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スタン・ゲッツ(Stan Getz)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はスタン・ゲッツのランキングを作成しました。

この記事では演奏ではなく、楽曲に焦点を当てて選曲をしてみました。

半分はボサノヴァの曲ですが、それ以外でもくつろぎを重視して選曲しています。

 

1位「Cherokee」(アルバム:Hamp and Getz)

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■曲名:Cherokee
■曲名邦題:チェロキー
■アルバム名:Hamp and Getz(1955年)
■アルバム名邦題:ハンプ&ゲッツ
■動画リンク:「Cherokee」

このアルバムはそれほど知名度は高くありませんが、私は隠れ名盤だと思います。

特にこの曲の冒頭ではゲッツのテナー・サックスが聞きもので、どこまでも登りつめていくかのようです。

1950年代は以前に比べてホットな演奏が増えましたが、その最良の演奏といえるかもしれません。

このアルバムは、ヴィブラフォン奏者のライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)との共同名義です。

ライオネル・ハンプトンは、ジャズ・スタンダード「スターダスト(Stardust)」の作者として有名な人。

スローの「スターダスト」とは違って、ライオネル・ハンプトンは熱気を感じる演奏をしていますね。

特に6分すぎから切り込む高速ヴィブラフォンが聞きものです。

 

2位「Grandfather’s Waltz」(アルバム:Stan Getz & Bill Evans)

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■曲名:Grandfather’s Waltz
■曲名邦題:グランドファーザーズ・ワルツ
■アルバム名:Stan Getz & Bill Evans(1973年)
■アルバム名邦題:スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス
■動画リンク:「Grandfather’s Waltz」

こちらは、ビル・エバンス(Bill Evans)との共同名義です。

イントロはいつものビル・エバンスらしく、パラパラと散文的に弾いていますね。

1:16になってようやくサックスが始まりますが、出だしのすするような入り方がゲッツらしいです。

この曲はとにかくメロディが魅力です。

ビル・エバンスは「ワルツ・フォー・デビイ(Waltz for Debby)」という有名な曲を書いていますが、こちらはビルが書いた曲ではありません。

ラース・ファーネロフというスウェーデンのトランペット奏者が書いた曲です。

ゲッツはこの曲が気に入ったのか「Getz/Gilberto #2」でも演奏しています。

そちらはゲイリー・バートン(Gary Burton)のヴィブラフォンがすばらしい演奏でした。

しかしこんな良い曲なのに、この2人以外にあまり取り上げていないのは不思議に思えます。

 

3位「Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)」(アルバム:Getz/Gilberto (with Joao Gilberto))

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■曲名:Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)
■曲名邦題:コルコヴァード
■アルバム名:Getz/Gilberto (with Joao Gilberto)(1963年)
■アルバム名邦題:ゲッツ/ジルベルト
■動画リンク:「Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)」

この曲はアストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)のボーカルから始まりますが、彼女はこの日が初めてのレコーディングでした。

当時の彼女はジョアンの妻という立場で、つまり素人にすぎませんでした。

たまたまスタジオに同行した彼女に対し、試しに歌ってみるようにすすめたら、すばらしい歌だったのでそのまま採用されたと言われています。

ただ偶然の産物かどうかは、判断が難しいかもしれません。

アストラッドは元々歌手志望で、最初から歌う気満々でスタジオに行ったそうです。

彼女はスタジオで歌いたいと言いました。

一方それを聞いたプロデューサーのクリード・テイラー(Creed Taylor)も、アメリカ受けを考えると、英語の歌があった方がいいと思っていました。

つまり主役のゲッツやジョアンとは関係ないところで、2人の思惑が一致してこの曲が生まれたというのが真相のようです。

アストラッドについては、以下の記事を書きましたので、興味のある方はぜひどうぞ。

アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)の名曲名盤10選

 

4位「Chega de Saudade」(アルバム:Getz/Gilberto ’76 (with Joao Gilberto))

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■曲名:Chega de Saudade
■曲名邦題:想いあふれて
■アルバム名:Getz/Gilberto ’76 (with Joao Gilberto)(2016年)
■アルバム名邦題:ゲッツ/ジルベルト’76
■動画リンク:「Chega de Saudade」

この曲は単なるボサノヴァの中の1曲ではなく、歴史的な価値のある曲です。

この曲は1958年に、ボサノヴァとして最初にレコーディングされた曲だと言われています。

つまり現在のボサノヴァの曲は、この曲から始まったといえるかもしれません。

私はこの曲が全てのボサノヴァの曲の中で一番好きで、この曲が入っているCDは無条件に買ってしまいます。

さて先程ご紹介した「Getz/Gilberto」は世界的な大ヒットを記録して、ゲッツはグラミー賞4部門受賞しました。

ただゲッツは歌もののボサノヴァでは良い演奏をしていないと言う人も多く、私も一部同意するところがあります。

ただ中にはこの曲のように、すばらしい演奏もあります。

私が思うボサノヴァ共演時の禁じ手は、濃厚すぎる、雄弁すぎる、ビッグブロウだと思いますが、ここではその地雷を避けて演奏していますね。

 

5位「E Luxo So (Ary Barroso)」(アルバム:Jazz Samba (with Charlie Byrd))

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■曲名:E Luxo So (Ary Barroso)
■曲名邦題:エ・ルーショ・ソ
■アルバム名:Jazz Samba (with Charlie Byrd)(1962年)
■アルバム名邦題:ジャズ・サンバ
■動画リンク:「E Luxo So (Ary Barroso)」

年配のジャズ・ファンほどゲッツのボサノヴァが好きではない傾向があるような気がします。

私はジャズではなく、高級イージーリスニングと考えたらいいと思います。

イージーリスニングにはイージーリスニングなりの良さがありますし。

ちなみに私はゲッツのアドリブでは、1950年前後が一番すごいと思っています。

今聞いても奇跡的にフレーズが古びていません。

ただその頃の代表作「ザ・コンプリート・ルースト・セッション(Complete Roost Recordings)」などを聞くにつれ、当時既にこういう演奏をする素養があったように思います。

たとえば当時の決定的名演と言われている「イエスタデイズ(Yesterdays)」という曲があります。

Stan Getz Quartet – Yesterdays

陰影に富んだメロディアスな演奏が絶品です。

当時のリスナーはこの曲を高級イージーリスニングとして聞いていたかもしれません。

元々この人はスムースで美しいメロディを吹かせたら、当代随一の人です。

イージーリスニングっぽい演奏も、悪かろうはずがありません。

 

6位「Menina Moca (Young Lady)」(アルバム:Stan Getz with Guest Artist Laurindo Almeida)

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■曲名:Menina Moca (Young Lady)
■曲名邦題:若い娘
■アルバム名:Stan Getz with Guest Artist Laurindo Almeida(1966年)
■アルバム名邦題:ゲッツ/アルメイダ
■動画リンク:「Menina Moca (Young Lady)」

この曲はメロディが際立っています。

ただ私はこの曲を他にダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Gojkovic)の「Samba Tzigane」でしか聞いたことがありません。

そもそもどういう曲か分からないので調べてみたところ、こういう記事が見つかりました。

小娘Menina Moça〜イパネマの娘よりも人気があったという“忘れられた”ボサノヴァの名曲

上のサイトによると、この曲はボサノヴァ内の派閥争いによって、忘れられた名曲になったのだそうです。

一方スタン・ゲッツは1957年には7枚、1958年には5枚のアルバムを出していますから、かなりの売れっ子だったことが分かります

当時彼は麻薬を買うために精力的に仕事をしていましたが、それでもお金が足りませんでした。

1954年には注射用のモルヒネを入手しようと強盗して有罪判決を受けていますし、その後もヘロイン中毒で実刑判決を受けています。

しかし1959年と1960年はレコーディングがありません。

麻薬トラブルに明け暮れた1950年代の終わり頃、彼は北欧に移住して隠遁生活を送っていました。

それが1959年と1960年というわけです。

当時は彼自身がこの曲のように忘れられかけた存在だったのですね。

 

7位「Just One of Those Things」(アルバム:The Best of Two Worlds)

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■曲名:Just One of Those Things
■曲名邦題:ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス
■アルバム名:The Best of Two Worlds(1975年)
■アルバム名邦題:ゲッツ・ジルベルト・アゲイン
■動画リンク:「Just One of Those Things」

これも「Getz/Gilberto」の続編アルバムで、ジョアン・ジルベルトも参加しています。

前作「Getz/Gilberto」のレコーディング中、2人はかなり険悪だった言われています。

ジョアンはアントニオ・カルロス・ジョビンに、罵倒した内容を翻訳して伝えるよう依頼したところ、困ったジョビンは「あなたのテナーはすばらしい」と伝えました。

しかしゲッツはジョアンの様子を見て「彼はそう言っていないようだね」と答えたという有名な逸話があります。

さてそうした経緯をふまえてジャケットを見ると、真ん中のゲッツと右にいるジョアンの接触部分が少し不自然ではないでしょうか。

今度は裏ジャケも見てみましょう。

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ゲッツがジョアンの方に不自然に寄りかかっていますが、これはおそらく合成写真なのでしょう。

もう一つ私が長年不思議に思っていることがあります。

なぜゲッツはジョアンと共演すると、不用意に大味なブロウをしてしまうのか。

おそらくジョアンは自分の後にゲッツが、曲の雰囲気をぶち壊す大きな音で割り込んでくるのが気に食わなかったのかもしれません。

そのせいで多くのブラジル音楽ファンからも、ゲッツはボサノヴァを分かっていないと非難轟々です。

もしかしたらジョアンとの関係悪化が、無神経な演奏に影響しているかもしれません。

しかしこの曲などはいかがでしょうか。

1:28から入り方こそ少し唐突ですが、ミウシャ(Miucha)ことエロイザ・ブアルキ(Heloisa Buarque)のボーカルに対して、いい感じに絡んでいます。

こういうのが本来のゲッツの演奏だと、私がドヤ顔するのもなんですが。。。

 

8位「Liz-Anne」(アルバム:Cal Tjader-Stan Getz Sextet)

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■曲名:Liz-Anne
■曲名邦題:リズ・アン
■アルバム名:Cal Tjader-Stan Getz Sextet(1958年)
■アルバム名邦題:カル・ジェイダー-スタン・ゲッツ・セクステット
■動画リンク:「Liz-Anne」

ゲッツ若い頃、クールな演奏スタイルで名声をほしいままにしていました。

その後彼は1952年ぐらいから、より温かみのある演奏をするようになりました。

その過程で彼は様々な人と共演し、音楽性の幅を広げることに成功しています。

1950年代の主だった共演者を挙げておきましょう。

・ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)
・ビル・エバンス(Bill Evans)
・オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)
・ジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)
・チェット・ベイカー(Chet Baker)
・J・J・ジョンソン(J.J.Johnson)
・ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)

中でも特に異色といえる共演相手が、カル・ジェイダーです。

カル・ジェイダーはラテン系のヴィブラフォン奏者で、メインストリームのジャズとは少しタイプが違うかもしれません。

しかしこの曲などはとてもリラックスしていて、とても良い演奏だと思います。

私はゲッツについて、すごいと思う演奏と好きな演奏がかなり異なります。

この曲とか「スタン・ゲッツ・プレイズ(Stan Getz Plays)」のくつろいだ演奏は、すごいといより好きな部類の演奏です。

 

9位「La Fiesta」(アルバム:Captain Marvel)

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■曲名:La Fiesta
■曲名邦題:ラ・フィエスタ
■アルバム名:Captain Marvel(1975年)
■アルバム名邦題:キャプテン・マーヴェル
■動画リンク:「La Fiesta」

リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever)でおなじみの曲です。

Chick Corea Return to Forever – La Fiesta

ゲッツのバージョンのメンバーは、リターン・トゥ・フォーエヴァーと3人かぶっています。

チック・コリア(Chick Corea)、スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)、アイアート・モレイラ(Airto Moreira)という中核の3人が同じです。

同じ曲をほぼ同じメンバーで演奏しているのですから、似ているのも当然かもしれません。

違いはジョー・ファレル(Joe Farrell)がゲッツになっていることと、こちらはドラムがトニー・ウィリアムス(Tony Williams)であるところです。

ゲッツは「スウィート・レイン(Sweet Rain)」で共演してから、チック・コリアと近しい関係にありました。

当時の新進気鋭の若手プレイヤーがお膳立てした中、ゲッツは力強くブロウしています。

ベテラン2人がホットで若手がクールですが、そのギャップもおもしろいです。

 

10位「First Song」(アルバム:People Time)

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■曲名:First Song
■曲名邦題:ファースト・ソング
■アルバム名:People Time(1991年)
■アルバム名邦題:ピープル・タイム
■動画リンク:「First Song」

彼は貧しい家庭に生まれ、早くから音楽の才能を発揮すると、次第にドラックに耽溺していきました。

ようやく麻薬中毒から脱すると、次にアルコール中毒になって、後年は癌と戦うことになりました。

甘美な演奏スタイルに比べて、ハードモードの人生だったかもしれません。

ちなみに小説家の村上春樹が、スタン・ゲッツの大ファンであることは有名な話です。

たびたび小説でゲッツの曲が登場していますし、評伝を翻訳するほどの傾倒ぶりです。

その本の中で村上春樹は、ゲッツの音楽についてこう書いています。

酒やクスリに溺れていても、ひとたびステージに上がれば自由自在な即興が冴えわたり、どんな楽曲も美しく演奏せずにはいられない。

フィッツジェラルドこそが小説であり、スタン・ゲッツこそがジャズであった

一方ゲッツは好き嫌いが分かれるプレイヤーかもしれません。

おそらく嫌いな人は良いのは分かるけど、腹に響いてこないと言いたいのだと思います。

確かに私もそう感じることがありますし。

ただ美しすぎる音楽は。えてしてそういうものだと思っていました。

しかし彼の遺作となったこの作品でのゲッツは、いつもとは様子が違うかもしれません。

この頃ゲッツは癌が進行して、既に末期状態になっていました。

このライブは1991年3月の演奏ですが、彼は同年6月6日に亡くなりました。

共演したピアニストのケニー・バロン(Kenny Barron)によると、この時のゲッツはギリギリの状態で演奏していたそうです。

ここには甘美な流麗さはありません。

しかしそれにもかかわらずこの演奏には、真に迫り無骨に訴えてくるものがあります。

曲名と真逆の悲痛なスワン・ソング。

最後の最後に彼の演奏は美しいだけでなく、凄みというラストピースが加わったようですね。

 

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