今回はマーヴィン・ゲイのランキングを作成しました。
「What’s Going On」からラストアルバムまでを対象にしています。
モータウン時代前期にも良い曲はたくさんありますが、対象外とさせていただきました。
彼は一部の有名曲以外、あまり聞かれていないように思います。
このランキングでは、無名の名曲なども取り上げてみました。
名盤と呼ばれているアルバム以外にも良い曲があるなと思っていただけたらうれしいです。
- 1 1位「What’s Going On」(アルバム:What’s Going On)
- 2 2位「Let’s Get It On」(アルバム:Let’s Get It On)
- 3 3位「When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You」(アルバム:Here, My Dear)
- 4 4位「All the Way Around」(アルバム:I Want You)
- 5 5位「Got to Give It Up」(アルバム:Live at the London Palladium)
- 6 6位「You Are Everything」(アルバム:Diana & Marvin)
- 7 7位「Rockin’ After Midnight」(アルバム:Midnight Love)
- 8 8位「’T’ Plays It Cool」(アルバム:Trouble Man)
- 9 9位「Love Party」(アルバム:In Our Lifetime)
- 10 10位「Sanctified Lady」(アルバム:Dream of a Lifetime)
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1位「What’s Going On」(アルバム:What’s Going On)
■曲名:What’s Going On
■曲名邦題:ホワッツ・ゴーイン・オン
■アルバム名:What’s Going On
■アルバム名邦題:ホワッツ・ゴーイン・オン
■動画リンク:「What’s Going On」
ベトナム戦争に対する反戦メッセージを歌った曲です。
マーヴィン・ゲイは、基本的にパーソナルな問題に焦点を当てた曲を書く傾向にあります。
特に男女の性愛をテーマにした曲が多く、実際に2位以降にはそういう曲ばかり。
ただこの曲では彼にしては珍しく、世の中に対してこれでいいのかと呼び掛けています。
この曲をシングルカットすることに対して、当時所属していたモータウンのベリー・ゴーディ(Berry Gordy, Jr.)は、難色を示したそうです。
当時のモータウンはメッセージ・ソング自体禁止していませんでした。
この曲は従来の典型的なヒット曲のパターンとは少し異なっていたかもしれません。
しかしこのボーカルは至高としか言いようがありません。
そして演奏面では、コンガの柔らかなリズムの上を、才気煥発なジェームス・ジェマーソン(James Jamerson)のベースラインが躍動しています。
2位「Let’s Get It On」(アルバム:Let’s Get It On)
■曲名:Let’s Get It On
■曲名邦題:レッツ・ゲット・イット・オン
■アルバム名:Let’s Get It On
■アルバム名邦題:レッツ・ゲット・イット・オン
■動画リンク:「Let’s Get It On」
この人は「What’s Going On」と「Let’s Get It On」の2枚ばかり聞かれています。
確かにどちらのアルバムもすばらしいので、もしかしたらベスト盤を聞くよりも良いかもしれません。
今回はその名盤の壁を突破しようと、他のアルバムからも名曲をかき集めてみました。
とはいえ、その代表作2枚をランキングから外すとことはできません。
初めて聞く方はまず1位と2位を聞いてから、他の曲にお進みいただければ思います。
その2枚の比較でいえば、確かに「What’s Going On」はすばらしいアルバムでしたが、典型的なソウルミュージックという感じではありませんでした。
一方こちらの曲は、より人間的な側面を表現したソウルミュージックらしい傑作です。
曲名は「さあやろうぜ」という、どストレートな求愛ソングです。
3位「When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You」(アルバム:Here, My Dear)
■曲名:When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You
■曲名邦題:涙のむこう側
■アルバム名:Here, My Dear
■アルバム名邦題:離婚伝説
■動画リンク:「When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You」
このアルバムは邦題の通り、彼のプライベートな離婚問題がテーマです。
原題では少しぼかしているのに、日本盤のタイトルでは「離婚伝説」と直接的な表現です。
しかし曲名は原題の方がきついです。
「When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You」
直訳すると「あなたが私を愛するのを止めた時、私があなたを愛するのを止めた時」です。
いやあなんだかすごいですね。私小説か。
ちなみにこのアルバムは、泥沼裁判の末、離婚で支払わなければいけなくなった慰謝料を捻出する目的で制作されています。
マーヴィンはナイーヴな性格の人らしく、男女関係に心の安らぎを求めすぎるところがあります。
時にはうまくいかない時もあるでしょう。
しかしそういう背景があるにせよ、この曲はすばらしい出来です。
この曲はソング・ライティングの才能を示す1曲ではないでしょうか。
ちなみにこの曲はダリル・ホール(Daryl Hall)がカバーしています。
4位「All the Way Around」(アルバム:I Want You)
■曲名:All the Way Around
■曲名邦題:恋人たちの神話
■アルバム名:I Want You
■アルバム名邦題:アイ・ウォント・ユー
■動画リンク:「All the Way Around」
これも男女間の性愛をテーマにしたアルバムの曲です。
前作のタイトルが「さあ、やろうぜ」で、このアルバムは「あなたがほしい」というタイトルです。
このアルバムは元々リオン・ウェア(Leon Ware)が発表予定だった楽曲を、マーヴィンが譲り受けて歌ったという、少し特殊な背景があります。
ただマーヴィンのボーカルが冴えわたっているせいか、完全にマーヴィンのアルバムになっていますね。
この曲ではマーヴィンのセクシーな歌唱を堪能できます。
実際彼は女性からの人気も抜群で、1970年代のライブを聞くと、女性特有の黄色い歓声がものすごいです。
セックスシンボル的な人気があったのですね。
演奏では2:01からのサックスソロがすばらしいです。
5位「Got to Give It Up」(アルバム:Live at the London Palladium)
■曲名:Got to Give It Up
■曲名邦題:黒い夜
■アルバム名:Live at the London Palladium
■アルバム名邦題:ライヴ・アット・ザ・ロンドン・パレディアム
■動画リンク:「Got to Give It Up」
この曲はライブアルバムからの選曲ですが、この曲だけスタジオ録音です。
ライブアルバムを売るためだと思いますが、スタジオ録音のシングル曲を入れています。
私はこの人のリズムの好みが独特だと思います。
ベースは派手に動き回る演奏がお好みのようです。
一方ドラムはシンプルでチープなリズムにこだわっているようで、アルバムバージョンでこの曲はこのリズムパターンで10分を超えています。
そちらはさすがに長すぎるので、シングルバージョンでご紹介してみました。
こうしたリズムの志向は、後年更に強まったように思います。
6位「You Are Everything」(アルバム:Diana & Marvin)
■曲名:You Are Everything
■曲名邦題:ユー・アー・エブリシング
■アルバム名:Diana & Marvin
■アルバム名邦題:ダイアナ&マーヴィン
■動画リンク:「You Are Everything」
この曲はダイアナ・ロス(Diana Ross)とのデュエットです。
彼はタミー・テレル(Tammi Terrell)とのデュエットアルバムを何枚も出しています。
一方このアルバムはマーヴィンの希望ではなく、会社の方針でやむを得なくつくられたようです。
マーヴィンが深く関与している形跡はありませんが、それなりの出来に仕上がっています。
ここで聞かれる2人のコンビには、タミー・テレルとの間に感じられた特別なマジックは感じません。
しかしそこは両者とも厳しい歌の世界で生き延びてきた強者です。
サッカーでいえば、タミーとのコンビはスター選手ばかりでなくても観客を熱くさせる試合をするチーム、ダイアナとのコンビは連携に難はあるが個人技にすぐれた選手ばかりのチームといった感じでしょうか。
確かに安易な企画アルバムですが、すぐれた歌唱によって、リスナーの心をこじ開けてきます。
ただ名前の表記と歌の順番は、ダイアナ・ロスが先なのですね。
この時のモータウンレーベル内での序列がうかがえて興味深いです。
7位「Rockin’ After Midnight」(アルバム:Midnight Love)
■曲名:Rockin’ After Midnight
■曲名邦題:ロッキン・アフター・ミッドナイト
■アルバム名:Midnight Love
■アルバム名邦題:ミッドナイト・ラヴ
■動画リンク:「Rockin’ After Midnight」
順位を付けると、どうしても1970年代の曲が上位になりますが、1980年代にも良い曲はあります。
私の中ではこの曲がその筆頭です。
このアルバムでは一般的に大ヒットした「セクシャル・ヒーリング(Sexual Healing)」の方が有名かもしれません。
私も大好きな曲ですが、こちらの方がより私の好みです。
サウンドがアーリーエイティーズ特有の音づくりに変化していますが、これがなかなか悪くありません。
少しブラコンっぽい音ですが、元々この人はブラコンのルーツみたいなところがありますし。
ここでも少し簡素なリズムを背景にして歌うボーカルの表現力が、さすがとしかいいようがありません。
曲の間中ずっとギターが軽快に鳴り続けていて、とても心地よいリズムをつくり出しています。
8位「’T’ Plays It Cool」(アルバム:Trouble Man)
■曲名:’T’ Plays It Cool
■曲名邦題:“T”プレイズ・イット・クール
■アルバム名:Trouble Man
■アルバム名邦題:トラブル・マン
■動画リンク:「’T’ Plays It Cool」
この曲はインストです。
映画のサントラからの曲で、ボーカルは入っていません。
しかしこれがなかなかかっこいいです。
この頃マーヴィンは、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)にもらったムーグ・シンセサイザーにはまっていたようです。
マーヴィンはこのアルバム全体で、クセの強いフレーズを弾きまくっています。
この人が演奏面で言及される機会は多くありませんが、意外と奇抜な演奏をする人だと思います。
当時のクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)あたりに近いかもしれません。
この曲は大きな音かヘッドホンで聞いた方がいい曲かもしれません。曲の印象が変わりますから。
エレピの使い方のせいか、少し浮遊感を感じます。
1972年の曲ですが、現代のクラブシーンの文脈で再評価したい曲だと思います。
9位「Love Party」(アルバム:In Our Lifetime)
■曲名:Love Party
■曲名邦題:ラヴ・パーティ
■アルバム名:In Our Lifetime
■アルバム名邦題:イン・アワー・ライフタイム
■動画リンク:「Love Party」
このアルバムは過小評価されすぎています。
私は「Midnight Love」と同程度の評価ですが、巷では駄作という評価が一般的です。
もしかしたら過小評価の原因は、ジャケットのせいかもしれません。
しかしこの曲などはいかがでしょうか。
少し小粒かもしれませんが、私はなかなかいけてる曲だと思っています。
特に4:16から入るファルセットボーカルもすばらしいですし。
しかもこれと同じ水準の曲が他にもあって、比較的楽曲の粒がそろっています。
音楽的には少しディスコっぽい要素も入っていて、いかにも「Here, My Dear」と「Midnight Love」の中間といった音づくりになっていますね。
今一度再評価しておきたいアルバムです。
10位「Sanctified Lady」(アルバム:Dream of a Lifetime)
■曲名:Sanctified Lady
■曲名邦題:聖女
■アルバム名:Dream of a Lifetime
■アルバム名邦題:永遠への旅立ち
■動画リンク:「Sanctified Lady」
かなり好みが分かれる曲だと思います。
マーヴィンの特有のチープさは、1980年代に少し強調されたところがあって、時にこういう時代と心中しかねない曲を発表しています。
ただ私は大好物ですけども。
本当は6位ぐらいでもいいと思っていますが、最後に配置してみました。
ミッドナイト・スター(Midnight Star)のようなシンセサイズド・ファンクの名曲だと思います。
このアルバムは、父親にピストルで撃たれて亡くなったマーヴィンの死後に発売されました。
「Midnight Love」でボツになった曲などを中心にした未発表曲が収録されています。
確かに収録されている曲の出来は、少しばらつきがあるかもしれません。
しかしマーヴィンの場合、そうした落ち葉拾いのようなアルバムにすらキラリと光る曲が入っています。
生きていたら何度目かの全盛期が始まったかもしれないと感じさせてくれる曲です。
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