今回は毛皮のマリーズのランキングを作成しました。
過去の音楽を大量に引用しながら、陳腐にならず新しささえ感じさせる、とても不思議なバンドだったと思います。
こんなバンドは他にありません。
- 1 1位「ビューティフル」(アルバム:MARIES MANIA)
- 2 2位「愛する or die」(アルバム:Gloomy)
- 3 3位「愛のテーマ」(アルバム:ティン・パン・アレイ)
- 4 4位「YOUNG LOOSER」(アルバム:戦争をしよう)
- 5 5位「ダンデライオン」(アルバム:THE END)
- 6 6位「REBEL SONG」(アルバム:マイ・ネーム・イズ・ロマンス)
- 7 7位「平和」(アルバム:Gloomy)
- 8 8位「Mary Lou」(アルバム:MARIES MANIA)
- 9 9位「すてきなモリー」(アルバム:毛皮のマリーズ)
- 10 10位「ハートブレイクマン」(アルバム:Faust C.D.)
- 11 11位「クライベイビー」(アルバム:マイ・ネーム・イズ・ロマンス)
- 12 12位「JUBILEE」(アルバム:THE END)
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1位「ビューティフル」(アルバム:MARIES MANIA)
■曲名:ビューティフル
■アルバム名:MARIES MANIA
■動画リンク:「ビューティフル」
この曲は彼らの代表曲です。
理由は歌詞にあります。
ビューティフルに ビューティフルに
生きて 死ぬ、ための 僕らの人生 人生!
おそらく志磨遼平という男は、普通に生きるだけでは満足できない人なのでしょう。
ただ生きるのではなく、美しく生きること。
たった一度の人生なのだから、それだけを志して生きたい。
もしかしたら、それは詩人の生き方かもしれません。
おれたちはきよらかな光の発見に心ざす身ではなかったか。–季節の上で死滅する人々から遠く離れて。
ふと私はアルチュール・ランボーのこの詩を思い出しました。
2位「愛する or die」(アルバム:Gloomy)
■曲名:愛する or die
■アルバム名:Gloomy
■動画リンク:「愛する or die」
以前の彼らはガレージ・ロック色が強く、ヒットとは無縁の存在でした。
数は少なくとも、熱狂的なファンがいるタイプのバンドだったといえるでしょう。
彼らはそれを見越していたと思われ、JESUS RECORDS(イエス レコード)を設立して、インディーズで地道に活動する体制を整えました。
しかしレーベル設立第一弾としてリリースされた「ビューティフル」とこの曲の両A面シングルは、思わぬ脚光を浴びました。
この曲は「2008年のリンダリンダだ」と喧伝され、その後彼らの知名度は急上昇。
このシングルはオリコンのシングル・チャートで72位を獲得し、アルバムも51位まで上がりました。
3位「愛のテーマ」(アルバム:ティン・パン・アレイ)
■曲名:愛のテーマ
■アルバム名:ティン・パン・アレイ
■動画リンク:「愛のテーマ」
彼らのファンの中には、初期の激しいサウンド懐かしがる人が少なくないと思います。
しかし彼らは後期も悪くありません。
というより相当すばらしいです。
後期のこの曲などは、まるでキンクス(The Kinks)のようなボードヴィル調で、彼らが1960年代英国ロックの影響下にあることを示しています。
またMVでも、1960年代から1970年代前半までの雰囲気を再現しています。
メイク、衣装、セット、そして何よりも風船には笑ってしまいました。
うろおぼえですが、私はザ・ムーヴ(The Move)かウィザード(Wizzard)で、似た動画を見た記憶があります。
「愛のテーマ」という曲名も、昔っぽくていいですね。
こういう曲を歌う時の志磨遼平は、ホフ・ディランみたいに聞こえます。
4位「YOUNG LOOSER」(アルバム:戦争をしよう)
■曲名:YOUNG LOOSER
■アルバム名:戦争をしよう
■動画リンク:「YOUNG LOOSER」
デビューアルバムの曲です。
イントロを聞いて思わず笑ってしまう人もいることでしょう。
この曲には元ネタがあります。
Mott The Hoople – All the Young Dudes
カバー曲かと思うぐらいあからさまな寄せ方です。
彼らの曲は、様々な過去の音楽からの引用で成り立っています。
ロックの古典のオマージュを得意とし、志磨は「ヒップホップのサンプリングを生演奏でやっているバンド」と自ら説明している。
ただ彼らの音楽は、不思議とパロディで終わっていません。
パロディなのに不思議と本物感があります。
5位「ダンデライオン」(アルバム:THE END)
■曲名:ダンデライオン
■アルバム名:THE END
■動画リンク:「ダンデライオン」
ラスト・アルバムの曲です。
彼らの音楽は後期になるにつれ、より音楽的になってきました。
初期の彼らは音の整合性を考えない、破天荒なサウンドが魅力でした。
その乱調の美は殊の外魅力的で、引用されている音楽の断片の数々は、音楽マニアにとってたまらない素材でした。
しかし彼らは勢い任せであることを止め、音楽的な完成度を高めていきました。
そしてついにこの曲のような、胸に響く曲をつくり上げています。
淡々と歌われるこの曲は、リスナーの心に静かに浸透してきます。
私は初期を愛していますが、彼らが後年こんな風になると思っていませんでした。
うれしい誤算だったように思います。
6位「REBEL SONG」(アルバム:マイ・ネーム・イズ・ロマンス)
■曲名:REBEL SONG
■アルバム名:マイ・ネーム・イズ・ロマンス
■動画リンク:「REBEL SONG」
※少し音が大きめなのでボリュームを下げてお聞きください
とはいえ初期は初期で魅力的です。
この野蛮な曲は、リスナーの心に火を点けます。
この頃の彼らは、暴力的なステージで知られていました。
ステージでも志磨と越川が乱闘を始めるなど、バンド内は混乱を極めていたが、かえってそれが話題となり集客はどんどん増えていった。
初期の彼らは「東京のストゥージズ」と言われていました。
本家ザ・ストゥージズ(The Stooges)のボーカル、イギーポップ(Iggy Pop)は、割れたガラスの上を裸で転げまわるような人でした。
この曲の動画は当時のステージの様子が出てきます。
過激なシーンはありませんが、少し危うい感じが漂っています。
7位「平和」(アルバム:Gloomy)
■曲名:平和
■アルバム名:Gloomy
■動画リンク:「平和」
彼らの音楽的背景は、パンクやガレージ・ロックなど様々です。
その中で最も色濃く影響を感じるのは、ビートルズ(The Beatles)かもしれません。
この曲も「イン・マイ・ライフ(In My Life)」など、ビートルズの曲の断片から成り立っています。
歌い方は少し忌野清志郎っぽい感じがしますね。
彼らの音楽は、コラージュ・アートみたいなところがあります。
独自の視点と美意識がないと成立しないような。
このアルバムからもう1曲ご紹介しておきましょう。
小鳥はモンキーズがモチーフかもしれませんが、サウンドはマージービートっぽくてほほえましいです。
8位「Mary Lou」(アルバム:MARIES MANIA)
■曲名:Mary Lou
■アルバム名:MARIES MANIA
■動画リンク:「Mary Lou」
彼らの音楽には、オールディーズからの影響も感じられます。
ラスト・アルバムの1曲目では、スキータ・デイヴィス(Skeeter Davis)の「この世の果てまで(The End Of The World)」をカバーしていますし。
私の感じだと「Mary Lou」の由来は、以下の曲だと思います。
音楽が複雑になりすぎる前の時代特有のイノセントな曲です。
私は上の曲に「Mary Lou」と同じナイーヴさの原点を見る思いがします。
さて先程初期の彼らが「東京のストゥージズ」と呼ばれていたと書きました。
しかし音楽的にもファッション的にも、ラモーンズ(Ramones)の方が近いように感じます。
実際このアルバム名とジャケットは、おそらく「ラモーンズ・マニア(Ramones Mania)」から来ていますし。
思えばラモーンズもオールディーズの影響が色濃いバンドでした。
9位「すてきなモリー」(アルバム:毛皮のマリーズ)
■曲名:すてきなモリー
■アルバム名:毛皮のマリーズ
■動画リンク:「すてきなモリー」
このバンドは、ボーカルで作詞作曲を手掛ける志磨遼平のワンマン・バンドです。
その他のメンバーをご紹介しておきましょう。
越川和磨:ギター
栗本ヒロコ:ベース
富士山富士夫:ドラム
ワンマン・バンドは沢山ありますが、彼らの関係性は独特です。
自他共に認めるワンマンバンドで、楽曲のアレンジ、ライブの演出、衣装、アートワーク、ミュージックビデオに至るまで志磨が事細かに注文を出していた。
メンバーがレコーディングに参加しないこともあった。
これは、ある一面でバンドの寿命を縮めたが、メンバー同士の関係は「ふざけてるだけ」で「作品の内容なんかぼくらはどうでもいい」と一貫して主張した。
メンバーが「作品の内容なんかぼくらはどうでもいい」と言うのは、結構すごいことかもしれません。
ただこの曲のボーカルは、栗本ヒロコです。
もう少しこういう曲があっても良かったかもしれません。
10位「ハートブレイクマン」(アルバム:Faust C.D.)
■曲名:ハートブレイクマン
■アルバム名:Faust C.D.
■動画リンク:「ハートブレイクマン」
彼らは音楽的な振れ幅が大きいバンドでした。
初期はひたすら激しく、その後は落ち着いた作風に変化していきました。
このミニ・アルバムは、その境目にあたる作品かもしれません。
この曲などは、まるでサニーデイ・サービスみたいです。
この曲は私的名曲枠で選出してみました。
センスと感性を命綱に変化を恐れず突き進む、その過程はとてもスリリングでした。
アレンジで引用されているビートルズの「ハロー・グッドバイ(Hello, Goodbye)」も、曲によくなじんでいます。
11位「クライベイビー」(アルバム:マイ・ネーム・イズ・ロマンス)
■曲名:クライベイビー
■アルバム名:マイ・ネーム・イズ・ロマンス
■動画リンク:「クライベイビー」
バンド名の毛皮のマリーズという名前は、寺山修司の戯曲「毛皮のマリー」に由来しています。
一方志磨遼平は、イエロー・モンキーの吉井和哉へのあこがれを度々語っています。
確かに彼のボーカル・スタイルは、その影響が顕著ですし。
私は彼らのバンド名は、イエロー・モンキーのインディーズ時代の名曲「毛皮のコートのブルース」と寺山修司、2つから着想を得ていたのかもしれないと思ったりもします。
吉井和哉は毛皮のマリーズについて、こう語っています。
吉井和哉は「テクニック・グループではないけど、バンドとしてカッコイイ」と評している。
彼らの魅力の核は存在自体のカッコよさであって、音楽は二次的な魅力なのかもしれません。
12位「JUBILEE」(アルバム:THE END)
■曲名:JUBILEE
■アルバム名:THE END
■動画リンク:「JUBILEE」
彼らのラスト・アルバムです。
彼らの解散は唐突でした。
9月7日、秘密裏に制作を進めていた(厳重な戒厳令が敷かれ、アートワークはおろかアルバムタイトルすらリリース日まで一切告知されなかった)作品が『THE END』の名で店頭に並ぶ。
ポスターにはショップスタッフが入荷当日に手書きでタイトルを書き込むよう指定されていた(店頭で完成するアートワークでの解散パフォーマンス)。
その夜、全国のFM44局をジャックして志磨が解散宣言。
アート的な行動だと感じます。
そのせいか解散したのは残念ですが、不思議と潔いと感じます。
このアルバムで有終の美を飾りましたし。
他にも以下のような曲があります。
最後に取り上げた「JUBILEE」は、改めて志磨遼平の才能を確認できる逸品です。
度々申し上げてきた通り、彼らの音楽は過去の音楽のコラージュみたいなものでした。
この曲にもいくつかの断片を見つけることができます。
しかしなぜかそれら数多くの引用は、いつも志磨遼平の才能を浮かび上がらせる結果に帰着しています。
表現者としての身体が、引用という衣装を凌駕している。
そんな印象を受ける音楽です。
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