今回は荒井由実のランキングを作成しました。
松任谷由実が結婚する前、荒井由実時代の曲をご紹介いたします。
なおオリジナル・バージョンの動画が見つからない曲も多く、シングル・バージョン、アルバム・バージョン、ライブ、再録音が混在しています。
オリジナルを聞きたい方は、CDやサブスクでお聞きください。
1位「やさしさに包まれたなら」(アルバム:MISSLIM)
■曲名:やさしさに包まれたなら
■アルバム名:MISSLIM
■動画リンク:「やさしさに包まれたなら」
まずこの曲の歌詞を引用します。
小さい頃は神さまがいて
不思議に夢をかなえてくれた
やさしい気持で目覚めた朝は
おとなになっても 奇蹟はおこるよ(中略)目にうつる全てのことは メッセージ
上の引用部では、最後の行にご注目ください。
この言葉は天才の所業としか言いようがありません。
実際当時の彼女はこんな風に鋭敏なアンテナを立て、様々なメッセージを受け取っていたのでしょう。
すぐれた感性の持ち主だから、ごく自然と良い曲が出来上がる。
そういう必然性を感じます。
この曲は映画「魔女の宅急便」のエンディング・テーマとして知られています。
その後この曲は2001年ニューヨーク近代美術展のイメージ・ソングに採用されました。
2位「卒業写真」(アルバム:COBALT HOUR)
■曲名:卒業写真
■アルバム名:COBALT HOUR
■動画リンク:「卒業写真」
彼女は良い歌詞が多すぎて、歌詞ばかりご紹介したくなります。
人ごみに流されて 変わってゆく私を
あなたはときどき 遠くでしかって
あなたは私の 青春そのもの
この曲が発表された時、荒井由実は若干20歳で成長の途上にありました。
大人が無傷でいることは容易なことではありません。
この曲のすごいところは片思いのラブソングでありながら、同時に成長の痛みや不安を表現しているところ。
彼女の歌詞は音楽なしでも、一作品として成立します。
3位「中央フリーウェイ」(アルバム:14番目の月)
■曲名:中央フリーウェイ
■アルバム名:14番目の月
■動画リンク:「中央フリーウェイ」
この曲は東京にある中央自動車道のドライブの模様を歌った曲です。
当時彼女は松任谷正隆と交際していました。
その頃は仕事が終わった後、彼が彼女を車で家に送り届けていたそうです。
やはりこの曲も歌詞を引用したいと思います。
愛してるって 言ってもきこえない
風が強くて(中略)この道は まるで滑走路
夜空に続く(中略)初めて会った頃は 毎日ドライブしたのに
このごろは ちょっと冷たいね(中略)二人して 流星になったみたい
当時の男性は車を買ってもてようとしましたし、女性もドライブ・デートにあこがれていました。
この曲の歌詞は、当時の女性たちがあこがれるシチュエーションを描写しています。
ドライブ中の軽妙な会話も楽しいですね。
彼女は早くから女性のあこがれを集める存在になっていました。
4位「ひこうき雲」(アルバム:ひこうき雲)
■曲名:ひこうき雲
■アルバム名:ひこうき雲
■動画リンク:「ひこうき雲」
この曲には以下のようなエピソードがあります。
荒井の小学生時代の同級生に筋ジストロフィーの男児がおり、この少年の死をモチーフに制作された。小学校の卒業とともに別れた彼は4年後に亡くなり、葬式で祭壇に飾られていたのは、荒井が知らない高校生の彼だった。その時に自分の記憶の中の彼と、目の前の写真の中の彼とのギャップにインパクトを受けて、本曲を制作したという[1]。
亡くなった男性は、飛行機が好きな人だったのかもしれません。
飛行機雲とは、飛行機が通った後に残った直線の雲のこと。
この歌詞では、まっすぐな思いと人の命のはかなさを飛行機雲になぞらえています。
この曲は後に宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の主題歌に採用されました。
その映画では飛行機にあこがれている少年が主人公でした。
荒井由実の歌詞は映像的で色彩感が豊かですから、映画に使用したくなるのもうなづけます。
5位「ルージュの伝言」(アルバム:COBALT HOUR)
■曲名:ルージュの伝言
■アルバム名:COBALT HOUR
■動画リンク:「ルージュの伝言」
荒井由実名義のアルバムは全部で4枚です。
サウンドは1枚目から徐々に洗練されていきました。
もしこれから彼女のCDをそろえようという方がいたら、デビュー・アルバムから順に買うことをおすすめします。
天才少女が大人になっていく、過渡期の変遷を追えますから。
男性も同じですが、高校卒業後20歳をまたぐ間の変化は著しいものです。
彼女は1973年に19歳でアルバム・デビューし、独身時代のラスト・アルバムは1976年ででした。
たまたま彼女の結婚式の写真を見つけましたので、ご紹介しておきましょう。
6位「瞳を閉じて」(アルバム:MISSLIM)
■曲名:瞳を閉じて
■アルバム名:MISSLIM
■動画リンク:「瞳を閉じて」
アルバム・タイトルの「MISSLIM」とは「MISS SLIM」つまり「スリムな独身女性」のことです。
以下の写真を見ると、彼女自身が「MISS SLIM」ですね。
さてこの曲については以下のような逸話があります。
ラジオ番組のDJをしていたユーミンの元に、校歌がなかった長崎県立奈留高等学校の生徒から依頼の葉書が来て、同校の校歌として作られた曲。校歌としては採用されなかったが、愛唱歌として地元で歌い継がれるようになった。
彼女には2つの側面がありました。
1つは洗練された都会の女性としての華やかなイメージ。
もう1つは少女のような瑞々しい感受性と奥ゆかしさ。
彼女が女性たちに支持されるのも分かる気がします。
7位「天気雨」(アルバム:14番目の月)
■曲名:天気雨
■アルバム名:14番目の月
■動画リンク:「天気雨」
このアルバムは独身時代の最終作です。
ちなみにアルバム名の「14番目の月」とは、満月になる一歩手前の状態のこと。
いかにも結婚直前という感じがしないでしょうか。
前作までは村井邦彦や川添象郎がプロデュースしていましたが、このアルバムでは夫となる松任谷正隆がプロデュースしています。
そのせいか以下の曲など、洗練された曲が目立ちます。
荒井由実時代の最高傑作は、人によって異なります。
この記事ではヒット曲や有名曲を中心に選びましたが、聞き込む内に地味な曲が化けることがあります。
彼女の最高傑作を決めるのは、何度かそうした経験をしてからでいいかもしれません。
私もまだ決め切れません。
8位「ベルベット・イースター」(アルバム:ひこうき雲)
■曲名:ベルベット・イースター
■アルバム名:ひこうき雲
■動画リンク:「ベルベット・イースター」
彼女が幸運だったのは、当時最高のプレイヤーに囲まれていたことです。
細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆など、ティン・パン・アレー(キャラメル・ママ)による鉄壁の布陣でした。
彼女だけでなく、周囲にいた人も実力者ぞろい。
彼女は自分の音楽について、こう語っています。
デビュー直後は「女拓郎」「女陽水」と呼ばれたが[16][17]、「私のやったことは拓郎やかぐや姫とは違う。私のつくった曲は今までにない新しいもの」などと著書で述べている[16]。
彼女の新しさは、キャロル・キング(Carole King)やジェームス・テイラー(James Taylor)に似ていたかもしれません。
キャロル・キングらの新しさを支えていたのは、新しい感性を表現できるバンドのメンバーでした。
荒井由実においても、参加プレイヤーが彼女の持つ新しさをよく理解してアレンジや演奏を提供していました。
9位「12月の雨」(アルバム:MISSLIM)
■曲名:12月の雨
■アルバム名:MISSLIM
■動画リンク:「12月の雨」
このアルバムについての逸話を引用します。
ジャケット写真はイタリアンレストラン「キャンティ」の創業者・川添浩史の自宅で撮影されたもの(中略)
ドレスは梶子が用意したイヴ・サン=ローランのもの[2]。(中略)
当アルバムの印税で、歌うイヴェット・ギルベールを描いたロートレックのリトグラフを買った[2]。(中略)
また彼女は以下のようにも語っています。
音楽は趣味でやってます。ブルジョアだから悪いってことない。私の音楽はイージーリスニング。BGMみたいなもの。
普通の女性がこのような発言をしたら嫌味ですし、そもそもこういう発言が似合いません。
しかし彼女は才色兼備すぎて、こうした言動さえ魅力に転化しました。
10位「晩夏(ひとりの季節)」(アルバム:14番目の月)
■曲名:晩夏(ひとりの季節)
■アルバム名:14番目の月
■動画リンク:「晩夏(ひとりの季節)」
この記事では「海を見ていた午後」や「航海日誌」など、他にもご紹介したい曲が沢山あります。
後者だけご紹介しておきましょう。
最後に有名人と知り合いであることを自慢しているようで気恥ずかしいですが、私の経験を書きたいと思います。
私が若い頃気が合ってよく遊んでいた女子高生が、自作の小説を持ってきたことがありました。
どうやら彼女は読んで感想を教えてほしいようです。
私はその場で読んで驚愕し、モノが違うと思いました。
文章こそ粗削りであるものの、明らかに凡人が書ける小説ではありません。
顕著に才能の桁が違う。
自分の中にある「良い」という基準の二段階上を超える経験は、大変まれですがとても貴重でした。
その後彼女は著名な小説家になりましたが、それも当然だと思います。
初期の荒井由実に接した人も、その時の私と同じく彼女の才気に驚いたかもしれません。
私が今でも新しいアーティストを掘っているのは、新しい才能に出会って驚きたいからです。
もしかしたら今後また荒井由実のような天才が現れないとも限りませんから。
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