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チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)の名曲名盤5選+5【代表曲・隠れた名曲】

今回はチャールズ・ミンガスのランキングを作成しました。

5選と曲数こそ少な目ですが、トータルで1時間以上という長さです。

ただもっと聞きたい方のために、追加の5曲もご用意しました。

普通のジャズの枠に収まりきらない、スケールの大きな人だったと思います。

 

1位「Remember Rockefeller at Attica」(アルバム:Changes One)

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■曲名:Remember Rockefeller at Attica
■曲名邦題:アッティカ刑務所のロックフェラーを忘れるな!
■アルバム名:Changes One
■アルバム名邦題:チェンジズI
■動画リンク:「Remember Rockefeller at Attica」

彼はキャリアの全期間に渡って傑作を残しています。

ただ1970年代の作品は、従来のジャズ・ジャーナリズムでは軽視されがちかもしれません。

私は晩年の1974年から1977年の間が、彼の全盛期だと思っています。

ミンガスの音楽に苦手意識を持つ人は、音が整理されていない初期のイメージを引きずっている人が多いかもしれません。

加えて音楽に黒さはあっても、その黒さは必ずしもハードバップ的なものではなく、単純に楽しめる曲が少ないように感じられますし。

そういう方に聞いていただきたいのがこの曲です。

もしこの曲が気に入ったら、続編「チェンジズII(Changes Two)」も聞いてみてください。

このアルバムの特徴は、後にタッグを組むジョージ・アダムス(George Adams)とドン・プーレン(Don Pullen)が参加していること。

彼らは荒くダイナミックな演奏もできますが、ハードバップらしい演奏にも対応可能です。

曲名の「アッティカ刑務所のロックフェラーを忘れるな!」ですが、ある事件が背景にある曲です。

1971年アメリカのアッティカ刑務所で、環境の改善を求める暴動が発生しました。

それに対して当時の州知事ネルソン・ロックフェラーは州兵を派遣し、39名もの死者を出す大惨事になりました。

ただそうした予備知識なしでも、充分楽しめる曲ではないでしょうか。

 

2位「Pithecanthropus Erectus」(アルバム:Pithecanthropus Erectus)

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■曲名:Pithecanthropus Erectus
■曲名邦題:直立猿人
■アルバム名:Pithecanthropus Erectus
■アルバム名邦題:直立猿人
■動画リンク:「Pithecanthropus Erectus」

このアルバムは彼の最高傑作と呼ばれ、ジャズの名盤ランキングでは必ず上位に挙がります。

私は一番好きなアルバムですが、好き嫌いがはっきり分かれる作品のように思います。

世評が高く代表作と言われているので、大っぴらにつまらないと言い難い空気があるのかもしれません。

ミンガスを聞く醍醐味は、個々の演奏ではなくミンガス音楽を楽しむことかもしれません。

すばらしいソロもありますが、プレイヤーは第一にミンガスがやりたい音楽の一部として機能することが求められます。

このアルバムのメンバーをリストアップしておきましょう。

・アルト・サックス:ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)
・テナー・サックス:J.R.モンテローズ(J. R. Monterose)
・ピアノ:マル・ウォルドロン(Mal Waldron)

全員私の大好きなプレイヤーばかりですが、この曲に彼らの特徴が表れているかといえば、必ずしもそう思いません。

あくまで曲を構成する部分ではないでしょうか。

上記3名は普段はハードバップの人ですが、全員あまり器用なタイプではありません。

ただ器用ではない分、音やフレーズに説得力がある人ばかりです。

この曲では彼らの音に宿る重みが、ミンガス音楽の一部としてとても機能しています。

 

3位「Folk Forms, No. 1」(アルバム:Charles Mingus Presents Charles Mingus

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■曲名:Folk Forms, No. 1
■曲名邦題:フォーク・フォームス No.1
■アルバム名:Charles Mingus Presents Charles Mingus
■アルバム名邦題:ミンガス・プレゼンツ・ミンガス
■動画リンク:「Folk Forms, No. 1」

このアルバムでは「フォーバス知事の寓話(Original Faubus Fables)」が名演と呼ばれています。

その曲は、黒人学生の大学入学を拒否したフォーバス知事に対して抗議する内容の曲です。

リンクだけ貼っておきましょう。

Charles Mingus – Original Faubus Fables

その曲と並ぶ名演が、今回ご紹介した「Folk Forms, No. 1」です。

どちらの曲も最初は面を食らうかもしれません。

一般的なジャズは、各楽器が順番にソロを受け渡す構成になっています。

しかしこの曲ではテッド・カーソン(Ted Curson)とエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)が、ずっと絡み合って演奏していますから。

絡みのスリルを味わいたい曲です。

一般的にはドルフィーばかりが高く評価されていますが、私には両者互角に思えます。

ドルフィーはその後若死にしてしまいましたが、テッドはその後も「Plenty Of Horn」という名盤を残したりなど、息の長い活動を続けました。

さてこの曲はミンガスのベースも聞きものです。

彼の演奏の特徴は、きれいにベース・ラインを引っ張ったり、一定のリズムをキープすることだけではありません。

この曲でもリズムを刻んでいる箇所がありますが、それほどきれいなベースラインではありませんし。

しかしラフなグルーヴ感を生み出していて、この曲の骨太な骨格を形成しています。

猥雑でヤクザな魅力あふれる名演ではないでしょうか。

 

4位「Goodbye Pork Pie Hat」(アルバム:Mingus Ah Um)

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■曲名:Goodbye Pork Pie Hat
■曲名邦題:グッドバイ・ポーク・パイ・ハット
■アルバム名:Mingus Ah Um
■アルバム名邦題:ミンガス Ah Um
■動画リンク:「Goodbye Pork Pie Hat」

この曲はロックファンにも知られている曲です。

なぜならジェフ・ベック(Jeff Beck)とジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)の2人にカバーされているからです。

リンクを貼っておきましょう。

Jeff Beck – Pork Pie Hat

Joni Mitchell – Goodbye Pork Pie Hat

この曲はレスター・ヤング(Lester Young)に捧げられています。

「Pork Pie Hat」とは、レスターのトレードマークとなっている帽子のこと。

つまり「さようなら、レスター・ヤング」という意味です。

レスターの写真を掲載しておきましょう。

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上の写真で彼が被っている帽子が「ポーク・パイ・ハット」です。

この曲はレスターが亡くなったのと同じ1959年に書かれた追悼曲です。

そういえばレスター・ヤングも黒人差別に苦しめられてきた人でした。

演奏面では、アルト・サックスのジョン・ハンディ(John Handy)とテナー・サックスのブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)の二管が、憂いを見事表現しています。

 

5位「Cumbia & Jazz Fusion」(アルバム:Cumbia & Jazz Fusion)

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■曲名:Cumbia & Jazz Fusion
■曲名邦題:クンビア&ジャズ・フュージョン
■アルバム名:Cumbia & Jazz Fusion
■アルバム名邦題:クンビア&ジャズ・フュージョン
■動画リンク:「Cumbia & Jazz Fusion」

このアルバムはジャズではなく、フュージョン/クロスオーヴァーと呼んだ方がいいかもしれません。

もしくはミンガス流ワールド・ミュージック。

コロンビアのクンビアというラテン音楽に影響を受けた作品のようです。

さてジャズは一般的にプレイヤビリティ、つまり個々の演奏に依存した音楽といえるかもしれません。

「ジャズには名曲はなく、名演あるのみ」という人もいるぐらいですから。

しかし前述したようにミンガスの音楽では、演奏者が個性を発揮するのではなく、彼のビジョンを忠実に再現することが求められました。

「ジャッキーの肖像(Profile Of Jackie)」のような例外もありますが。

このアルバムにもそんな傾向が表れていて、もはや誰が演奏しているのかを知らなくていいような気さえします。

一応クレジットを確認しましたが、ジャズ系ではない人が多く参加していました。

しかしここでもやはりダニー・リッチモンド(Danny Richmond)がドラムを叩いています。

ミンガスは、気性が荒い人だと言われています。

実際、暴力をふるうことが少なくなかったそうです。

ジャッキー・マクリーンはミンガスの暴力に怯えていたらしく、ナイフを持参してレコーディングに参加したという逸話があるほど。

その結果多くの人がミンガスの下から立ち去りましたが、ダニーだけはいつもミンガスに付き従っていました。

確かにミンガスは自己中心的で、自分のやりたいことばかり優先させたかもしれません。

しかし彼はスケールの大きいビジョンを持っていました。

レディオヘッド(Radiohead)のトム・ヨーク(Thom Yorke)も、ミンガスの音楽から影響を受けています。

ミンガスは生涯に渡ってデューク・エリントン(Duke Ellington)を敬愛し続け、エリントンの曲を数多く取り上げてきました。

彼はこのアルバムでデュークと同じ高みに到達しようとしていたかもしれません。

さてランキングの本編は、ここまでで終わりです。

5曲だけではありますが、ある程度ミンガスの魅力をご紹介できたと思っています。

ここから先は、5曲では物足りない方のみお聞きください。

 

追加1「C Jam Blues」(アルバム:Mingus at Carnegie Hall)

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■曲名:C Jam Blues
■曲名邦題:C・ジャム・ブルース
■アルバム名:Mingus at Carnegie Hall
■アルバム名邦題:ミンガス・アット・カーネギー・ホール
■動画リンク:「C Jam Blues」

 

追加2「Opus 3」(アルバム:Mingus Moves)

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■曲名:Opus 3
■曲名邦題:オーパス 3
■アルバム名:Mingus Moves
■アルバム名邦題:ミンガス・ムーヴス
■動画リンク:「Opus 3」

 

追加3「Tijuana Gift Shop」(アルバム:Tijuana Moods)

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■曲名:Tijuana Gift Shop
■曲名邦題:ティファナ・ギフト・ショップ
■アルバム名:Tijuana Moods
■アルバム名邦題:メキシコの想い出
■動画リンク:「Tijuana Gift Shop」

 

追加4「Hamp’s New Blues」(アルバム:Mingus Three)

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■曲名:Hamp’s New Blues
■曲名邦題:ハンプス・ニュー・ブルース
■アルバム名:Mingus Three
■アルバム名邦題:ミンガス・スリー
■動画リンク:「Hamp’s New Blues」

 

追加5「Reincarnation Of A Love Bird」(アルバム:The Clown)

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■曲名:Reincarnation Of A Love Bird
■曲名邦題:ラヴバードの蘇生
■アルバム名:The Clown
■アルバム名邦題:道化師
■動画リンク:「Reincarnation Of A Love Bird」

 

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