、キレに欠ける感はいなめません。
しかし味わいならまかせておけという2人です。
ハードバップという音楽は、ビバップのように天才的なひらめきが求められない音楽です。
またそれほど個性的である必要もありません。
幸い日本のジャズファンは、似たようなB級ブレイヤーを聞き比べて、そのわずかな違いを聞き分けて、小さな喜びを見出す人ばかりです。
先程の2人も、そういうジャズファンに愛される存在です。
ちなみにケニー・ドーハムはビバップの頃から活躍している人ですが、ビバップでは持ち味を出せませんでした。
マイルス・デイヴィスの自伝でも、当時のプレイを酷評されていたように記憶しています。
しかしハードバップでは話が別です。
それがむしろいいんじゃないかと言う人も少なくありません。
フレーズのよたれ方とか、出だしの歯切れの悪さとか、そういうことすら味わいと認識してしまうジャズファンは、私を含めて大勢います(笑)
そういう観点でこのアルバムを聞くと、ハードバップのおいしいところが詰まっている演奏ばかりです。
10位「Obirin African」(アルバム:The African Beat)
■曲名:Obirin African
■曲名邦題:オビリン・アフリカン
■アルバム名:The African Beat
■アルバム名邦題:ジ・アフリカン・ビート
■動画リンク:「Obirin African」
最後に少し変わった曲を取り上げます。
この人はハードバップの保守本流みたいな人ですが、民族音楽系のアルバムも数枚リリースしています。
従来のジャズ・ジャーナリズムでは取り上げられることが稀ですが、触れずにこの人は語れません。
1曲だけご紹介しておきましょう。
レーベルはブルーノート・レコード(Blue Note Records)ですが、この曲はジャズではありません。
ブルーノートには他にもサブー・マルティネス(Sabu Martinez)の「パロ・コンゴ(Palo Congo)」など、ジャズ以外のアルバムがあります。
さてこの曲でフルートを吹いているのは、ユセフ・ラティーフ(Yusef Lateef)という人。
彼はハードバップ畑の人ですが、少しストレンジな感覚を持ったプレイヤーです。
最後に私はいつも記事を書く時、ウィキペディアを読んでから書き始めていています。
通常ウィキペディアの記事はそれほどおもしろいわけではありませんが、ブレイキーのウィキペディアは興味深く読みました。
特に「人物」という章は、読んでいて胸が熱くなりました。
私も日本との関係については触れようと思っていましたが、代わりに以下で読むことをおすすめいたします。
この記事では熱さ一辺倒にならないようしたつもりですが、やはり熱い話になってしまうのですね。
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