今回はフィル・ウッズのランキングを作成しました。
この人は、ハードバップとは少し違ったジャズの魅力を感じさせてくれる人です。
以前から私が感じていた違和感についても書いてみました。
奇異に思われる内容かもしれませんが、もしよろしければ最後までお付き合いください。
- 1 1位「And When We Are Young」(アルバム:Alive And Well In Paris)
- 2 2位「The Last Page」(アルバム:Musique du Bois)
- 3 3位「Be My Love」(アルバム:Woodlore)
- 4 4位「Rain Danse」(アルバム:Live from the Show Boat)
- 5 5位「Falling in Love All Over Again」(アルバム:Woodlore)
- 6 6位「Superwoman (Where Were You When I Needed You) 」(アルバム:Live from the Show Boat)
- 7 7位「Easy Living」(アルバム:Warm Woods)
- 8 8位「At Seventeen」(アルバム:The New Phil Woods Album)
- 9 9位「Easy To Love」(アルバム:The Thrill Is Gone)
- 10 10位「The Windmills of Your Mind」(アルバム:Images)
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1位「And When We Are Young」(アルバム:Alive And Well In Paris)
■曲名:And When We Are Young
■曲名邦題:若かりし日
■アルバム名:Alive And Well In Paris
■アルバム名邦題:アライヴ・アンド・ウェル・イン・パリ
■動画リンク:「And When We Are Young」
この曲が録音されたのは、1968年11月14日と15日。
同年6月5日、アメリカである事件がありました。
大統領選挙に名乗りを上げたロバート・ケネディが凶弾に倒れました。
ロバートは兄ジョン・F・ケネディが暗殺された後、兄の遺志を継いで大統領になることを目指していました。
そうした背景に加え司法長官時代の功績が高く評価され、国民からの人気も高く、彼が大統領になるのは確実だと思われていました。
フィル・ウッズは、ロバート・ケネディと親交があったようです。
英語の曲名は「そして我々は若かった」という意味。
ちなみにロバート・ケネディが亡くなった時は42歳で、フィル・ウッズは36歳でした。
彼の演奏は故人を悼む気持ちからか、狂おしくほとばしっています。
激流のような演奏に圧倒される名演です。
2位「The Last Page」(アルバム:Musique du Bois)
■曲名:The Last Page
■曲名邦題:ザ・ラスト・ページ
■アルバム名:Musique du Bois
■アルバム名邦題:ミュージック・デ・ボア
■動画リンク:「The Last Page」
彼の最高傑作は、人によってかなり異なると思われます。
ハードバップを好む方には、初期の「Woodlore」「Warm Woods」が人気です。
一般的には「Alive And Well In Paris」あたりが、代表作と言われることが多いかもしれません。
ただこのアルバムも人気が高く、私も最高作の1つだと思っています。
特にこのアルバムは曲の出来にばらつきが少なく、どれを選んでいいと思えるほどです。
同作品からもう1曲ご紹介しましょう。
Phil Woods – Willow Weep for Me
今回は少し地味ですが「The Last Page」の方を選んでみました。
ちなみに1位と2位の曲は、彼が書いています。
ただ彼が作曲した曲はテーマ部分より、アドリブに入ってからの方が魅力的かもしれませんが。
彼はメロディ感覚にすぐれた人なのですね。
この曲では1:55から始まるアドリブが聞きものです。
3位「Be My Love」(アルバム:Woodlore)
■曲名:Be My Love
■曲名邦題:ビー・マイ・ラヴ
■アルバム名:Woodlore
■アルバム名邦題:ウッドロア
■動画リンク:「Be My Love」
1955年に発表された初期の名盤です。
ジャズらしいジャズを聞きたい方におすすめしたい曲です。
このアルバムでは、他にもソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)で知られる、以下の曲も聞きものです。
Phil Woods – On Slow Boat to China
ただ今回の記事では、ジャズらしい曲は少な目かもしれません。
後で詳しく述べますが、この記事で私は彼の非ハードバップ的な面を強調しました。
そういう傾向をふまえて聞いていただければと思います。
詳しくは後でご説明いたします。
4位「Rain Danse」(アルバム:Live from the Show Boat)
■曲名:Rain Danse
■曲名邦題:レイン・ダンス
■アルバム名:Live from the Show Boat
■アルバム名邦題:ライヴ・フロム・ザ・ショーボート
■動画リンク:「Rain Danse」
彼の隠れ名盤の筆頭に挙げたいアルバムです。
他にはバラード集の「Just Friends」も要チェックです。
「Live from the Show Boat」は、CDの再発が遅かったことが評価の低さ影響しているかもしれません。
さてこのアルバムには、1977年という時代の空気を感じます。
フュージョン、クロスオーバーの影響を感じるライブ・アルバム。
しかもこの曲はラテン・ナンバーですし。
従来のジャズ・ジャーナリズムでは、取り上げにくかった作品といえます。
ただ演奏だけに注目すれば、正統派ジャズの時とそれほど変わっていない感じもしますが。
今こそ再評価されてほしい作品です。
5位「Falling in Love All Over Again」(アルバム:Woodlore)
■曲名:Falling in Love All Over Again
■曲名邦題:フォーリング・イン・ラヴ・オール・オーヴァー・アゲイン
■アルバム名:Woodlore
■アルバム名邦題:ウッドロア
■動画リンク:「Falling in Love All Over Again」
初期の彼は、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)から影響を受けていました。
「スガン(Sugan)」というアルバムから、1曲ご紹介しましょう。
私が彼のパーカー路線で一番好きな演奏です。
Phil Woods – Scrapple from the Apple
興味のある方は、合わせて以下の記事もどうぞ。
チャーリー・パーカー(Charlie Parker)の名曲名盤10選
ちなみに彼はパーカーの未亡人と結婚し、パーカーの息子たちを養育しました。
このアルバムでも、アップテンポの曲では特にパーカーからの影響が顕著かもしれません。
私はテクニックはあるしカッコいいと感じる一方で、彼の個性が感じられないと思います。
そのせいかどこか借り物の感じがしてしまうのですね。
実際、後年の彼はアップテンポの曲でも借り物ではない独自の個性を確立しています。
ただ早くからバラードでかいま見せていた表現力は、以降長い期間にわたって彼の強味となりました。
6位「Superwoman (Where Were You When I Needed You) 」(アルバム:Live from the Show Boat)
■曲名:Superwoman (Where Were You When I Needed You)
■曲名邦題:スーパーウーマン
■アルバム名:Live from the Show Boat
■アルバム名邦題:ライヴ・フロム・ザ・ショーボート
■動画リンク:「Superwoman (Where Were You When I Needed You) 」
スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の人気曲のカバーです。
このアルバムがリリースされた1977年当時、フィル・ウッズは伝説と呼ばれる世紀の名演を残しました。
該当のソロ部分から再生されるように設定していますので、もしよかったら聞いてみてください。
Billy Joel – Just The Way You Are
この記事で私はは彼の非ハードバップ的な面をクローズアップしました。
私はもしかしたらこれらの演奏が、彼本来の姿ではないかと思っているところがあります。
もう1曲彼のすばらしいプレイをご紹介しましょう。
7位「Easy Living」(アルバム:Warm Woods)
■曲名:Easy Living
■曲名邦題:イージー・リビング
■アルバム名:Warm Woods
■アルバム名邦題:ウォーム・ウッズ
■動画リンク:「Easy Living」
このアルバムでもう1曲迷った曲がありますので、ご紹介しましょう。
Phil Woods – In Your Own Sweet Way
さてチャーリー・パーカーは黒い演奏も沢山残していますが、私の感覚では即興>黒さの人でした。
私はパーカーを聞いている時、黒さより即興の力が上回っているように感じることがあります。
その意味でパーカーはビバップ的であっても、非ハードバップ的な人だったかもしれません。
多くのパーカー・フォロワーはフレーズを模倣しても、そのスリルまでは再現できませんでしたが、フォロワーたちは次第に自己の中にある黒さを表に出し始め、パーカーとは違った個性を確立していきました。
一方フィル・ウッズは白人のアルト・サックス奏者ですから、本来は黒さが特徴の人ではありません。
彼が黒くないわけではありませんが、違った種類の個性を確立しました。
それは演歌的ともいえるこぶしであったり、激情的な演奏だったり、都会に住む人のセンチメントを救い上げた抒情。
そうした演奏は陳腐になりやすいですが、その点彼は当初から圧倒的な表現力を持っていました。
他のハードバッパーのように黒さに回収されず、表現力のみを武器に勝負した彼は、タイプこそ違えどもある意味パーカー的だったかもしれません。
8位「At Seventeen」(アルバム:The New Phil Woods Album)
■曲名:At Seventeen
■曲名邦題:17才の頃
■アルバム名:The New Phil Woods Album
■アルバム名邦題:ザ・ニュー・フィル・ウッズ・アルバム
■動画リンク:「At Seventeen」
私のジャズの記事では、従来のジャズ・ジャーナリズムでは取り上げられにくい曲も取り上げています。
私はロック畑出身なので、ロックファンに聞いてもらうことも意識しています。
さてこの曲はジャニス・イアン(Janis Ian)のカバー曲。
原曲を引用しておきましょう。
この記事ではフィル・ウッズについて、普段私が思っていることを書いています。
つまりもしかした彼は、ビリー・ジョエル(Billy Joel)の「素顔のままで(Just The Way You Are)」の演奏が本来の姿ではないかと。
この曲は、私がそう思うようになったきっかけの演奏です。
彼は映画的、映像的ともいえる表現が得意な人でした。
彼は黒い身体感覚に基づいたジャズとは違う山に登った人でした。
この曲はジャズ的な観点からは、つまらないと判断されてしまうかもしれません。
しかしテンションの高低にとらわれず、ジャズという枠組みを外しさえすれば、なかなか良い演奏だと思います。
9位「Easy To Love」(アルバム:The Thrill Is Gone)
■曲名:Easy To Love
■曲名邦題:イージー・トゥ・ラブ
■アルバム名:The Thrill Is Gone
■アルバム名邦題:スリル・イズ・ゴーン
■動画リンク:「Easy To Love」
この人は一時期、テンションの高い時期がありました。
しかし彼のキャリアを振り返った時、そういう作品ばかりではないことに気が付きます。
彼は後年、少し落ち着いた演奏が増えました。
この曲は2003年に発表されたアルバムの曲です。
それほどテンションは高くありませんんが、確かな力量を感じる演奏です。
彼はその実力に見合った成功を収めた人でした。
ウッズは自身の録音で7回グラミー賞にノミネートされ、4回グラミー賞を受賞した。
フィル・ウッズは2015年、83歳でこの世を去りました。
彼は晩年まで精力的に活動を続け、79歳となった2011年にも2枚のアルバムを発表しています。
10位「The Windmills of Your Mind」(アルバム:Images)
■曲名:The Windmills of Your Mind
■曲名邦題:風のささやき
■アルバム名:Images
■アルバム名邦題:イメージ
■動画リンク:「The Windmills of Your Mind」
このアルバムは、ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)との共同名義の作品です。
つまりミシェル・ルグランのアレンジを背負って、フィル・ウッズがサックスで歌い上げるというもの。
まじめなジャズファンであればあるほど、聞いていられないと思われるかもしれません。
実際私も最初聞いた時に、曲の前半は苦行としか思えませんでしたから。
ただ2:24あたりから、演奏が熱を帯び始めます。
ではそこから聞けばいいだろうと思われるかもしれません。
しかし前半の我慢があってこそ、そこからのカタルシスが得られるように思います。
しかも2:24からの演奏には、この人の本質を表す特別な何かがあります。
フィル・ウッズの根本には、演歌的なものがあるかもしれません。
他にもガトー・バルビエリ(Gato Barbieri)にも似た、こぶしを利かせた演奏もありますし。
しかしそれだけでは語れぬ、表現者としての体幹の強さのようなもの。
この演奏をご紹介していいものか迷いましたが、気に入っていただけたらうれしいです。
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