今回はカーラ・ブレイのランキングを作成しました。
この記事では彼女の魅力を、なるべく分かりやすくお伝えようと思い選曲しました。
彼女の初期を中心に選曲しました。
才女という言葉がとても似合う人です。
- 1 1位「Sing Me Softly of the Blues」(アルバム:Dinner Music)
- 2 2位「Blunt Object」(アルバム:Live!)
- 3 3位「More Brahms」(アルバム:Sextet)
- 4 4位「Joyful Noise」(アルバム:Heavy Heart)
- 5 5位「Reactionary Tango (In Three Parts)」(アルバム:Social Studies)
- 6 6位「Ida Lupino」(アルバム:Dinner Music)
- 7 7位「The Lord Is Listenin’ to Ya, Hallelujah!」(アルバム:Live!)
- 8 8位「Útviklingssang」(アルバム:Social Studies)
- 9 9位「I Hate To Sing」(アルバム:I Hate To Sing)
- 10 10位「End of Rawalpindi」(アルバム:Escalator Over The Hill)
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1位「Sing Me Softly of the Blues」(アルバム:Dinner Music)
■曲名:ブルースをそっと歌って
■曲名邦題:Sing Me Softly of the Blues
■アルバム名:Dinner Music
■アルバム名邦題:ディナー・ミュージック
■動画リンク:「Sing Me Softly of the Blues」
アート・ファーマー(Art Farmer)の名演で知られている曲です。
このアルバムには、スタッフ(Stuff)のメンバーが多数参加しています。
当時前衛色が強かったカーラとソウルフルなスタッフとは、意外に相性が良いように感じました。
特にこの曲などは、スタッフの作品にカーラが客演しているような趣きがありますし。
プレイヤーとしての彼女は、主にピアノとオルガンを演奏しています。
わざわざ「プレイヤーとしての」と書いたのは、演奏家としての側面は彼女の魅力の一部にすぎないことから。
この曲では超一流スタジオ・ミュージシャン集団であるスタッフに混じって、彼女はオルガンを弾いています。
しかし彼女のオルガンはその中で、かなり印象的なプレイをしていますね。
彼女の全容は演奏だけでは計れませんが、プレイヤーとしても一流でした。
2位「Blunt Object」(アルバム:Live!)
■曲名:Blunt Object
■曲名邦題:ブラント・オブジェクト
■アルバム名:Live!
■アルバム名邦題:ライヴ! (艶奏会)
■動画リンク:「Blunt Object」
この記事では前衛的と言われる彼女の音楽を、なるべく分かりやすくご紹介しようと思いました。
彼女には分かりやすいポップな曲も少なくありません。
たとえばこの曲です。
各プレイヤーのソロ演奏はどれもすばらしい出来で、聞きごたえ充分です。
テーマが2分近くあるので少し冗長ですが、それがなければ1位に推したいぐらいでした。
アヴァンギャルドなリスナーにも日和ったと思われず、それどころかシリアスなファンをも魅了する何かがあります。
パンク・ファンから見たスクイーズ(Squeeze)にも似た愛すべき感じを。
さて若い頃の私は「艶奏会」というアルバム邦題が親父ギャグのようで、あまり好きになれませんでした。
しかしこのアルバム・ジャケットを見ると、仕方ないのかもしれません(笑)
3位「More Brahms」(アルバム:Sextet)
■曲名:More Brahms
■曲名邦題:モア・ブラームス
■アルバム名:Sextet
■アルバム名邦題:モア・ブラームス
■動画リンク:「More Brahms」
彼女は作曲家として高く評価されています。
その才能を証明するのがこの曲。
1位にした「Sing Me Softly of the Blues」と並ぶ、彼女の有名曲です。
しかし彼女の書く曲のメロディは、それほど分かりやすいわけではありません。
また下世話だったり、ヒット性のあるメロディを書く人でもありませんでした。
知的であってもアブストラクトすぎず、人間的な体温を失わない曲を書く人でした。
この曲もメロディが美しいだけでなく含蓄に富み、聞く度に味わい深さが増してきます。
そういう曲をもう1曲ご紹介しておきましょう。
この記事は入門者向けに書きましたので、選外とした曲です。
私の好みだけで選んだら、この曲も上位にランクインします。
4位「Joyful Noise」(アルバム:Heavy Heart)
■曲名:Joyful Noise
■曲名邦題:ジョイフル・ノイズ
■アルバム名:Heavy Heart
■アルバム名邦題:ヘヴィ・ハート
■動画リンク:「Joyful Noise」
※音量が大きいので、少しボリュームを下げてお聞きください
次作「ナイト・グロウ(Night-Glo)」と並び、かなり聞きやすいアルバムです。
彼女の音楽は、ジャンル分けが難しいかもしれません。
この時期の彼女の音楽は、フュージョン/クロスオーヴァーだと思われます。
全キャリアを振り返ると、ジャズやロックっぽい曲も散見されます。
メンバーの編成も多彩で、小編成からビッグバンドまで多種多様。
この曲では、スティーブ・スレイグル(Steve Slagle)のフルートが大活躍しています。
彼女はチューバやトロンボーンなど低音域の楽器を好む傾向がありますが、この曲のようにフルートが目立つ曲も。
彼女はフリージャズに分類されることがあります。
私はその分類にためらいを覚えますが、自由な音楽であることは間違いありません。
「Joyful Noise」という曲名も、実に彼女らしいと思います。
5位「Reactionary Tango (In Three Parts)」(アルバム:Social Studies)
■曲名:Reactionary Tango (In Three Parts)
■アルバム名:Social Studies
■アルバム名邦題:ソーシャル・スタディズ
■動画リンク:「Reactionary Tango (In Three Parts)」
私は彼女が参加しているリベレーション・ミュージック・オーケストラ(Liberation Music Orchestra)が大好きです。
しかし今回は取り上げません。
チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)の特集を書く時にも取り上げるつもりはありません。
いずれリベレーション・ミュージック・オーケストラの単独記事を書きたいと思っています。
その代りにリベレーション・ミュージック・オーケストラらしいこの曲を選びました。
リベレーション・ミュージック・オーケストラの音楽は、メッセージ色が強いのが特徴でした。
そもそもカーラ・ブレイもこんな活動をしていた人です。
マイケル・マントラーと共に、「ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ・アソシエーション」を設立、商業主義からのミュージシャンの保護、自由化に多大な貢献を為した。
このアルバム名は「社会科」という意味です。
アルバム・ジャケットからすると、社会を学ぼうという意味でしょうか。
ただ本があまりに分厚すぎますが(笑)
いまだ彼女の中には社会はどのようにあるべきかという、問題意識があるのかもしれません。
ちなみに「Reactionary Tango」とは「保守的な」という意味。
私の妄想ですが、アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)が書いた「リベルタンゴ(Libertango)」という曲を意識しているかもしれません。
6位「Ida Lupino」(アルバム:Dinner Music)
■曲名:Ida Lupino
■曲名邦題:アイダ・ルピノ
■アルバム名:Dinner Music
■アルバム名邦題:ディナー・ミュージック
■動画リンク:「Ida Lupino」
この記事では、デビュー・アルバムから1987年の「Sextet」までを対象にしました。
以降もスティーヴ・スワロウ(Steve Swallow)との「デュエッツ(Duets)」や「ザ・ヴェリー・ビッグ・カーラ・ブレイ・バンド(The Very Big Carla Bley Band)」など、すぐれた作品を連発しています。
また彼女は様々な共同名義作品や編集盤など、ソロ名義以外でも活躍しています。
しかしそれらも除外せざるを得ませんでした。
彼女の代表作「ヨーロピアン・ツアー 1977(European Tour)」からも曲をご紹介できなかったほど。
本当に良い曲が多すぎますね。
この曲ではエリック・ゲイル(Eric Gale)のギターが聞きものです。
音のアタックが強めのエイモス・ギャレット(Amos Garrett)といった感じのメロウな名演です。
7位「The Lord Is Listenin’ to Ya, Hallelujah!」(アルバム:Live!)
■曲名:The Lord Is Listenin’ to Ya, Hallelujah!
■曲名邦題:ハレルヤ!
■アルバム名:Live!
■アルバム名邦題:ライヴ! (艶奏会)
■動画リンク:「The Lord Is Listenin’ to Ya, Hallelujah!」
教会音楽家の父親の手ほどきで音楽の基礎を学び、その後はアカデミズムとは無縁で、ほとんど独学で通した。
独学で音楽を学ぶのは容易なことではありません。
99%の人は、基礎から指導された方が効率的に音楽を習得できると思います。
しかし1%ぐらい、いやもっともっと少ない中にはその例外がいます。
カーラ・ブレイはその中に含まれる才女で、天才と呼ぶべき一握りの人です。
彼女に関しては、バークリーで楽理を学ばなくても良かったかもしれません。
私はバークリー出身のアーテイストも好みますが、その一方で意外と画一的なところがあると思っています。
どことなく個性を育てる場ではないような気が。。。
一方家庭で親しんだであろう教会音楽は、その後の彼女の中にしっかり息づいています。
思えばスタッフと共演した時の相性の良さも、彼女の中に教会音楽というルーツがあったからかもしれません。
このアルバムは「Dinner Music」と並ぶ、彼女の最高傑作に推したい作品です。
もう1曲ご紹介しておきましょう。
8位「Útviklingssang」(アルバム:Social Studies)
■曲名:Útviklingssang
■アルバム名:Social Studies
■アルバム名邦題:ソーシャル・スタディズ
■動画リンク:「Útviklingssang」
彼女はピアノやオルガンの演奏、作曲、編曲で、すぐれた才能を発揮しています。
しかし一番突出した才能は音楽監督としての側面かもしれません。
この時期の彼女は名盤、快作ぞろいです。
しかし意外にもメンバーが固定されていません。
メンバーが替わっても、高水準の音楽を維持していました。
思えばマイルス・デイヴィス(Miles Davis)にもこういうことがありました。
その人の土俵に上がると、それだけで潜在能力を引き出されるような。
プレイヤーに対する目利き能力とポテンシャルを引き出す力。
この時期の彼女は、それがマイルス並みのように感じます。
この曲のカルロス・ワード(Carlos Ward)のサックスを聞くと、そんなことを感じました。
9位「I Hate To Sing」(アルバム:I Hate To Sing)
■曲名:I Hate To Sing
■曲名邦題:歌うのなんて好きじゃない
■アルバム名:I Hate To Sing
■アルバム名邦題:歌うのなんて好きじゃない
■動画リンク:「I Hate To Sing」
彼女の音楽は喜怒哀楽、人間のすべてを表現しています。
スケールの大きな音楽だといえるでしょう。
たとえばこの1曲だけでフェリーニの映画を見ているような、人間の一生が表現されているように感じます。
しかし一方で彼女は華のある存在で、ヒップな面をも備えていました
彼女はコンテンポラリーなジャズを象徴する存在でした。
当時のスパイク・リー(Spike Lee)やHIPHOPと、そうかけ離れた音楽ではありません。
加えて彼女の音楽にはユーモアがありました。
この曲では「歌うのなんか嫌い」としながらも、ボーカルが入っています(笑)
彼女のスタイリッシュでポップなたたずまいは、存在自体がポップアートのような。
難解さや政治的な主張を含みながらも、遊び心にあふれ自由な空気があり、時に優雅ですらある。
彼女の音楽の根本には、自由な彼女のマインドがあるように思います。
10位「End of Rawalpindi」(アルバム:Escalator Over The Hill)
■曲名:End of Rawalpindi
■曲名邦題:エンド・オブ・ラワルピンディ
■アルバム名:Escalator Over The Hill
■アルバム名邦題:エスカレーター・オーヴァー・ザ・ヒル
■動画リンク:「End of Rawalpindi」
ファースト・アルバムの曲です。
この記事の中ではかなり異色で、最初か最後にしか置けないような曲です。
アルバム全体としては。前衛的なロック・オペラみたいな感じ。
この作品は詩人ポール・ヘインズ(Paul Haines)との共同名義のアルバムです。
今回の記事の趣旨は、彼女の魅力を分かりやすく伝えること。
この曲はそこから少し逸脱しますが、すばらしすぎる曲なのでご紹介せざるを得ませんでした。
この曲の乱調の美は特筆に値します。
アルバム全体の出来もすばらしく、ジャズ・ロックがお好きな方におすすめです。
同じアルバムから、もう1曲ご紹介しておきましょう。
最後に選んだ「End of Rawalpindi」は、ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)
のギターがすさまじいです。
まさに鬼神の所業。
ジョン・マクラフリンは、当時のカーラ・ブレイに少し似た資質を持っていたかもしれません。
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