今回はレッド・ガーランドのランキングを作成しました。
この人はジャズ・ピアニストの中でも聞きやすい方かもしれません。
ただ彼の音楽には、耳障りの良さの先に、もう一段の魅力があります。
その感覚は言葉では説明しがたいので、ぜひ最後まで聞いて実感していただければと思います。
- 1 1位「Will You Still Be Mine?」(アルバム:Groovy)
- 2 2位「C-Jam Blues」(アルバム:Groovy)
- 3 3位「A Foggy Day」(アルバム:A Garland of Red)
- 4 4位「Almost Like Being in Love」(アルバム:Red Garland’s Piano)
- 5 5位「There Will Never Be Another You」(アルバム:Red Garland at the Prelude)
- 6 6位「M Squad」(アルバム:Red in Blues-ville)
- 7 7位「Rain」(アルバム:All Kinds of Weather)
- 8 8位「Bye Bye Blackbird」(アルバム:Red Garland at the Prelude)
- 9 9位「Soon」(アルバム:Can’t See for Lookin’)
- 10 10位「St. James Infirmary」(アルバム:When There Are Grey Skies)
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1位「Will You Still Be Mine?」(アルバム:Groovy)
■曲名:Will You Still Be Mine?
■曲名邦題:ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?
■アルバム名:Groovy
■アルバム名邦題:グルーヴィー
■動画リンク:「Will You Still Be Mine?」
マット・デニス(Matt Dennis)が書いた小粋な曲です。
レッド・ガーランドのピアノについてよく「転がるようなピアノ」という表現が使われます。
この曲を聞けば、その意味を理解できるかもしれません。
これ以上なく転がりまくっていますから(笑)
その玉が転がるようなピアノとセットで語られるのが、ピアノの音の美しさ。
ピアノ自体に何か特別な秘密があるわけではありませんが、確かに彼のピアノは音が美しいと感じます。
逆に音が濁っていると言われるピアニストもいますが、それは必ずしも悪い意味ではありません。
プレイスタイルや奏法、そして何よりそのピアニストが表現したい音楽によって異なります。
ファンキーなピアニストは、音の美しさより優先すべきことがありますし。
レッド・ガーランドの音の美しさもまた、彼がそういう音楽を目指していることを示しています。
2位「C-Jam Blues」(アルバム:Groovy)
■曲名:C-Jam Blues
■曲名邦題:C・ジャム・ブルース
■アルバム名:Groovy
■アルバム名邦題:グルーヴィー
■動画リンク:「C-Jam Blues」
ジャズ関係の書籍や特集で代表曲として紹介されるのは、ほぼ全てがこの曲です。
私も1位の曲と同じぐらい好きな曲ですし。
ただ私はこのブログでジャズの選曲をする時、ブルースの曲を選ぶのにためらうことがあります。
このブログは初心者を意識して選曲しています。
ところがブルースは、必ずしも初心者向けではないように思われますから。
ただこの人はブルースの名手でもありますから、そうした側面をご紹介しないわけにはいきません。
これほどの名演であれば、安心してご紹介できますが。
次々に繰り出される名フレーズの連続に、8分を超える長さもあっという間に過ぎていきます。
3位「A Foggy Day」(アルバム:A Garland of Red)
■曲名:A Foggy Day
■曲名邦題:フォギー・デイ
■アルバム名:A Garland of Red
■アルバム名邦題:ア・ガーランド・オブ・レッド
■動画リンク:「A Foggy Day」
1956年8月に録音された初リーダー作です。
同年5月と10月には、あの有名なマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のマラソン・セッションが行われました。
つまり彼はマラソン・セッションの合間に、ソロ・デビューしたのですね。
マラソン・セッションから1曲ご紹介しましょう。
Miles Davis – You’re My Everything
上の曲で最初彼がシングル・トーンで弾いたところ、マイルスに口笛で止められて、その後ブロックコードで弾き直しています。
マイルス・デイヴィスが、ブロックコード奏法が特徴のアーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)を好んでいたことは、よく知られています。
今回選んだ「A Foggy Day」でも、後半ブロックコード奏法が効果的に使われていますね。
4位「Almost Like Being in Love」(アルバム:Red Garland’s Piano)
■曲名:Almost Like Being in Love
■曲名邦題:オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ
■アルバム名:Red Garland’s Piano
■アルバム名邦題:レッド・ガーランズ・ピアノ
■動画リンク:「Almost Like Being in Love」
この人は似たような作品が多いですが、どれも質は高く、遺作となった「ミスティ・レッド(Misty Red)」を含めて駄作がありません。
特に初期は短期間に同じメンバーで質の高い作品を量産していました。
このアルバムもその1つ。
初期の高品質と安定性には、ドラムのアート・テイラー(Art Taylor)の貢献が大きかったかもしれません。
アート・テイラーのドラムは、派手さこそありませんがとにかく堅実で、主役を引き立ててくれます。
この頃レッド・ガーランドは、マイルス・デイヴィスのバンドに在籍していました。
当時マイルスのドラムは、派手なタイプのフィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)。
レッド・ガーランドは、そんなフィリー・ジョーともうまくやっていました。
マイルスのバンドで、2人が共演している曲をご紹介します。
もしこのランキングに入れたら、上位間違いなしの名演です。
ただ当時のレッド・ガーランドは、刺激したりあおるのではなく、自分を引き立ててくれるドラムを求めていたのかもしれません。
5位「There Will Never Be Another You」(アルバム:Red Garland at the Prelude)
■曲名:There Will Never Be Another You
■曲名邦題:ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
■アルバム名:Red Garland at the Prelude
■アルバム名邦題:レッド・ガーランド・アット・ザ・プレリュード
■動画リンク:「There Will Never Be Another You」
ジャズはライブ・アルバムの名盤が少なくありません。
その点レッド・ガーランドはライブ盤こそ多くありませんが、とびっきりのアルバムを残してくれました。
この曲でレッド・ガーランドは、ドラムから刺激を受けています。
ビル・エヴァンス(Bill Evans)でいえば、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス(At The Montreux Jazz Festival)」のような位置づけの作品かもしれません。
さて改めてこのアルバムの曲名を見て、古い時代の曲が多いと感じました。
デューク・エリントン(Duke Ellington)の曲が2曲、カウント・ベイシー(Count Basie)の曲が2曲、そしてこの曲も古くから演奏されています。
ベイシーの曲では「サテン・ドール(Satin Doll)」が取り上げられています。
実際レッド・ガーランドは、ベイシーとナット・キング・コール(Nat King Cole)から影響されたのだそうです。
そういえば「There Will Never Be Another You」も、ナットキングコールの名唱で知られている曲です。
レッド・ガーランドのピアノは、とかく軽いと言われがちかもしれません。
ただ彼の演奏に古い時代の香りを感じることができれば、軽いだけとは感じないはずです。
6位「M Squad」(アルバム:Red in Blues-ville)
■曲名:M Squad
■曲名邦題:シカゴ特捜隊Mのテーマ
■アルバム名:Red in Blues-ville
■アルバム名邦題:レッド・イン・ブルースヴィル
■動画リンク:「M Squad」
彼の最高傑作では「Groovy」が不動の地位を確立しています。
対抗は「Red Garland at the Prelude」あたりでしょうか。
そして大穴は、このアルバムかもしれません。
このアルバムではブルースの曲ばかり取り上げられていますが、どれも名演ばかり。
レッド・ガーランドは、シングルトーンが魅力ですが、よく転がるフレーズが特徴です。
その様子から、カクテル・ピアニストとやゆされることもあります。
後は先ほど申し上げたブロックコード奏法も、特徴といえるかもしれません。
ただ私が最も興味深いのは、カクテル・ピアニスト的でありながら、ブルースを得意としていること。
この人のピアノは二層構造で、最初に愛らしく華麗なプレイ、踏み込んで聞くとブルースの味わいが待ち受けています。
根本にブルースがあるおかげで、軽さとコクの両面を備えています。
7位「Rain」(アルバム:All Kinds of Weather)
■曲名:Rain
■曲名邦題:レイン
■アルバム名:All Kinds of Weather
■アルバム名邦題:オール・カインズ・オブ・ウェザー
■動画リンク:「Rain」
このアルバムは、天気をテーマにした曲が集められています。
この曲は「雨」という曲名ですが、演奏はむしろ晴天を感じさせますね(笑)
彼のピアノは気軽に聞けるのが魅力です。
私はマッコイ・タイナー(McCoy Tyner)も好きですが、彼のアルバムを聞く前は少し覚悟じみたものが必要です。
しかしこの人に関しては、聞く前に構えることがありません。
ただその分かりやすさと軽さゆえに、従来のジャズ・ジャーナリズムでは軽視されがちかもしれません。
よくジャズ初心者向けに、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビイ(Waltz for Debby)」をおすすめする人がいますが、私は少しとっつきにくい面があると感じます。
明快にスイングしているとは言い難いですし。
私ならば、ジャズ初級者にレッド・ガーランドをおすすめします。
8位「Bye Bye Blackbird」(アルバム:Red Garland at the Prelude)
■曲名:Bye Bye Blackbird
■曲名邦題:バイ・バイ・ブラックバード
■アルバム名:Red Garland at the Prelude
■アルバム名邦題:レッド・ガーランド・アット・ザ・プレリュード
■動画リンク:「Bye Bye Blackbird」
この人がカクテル・ピアニストと呼ばれることについて否定し擁護する人がいますが、私は否定しません。
ただ極上のカクテル・ピアニストだと思っています。
その質の高さの証拠として、私はこの曲を提出したいと思います。
私はこの曲を大名演だと主張するつもりはありませんが、3時のおやつのBGMには最適です。
先程申し上げたように彼のピアノはキラキラしています。
エレクトリック・ピアノっぽいと思えるほど。
ただそのキラメキは、日常に小確幸をもたらすかもしれません。
私にはレッド・ガーランドを否定する人は、お菓子ではお腹が一杯にならないと言いたいように聞こえます。
しかし上質なデザートが人生の質を上げるのもまた事実。
彼の演奏はそういう類のものだと思います。
9位「Soon」(アルバム:Can’t See for Lookin’)
■曲名:Soon
■曲名邦題:スーン
■アルバム名:Can’t See for Lookin’
■アルバム名邦題:キャント・シー・フォー・ルッキン
■動画リンク:「Soon」
今回ご紹介する中で最も知名度が低い曲かもしれません。
他にも取り上げたい曲やアルバムはたくさんあります。
コンガが入っている「マンテカ(Manteca)」捨てがたいですし「ブライト・アンド・ブリージー(Bright and Breezy)」の「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート(On Green Dolphin Stree)」も良い演奏です。
そうした中から最後の1枠に、この小粋で愛らしい曲を選んでみました。
少しためらいがあったのは、この曲には弱点があるからです。
それはポール・チェンバース(Paul Chambers)のアルコ(弓弾き)ソロ。
普段ポール・チェンバースはスムーズなベースラインで曲を引っ張り、的確にサポートしています。
しかし時々彼はソロパートで、弓弾きを披露することがあります。
中には良い演奏もありますが、正直私はあまり歓迎していません。
10位「St. James Infirmary」(アルバム:When There Are Grey Skies)
■曲名:St. James Infirmary
■曲名邦題:セント・ジェームス病院
■アルバム名:When There Are Grey Skies
■アルバム名邦題:ホエン・ゼア・アー・グレイ・スカイズ
■動画リンク:「St. James Infirmary」
レッド・ガーランドは、ハードバップのピアニストに分類されます。
ハードバップといえば哀愁ですが、彼の場合は華麗さゆえか、リリカルであっても哀愁は色濃くありません。
ただこの曲はいかがでしょうか。
彼の演奏は軽いと言われがちですが、ここには憂い、そして一音の重みがあります。
どんなジャズ・プレイヤーも一面だけで語ることができないと、改めて感じさせてくれる演奏です。
だからこそジャズは奥深く、おもしろいのでしょう。
今回私は一計を案じ伏線を回収する意味で、あえてこの曲を最後に配置しました。
本来は1位にしてもいいぐらいの傑作ですが、普段の演奏を知っていただいてから、最後にサプライズを意図してみました。
カクテル・ピアニストによる落日の憂愁といえる演奏です。
このピアノには、恥ずかしげもなくそんな文学的表現を使わせる何かがあるのかもしれません。
充実した音楽体験の後の余韻には格別なものがあります。
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