今回はパコ・デ・ルシアのランキングを作成しました。
この人は超絶技巧で有名なフラメンコ・ギタリストです。
しかし彼はただ技巧だけの人ではありません。
ぜひご自身の耳で体感していただければと思います。
特にギターを弾く人は、一度パコの洗礼を受けておくことをおすすめいたします。
- 1 1位「Entre dos aguas」(アルバム:Fuente y caudal)
- 2 2位「Almoraima」(アルバム:Almoraima)
- 3 3位「Cepa Andaluza」(アルバム:Fuente y caudal)
- 4 4位「Manteca Colora」(アルバム:Luzia)
- 5 5位「Cobre」(アルバム:Almoraima)
- 6 6位「Maria de la O」(アルバム:Cancion andaluz)
- 7 7位「Cancion De Amor」(アルバム:Zyryab)
- 8 8位「El Panuelo」(アルバム:Siroco)
- 9 9位「Casa Bernardo」(アルバム:Cositas buenas)
- 10 10位「Mediterranean Sundance / Rio Ancho」(アルバム:Friday Night in San Francisco)
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1位「Entre dos aguas」(アルバム:Fuente y caudal)
■曲名:Entre dos aguas
■曲名邦題:二筋の川
■アルバム名:Fuente y caudal
■アルバム名邦題:二筋の川
■動画リンク:「Entre dos aguas」
この曲は彼の定番であり、最も有名な曲です。
この曲にはボンゴが入っています。
フラメンコはラテン音楽の一種なので、パーカッションが入っていてもおかしくないかもしれません。
しかし当時はとても珍しいことだったようです。
ただこの曲は、ボンゴが入る必然性が感じられないでしょうか。
特に2:23からパコがメラメラ燃え上がる時に、ボンゴの存在が利いています。
唐突ですが、おそらくボブ・ディラン(Bob Dylan)は、こういう曲が好きなはず。
この曲はインストですが、とてもキャッチな曲です。
フラメンコ・ギターの魅力を紹介する時、やはりこの曲を1位にするのがいいように思いました。
2位「Almoraima」(アルバム:Almoraima)
■曲名:Almoraima
■曲名邦題:アルモライマ
■アルバム名:Almoraima
■アルバム名邦題:アルモライマ
■動画リンク:「Almoraima」
パコの最高傑作は「Fuente y caudal」か「Almoraima」だと言われています。
彼は前作「Fuente y caudal」で知名度を高めると、このアルバムで決定的な評価を得ました。
ここで申し上げておかなければいけないことがあります。
私は普段、ほとんどフラメンコを聞かない人です。
他に持っているフラメンコ・ギターのアルバムも、トマティート(Tomatito)など有名どころを数枚持っている程度です。
従って他のフラメンコギター奏者との比較はできません。
ただこの人の場合は、誰かと比較するまでもなく、すごさを体感できると思います。
私もそういう1人ですから。
フラメンコに詳しくなくて申し訳ありませんが、そんな私を刮目させた曲をご紹介したいと思います。
3位「Cepa Andaluza」(アルバム:Fuente y caudal)
■曲名:Cepa Andaluza
■曲名邦題:アンダルシアの根を求めて
■アルバム名:Fuente y caudal
■アルバム名邦題:二筋の川
■動画リンク:「Cepa Andaluza」
この曲を聞く時にはかなりの集中力が要求されます。
パコは異様な熱気の中、野性味あふれる演奏をしています。
しかしスタジオ録音のはずなのに、このライブ感覚は何なのでしょうか(笑)
フラメンコは、ジャズのように即興演奏が重視される音楽のようです。
パコの演奏は後年のライブの演奏を聞いても、インプロバイザーとしても超一流であることが分かります。
即興演奏はその一瞬が勝負ですが、パコは誰よりも瞬間に賭けている人ですから、それも当然かもしれません。
この頃の彼は、まだジャズやフュージョンの世界に足を踏み入れていませんでした。
しかしこんな演奏をしていたら、フラメンコの世界だけにいられなくなるのも分かります。
4位「Manteca Colora」(アルバム:Luzia)
■曲名:Manteca Colora
■曲名邦題:マンテカ・コロラ
■アルバム名:Luzia
■アルバム名邦題:ルシア
■動画リンク:「Manteca Colora」
さてここで一旦クールダウンしておきましょう。
パコのアルバムはすごすぎるので、BGMになりませんし、聞き手もテンションを高めなければいけないところがあります。
ただ後年には、普段使いに向いているアルバムがあります。
その中で最も私が重宝しているのが、このアルバム。
曲の粒が揃っていて、これと同じ水準の曲ばかりです。
アルバム名の「ルシア(Luzia)」とは彼の母親の名前とのこと。
また「カマロン(Camaron)」という曲もありますが、それは昔彼が一緒に組んでいたシンガーのことです。
1967年、カディス県サン・フェルナンド出身のカンタオール(フラメンコにおける唄い手)であるカマロン・デ・ラ・イスラとの初の共演アルバムを発表。1992年のカマロンの死まで共演は続き、フラメンコに大きな改革をもたらした。
カマロンは1992年に肺がんで亡くなっています。
2人の故人に捧げられたという背景から、このアルバムは沁みる曲が多いように感じます。
5位「Cobre」(アルバム:Almoraima)
■曲名:Cobre
■曲名邦題:あかがねの肌
■アルバム名:Almoraima
■アルバム名邦題:アルモライマ
■動画リンク:「Cobre」
このアルバムは前作同様、兄のラモン・デ・アルヘシラス(Ramon De Algeciras)とのギター二重奏です。
この曲は2つのギターの絡みがスリリングです。
またこの曲では手拍子が印象的ですね。
フラメンコの手拍子はパルマと呼ばれていますが、ただの手拍子ではありません。
もはや演奏の一部といってもいいでしょう。
今回選んだ曲には、他にもパルマが入った曲をいくつか選んでいます。
ギターを聞くだけではもったいないかもしれません。
6位「Maria de la O」(アルバム:Cancion andaluz)
■曲名:Maria de la O
■曲名邦題:マリア・デ・ラ・オ
■アルバム名:Cancion andaluz
■アルバム名邦題:カンシオン・アンダルーサ
■動画リンク:「Maria de la O」
このアルバムは、パコのラスト・アルバムです。
彼は2014年2月25日、メキシコに滞在中に心臓発作で亡くなっています。
66歳という若さでした。
晩年の彼はスリルよりも、音楽にふくらみを感じる演奏が増えてきたように思います。
このアルバムは2014年4月29日にリリースされています。
アルバム・タイトルの「Cancion andaluz」は「アンダルシアの歌」という意味。
パコはスペイン、アンダルシア州の生まれです。
アンダルシアはフラメンコ発祥の地で、パコは幼い頃からフラメンコを聞いて育ちました。
その後彼はローカルな存在でいられなくなりましたが、最後までフラメンコを体現した存在であり続けました。
彼はフラメンコの革新者であると共に、フラメンコの伝統を守った人だと思います。
7位「Cancion De Amor」(アルバム:Zyryab)
■曲名:Cancion De Amor
■曲名邦題:愛の歌
■アルバム名:Zyryab
■アルバム名邦題:シルヤブ
■動画リンク:「Cancion De Amor」
彼は事あるごとにスペインの偉大な先人音楽家に敬意を評しています。
次作のアルバムではスペインの作曲家ロドリゴ(Rodrigo)の名作「アランフェス協奏曲(Concierto de Aranjuez)」を取り上げました。
ただ同時に彼はこんなことも言っています。
伝統ってのは、いつまでも同じ形をしている、ということじゃないんだ。中略
フラメンコの古い形をいつまでもそのまま受け継いでいくのが純粋? それはただのコピーだ。
演田滋郎氏による「アルモライマ」のライナーノーツから引用
このアルバムでは、チック・コリア(Chick Corea)と共演しています。
チックもスペインにルーツを持つ人でしたね。
この曲はチックからの影響を感じる、とても美しい曲に仕上がっています。
チックとの交流は、普段とは違うパコの魅力を浮かび上がらせています。
8位「El Panuelo」(アルバム:Siroco)
■曲名:El Panuelo
■曲名邦題:エル・パニュエロ
■アルバム名:Siroco
■アルバム名邦題:シロッコ(熱風)
■動画リンク:「El Panuelo」
彼は「Almoraima」の後、世界の舞台で活躍するプレイヤーになりました。
ただ相手のルールに合わせた異種格闘技戦ばかりだったかもしれません。
そんな時にリリースされたのが、このアルバムです。
パコはフラメンコに戻ってきました。
このアルバムはこういう背景を持ったアルバムです。
父の友人であるフラメンコ・ギタリスト、ニーニョ・リカルドやサビーカスからも影響を受けた。パコは後年、アルバム『SIROCO〜熱風』(1987年)に、「ニーニョ・リカルドに捧げる」という曲を収録している。
パコは幼い頃から頭角を現し、1967年のデビュー・アルバムには「天才」という邦題が付けられています。
セカンド・アルバム「幻想(Fantasia Flamenca De Paco De Lucia)」から、1曲ご紹介しておきましょう。
Paco de Lucia – Aires De Linares
この頃のパコが戻ってきたようですね。
9位「Casa Bernardo」(アルバム:Cositas buenas)
■曲名:Casa Bernardo
■曲名邦題:カーサ・ベルナルド
■アルバム名:Cositas buenas
■アルバム名邦題:コシータス・ブエナス
■動画リンク:「Casa Bernardo」
今回私はパコを初めて聞く人を想定して選曲しました。
そこでフラメンコ・ギターだけにするか、フュージョンの曲を入れるかで迷いました。
演奏面だけでいえば、フラメンコだけにした方がいいかもしれません。
ただパコの音楽はあまりにすごいので、聞き手に緊張を強いるところがあります。
そこでパコのエッセンスが薄めの曲も入れてみました。
たとえばこの曲です。
最初の3曲などと比べると、インパクトに欠けるかもしれません。
しかしこのぐらいの濃度からパコに親しむのも、一興ではないかと思います。
この曲で満足できない方は、とっておきの曲を最後にご紹介しています。
10位「Mediterranean Sundance / Rio Ancho」(アルバム:Friday Night in San Francisco)
■曲名:Mediterranean Sundance / Rio Ancho
■曲名邦題:地中海の舞踏 / 広い河
■アルバム名:Friday Night in San Francisco
■アルバム名邦題:フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!
■動画リンク:「Mediterranean Sundance / Rio Ancho」
このアルバムはスーパー・ギター・トリオ(Super Guitar Trio)名義の作品です。
パコは1977年、アル・ディ・メオラ(Al Di Meola)のアルバム「エレガント・ジプシー(Elegant Gypsy)」の「地中海の舞踏(Mediterranean Sundance)」という曲に参加しました。
その曲は大評判を呼び、その後アル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)と3人で、アコースティック・ギターのトリオを結成しました。
このアルバムは、そのライブ録音です。
左チャンネルにパコ、右チャンネルにアル・ディ・メオラが配置されています。
しかし「アコースティック・ギターでこんな演奏が可能なのか」と言いたくなりますね。
アコギを弾いた経験のある方ならご存知の通り、普通はこんな風に弾けません。
エレクトリック・ギターの方がはるかに早弾きしやすいですが、ここでの彼らはエレキでも難しい程の超絶技巧を披露しています。
しかもただ速いだけではありません。
聞き手の心を揺さぶる情熱的なフレーズの連続に、リスナーはスピーカーの前から動けなくなります。
これほどあっけにとられる音楽体験は、そうあるものではありません。
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