今回はきのこ帝国のランキングを作成しました。
解散してもう随分経ちますが、ここで自分なりに一旦まとめておきたいと思いました。
彼らの音楽は、時間の経過してもなお素通りできません。
- 1 1位「春と修羅」(アルバム:eureka)
- 2 2位「ユーリカ」(アルバム:eureka)
- 3 3位「金木犀の夜」(アルバム:タイム・ラプス)
- 4 4位「ロンググッドバイ」(アルバム:ロンググッドバイ)
- 5 5位「国道スロープ」(アルバム:eureka)
- 6 6位「風化する教室」(アルバム:eureka)
- 7 7位「Telepathy/Overdrive」(アルバム:フェイクワールドワンダーランド)
- 8 8位「クロノスタシス」(アルバム:フェイクワールドワンダーランド)
- 9 9位「海と花束」(アルバム:ロンググッドバイ)
- 10 10位「夏の影」(アルバム:愛のゆくえ)
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1位「春と修羅」(アルバム:eureka)
■曲名:春と修羅
■アルバム名:eureka
■動画リンク:「春と修羅」
この曲については、まず最初に歌詞からご紹介しなければいけません。
あいつをどうやって殺してやろうか(中略)
完全犯罪とかどうでもよくて
金属バットを振り抜く夢(中略)なんかぜんぶめんどうくせえ
強いインパクトを与える言葉は、初期のCOCCOを思わせます。
引用することすらためらわれる、刺さる激しい言葉の数々。
実際「夢」(作詞:佐藤)という一語がなかったら、引用さえできませんでした。
引用した言葉が危険だと、Googleから警告されることがありますし。
ただ私はコーン(Korn)などでもそう感じますが、超絶ネガティヴな曲にいやされると感じることがあります。
そもそも全ての現実をまともに受け止めたら、普通の人はメンタルを病みます。
どこかで負の感情の逃げ道を確保しなければいけませんから。
2位「ユーリカ」(アルバム:eureka)
■曲名:ユーリカ
■アルバム名:eureka
■動画リンク:「ユーリカ」
初期のダークサイトを象徴するシューゲイザーの曲です。
曲名はアルバム・タイトルの「eureka」をカタカナにしているのですね。
そもそも「ユーリカ」とは何なのでしょうか。
調べてみたところ「ユーリカ」とは「エウレカ」とも呼ばれる古代ギリシャ文字で「私は見つけた」という意味なのだそうです。
ではこの曲では何を見つけたのでしょうか。
みつけたら思い出せるでしょう
ここで重要なのは「思い出す→見つける」ではないこと。
現時点では何を探しているのか知らず、それでも探し求めているのですね。
しかし探し求める人には希望があるようです。
ゆこうよ その先の明日へ 明日へ 明日へ
「その先の明日へ」(作詞:佐藤)とは探し求めたその先ということでしょう。
暗闇深いファーストにも希望が見え隠れしています。
3位「金木犀の夜」(アルバム:タイム・ラプス)
■曲名:金木犀の夜
■アルバム名:タイム・ラプス
■動画リンク:「金木犀の夜」
このバンドは佐藤千亜妃が曲を書き、ボーカルとギターを担当しています。
この曲の歌詞には、以下のような箇所があります。
いつか他の誰かを
好きになったとしても忘れないよ
こういうアンビバレンツな訳あり感については、また後で触れたいと思います。
このアルバムを最後に彼らは解散しました。
2019年5月27日、ベース・ボーカルの谷口が家業を継ぐため脱退[1][2]。それに伴い同日をもって活動休止に突入した[1][2]。
ただ何も問題がないのなら、そもそも解散しないかもしれません。
多くのバンドの解散事情を知っている私は、ついそう思ってしまいます。
離婚する夫婦は最後に「ありがとう」と言って別れたとしても、それまでには様々な事情が積み重なっているものですし。
ただこの曲を聞く限り、少なくとも彼らは音楽的に有終の美を飾りました。
4位「ロンググッドバイ」(アルバム:ロンググッドバイ)
■曲名:ロンググッドバイ
■アルバム名:ロンググッドバイ
■動画リンク:「ロンググッドバイ」
「ロンググッドバイ」という曲名は、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ(The Long Goodbye)」から取られたのかもしれません。
その小説では容易には断ち切れない情が、ストイックな文章で描写されていました。
私は佐藤千亜妃の歌詞に、愛憎入り乱れたもの感じます。
一部分だけでは語ることができないようなアンビバレンツな何かを。
たとえば別れても幸せになってほしいけど、たまには私との幸せな日々を思い出してほしいみたいな感じ。
きれいごとのようですが、どこかきれいごとではありません。
おそらくその心理の裏側には、暴かれることを望まない本人たちにしか分からない暗黙の合意があります。
しかし「ロンググッドバイ」とは、実に不思議な言葉です。
今後一切会わないと心に決めているのなら、単に「グッドバイ」で済むはず。
「長いお別れ」という言葉には、時が経てばいつかまた会えるという思いがにじんでいるかもしれません。
5位「国道スロープ」(アルバム:eureka)
■曲名:国道スロープ
■アルバム名:eureka
■動画リンク:「国道スロープ」
この曲の主人公は、男性からDV被害を受けた過去のある女性です。
もう何年も前のことなのに、身体には痛みが残っているようです。
しかしそれ以上に、言葉の暴力による心の傷がまだ完治していません。
ちなみに佐藤千亜妃はこういう人です。
2004年の第29回ホリプロタレントスカウトキャラバンで、応募4万2816人の中からグランプリを獲得[3]。フジテレビの深夜ドラマ『青空恋星』で女優デビュー。
芸能人時代の写真もご紹介しておきましょう。
この写真の笑顔は偽りなのかもしれないと、ふと思う。
アイドル時代の写真と上のアルバム・ジャケットの間に大きな断絶を感じます。
6位「風化する教室」(アルバム:eureka)
■曲名:風化する教室
■アルバム名:eureka
■動画リンク:「風化する教室」
彼らのデビューまでの道のりは、決して順調ではありませんでした。
2005年頃佐藤千亜妃は女優として活動していました。
このバンドはその2年後、2007年に結成されています。
その後2012年にインディーズでミニ・アルバムをリリースし、翌年この作品でアルバム・デビューしました。
5年という年月の経過から、彼女が芸能人だったことは有利に働かなかったように思います。
下積みの長さゆえか、このデビュー・アルバムはすばらしい作品に仕上がりました。
この曲の歌詞の一節をご紹介しましょう。
深海のね 魚たちは
浅瀬ではね 生きてゆけないの
この歌詞が示す通り佐藤千亜妃は、浅瀬では生きられない人なのかもしれません。
そんな女性が芸能界で生きていくのは相当難しかったのではないかと推察されます。
7位「Telepathy/Overdrive」(アルバム:フェイクワールドワンダーランド)
■曲名:Telepathy/Overdrive
■アルバム名:フェイクワールドワンダーランド
■動画リンク:「Telepathy/Overdrive」
※音が大きいので、少しボリュームを下げてお聞きください
セカンド・アルバムの曲です。
初期の作品をリリース順を並べてみましょう。
2012年 ミニ・アルバム「渦になる」
2013年 EP「ロンググッドバイ」
2013年 ファースト・アルバム「eureka」
その後2014年のこの作品につながるわけですが、ここまでが私の最も好きな時期です。
このアルバムは他にも「東京」や「フェイクワールドワンダーランド」などが収録されています。
後者だけリンクを貼っておきましょう。
このアルバムでは、世界はフェイクだけど驚きに満ちていると言いたいようですね。
しかしその感覚は、この世界が偽りだと知っている人だけのもの。
ふと私はピクシーズ(Pixies)の「世界を騙せ(Trompe Le Monde)」というアルバム名を思い出しました。
8位「クロノスタシス」(アルバム:フェイクワールドワンダーランド)
■曲名:クロノスタシス
■アルバム名:フェイクワールドワンダーランド
■動画リンク:「クロノスタシス」
このセカンド・アルバムは、後のポップ路線の布石となりました。
楽曲の質は高く、この記事では2曲しかご紹介できませんでしたが、他にも質の高い楽曲がそろっています。
有名曲「東京」も良い曲ですが、ここではアルバム・タイトル曲をご紹介しておきましょう。
先程から私は佐藤千亜妃のことばかり書いています。
その他のメンバーで特に注目したいのは、ギターのあーちゃんです。
そもそもバンド名の由来も彼女ですし。
バンド名は当時ギターのあーちゃんの格好がきのこのようだったことと、ゆらゆら帝国からきのこ帝国と名付けられた。
あーちゃんのキノコっぽい写真を探してみましたが、見つかりませんでした。
彼女はナンバーガールに影響されていたようです。
本家に肉薄するギターが、このバンドのサウンド面の要でした。
9位「海と花束」(アルバム:ロンググッドバイ)
■曲名:海と花束
■アルバム名:ロンググッドバイ
■動画リンク:「海と花束」
初期の彼らはまだ何者でもないものの、得体の知れないエネルギーで満ち満ちていました。
その未完成なエネルギーがよく表れているのがこの曲。
先行する音源としては「渦になる」というEPがあります。
そのEPからも1曲ご紹介しましょう。
きのこ帝国 – WHIRLPOOL
※音が大きいので、少しボリュームを下げてお聞きください
私は彼らの最高傑作は、ファースト・アルバムだと思います。
一方「猫とアレルギー」「愛のゆくえ」あたりは、完成度が高いことは認めるものの、個人的にはあまり聞こうという気が起きません。
上記2作で私が欠けると思ったのは、世界に引き込む強引な腕力。
もしかしたらそれは私にとって、メロディが良いとか演奏力が高いといったことより重要なことかもしれません。
特にこの曲を含め初期の曲は彼女の思いが強すぎて、時にそれは入門者への高いハードルになるかもしれません。
しかしだからこそ一部の人にとっては、とても大切な存在感を持ったバンドになる。
そういった嗜好品ではない、必需品としての音楽だと思います。
10位「夏の影」(アルバム:愛のゆくえ)
■曲名:夏の影
■アルバム名:愛のゆくえ
■動画リンク:「夏の影」
先程私は「猫とアレルギー」「愛のゆくえ」をあまり聞かないと申し上げました。
しかし一応補足しておくと、一般的には決して悪い出来ではありません。
現にこの曲は「愛のゆくえ」の収録曲ですし「猫とアレルギー」にも、以下の曲が収録されています。
2019年の解散後、佐藤千亜妃はソロ活動に移行しました。
ソロになってからの彼女は、持ち前のソングライティング能力の高さを活かして活動しています。
彼女のソロについては、いずれ別記事でご紹介するかもしれません。
最初期の彼女は暗黒世界の住人でしたが、ソロでは明るい表情を見せています。
願わくばこのまま彼女が暗黒面に近づかず、音楽と人生を楽しんでいただければと思います。
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