今回はキャノンボール・アダレイのランキングを作成しました。
彼は日本では過小評価されているかもしれません。
それは彼の音楽的な変遷だったり、演奏の明るさに由来するかもしれません。
日本人好みの哀愁ハードバップ路線とは少し違った持ち味がある人です。
- 1 1位「Autumn Leaves」(アルバム:Somethin’ Else)
- 2 2位「Limehouse Blues」(アルバム:Cannonball Adderley Quintet In Chicago)
- 3 3位「Stars Fell On Alabama」(アルバム:Cannonball Adderley Quintet In Chicago)
- 4 4位「Toy」(アルバム:Know What I Mean?)
- 5 5位「Things Are Getting Better」(アルバム:Things Are Getting Better)
- 6 6位「Bohemia After Dark」(アルバム:Cannonball Adderley Quintet In San Francisco)
- 7 7位「Nardis」(アルバム:Portrait of Cannonball)
- 8 8位「Manha De Carnaval」(アルバム:Swingin’ In Seattle, Live At The Penthouse)
- 9 9位「Waltz for Debby」(アルバム:Know What I Mean?)
- 10 10位「Work Song」(アルバム:Them Dirty Blues)
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1位「Autumn Leaves」(アルバム:Somethin’ Else)
■曲名:Autumn Leaves
■曲名邦題:枯葉
■アルバム名:Somethin’ Else
■アルバム名邦題:サムシン・エルス
■動画リンク:「Autumn Leaves」
このアルバムを語る時、誰もが実質的にはマイルス・デイビス(Miles Davis)の作品だと言います。
ジャズの帝王として君臨する前の若き日のマイルスは、一時期ヘロイン中毒で苦しんでいました。
経済的にもかなり困窮していたようです。
そのマイルスに手を差し伸べたのが、ブルーノート・レコード(Blue Note Records)の創始者、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)。
彼はマイルスに録音を機会を与えて支援しました。
その後マイルスは一躍注目を浴び、大手のコロンビア(Columbia Records)と契約することに。
しかしマイルスはアルフレッド・ライオンに恩を返そうと、キャノンボール名義のこのアルバムをブルーノートに残しました。
しかもこの曲はシャンソンをジャズのスタンダードにした決定的名演。
精緻の極みといえるマイルスの演奏は、語りすぎないことで多くを語る至高の名演です。
一方この曲のキャノンボールの演奏を大味だと言う人もいます。
高級食パンに濃厚なクリームを塗ったというような。
しかし私はキャノンボールの音色の明るさがマイルスの陰りとの対比で、うまく機能しているように思います。
この曲調ではキャノンボールの良さが出にくかったと思いますが、それでもある程度聞かせるのが彼の底堅さ。
キャノンボールは明るく開放的なところに強味がある人でした。
2位「Limehouse Blues」(アルバム:Cannonball Adderley Quintet In Chicago)
■曲名:Limehouse Blues
■曲名邦題:ライムハウス・ブルース
■アルバム名:Cannonball Adderley Quintet In Chicago
■アルバム名邦題:キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ
■動画リンク:「Limehouse Blues」
このアルバムはジョン・コルトレーン(John Coltrane)との共同名義です。
キャノンボールはアルト・サックスで、ジョン・コルトレーンはテナー・サックスです。
音の高い方がキャノンボール、低い方がコルトレーンで、ソロは最初がキャノンボールで次がコルトレーン。
キャノンボールとコルトレーンは同じマイルスのグループ出身ということもあって、よく比較されます。
マイルスバンドでの評価はジョン・コルトレーンの圧勝です。
ジャズ名盤として名高い「カインド・オブ・ブルー(Kind of Blue)」でも、ジョン・コルトレーンの方が高く評価されました。
しかしそれはマイルスやコルトレーンの土俵だったせいかもしれません。
その証拠にこの曲を聞くと互角だと感じます。
私は今回改めてキャノンボールを聞き直して思ったことがあります。
それはキャノンボールは自分がリーダー作の時に輝く人だということ。
逆にいえば他人の土俵の上では、実力を発揮しにくいタイプかもしれません。
3位「Stars Fell On Alabama」(アルバム:Cannonball Adderley Quintet In Chicago)
■曲名:Stars Fell On Alabama
■曲名邦題:アラバマに星墜ちて
■アルバム名:Cannonball Adderley Quintet In Chicago
■アルバム名邦題:キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ
■動画リンク:「Stars Fell On Alabama」
もし彼の最高傑作を聞かれたら、私はこのアルバムだと即答します。
実際彼の作品で最も聞く機会が多いアルバムですし。
キャノンボールはアップとスローどちらも魅力ですが、スローでは少しベン・ウェブスター(Ben Webster)にも似たスウィートな魅力があります。
先程マイルス・デイビスと比較してキャノンボールを低く評価する人がいると書きました。
そういう人は彼の演奏について大味というようなことを言います。
しかし私はむしろそこがいいじゃないかなと思っています。
この人の演奏は極上のバターが乗ったホットケーキに似ているかもしれません。
暖かくとろけるような幸福感を感じます。
4位「Toy」(アルバム:Know What I Mean?)
■曲名:Toy
■曲名邦題:トイ
■アルバム名:Know What I Mean?
■アルバム名邦題:ノウ・ホワット・アイ・ミーン
■動画リンク:「Toy」
個人的に好きな小粋な曲です。
ここで彼本人について、少し触れておきましょう。
彼の名前はキャノンボール・アダレイという、まるでアメコミのキャラクターみたいです。
あだ名の『キャノンボール』の由来は、キャンニバル(cannibal:大食漢)に由来する。
当初は「大食漢アダレイ」でしたが、後に語感が似ている「Cannonball」つまり「砲弾アダレイ」と変化したようです。
そういえばピーター・バラカンはこの人の名前を好きではないようですが、音楽そのものは好きなのだそうです。
アルバム・ジャケットから分かるように、彼はかなりのぽっちゃりさんでした。
しかも彼は大食いだけでなく早食いでもあったようですが、その食生活は彼の健康に深刻な問題をもたらしました。
大食癖に起因する糖尿病と、偏頭痛に若い頃から悩まされていたが、1975年に脳内出血が原因となり脳卒中で亡くなる[7]。
彼は惜しくも46歳で生涯を終えました。
5位「Things Are Getting Better」(アルバム:Things Are Getting Better)
■曲名:Things Are Getting Better
■曲名邦題:シングス・アー・ゲティング・ベター
■アルバム名:Things Are Getting Better
■アルバム名邦題:シングス・アー・ゲティング・ベター
■動画リンク:「Things Are Getting Better」
このアルバムはミルト・ジャクソン(Milt Jackson)と共演作。
快作といえる出来です。
両者は共にソウルフルで、かなり相性が良いように思います。
さてここで彼のプレイについて、再度私の考えを述べたいと思います。
彼のプレイは楽天的なところが魅力。
しかしそれだけではありません。
楽器の特性もありますが、音のヌケが良くアドリブに安定感があること、それもまた彼の強みです。
しかもテクニックも兼ね備えていますし。
そうした彼のプレイ・スタイルは、緊張感や陰りが強めの曲調では活きません。
また彼は器用な人ですが、日本のジャズ・ファンは不器用でマイナー調のプレイヤーを高く評価する傾向があります。
そのせいもあって、日本ではいま一つ評価されにくいような気がします。
6位「Bohemia After Dark」(アルバム:Cannonball Adderley Quintet In San Francisco)
■曲名:Bohemia After Dark
■曲名邦題:ボヘミア・アフターダーク
■アルバム名:Cannonball Adderley Quintet In San Francisco
■アルバム名邦題:キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ
■動画リンク:「Bohemia After Dark」
彼はアメリカ、フロリダ州の出身です。
早くから地元では有名な存在だったようですが、1955年彼は満を持してニューヨークに移住しました。
彼はニューヨークでこの曲を書いたオスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)のバンドに参加しました。
そのライブで彼の演奏は評判を呼び、一気に知名度が高まりました。
当時の彼は今よりテクニカルな演奏をしていて、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)を思わせるプレイで観客を圧倒していたようです
このアルバムは1959年にリリースされました。
当時の彼は後年のソウルフルでファンキーな頃と違って、アドリブのキレを売りにしていました。
この曲ではその頃の名残りを感じます。
7位「Nardis」(アルバム:Portrait of Cannonball)
■曲名:Nardis
■曲名邦題:ナーディス
■アルバム名:Portrait of Cannonball
■アルバム名邦題:ポートレイト・オブ・キャノンボール
■動画リンク:「Nardis」
この曲はマイルス・デイビスが作曲したと言われています。
しかし実際にはビル・エバンス(Bill Evans)が書いた説がささやかれています。
個人的にはいかにもビル・エバンスが書きそうと感じますが、単なる印象ですのでマイルスが書いたことも否定しません。
この曲は数多あるバージョンの中で、記念すべき最初の録音です。
キャノンボールは知的な人でした。
彼は高校で教師をしながら音楽活動をしていて、当時のジャズメンとしては珍しく大学院に進学しています。
そうした彼の知的素養は、マイルス・デイビスやビル・エバンスと相性が良かったかもしれません。
普段の彼のプレイは両者とは異なりますが、この曲などはなかなか良い出来です。
8位「Manha De Carnaval」(アルバム:Swingin’ In Seattle, Live At The Penthouse)
■曲名:Manha De Carnaval
■曲名邦題:カーニバルの朝
■アルバム名:Swingin’ In Seattle, Live At The Penthouse
■アルバム名邦題:スウィンギン・イン・シアトル : ライヴ・アット・ザ・ペントハウス 1966-1967
■動画リンク:「Manha De Carnaval」
ボサノヴァの曲です。
当時のジャズ・ミュージシャンは、ボサノヴァの曲をよく取り上げていました。
キャノンボールはポール・デスモンド(Paul Desmond)などと違って、本来ボサノヴァは得意ではなかったかもしれません。
先程も書きましたが、それでもこの人はある程度聞かせてくれます。
実際彼は「Cannonball’s Bossa Nova」などで、それなりの音楽的成果を残しています。
そのアルバムから1曲ご紹介しておきましょう。
順応性と地力のあるこの人ならではの演奏だと思います。
9位「Waltz for Debby」(アルバム:Know What I Mean?)
■曲名:Waltz for Debby
■曲名邦題:ワルツ・フォー・デビイ
■アルバム名:Know What I Mean?
■アルバム名邦題:ノウ・ホワット・アイ・ミーン
■動画リンク:「Waltz for Debby」
ビル・エバンスが書いた著名なジャズ・スタンダードです。
このアルバムはビル・エバンスとの共演作です。
そのせいかジャケットにエバンスの「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード(Sunday At The Village Vanguard)」の写真が飾られていますね。
この曲の決定版はエバンス本人のバージョン。
しかしこちらのバージョンではキャノンボールの演奏もすばらしく、ホーン入りならばこのバージョンがおすすめです。
ビル・エバンスは、とても人気のあるジャズ・ピアニストです。
しかしこれまで私が話したことがあるジャズ・ファンの間では、意外とビル・エバンスを絶賛する人ばかりではありませんでした。
特に明快なスイング感覚を好む人は、手放しで絶賛できないというような。
その点このバージョンはキャノンボールらしい明るい空気感が、時に生真面目になるエバンスを補っています。
10位「Work Song」(アルバム:Them Dirty Blues)
■曲名:Work Song
■曲名邦題:ワーク・ソング
■アルバム名:Them Dirty Blues
■アルバム名邦題:ゼム・ダーティ・ブルース
■動画リンク:「Work Song」
彼はハードバップ期とソウルジャズ期が人気ですが、私は前者の時期が好みです。
それはこの記事の選曲を見ても、お分かりいただけると思います。
ソウルジャズは嫌いではありませんが、私はアドリブを聞いていただきたいと意図しました。
この曲も作曲者のナット・アダレイのハードバップ・バージョンの方が好みかもしれません。
またソウルジャズやファンキージャズとも呼ばれるこの時期では、以下の曲が特に有名です。
Cannonball Adderley – Mercy, Mercy, Mercy
私はソウルジャズ期では「Them Dirty Blues」が一番好きです。
このアルバムは楽想とアドリブのバランスが良く、ハードバップが好きな方にもおすすめです。
弟のナット・アダレイとも息が合っています。
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