今回はジャッキー・マクリーンのランキングを作成しました。
ハードバップのおいしいところを、ギュっと凝縮した曲ばかりです。
こういう人の個性が分かるようになると、ジャズをもっと楽しめるようになります。
- 1 1位「Sweet Love of Mine」(アルバム:Demon’s Dance)
- 2 2位「I’ll Take Romance」(アルバム:Swing, Swang, Swingin’)
- 3 3位「Appointment in Ghana」(アルバム:Jackie’s Bag)
- 4 4位「Filide」(アルバム:Fat Jazz)
- 5 5位「Pondering」(アルバム:Alto Madness)
- 6 6位「Why Was I Born?」(アルバム:4, 5 and 6)
- 7 7位「Outburst」(アルバム:McLean’s Scene)
- 8 8位「A Foggy Day」(アルバム:Lights Out!)
- 9 9位「I Never Knew」(アルバム:Makin’ the Changes)
- 10 10位「Embraceable You」(アルバム:A Long Drink of the Blues)
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1位「Sweet Love of Mine」(アルバム:Demon’s Dance)
■曲名:Sweet Love of Mine
■曲名邦題:スイート・ラヴ・オブ・マイン
■アルバム名:Demon’s Dance
■アルバム名邦題:デモンズ・ダンス
■動画リンク:「Sweet Love of Mine」
この曲は1967年に録音されていますが、発売は1970年10月です。
1970年といえばマイルス・デイヴィス(Miles Davis)が「ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)」をリリースした年。
まさにジャズの歴史が変わろうとしていた頃、ひっそりこのアルバムがリリースされました。
当時の3年は現代の3年より大きな意味を持っていました。
リリースのタイミングを逸したことで、旬を逃してしまったかもしれません。
良い作品なのにもったいなかったと思います。
ただ一方で彼は、時代の変化を敏感に捉えて発表した作品もリリースしています。
1962年にはオーネット・コールマン(Ornette Coleman)の影響を受けた「レット・フリーダム・リング(Let Freedom Ring)」を発表したりなど、意欲的な取り組みもありました。
今回はそうした曲を取り上げていませんが、どれも興味深い試みばかりです。
さてこの曲は、マクリーン流ボサノヴァ・ジャズといった趣きの名演です。
ハンク・モブレー(Hank Mobley)の「リカード・ボサノヴァ(Recado Bossa Nova)」を思わせるところがないでしょうか。
曲を書いたトランペットのウディ・ショウ(Woody Shaw)も、2:35からすばらしい演奏を披露しています。
2位「I’ll Take Romance」(アルバム:Swing, Swang, Swingin’)
■曲名:I’ll Take Romance
■曲名邦題:アイル・テイク・ロマンス
■アルバム名:Swing, Swang, Swingin’
■アルバム名邦題:スイング・スワング・スインギン
■動画リンク:「I’ll Take Romance」
「4, 5 and 6」とこのアルバムは、最も選曲に迷いました。
この2枚は演奏の平均レベルが高く、これからマクリーンを聞き進みたい方には、最初の1枚としてこの2枚をおすすめいたします。
このアルバムはワンホーン作です。
一般的には「ホワッツ・ニュー(What’s New?)」が有名ですが、私の好みではこの曲でしょうか。
ただそちらも名演なので、リンクだけ貼っておきましょう。
しかしどちらの曲も、実によく歌っています。
五段活用のようなアルバム・タイトル通り、スイングすることしか考えていない感じがいいですね。
あとウォルター・ビショップ・ジュニア(Walter Bishop, Jr.)のピアノも快調ではないでしょうか。
1:59からのピアノソロはとても楽しく、ハッピーなスイングを堪能できます。
3位「Appointment in Ghana」(アルバム:Jackie’s Bag)
■曲名:Appointment in Ghana
■曲名邦題:アポイントメント・イン・ガーナ
■アルバム名:Jackie’s Bag
■アルバム名邦題:ジャッキーズ・バッグ
■動画リンク:「Appointment in Ghana」
マクリーン屈指の名演として名高い曲です。
といってもマクリーンだけがすばらしいのではなく、総合力の勝利といった感じですが。
このアルバムは、レコードでいうところのB面が聞きものです。
なにせこの三管なのですから、ハードバップ・ファンは、聞く前から音が聞こえてくるように感じるかもしれません。
・ジャッキーマクリーン(Jackie McLean)
・ティナ・ブルックス(Tina Brooks)
・ブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)
この曲は1960年の録音ですが、少し新主流派っぽいテーマです。
ただ上記の誰もが、本来クールとかモーダルな演奏をしている人たちではありません。
しかしここでは空気を読んだのか、ハードバップを基本としながらも、少しクールな演奏をしています。
4位「Filide」(アルバム:Fat Jazz)
■曲名:Filide
■曲名邦題:フィリーデ
■アルバム名:Fat Jazz
■アルバム名邦題:ファット・ジャズ
■動画リンク:「Filide」
こちらもボッサ・ナンバーです。
もしくはボッサというより、あやしいモンド・ラウンジみたいな曲かもしれません。
マクリーンのアルト・サックスは、音色に特徴があります。
普通のアルトサックスの音は、もっと軽やかで、音が澄んでいるように思います。
たとえばアート・ペッパー(Art Pepper)は、その軽やかさを活かして、キレッキレの演奏をしていますね。
一方マクリーンの音は音に少し濁りがあって、ヌケが悪いと感じることがあります。
そのせいか、私はいつもアルト・サックスを聞いているような気がしません。
プレイスタイルはかなり異なりますが、少し苦し気に高音を出すテナーサックス、たとえばジョン・コルトレーン(John Coltrane)に似た部分があると思います。
さてこの曲でもマクリーンは、器用とか軽やかといった印象は受けません。
ただ彼の不器用なフレーズには妙な説得力があって、不思議と耳を惹きつけます。
彼の独特な音色は、不器用にフレーズを紡ぎ出すプレイ・スタイルと相性が良いように感じます。
5位「Pondering」(アルバム:Alto Madness)
■曲名:Pondering
■曲名邦題:ポンダリング
■アルバム名:Alto Madness
■アルバム名邦題:アルト・マッドネス
■動画リンク:「Pondering」
このアルバムは、同じアルト・サックス奏者であるジョン・ジェンキンス(John Jenkins)との共同名義です。
イントロから同じテーマのメロディを、2人同時に演奏していますね。
ジャズでは、あえて同じ楽器同士を共演させることがあります。
有名なのはソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)とジョン・コルトレーンが共演した「テナー・マッドネス(Tenor Madness)」です。
このアルバム名は「Alto Madness」ですから、二番煎じ企画なのかもしれません。
同じ楽器同士の醍醐味は、2人の絡みを楽しむことです。
しかしこの曲での2人の演奏は、とても似ていますね。
注意して聞かないと、どちらの演奏か判別がつきません。
マクリーンみたいな人は多いとは言えませんから、わざと似た人を連れてきたような気がします。
先程挙げた「Tenor Madness」は、この部分はどちらの演奏かを当てる、ブラインド・テストによく使われます。
こちらのアルバムもジャズ喫茶などで、そういう目的に使われることがあります。
6位「Why Was I Born?」(アルバム:4, 5 and 6)
■曲名:Why Was I Born?
■曲名邦題:ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?
■アルバム名:4, 5 and 6
■アルバム名邦題:4,5&6
■動画リンク:「Why Was I Born?」
タイトルの「4, 5 and 6」は、このアルバムが4人から6人編成であることから名付けられています。
さて今回は、ほとんどが1950年代から選曲しました。
レーベルでいえば「プレスティッジ(Prestige)」「ジュビリー(Jubilee)」「ブルーノート(Blue Note)」などでリリースされた一連のアルバムは、どれも内容的に大差ありません。
もちろんアルバム毎に特徴はあります。
ただそれだって、金太郎飴の違いでしかありません。
しかしそれがまたいいんですよね。
この人の演奏は、私にとって美味しいみそ汁に似ているかもしれません。
こちらの予想を超えることはほとんどないが、それでかまわないどころかむしろその方が良いぐらいで、充分おいしくいだだける。
このアルバムでは冒頭の「センチメンタル・ジャーニー(Sentimental Journey)」の方が有名ですが、私はこちらの2曲目が好みです。
ただそちらも捨てがたいので、リンクだけ貼っておきましょう。
Jackie McLean – Sentimental Journey
7位「Outburst」(アルバム:McLean’s Scene)
■曲名:Outburst
■曲名邦題:アウトバースト
■アルバム名:McLean’s Scene
■アルバム名邦題:マクリーンズ・シーン
■動画リンク:「Outburst」
マクリーンのテナーは、あまり上手いと言われることがありません。
私もヘタウマな魅力があるように思います。
ただ彼はデビュー当時、パーカー直系と評されていました。
パーカーとは、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)のことで、ジャズ・アルトサックス奏者では伝説的な存在。
マクリーンはパーカーと面識があり、演奏の指導を受けたことがあるなど、とても可愛がれていたようです。
この曲はいわゆるパーカー・フレーズ満載です。
この演奏を聞くと、彼は不器用そうなプレイスタイルというだけで、本来はテクニックがある人なのだと気付かされます。
さてマクリーンは、自分から独自の音楽性を打ち出すタイプではありません。
初期はパーカーの模倣が多かったのですが、その後は自分なりの語り口を確立しています。
その後はオーネット・コールマンやエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)に影響を受けた音楽をやっていました。
ただスタイルは借り物でも、不思議と彼の演奏にはいつも個性が感じられます。
8位「A Foggy Day」(アルバム:Lights Out!)
■曲名:A Foggy Day
■曲名邦題:ア・フォギー・デイ
■アルバム名:Lights Out!
■アルバム名邦題:ライツ・アウト
■動画リンク:「A Foggy Day」
この人はワンホーン編成のアルバムがそれほど多くありません。
基本2管で、3管もちらほら散見されます。
その点同じ高校の先輩であったソニー・ロリンズは、自由に演奏できるワン・ホーンを好んでいました。
一方マクリーンは、似た性質を持つプレイヤーとの共演を好んでいるように思います。
今回はマクリーン本人名義のアルバムだけを対象にしました。
しかし彼は、他の人のアルバムにもよく参加しています。
彼の参加アルバムには、ジャズ史上に残る傑作が少なくありません。
パッと思い浮かんだだけで、
・ソニー・クラーク(Sonny Clark)「クール・ストラッティン(Cool Struttin’)」
・チャールズ・ミンガス(Charles Mingu)「直立猿人(Pithecanthropus Erectus)」
・ドナルド・バード(Donald Byrd)「フュエゴ(Fuego)」
等々、大名盤が何枚もあります。
しかも上記のどのアルバムでも、マクリーンは決定的な仕事をしています。
このアルバムでも「Fuego」で相性の良さを感じさせた、ドナルド・バードと共演していますね。
この人は様々な人と共演する中で、実力を発揮するタイプの人かもしれません。
スポーツでいえば1人の競技ではなく、団体競技で輝く人ではないでしょうか。
9位「I Never Knew」(アルバム:Makin’ the Changes)
■曲名:I Never Knew
■曲名邦題:アイ・ネヴァー・ニュー
■アルバム名:Makin’ the Changes
■アルバム名邦題:メイキン・ザ・チェンジズ
■動画リンク:「I Never Knew」
この人の演奏でよく指摘されるのは、音程の不安定さです。
たとえばこの曲を聞いても、少しそんな感じがしないでもありません。
ただ彼の場合は、必ずしもそのピッチの悪さが欠点になっていない感じがします。
もちろんファンならではのひいき目かもしれませんが。
先程の「Outburst」ではとても流麗な演奏でしたが、この人本来の資質としては、それほど滑らかではないような気がします。
この曲では比較的雄弁な演奏をしていますが、器用そうには感じませんし。
さてこのアルバムは「ビーン・アンド・ザ・ボーイズ(Bean and the Boys)」が、名演だと言われています。
確かに私もすばらしいと思いますが、今回は曲が短いこちらの方を選んでみました。
しかしそちらも捨てがたいので、リンクだけはっておきましょう。
Jackie McLean – Bean And The Boys
余力のある方は、ぜひ聞いてみてください。
10位「Embraceable You」(アルバム:A Long Drink of the Blues)
■曲名:Embraceable You
■曲名邦題:エンブレイサブル・ユー
■アルバム名:A Long Drink of the Blues
■アルバム名邦題:ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース
■動画リンク:「Embraceable You」
やはりこの人はマイナー調の曲が似合いますね。
マクリーンのバラードでは、マル・ウォルドロン(Mal Waldron)名義の「レフト・アローン(Left Alone)」がとても有名です。
しかし自分名義のアルバムでも、決定的なバラードの名演をいくつも残しています。
有名なのは、このアルバムのB面の3曲。
他の2曲「アイ・カヴァー・ザ・ウォーターフロント(I Cover the Waterfront)」「ジーズ・フーリッシュ・シングス(These Foolish Things)」も同等の出来です。
しかしこれほど人柄が表れているように感じられる演奏は、かなり珍しいかもしれません。
自分の心の内を、ありのまま開示しているような感じがしないでしょうか。
あまりにもストレートにメロディを演奏すると、間が抜けたように感じることがあります。
しかし朴訥でまっすぐなこの演奏の味わいは格別です。
一言で言えば、愚直なバラードといえるかもしれません。
しかしそれゆえに、人の心を打つのがマクリーンの魅力だと思います。
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