jackie-mcLean-makin

ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はジャッキー・マクリーンのランキングを作成しました。

1950年代の曲を中心に選びましたが、ハードバップ・ジャズのおいしいところを、ギュっと凝縮した曲ばかりです。

ジャズはこういう人の個性を理解すると、がぜん面白くなってきます。

ジャズのど真ん中ともいえる名演ばかりをご紹介してみました。

 

1位「Sweet Love of Mine」(アルバム:Demon’s Dance)

jackie-mcLean-demons

■曲名:Sweet Love of Mine
■曲名邦題:スイート・ラヴ・オブ・マイン
■アルバム名:Demon’s Dance
■アルバム名邦題:デモンズ・ダンス
■動画リンク:「Sweet Love of Mine」

この曲の録音は1967年ですが、1970年10月に発売されています。

1970年といえばマイルス・デイヴィス(Miles Davis)が「ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)」をリリースした年です。

まさにジャズの歴史が変わろうとしていた頃、ひっそりとこのアルバムがリリースされました。

当時の3年は今の3年より大きな意味を持っていましたから、発売のタイミングが遅れたことで、旬を逃してしまった感があります。

ただ一方で彼は、時代の変化を敏感に察知した作品もリリースしています。

1962年にオーネット・コールマン(Ornette Coleman)の影響を受けた「レット・フリーダム・リング(Let Freedom Ring)」を発表したりなど、意欲的な取り組みもありました。

今回はそうした曲を取り上げていませんが、どれも興味深い試みばかりです。

未聴の方は今回のランキングを気に入ったら、それらの時期もチェックしてみてください。

さてこの曲は、マクリーン流ボサノヴァ・ジャズといった風の名演です。

ハンク・モブレー(Hank Mobley)の「リカード・ボサノヴァ(Recado Bossa Nova)」を思わせるところがないでしょうか。

この曲を書いたトランペットのウディ・ショウ(Woody Shaw)も、2:35からすばらしい演奏しています。

 

2位「I’ll Take Romance」(アルバム:Swing, Swang, Swingin’)

jackie-mcLean-swing

■曲名:I’ll Take Romance
■曲名邦題:アイル・テイク・ロマンス
■アルバム名:Swing, Swang, Swingin’
■アルバム名邦題:スイング・スワング・スインギン
■動画リンク:「I’ll Take Romance」

「4, 5 and 6」とこのアルバムが、一番選曲に迷いました。

この2枚は演奏の平均レベルが高く、これからマクリーンを聞き進みたい方には、最初の1枚としてこの2枚をおすすめいたします。

このアルバムはワンホーンです。

一般的には「ホワッツ・ニュー(What’s New?)」が有名ですが、私の好みではこの曲でしょうか。

ただそちらも名演なので、リンクだけ貼っておきましょう。

Jackie McLean – What’s New?

しかしどちらの曲も、実によく歌っていますね。

五段活用のようなアルバム・タイトル通り、スイングすることしか考えていない感じがすばらしいです。

あとウォルター・ビショップ・ジュニア(Walter Bishop, Jr.)のピアノも快調ではないでしょうか。

1:59からのピアノソロはとても楽しく、ハッピーにスイングしています。

 

3位「Appointment in Ghana」(アルバム:Jackie’s Bag)

jackie-mcLean-bag

■曲名:Appointment in Ghana
■曲名邦題:アポイントメント・イン・ガーナ
■アルバム名:Jackie’s Bag
■アルバム名邦題:ジャッキーズ・バッグ
■動画リンク:「Appointment in Ghana」

マクリーンの名演として必ず挙がる曲です。

といってもマクリーンだけがすばらしいのでなく、総合力の勝利という感じではないでしょうか。

このアルバムは、レコードでいうところのB面が聞きものです。

なにせこの三管なのですから、ハードバップ・ファンは、聞く前から音が聞こえてくるように感じるかもしれません。

・ジャッキーマクリーン(Jackie McLean)
・ティナ・ブルックス(Tina Brooks)
・ブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)

この曲は1960年の録音ですが、少し新主流派っぽいテーマの曲です。

ただ上記の誰もが、本来クールとかモーダルな演奏をする人たちではありません。

しかしここでは空気を読んでいるのか、ハードバップを基本としながらも、少しクールな演奏をしています。

 

4位「Filide」(アルバム:Fat Jazz)

jackie-mcLean-fat

■曲名:Filide
■曲名邦題:フィリーデ
■アルバム名:Fat Jazz
■アルバム名邦題:ファット・ジャズ
■動画リンク:「Filide」

こちらもボッサ・ナンバーです。

もしくはボッサというより、あやしいモンド・ラウンジみたいな曲かもしれません。

マクリーンのアルト・サックスは、音色に特徴があります。

普通のアルトサックスの音は、もっと軽やかで、音が澄んでいるように思います。

たとえばアート・ペッパー(Art Pepper)は、その軽やかさを活かして、キレッキレの演奏をしていますね。

一方マクリーンの音は、音に少し濁りがあって、ヌケが悪いと感じることがあります。

そのせいか、私はいつもアルト・サックスを聞いているような気がしません。

プレイスタイルは異なりますが、高音部を活かしたテナーサックス、たとえばジョン・コルトレーン(John Coltrane)に似た部分があると思います。

さてこの曲でもマクリーンは、器用とか軽やかという要素は感じません。

ただ彼の不器用なフレーズには妙な説得力があって、不思議と耳を惹きつけてくれます。

彼の独特な音色は、不器用にフレーズを紡ぎ出すプレイ・スタイルと相性が良いように感じます。

 

5位「Pondering」(アルバム:Alto Madness)

jackie-mcLean-alto

■曲名:Pondering
■曲名邦題:ポンダリング
■アルバム名:Alto Madness
■アルバム名邦題:アルト・マッドネス
■動画リンク:「Pondering」

このアルバムは、同じアルト・サックス奏者であるジョン・ジェンキンス(John Jenkins)との共同名義です。

イントロから同じテーマのメロディを、2人同時に演奏していますね。

ジャズでは、あえて同じ楽器同士を共演させることがあります。

有名なのはソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)とジョン・コルトレーンが共演した「テナー・マッドネス(Tenor Madness)」です。

このアルバム名は「Alto Madness」ですから、二番煎じの企画なのかもしれません。

同じ楽器同士の醍醐味は、2人の音の絡みを楽しむことです。

しかしこの曲での2人の演奏は、とても似ていますね。

注意して聞かないと、どちらの演奏か判別がつきません。

マクリーンみたいな人は多いとは言えませんから、わざと似た人を連れてきたような気がします。

先程挙げた「Tenor Madness」は、この部分はどちらの演奏かを当てる、ブラインド・テストでよく使われます。

こちらのアルバムもかなり聞き分けが難しく、そういう遊びの時に重宝されるかもしれません。

もちろんそんなマニアな遊びに付き合う必要はなく、単純に楽しんでいただくだけで充分ですが。

 

6位「Why Was I Born?」(アルバム:4, 5 and 6)

jackie-mcLean-456

■曲名:Why Was I Born?
■曲名邦題:ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?
■アルバム名:4, 5 and 6
■アルバム名邦題:4,5&6
■動画リンク:「Why Was I Born?」

タイトルの「4, 5 and 6」は、このアルバムが4人から6人編成であることから名付けられています。

さて今回は、ほとんどが1950年代のアルバムから選曲しました。

レーベルでいえば「プレスティッジ(Prestige)」「ジュビリー(Jubilee)」「ブルーノート(Blue Note)」などでリリースされた一連のアルバムは、どれも内容的に大差ありません。

もちろんアルバム毎に特徴はあります。

ただそれだって、金太郎飴の違いでしかありません。

しかし、それがまたいいんですよね。

この人の演奏は、私にとっておいしいみそ汁みたいな存在かもしれません。

こちらの予想を超えることはないが、そうであってかまわないし、それでも充分おいしいのだと。

私はジャズのランキングを作成する時に、あえてハードバップ以外の曲も入れるようにしています。

しかしマクリーンは例外です。

こういう演奏を聞きたいのだからと、半ば開き直って選曲しました。

このアルバムでは冒頭の「センチメンタル・ジャーニー(Sentimental Journey)」の方が有名ですが、私はこちらの2曲目が好みです。

ただそちらも捨てがたいので、リンクだけ貼っておきましょう。

Jackie McLean – Sentimental Journey

 

7位「Outburst」(アルバム:McLean’s Scene)

jackie-mcLean-scene

■曲名:Outburst
■曲名邦題:アウトバースト
■アルバム名:McLean’s Scene
■アルバム名邦題:マクリーンズ・シーン
■動画リンク:「Outburst」

マクリーンのテナーは、あまり上手いと言われることがありません。

私もヘタウマな魅力とさえ思います。

ただ彼はデビュー当時、パーカー直系と評されていました。

パーカーとは、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)のことで、アルト・サックスでは伝説的な存在。

マクリーンはパーカーと面識があり、演奏の指導を受けたことがあるなど、とても可愛がれていたようです。

この曲では、いわゆるパーカー・フレーズが満載です。

この演奏を聞くと、彼は不器用そうなプレイスタイルというだけで、本来はテクニックがある人だと気付かされます。

さてマクリーンは、自分から独自の音楽性を打ち出すタイプではありません。

初期はパーカーの模倣が多かったのですが、その後自分なりの語り口を確立しています。

その後はオーネット・コールマンやエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)に影響を受けた音楽をやっていました。

ただ音楽性は借り物であっても、不思議と彼の演奏はいつも個性的で、すばらしい作品を残しています。

 

8位「A Foggy Day」(アルバム:Lights Out!)

jackie-mcLean-lights

■曲名:A Foggy Day
■曲名邦題:ア・フォギー・デイ
■アルバム名:Lights Out!
■アルバム名邦題:ライツ・アウト
■動画リンク:「A Foggy Day」

この人はワンホーン編成のアルバムがそれほど多くありません。

基本2管で、3管もちらほら見受けられます。

その点同じ高校の先輩であったソニー・ロリンズは、自由に演奏できるワン・ホーンを好んでいたように思います。

一方マクリーンは、似た性質を持つプレイヤーとの共演を好んでいるように思います。

今回は、マクリーン本人名義のアルバムだけを対象にしました。

しかし彼は、他の人のアルバムにも客演が多い人です。

特筆すべきは彼の参加アルバムには、ジャズ史上に残る傑作が少なくないことです。

パッと思い浮かぶだけで、

・ソニー・クラーク(Sonny Clark)「クール・ストラッティン(Cool Struttin’)」
・チャールズ・ミンガス(Charles Mingu)「直立猿人(Pithecanthropus Erectus)」
・ドナルド・バード(Donald Byrd)「フュエゴ(Fuego)」

等々、大名盤が何枚もあります。

聞いたことがある方ならばご存知と思いますが、上記のどのアルバムでも、マクリーンは決定的な仕事をしています。

このアルバムでも「Fuego」で相性の良さを見せた、ドナルド・バードと共演していますね。

この人は様々な人と共演する中で、実力を発揮するタイプの人かもしれません。

スポーツでいえば1人の競技ではなく、団体競技で輝く人ではないでしょうか。

 

9位「I Never Knew」(アルバム:Makin’ the Changes)

jackie-mcLean-makin

■曲名:I Never Knew
■曲名邦題:アイ・ネヴァー・ニュー
■アルバム名:Makin’ the Changes
■アルバム名邦題:メイキン・ザ・チェンジズ
■動画リンク:「I Never Knew」

この人の演奏でよく指摘されるのは、音程の不安定さです。

たとえばこの曲を聞いても、少しそんな感じがしないでもありません。

ただ彼の場合は、必ずしもそのピッチの悪さが欠点になっていない感じがします。

もちろんファンならではのひいき目かもしれませんが。

先程の「Outburst」ではとても流麗な演奏でしたが、この人本来の資質としては、それほど滑らかではないような気がします。

この曲では比較的雄弁な演奏をしていますが、器用そうには感じませんし。

さてこのアルバムは「ビーン・アンド・ザ・ボーイズ(Bean and the Boys)」が、名演だと言われています。

確かに私もすばらしいと思いますが、今回は曲が短いこちらの方を選んでみました。

しかしそちらも捨てがたいので、リンクだけはっておきましょう。

Jackie McLean – Bean And The Boys

余力のある方は、ぜひ聞いてみてください。

 

10位「Embraceable You」(アルバム:A Long Drink of the Blues)

jackie-mcLean-blues

■曲名:Embraceable You
■曲名邦題:エンブレイサブル・ユー
■アルバム名:A Long Drink of the Blues
■アルバム名邦題:ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース
■動画リンク:「Embraceable You」

やはりこの人はマイナー調の曲が似合いますね。

マクリーンのバラードでは、マル・ウォルドロン(Mal Waldron)名義の「レフト・アローン(Left Alone)」がとても有名です。

しかし自分名義のアルバムでも、決定的なバラードの名演をいくつも残しています。

有名なのは、このアルバムのB面の3曲。

他の2曲「アイ・カヴァー・ザ・ウォーターフロント(I Cover the Waterfront)」「ジーズ・フーリッシュ・シングス(These Foolish Things)」も同程度の出来です。

しかしこれほど人柄が表れているように感じられる演奏は、かなり珍しいかもしれません。

自分の心の内を、ありのまま開示しているような感じがしないでしょうか。

メロディをあまりにストレートに演奏してしまうと、少し間が抜けたように感じることがあります。

しかし朴訥でまっすぐなこの演奏の味わいは格別です。

一言で言えば、愚直なバラードといえるかもしれません。

しかしそれゆえに、人の心を打つのがマクリーンの魅力だと思います。

 

関連記事

ハード・バップ(Hard Bop)の名曲名盤10選

チャーリー・パーカー(Charlie Parker)の名曲名盤10選

ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の名曲名盤10選

フィル・ウッズ(Phil Woods)の名曲名盤10選

 

記事一覧

全記事リストは、こちらからどうぞ

 

他ブログ・SNS等

このブログの「トップページ」に戻る
※お気に入りに登録をお願いいたします!

おとましぐらの音楽ブログ(サブブログ)
※オピニオン記事、企画色の強い記事を連載しています

おとましぐらnote(おすすめ曲一覧)
※良い曲を1曲単位で厳選してご紹介しています

おとましぐらXアカウント
※フォローをお願いいたします!

 

Amazon広告

Amazonで調べ物、お買い物をご予定の方は、こちらからどうぞ
※上のリンクから購入すると、購入金額の一部がこのブログの収益となります
※収益はブログの運営維持費用として使わせていただきます

jackie-mcLean-makin
最新情報をチェックしたい方は、フォローをお願いします!