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ソニー・クラーク(Sonny Clark)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はソニー・クラークのランキングを作成しました。

この人は天才ではないし、際立った個性もありません。

しかしそれゆえ誰よりもハードバップ・ジャズを体現する存在でした。

残された数少ない作品の質はどれも一級品です。

 

1位「Cool Struttin’」(アルバム:Cool Struttin’)

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■曲名:Cool Struttin’
■曲名邦題:クール・ストラッティン
■アルバム名:Cool Struttin’(1958年)
■アルバム名邦題:クール・ストラッティン
■動画リンク:「Cool Struttin’」

このアルバムはハードバップを代表する名盤です。

ただ同じぐらい著名な諸作と比べて、リスナーを圧倒する作品ではありません。

そもそも多くのハードバップは一部の天才プレイヤー以外、突出している音楽ではありません。

特に当時全盛期だったハードバップの多くは、同じぐらいの出来のアルバムが多いように思います。

このアルバムをリリースしたブルーノート・レコード(Blue Note Records)は、その平均水準が特に高いレーベルでした。

天才たちの音楽は、寿司の名店のように明快にすごいと思わせてくれます。

一方このアルバムのように、別世界のような美しさも身を削るスリルがなくても、ジャズを聞いた充実感が味わえる音楽もあります。

特別感や非日常はありませんが、足繁く通いたくなる定食屋さんのような。

このアルバムを聞けば、ジャズの空腹感が満たされて満腹になること請け合いです。

 

2位「Softly As In A Morning Sunrise」(アルバム:Sonny Clark Trio(Blue Note))


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■曲名:Softly As In A Morning Sunrise
■曲名邦題:朝日のようにさわやかに
■アルバム名:Sonny Clark Trio(Blue Note)(1957年)
■アルバム名邦題:ソニー・クラーク・トリオ(ブルーノート)
■動画リンク:「Softly As In A Morning Sunrise」

この記事を書くにあたって、ソニー・クラーク個人をどう評価したらいいかを少し考えてみました。

改めて考えてみると、彼の魅力はつかみどころがありません。

たとえばこの曲での彼ははフェイクを入れず、粒立ちの良いシングルトーンで、原曲のメロディを素直に解釈していますね。

何の変哲もないハードバップ・ピアノですが、私はかなりの名演だと思っています。

しかしその魅力を説明するのはかなり難しいかもしれません。

この人にも特徴はありますが、いわゆる個性派ではありません。

彼の個性というべき部分の多くは、他のハードバップ・プレイヤーに重なる部分を見つけることができます。

お叱りを受けることを覚悟の上であえて言えば、この人でなければという感じはしません。

彼は数多くの優れた作品を残しましたが、それは彼個人ではなく、当時のジャズシーンの勝利みたいなところがあります。

そして当時彼はジャズの全盛期において、一際安定して質の高い作品を残しました。

 

3位「Minor Meeting」(アルバム:Sonny Clark Trio(Time))

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■曲名:Minor Meeting
■曲名邦題:マイナー・ミーティング
■アルバム名:Sonny Clark Trio(Time)(1960年)
■アルバム名邦題:ソニー・クラーク・トリオ(タイム)
■動画リンク:「Minor Meeting」

彼のピアノ・トリオでどれが一番か、度々議論になることがあります。

特に同名の「Sonny Clark Trio」の2種類、ブルーノート盤とタイム盤はよく比較されます。

ただこの2枚は、音楽的にかなり異なるかもしれません。

いかにも定番ハードバップ的なブルーノート盤に対して、こちらのタイム盤はより繊細でスリルがあります。

またブルーノート盤はスタンダード中心で、タイム盤はオリジナル曲中心。

演奏そのものも、同じ人とは思えないほど異なります。

どちらがよりすぐれているかという観点では、このタイム盤の方に軍配が上がるかもしれません。

しかしより親しみやすく気軽に聞けて落ち着くのは、ブルーノート盤の方。

この2枚のどちらが好きかで、その人の好みがうかがえるような気がします。

 

4位「Deep Night」(アルバム:Cool Struttin’)

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■曲名:Deep Night
■曲名邦題:ディープ・ナイト
■アルバム名:Cool Struttin’(1958年)
■アルバム名邦題:クール・ストラッティン
■動画リンク:「Deep Night」

ピアニストにはピアノ・トリオを向きと、そうではないタイプに分かれるように思います。

私はその違いについて、個人競技と団体競技になぞらえることがあります。

ピアノ・トリオ向きは、ビル・エヴァンス(Bill Evans)のような個人競技タイプ。

一方ホーンとの相性が良いピアニストの代表格は、団体競技向きのソニー・クラークかもしれません。

このアルバムのホーンは、アート・ファーマー(Art Farmer)とジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)で、私の分類では彼らは集団競技タイプ。

つまりこのアルバムのメンバーは、多くの関係性の中で自分の持ち味を発揮できる人がそろっています。

加えてこのアルバムでソニー・クラークは、すばらしいオリジナル楽曲を提供しました。

ブルースやハードバップらしい哀愁を含んだ楽曲は、ホーン奏者2人の持ち味とも相性が抜群でした。

 

5位「Speak Low」(アルバム:Sonny’s Crib)

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■曲名:Speak Low
■曲名邦題:スピーク・ロウ
■アルバム名:Sonny’s Crib(1957年)
■アルバム名邦題:ソニーズ・クリブ
■動画リンク:「Speak Low」

ソニー・クラークのホーン作品はどれも名盤ぞろいです。

レーベルはどれもブルーノート。

ブルーノートは、リハーサルにもギャラを支払うことで知られています。

ソニー・クラークはオリジナル曲が多めなので、リハーサルを重ねる中で意識合わせできるのは好都合でした。

又、参加人数が多いホーン作品では特に有利に働いたと思われます。

特にこのアルバムは三管ですし。

この曲は有名なスタンダード・ナンバーですが、彼はいつも素直にメロディを解釈します。

私はソニー・クラークの音楽について、チームプレーに優れた正攻法で戦うスポーツチームに似ているように思います。

そうした彼の持ち味は、組織的に良い作品を生むシステムが整ったブルーノートと合っていたように思います。

 

6位「Sonia」(アルバム:Sonny Clark Trio(Time))

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■曲名:Sonia
■曲名邦題:ソニア
■アルバム名:Sonny Clark Trio(Time)(1960年)
■アルバム名邦題:ソニー・クラーク・トリオ(タイム)
■動画リンク:「Sonia」

再度タイム盤からの選曲です。

このアルバムは彼の作品中でも、かなりの異色作かもしれません。

他のアルバムでの彼は、ビハインド・ザ・ビートと表現される後ノリが特徴です。

しかしこのアルバムでは時に前のめりなる場面があり、他の作品と比較するとリズム感覚からして違います。

また録音のせいか、音色的にもこのアルバムはいつもより硬質な感じも。

他のアルバムはハードバップらしい演奏が多い一方、このアルバムは時々バド・パウエル(Bud Powell)にも似た狂気を宿しています。

そのらしくない演奏が魅力的だから困る(いや、逆にうれしいですが)。

ただ若干人を選ぶところがあるので、最初の1枚としてはおすすめしません。

最初は最高傑作「Cool Struttin’」から入った方が無難かもしれません。

 

7位「Deep in a Dream」(アルバム:Leapin’ and Lopin’)

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■曲名:Deep in a Dream
■曲名邦題:ディープ・イン・ア・ドリーム
■アルバム名:Leapin’ and Lopin’(1961年)
■アルバム名邦題:リーピン・アンド・ローピン
■動画リンク:「Deep in a Dream」

ソニー・クラークの遺作からの曲です。

彼は1963年1月13日、ヘロインの過剰摂取により31歳で亡くなっています。

随分若くして亡くなったのですね。

そのせいか彼のリーダー作はそれほど多くありません。

ジャズのCDやレコードを収集していると、アーティスト単位のアルバム数の多さに驚きます。

実際私も有名なプレイヤーの場合、数十枚程度買っていますし。

しかしこの人の場合、おおよそ10枚程度で主要なアルバムをカバーできます。

しかもそのどれもが名盤といっていい出来で、財布にやさしいだけでなく収集しがいがあります。

このアルバムからもう1曲ご紹介しておきましょう。

Sonny Clark – Somethin’ Special

 

8位「Dancing In The Dark」(アルバム:Standards)

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■曲名:Dancing In The Dark
■曲名邦題:ダンシング・イン・ザ・ダーク
■アルバム名:Standards(1958年)
■動画リンク:「Dancing In The Dark」

ソニー・クラークのトリオ作品では、先程ご紹介したブルーノート盤とタイム盤が有名です。

このアルバムは三番手みたいな位置づけのトリオ作品です。

ただ全体にカクテル・ピアノっぽい軽めの演奏が多いので、特にタイム盤のイメージを求めると肩透かしを食らいます。

このアルバムからもう1曲ご紹介しておきましょう。

Sonny Clark – The Breeze and I

この2曲が気に入ったら買ってみてもいいかもしれません。

全盛期のど真ん中1958年の録音だけあって、期待しすぎなければ決して悪い作品ではありません。

聞きやすいピアノ・トリオをお探しの方は、最も気に入るかもしれません、

 

9位「Bootin’ It」(アルバム:Dial “S” For Sonny)

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■曲名:Bootin’ It
■曲名邦題:ブーティン・イット
■アルバム名:Dial “S” For Sonny(1957年)
■アルバム名邦題:ダイヤル・S・フォー・ソニー
■動画リンク:「Bootin’ It」

デビュー・アルバムの曲です。

さてこの人は日本での人気が高く、本国アメリカでは無名の存在だったとよく言われています。

ウィキペディアにもこう書かれています。

とりわけ日本で人気が高く、ジャズ喫茶で頻繁に流された。しかし、本国アメリカではヒットに結びつかず、ブルーノートの創設者アルフレッド・ライオンは、日本から本作の注文が殺到したことを不思議に思ったという。

ソニー・クラーク ウィキペディア

そういえばジョン・ゾーン(John Zorn)も、日本での知名度の高さに驚いていました。

当時ソニー・クラークのアルバムはそれほど売れませんでした。

もし本国で彼の人気が高ければ、もっと多くの作品が残されていたでしょう。

一方判官贔屓の国日本では、この人のようなB級扱いされがちなプレイヤーを密かに愉しむ文化があります。

本国にさきがけてソニー・クラークを高く評価した日本のファンは、お目が高かったと思います。

 

10位「Junka」(アルバム:My Conception)

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■曲名:Junka
■曲名邦題:ジャンカ
■アルバム名:My Conception(1979年)
■アルバム名邦題:マイ・コンセプション
■動画リンク:「Junka」

先程私はこの人について、天才ではないと書きました。

しかしハードバップの体現し象徴していることにおいては、多くの天才たちを凌駕しているかもしれません。

たしかに彼の音楽は切れとかスリルとか、アドリブの創造性では突出していません。

その代わりにB級グルメのような味わいにおいては、誰にも勝るとも劣らない人でした。

特に彼が書いたオリジナル曲は、ブルースやマイナー調のメロデイなど、日本人との相性が抜群でしたし。

加えて彼の音楽はジャズの魅力が分かりやすく表現されており、初心者をジャズに開眼させる入口としても最適でした。

この人の音楽は、おでんとかジャガイモの煮っころがしなどの大衆料理に似ているかもしれません。

天才シェフのような特別感はありませんが、美味しい料理を提供する安定感は尋常ではありません。

ソニー・クラークの音楽は、ハードバップの着飾らない魅力にあふれています。

 

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