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チック・コリア(Chick Corea)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はチック・コリアのランキングを作成しました。

今までのランキングの中で、最も様々なタイプの曲が混在しているかもしれません。

彼は好奇心の赴くまま、様々な種類の音楽に挑戦しました。

ただ以下については、別途ランキングを作成する予定ですので、ここでは選外にしています。

・リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever)
・ゲイリー・バートン(Gary Burton)とのデュオ

今回はめまぐるしく曲調が変わりますが、どれも名演ぞろいです。

 

1位「Love Castle」(アルバム:My Spanish Heart)

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■曲名:Love Castle
■曲名邦題:ラヴ・キャッスル
■アルバム名:My Spanish Heart
■アルバム名邦題:マイ・スパニッシュ・ハート
■動画リンク:「Love Castle」

ジャズは元々黒人音楽ですから、黒さこそが命という価値観は、今でも根強いかもしれません。

しかしチック・コリアの音楽には、黒さがありません。

その代わりに、この人には濃厚なロマンティシズムがあります。

それがよく表れているのが「ファンタジー三部作」と呼ばれる、以下の傑作群です。

・「妖精(The Leprechaun)」
・「マイ・スパニッシュ・ハート(My Spanish Heart)」
・「マッド・ハッター(The Mad Hatter)」

これらの作品は、現実世界を忘れさせてくれるような、ファンタジー的魅力にあふれています。

中でも私は、このアルバムが最高傑作だと思います。

チックはアメリカ生まれですが、イタリア系とスペイン系の血が入っているそうです。

彼はこのアルバムで、自らのルーツとなるスペイン音楽を取り上げました。

チック・コリアの演奏は出来不出来があまりなく、いつも高めで安定しているように思います。

そのため曲の良し悪しは、ベースとドラムの出来にかかっているかもしれません。

この曲では、スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)のベースにご注目ください。

チックも共演者の演奏に刺激を受けて、更なる高みに到達しているように思います。

 

2位「Matrix」(アルバム:Now He Sings, Now He Sobs)

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■曲名:Matrix
■曲名邦題:マトリックス
■アルバム名:Now He Sings, Now He Sobs
■アルバム名邦題:ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス
■動画リンク:「Matrix」

彼の出世作です。

1968年リリースのセカンドアルバムで、彼の名声はここから始まりました。

なにせメンバーが豪華です。

・ミロスラフ・ヴィトウス(Miroslav Vitous):ベース
・ロイ・ヘインズ(Roy Haynes):ドラム

チックを入れたこの強力な3人によって、手に汗握るジャズを聞かせてくれています。

ピアノトリオですが、BGMからほど遠い音楽です(笑)

それでも後年の人気作「A.R.C.」よりは、まだ聞きやすいと思いますが。

「ステップス – ホワット・ワズ(Steps – What Was)」もほぼ同等の名演ですが、そちらは13分超えと長いので、こちらの短い方をご紹介してみました。

しかしチックの鋭角なピアノのかっこいいこと!

チックはジュリアード音楽院出身らしく、小難しくも刺激的な演奏を披露しています。

なおアルバム・タイトルの「Now He Sings, Now He Sobs」は、中国の「易経」から取られた言葉だそうです。

「今彼は歌い、今彼はすすり泣く」という意味ですが、このアルバムには泣きの要素がないので、意味が分かりません。

 

3位「Sicily」(アルバム:Friends)

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■曲名:Sicily
■曲名邦題:シシリー
■アルバム名:Friends
■アルバム名邦題:フレンズ
■動画リンク:「Sicily」

このアルバムは、彼の代表作とは言えません。

しかしチック・ファンからこよなく愛されている作品です。

リターン・トゥ・フォーエヴァーのファースト・アルバムがお好きな方は、買って損はありません。

この曲の最大の功労者は、フルートのジョー・ファレル(Joe Farrell)です。

またイントロからエディ・ゴメス(Eddie Gómez)のベースも、よく歌っていますね。

ドラムはチックといえばこの人、スティーヴ・ガッド(Steve Gadd)。

チックはベースについて、曲やアルバムに応じて、様々な人を使い分けているように思います。

一方ドラムについては、ガット以外が叩いている作品もありますが、基本的にガットを中心に考えていたように思います。

今回改めてチックの音楽を聴きまくって、チックのドラムに対する好みが見えてきました。

パワーとかソウルフルとか、独自のタイム感覚とかではなく、タイトで手数が多く出足の鋭い人がお好みかもしれません。

つまりガットみたいなドラムがお気に入りなのでしょう。

この曲でもドラムのスティーヴ・ガッドの演奏がすばらしく、4:47など一瞬ハイハットが入る瞬間もスリリングです。

 

4位「The Mad Hatter Rhapsody」(アルバム:The Mad Hatter)

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■曲名:The Mad Hatter Rhapsody
■曲名邦題:ザ・マッド・ハッター・ラプソディ
■アルバム名:The Mad Hatter
■アルバム名邦題:マッド・ハッター
■動画リンク:「The Mad Hatter Rhapsody」

このアルバムは、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をテーマにしたコンセプト・アルバムです。

アルバム名「Mad Hatter」とは「狂った帽子屋」という意味です。

チックはコスプレ好きらしく、ジャケットでも帽子屋に扮していますね。

さてこの曲の聞きどころは、チック・コリアとハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の共演です。

1970年代にジャズ・ピアニスト御三家と言われた内の2人が共演しています。

念の為、もう1人は、キース・ジャレット(Keith Jarrett)。

ハービーは他の2人に比べて、即興演奏への意欲が見えにくいかもしれませんが、この曲ではすばらしい演奏を披露しています。

10分以上と長尺の演奏ですが、あまり長さは感じません。

2人の演奏を聞いていると、あっという間に時間が過ぎてしまいますから。

まず1:00から、チックがミニ・ムーグでソロを演奏しています。

次に4:02から、ハービーのフェンダー・ローズが始まりますが、こんな楽園を感じさせるハービーは初めて聞きました。

7:37から2人が混然一体となってからは、ほとんど音の桃源郷状態です。

そうこうしている内に、9:11からチック・コリアの奥さん、ゲイル・モラン(Gayle Moran)の歌で締めくくられます。

個人的に最後の歌は、少し蛇足な感じもしますが。

 

5位「Nite Sprite」(アルバム:The Leprechaun)

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■曲名:Nite Sprite
■曲名邦題:夜の精
■アルバム名:The Leprechaun
■アルバム名邦題:妖精
■動画リンク:「Nite Sprite」

チックは最初、エレクトリック・ピアノには興味がなかったそうです。

マイルス・デイビス(Miles Davis)に弾くように言われ、嫌々エレピを弾き始めたのだとか。

しかしこの頃は、もう全然抵抗がないようですね。

その後彼は様々な電子楽器を駆使して、快作をリリースし続けました。

このアルバムは1976年のリリースで、ソロ名義としては、前作と4年のブランクが空いています。

しかしその間彼はリターン・トゥ・フォーエヴァー名義で、様々なクロスオーバーの傑作を生み出しました。

そこで得た成果をソロ名義の作品に持ち帰ったのが、このアルバムです。

このアルバムは、アイルランドの妖精をテーマにしています。

興味のある方は、以下のウィキペディアをご覧ください。

レプラコーン ウィキペディア

さてこの曲の聞きどころは、とにかくスティーヴ・ガッド(Steve Gadd)のドラムの尽きます。

これはもはや格闘技の部類ではないでしょうか。

もはやこの曲の主役は、ガットといえるかもしれません。

実はチックはドラムも叩ける人で、実際「スリー・カルテッツ(Three Quartets)」で、チックがドラムを叩いている曲があります。

そんな彼もガットには全幅の信頼を置いているらしく、ソロ名義のアルバムの多くでガットがドラムを担当しています。

ガットの熱に触発されたのか、2:16からチックの演奏もぶっ飛んでいますね。

 

6位「El Bozo (Pt. 3)」(アルバム:My Spanish Heart)

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■曲名:El Bozo (Pt. 3)
■曲名邦題:エル・ボゾ、パートIII
■アルバム名:My Spanish Heart
■アルバム名邦題:マイ・スパニッシュ・ハート
■動画リンク:「El Bozo (Pt. 3)」

チックは多彩な魅力を持った人ですが、私が最もすぐれていると思うのは、楽想の豊かさです。

音楽がふくよかなだけでなく、時に強烈な映像喚起力を伴ってリスナーに迫ってきます。

そのイメージ喚起力については、音楽史上最高の1人かもしれません。

その特徴が最もよく表れているのが、先程から何度かご紹介している「ファンタジー三部作」です。

このアルバムでは「Love Castle」と「アルマンドのルンバ(Armando’s Rhumba)」が定番です。

私の好みを優先して、今回はこちらを選曲してみました。

「Armando’s Rhumba」については、リンクだけ貼っておきましょう。

Chick Corea – Armando’s Rhumba

さて今回選んだ「El Bozo (Pt. 3)」は、私が考える最もイメージ喚起力が強力な曲の1つです。

音楽なのに、まるで映画を見ているような感じがしないでしょうか。

楽しい時間の終わり、郷愁、そんな感じがします。

チックは様々なキーボードを重ねていて、実にイマジネイティヴな映像空間をつくり上げています。

ジャケットではどうだと言わんばかりの顔をしていますが、こんな音楽をつくり上げたら、ドヤ顔をしたくもなることでしょう。

 

7位「Fickle Funk」(アルバム:Secret Agent)

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■曲名:Fickle Funk
■曲名邦題:フィックル・ファンク
■アルバム名:Secret Agent
■アルバム名邦題:シークレット・エージェント
■動画リンク:「Fickle Funk」

このアルバムは現在、入手困難です。

単独ではずっと廃盤になっていて、現在は5枚組廉価盤の内の1枚としてしか入手できません。

すばらしい作品なのにもったいないですね。

この作品は、バニー・ブルネル(Bunny Brunel)の参加が話題になりました。

バニーは当時、ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)とも比較された、新進気鋭のベーシストでした。

彼のベースはよく歌うわけでもなく、ひたすらリズムを刻む系でもなく、ジャコのように乱調の美を感じさせてくれるところがあります。

ジャコと同じくフレットレス・ベースを弾く人ですが、自由闊達に弾きたい人は、フレットレスを選ぶものかもしれません。

バニーの型にはまらないベースが、この曲の刺激的なスパイスとなっています。

ドラムのトム・ブレックライン(Tom Brechtlein)も、ガットに通じるタイトな演奏ですね。

またこのアルバムには、チックにしては珍しくトランペット奏者、アレン・ヴィズッティ(Allen Vizzutti)が入っています。

 

8位「After Noon Song」(アルバム:Piano Improvisations Vol. 2)

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■曲名:After Noon Song
■曲名邦題:アフタヌーン・ソング
■アルバム名:Piano Improvisations Vol. 2
■アルバム名邦題:チック・コリア・ソロ Vol.2
■Spotifyリンク:「After Noon Song」

「チック・コリア・ソロ Vol.1(Piano Improvisations Vol. 1)」に収録されている「ヌーン・ソング(Noon Song)」と対を成す曲で、どちらも甲乙付けがたい出来です。

「Noon Song」と「After Noon Song」は、Youtube動画がありません。

このランキングでは唯一この曲だけ、代わりにOpen Spotifyのリンクを貼っています。

この曲を聞きたい方は、Spotifyは無料で登録できますので、登録してからお聞きください。

Spotifyの無料登録はこちらをクリック

このアルバムは後半に前衛的な曲が入っているせいか、Vol.1より評価が低めですが、私はほぼ同等の出来だと思っています。

この作品は1971年、ECMレコード(ECM Records)からリリースされました。

チックのアルバムは、ほとんど自分で書いた曲で、この作品でも2曲以外はオリジナル曲です。

彼はピアニスト、サウンド・クリエイターどちらも一流ですが、加えて作曲家としても一流です。

「スペイン(Spain)」「ラ・フィエスタ(La Fiesta)」など、彼が書いた曲は、今でも多くの人に演奏されています。

彼の書いた有名曲を、もう1曲だけご紹介しておきましょう。

隠れ名盤「インナー・スペイス(Inner Space)」の曲です。

Chick Corea – Windows

スタン・ゲッツ(Stan Getz)の「スウィート・レイン(Sweet Rain)」で有名な曲ですね。

彼の書く曲は、純粋に美しさを感じる曲が多いように思います。

 

9位「Samba L.A.」(アルバム:Tap Step)

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■曲名:Samba L.A.
■曲名邦題:サンバ L.A.
■アルバム名:Tap Step
■アルバム名邦題:タップ・ステップ
■動画リンク:「Samba L.A.」

彼は様々な音楽に手を出したことで、評価を下げているそうです。

初期にはフリージャズに手を出したり、リターン・トゥ・フォーエヴァーではラテンやハードロック調の演奏、ロイ・ヘインズらとストレートなジャズ、ゲイリー・バートンとの耽美的なデュオ、さらにはクラシックでオーケストラと共演など多面的な活動が目立ち、そのフットワークの軽さがかえって評価を下げる傾向もあるが、チックの生み出すメロディーには一貫した彼独特の響きがあり、それが彼の長年にわたる人気の秘密となっている。

チック・コリア ウィキペディア

この曲では、ブラジル音楽のサンバを取り上げています。

まじめなジャズ・ファンは眉をひそめるかもしれませんが、私は大好きな曲です。

サンバの曲は、これ1曲だけですが。

55秒から女性コーラスが入ると、セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)を聞いているような錯覚を覚えてしまいます。

ジャケットも心なしか、セルジオ・メンデスっぽいですし。

しかしチックのムーグ演奏はいつも通りで、それほどブラジルを意識している様子はありません。

この人はエレピを弾くイメージが強いのですが、こうして聞き直してみると、意外とムーグの演奏が多いのですね。

 

10位「Spain」(アルバム:Chick Corea Akoustic Band)

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■曲名:Spain
■曲名邦題:スペイン
■アルバム名:Chick Corea Akoustic Band
■アルバム名邦題:チック・コリア・アコースティック・バンド
■動画リンク:「Spain」

この曲は彼が書いた曲の中で、最も有名な曲です。

アコースティックのピアノ・トリオとは、キース・ジャレットのスタンダーズ(Standards)に触発されたのかもしれません。

チックのピアノは自分の代表曲のせいか、自信を持って弾いている感じがします。

ただ私がこの曲の白眉だと思うのは、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)のベース・ソロ。

ベース・ソロは5:21から始まりますが、チックが派手に盛り上げた後を受けて、最初はやや地味めに歌っています。

ビル・エバンス・トリオでのエディ・ゴメスに、少し似た感じの演奏かもしれません。

しかし本当の聞きどころは、6:26からです。

短い間ですが、胸を締め付けるような狂おしい演奏を聞かせてくれます。

このアルバムは、グラミー賞2部門を受賞しました。

この前年には「アイ・オブ・ザ・ビホルダー(Eye of the Beholder)」という傑作を発表しています。

それ以降も良い作品を発表していますが、デビューからこの頃ぐらいが、チックの全盛期といえるかもしれません。

 

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