今回はリロイ・ハトソンのランキングを作成しました。
この人は強い個性で圧倒するタイプのアーティストではありません。
その代わりに、バランス感覚と総合力の高さを併せ持った人でした。
突出した個性や強味がなくても、一流の域に達した人だと思います。
- 1 1位「Love Oh Love」(アルバム:Love Oh Love)
- 2 2位「I Think I’m Falling In Love」(アルバム:Hutson II)
- 3 3位「Lucky Fellow」(アルバム:Hutson)
- 4 4位「It’s The Music」(アルバム:Feel the Spirit)
- 5 5位「Where Did Love Go?」(アルバム:Closer to the Source)
- 6 6位「All Because of You」(アルバム:Hutson)
- 7 7位「It’s Different」(アルバム:Hutson)
- 8 8位「Could This Be Love」(アルバム:The Man!)
- 9 9位「I Bless the Day」(アルバム:Hutson)
- 10 10位「Feel The Spirit (’76)」(アルバム:Feel the Spirit)
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1位「Love Oh Love」(アルバム:Love Oh Love)

■曲名:Love Oh Love
■曲名邦題:ラヴ・オー・ラヴ
■アルバム名:Love Oh Love(1973年)
■アルバム名邦題:ラヴ・オー・ラヴ
■動画リンク:「Love Oh Love」
デビュー・アルバムの曲です。
10代の頃、彼はNu-Tonesというグループを結成しました。
その後1968年デボラ・ロリンズ(Deborah Rollins)とのデュオ、シュガー&スパイス(Sugar & Spice)でデビューしています。
彼は大学に進学すると、そこでダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)のルームメイトになりました。
この出会いはリロイにとって、人生の大きな転換点になりました。
それがきっかけでリロイ・ハトソンは、大学の専攻を音楽理論と作曲に変更していますから。
その後彼はカーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)が結成したグループ、メイフィールド・シンガーズ(Mayfield Singers)に参加しました。
更にインプレッションズ(The Impressions)に参加した後、このアルバムでソロ・デビューしました。
2位「I Think I’m Falling In Love」(アルバム:Hutson II)

■曲名:I Think I’m Falling In Love
■曲名邦題:アイ・シンク・アイム・フォーリング・イン・ラヴ
■アルバム名:Hutson II(1976年)
■アルバム名邦題:ハトソン2
■動画リンク:「I Think I’m Falling In Love」
曲名の「I Think I’m Falling In Love」の「I Think」という部分が、いかにもこの人らしいかもしれません。
「I’m Falling In Love」は「私は恋に落ちた」という意味です。
一方「I Think I’m Falling In Love」は「恋に落ちたと思う」と変わり「自分はそう認識した」みたいな感じになっていますね。
この曲の主人公はある日、自分が恋に落ちたと気付きました。
彼は自分が自分ではないように感じています。
頭の中がぐるぐる回って、食欲もなく夜も眠れません。
おそらく普段のリロイ・ハトソンは、冷静で温厚な人だと思われます。
しかし彼は制御できない情熱を、心の奥底にしまい込みがちな人なのかもしれません。
そのせいか彼の音楽は冷静且つ温厚である一方で、押しの強さに欠ける面があるように思います。
当時彼が本当に恋をしていたのかは分かりません。
ただもしそうだとしたら、この曲の熱にうなされたような狂おしさもうなづけます。
3位「Lucky Fellow」(アルバム:Hutson)

■曲名:Lucky Fellow
■曲名邦題:ラッキー・フェロー
■アルバム名:Hutson(1975年)
■アルバム名邦題:ハトソン
■動画リンク:「Lucky Fellow」
彼はリアルタイムでヒット曲らしいヒットはありません。
しいて言えば「Feel the Spirit」が、ディスコ・チャートで5位になったぐらい。
ただ現在は、この人といえばこの曲です。
実際「Lucky Fellow: the Very Best of」「Lucky Fellow (The Curtom Anthology)」など、いくつかのベスト・アルバムで、この曲がタイトルに採用されています。
当時はシングルカットされなかったこの曲が、なぜ代表曲や定番として挙げられるのでしょうか。
それは多くのDJがこぞってこの曲をプレイしたからです。
趣味の良い洗練されたグルーヴが魅力のこの曲は、当時レア・グルーヴを発掘していたDJによって再評価されました。
4位「It’s The Music」(アルバム:Feel the Spirit)

■曲名:It’s The Music
■曲名邦題:イッツ・ザ・ミュージック
■アルバム名:Feel the Spirit(1976年)
■アルバム名邦題:フィール・ザ・スピリット
■動画リンク:「It’s The Music」
彼の作品の中で最もファンク色の強いアルバムです。
彼の音楽はシカゴ・ソウル時代から、次第にメロウな作風に変化していきました。
その中でもこのアルバムは、ホットな曲が多いのが魅力です。
たとえばこの曲をお聞きください。
インタールード風のイントロ後、ギターのカッティングといなたいリズムがすばらしいですね。
1:06からのサックスは短いながらも、ジャージーHIPHOP風でとてもカッコいいです。
野太いべースが終始曲をリードしています。
この後彼はメロウな作風に戻りますが「Unforgettable」「Paradise」では、またディスコ路線に返り咲きました。
5位「Where Did Love Go?」(アルバム:Closer to the Source)

■曲名:Where Did Love Go?
■曲名邦題:ホエア・ディド・ラヴ・ゴー
■アルバム名:Closer to the Source(1978年)
■アルバム名邦題:クローサー・トゥ・ザ・ソース
■動画リンク:「Where Did Love Go?」
この曲はヒット作マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の「ホワッツ・ゴーイン・オン(What’s Going on)」を意識しているように思います。
しかし当時はそれでも売れませんでした。
彼はヒットチャートを賑わせた人ではないので、メインストリームでは過小評価されがちです。
現時点では日本語のウィキペディアもありませんし。
そのせいか彼のCDは長い間入手困難な状況が続きました。
私は2in1のアルバムで所有していましたが、それもほぼ見かけなくなりました。
音源の入手が難しいこともあって、彼の人気は広がりにくかったように思います。
現在はCDを入手しやすくなりましたが。
そんな今こそ改めてご紹介しておきたいと思い、この記事を書きました。
「アンフォゲッタブル(Unforgettable)」からも、1曲ご紹介しておきましょう。
過去の焼き直しが多い「Soothe You Groove You」はともかく、「パラダイス(Paradise)」まではどれも必聴です。
6位「All Because of You」(アルバム:Hutson)

■曲名:All Because of You
■曲名邦題:オール・ビコーズ・オブ・ユー
■アルバム名:Hutson(1975年)
■アルバム名邦題:ハトソン
■動画リンク:「All Because of You」
まずイントロのドラム・ブレイクがすばらしいですね。
7分超えという長めのミディアム・ダンサーですが、じっくり腰を落ち着けて味わいたい逸品です。
適度に憂いを感じさせるストリングスもたまりません。
というよりボーカルを差し置いて、ストリングスが主役の曲と言ってもいいかもしれません。
この曲のアレンジは、リチャード・テュフォ(Rich Tufo)。
カーティス・メイフィールドなどのアルバムで、よく名前を見かける人です。
リロイ・ハトソンは良いボーカリストですが、ストリングスに埋没しそうなところが、いかにもこの人らしいかもしれません。
7位「It’s Different」(アルバム:Hutson)

■曲名It’s Different
■曲名邦題:イッツ・ディファレント
■アルバム名:Hutson(1975年)
■アルバム名邦題:ハトソン
■動画リンク:「It’s Different」
このアルバムから彼の音楽性が変わりました。
この曲のアレンジには、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の影響を感じます。
後半のシンセサイザーは、明らかにスティーヴィーが切り開いた地平を踏まえて鳴っていますね。
この人はついにスティーヴィー・ワンダーやカーティス・メイフィールドのような個性派のスタイリストにはなれませんでした。
ただジョージ・デューク(George Duke)などにも言えますが、借り物のスタイルで質の高い音楽を生みせる出すタイプの人でした。
また彼の音楽はジェームス・ブラウン(James Brown)のように、強引にリスナーを引きずり込むところはありません。
ただ抑制された控え目な魅力に気付きさえすれば、彼の音楽はレジェンドに劣らない品質を備えていました。
彼はレア・グルーヴで再評価されると、その後フリーソウルのコンピにも収録されました。
再発が進んだ今、本当の再評価はこれからかもしれません。
8位「Could This Be Love」(アルバム:The Man!)

■曲名:Could This Be Love
■曲名邦題:クッド・ジス・ビー・ラヴ
■アルバム名:The Man!(1974年)
■アルバム名邦題:ザ・マン!
■動画リンク:「Could This Be Love」
セカンド・アルバムの曲です。
私は彼の音楽を、大まかに以下の時期に分けて考えています。
シカゴ・ソウル時代 →メロウ路線時代 →ディスコ時代
もちろんおおよその流れにすぎませんが。
このアルバムまでは、シカゴらしさが漂うソウル・ミュージックでした。
この作品がリリースされた1974年頃、シカゴはスウィート・ソウルの最盛期にありました。
スウィート・ソウルがお好きな方は、以下の記事も合わせてどうぞ。
ストリングス主体のこういう曲では、彼に音楽はスウィート・ソウルにも似た魅力があります。
もう1曲ご紹介しておきましょう。
この頃彼が在籍していたカートム(Curtom Records)は、カーティス・メイフィールドが創設したレーベルでした。
そのせいか彼はニューソウルに分類されることがあります。
しかしこの人にはシンガーソングライター的なメッセージ性はなく、私はニューソウルとして聞いたことがありません。
9位「I Bless the Day」(アルバム:Hutson)

■曲名:I Bless the Day
■曲名邦題:アイ・ブレス・ザ・デイ
■アルバム名:Hutson(1975年)
■アルバム名邦題:ハトソン
■動画リンク:「I Bless the Day」
彼のアルバムの最高傑作として挙げられるのは「Love Oh Love」かこの「Hutson」あたりの声が多いと思います。
私はといえば「Hutson」派の立場です。
このランキングでも、そのアルバムから4曲も選んでいますし。
今回良いバラードをいくつかリストアップしましたが、やはりこのアルバムからご紹介したいと思います。
この曲とどちらにするか迷ったのは、以下の曲。
リンクだけ貼っておきましょう。
Leroy Hutson – So In Love With You
こうしたバラードでは、繊細な歌の魅力がより引き立ちます。
10位「Feel The Spirit (’76)」(アルバム:Feel the Spirit)

■曲名:Feel The Spirit (’76)
■曲名邦題:フィール・ザ・スピリット
■アルバム名:Feel the Spirit(1976年)
■アルバム名邦題:フィール・ザ・スピリット
■動画リンク:「Feel The Spirit (’76)」
最後にインストの曲をご紹介しましょう。
彼はダニー・ハサウェイと一緒に、傑作インスト「ゲットー」を共作しました。
「ゲットー」は後にリロイ自身も再演しましたが、やはりダニーのバージョンにはかないません。
その代わりにご紹介したいのが、この「Feel The Spirit (’76)」。
ダンスフロアーで機能しそうな、実に胸躍るダンサーに仕上がりました。
彼は突出した強味を持たず、総合力を武器に良い作品を生み出せるアーティストでした。
そうした資質はプロデューサー向きといえるかもしれません。
実際彼は自分の作品だけでなく、ナチュラル・フォー(Natural Four)のプロデューサーとしてもすばらしい仕事をしています。
この「Feel The Spirit (’76)」にも、そうした彼の長所がよく表れているように思います。
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