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ビル・エバンス(Bill Evans)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はビル・エバンスのランキングを作成しました。

ビル・エバンスはアメリカのジャズ・ピアニストです。

彼はジャズ・ピアノのあり方に大きな影響を与えました。

・右手に頼った演奏からの脱却
・周囲のプレイヤーとの柔軟かつ相互触発的な演奏
・新鮮な和音の響き

彼以降次々とエヴァンス派と呼ばれるピアニストが出てきましたが、この人はその本家です。

大きなくくりではハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、チック・コリア(Chick Corea)、キース・ジャレット(Keith Jarrett)もエヴァンス派です。

この記事ではピアノ・トリオの曲を中心に選曲してみました。

1位「Someday My Prince Will Come」(アルバム:At the Montreux Jazz Festival)

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■曲名:Someday My Prince Will Come
■曲名邦題:いつか王子様が
■アルバム名:At the Montreux Jazz Festival(1968年)
■アルバム名邦題:モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス
■動画リンク:「Someday My Prince Will Come」

この曲は有名なディズニー・ソングです。

ディズニーの曲はジャズでもよく取り上げられますが、エヴァンスはこの曲が一番のお気に入りのようです。

二番目のお気に入りは、後で取り上げる「Alice in Wonderland」でしょうか。

このアルバムはスイスのモントルーで開催されたジャズ・フェスティバルの模様を収録したライブ盤。

よく「お城のエヴァンス」という愛称で呼ばれています。

屋外の解放感のせいか、エヴァンスはとても伸びやかに演奏していますね。

加えてドラムがジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)のドラムが、この曲の躍動感をアシストしています。

 

2位「Autumn Leaves」(アルバム:Portrait in Jazz)

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■曲名:Autumn Leaves
■曲名邦題:枯葉
■アルバム名:Portrait in Jazz(1959年)
■アルバム名邦題:ポートレイト・イン・ジャズ
■動画リンク:「Autumn Leaves」

この曲のベーシストはスコット・ラファロ(Scott LaFaro)です。

「枯葉」という曲はマイルス・デイビス(Miles Davis)の名演で有名ですが、この曲はそちらと並ぶ名演です。

この曲は45秒からのインタープレイが聞きもの。

ちなみにインタープレイとは、プレイヤーが相手の音を聞いて相互に反応し合うことです。

時々ドラムのポール・モチアン(Paul Motian)も、2人に割って入っていますね。

まさに三すくみ。

この互いに反応し合う連鎖反応から真っ先に抜け出たのは、やはりエヴァンスです。

2:01から駆け上がるかのような演奏が始まり、他の2人は彼を追っています。

 

3位「Alice in Wonderland」(アルバム:Sunday at the Village Vanguard)

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■曲名:Alice in Wonderland
■曲名邦題:不思議の国のアリス
■アルバム名:Sunday at the Village Vanguard(1961年)
■アルバム名邦題:サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
■動画リンク:「Alice in Wonderland」

この曲もスコット・ラファロとの共演です。

最初はエヴァンスが散文的に弾いていますが、ベースが入るやいなや演奏が熱を帯び始めます。

ラファロの演奏はラフでセオリーを無視しているところがあるかもしれません。

彼のベースはピアノと異なるメロディを平行して歌っています。

エヴァンスのトリオはドラムを含めて、相互触発に重きが置かれています。

サッカーでいえば前への飛び出しを多用するゴールキーパーにも似た危うさがあるかもしれません。

一歩間違うと空中分解して単にまとまりの悪い音楽なりかねません。

それでも演奏がバラバラにならないのは、互いの音を聞いてきちんと反応しているから。

ライブではスタジオ録音よりも、付かず離れずの緊張感とスリルがあるように感じます。

 

4位「Noelle’s Theme」(アルバム:Paris Concert, Edition One)

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■曲名:Noelle’s Theme
■曲名邦題:ノエルズ・テーマ
■アルバム名:Paris Concert, Edition One(1979年)
■アルバム名邦題:ザ・パリ・コンサート・エディション1
■動画リンク:「Noelle’s Theme」

かつてのエヴァンスには、12年連れ添ったエレイン・シュルツという女性がいました。

2人は12年もの間夫婦同然に暮らしていましたが、内縁関係のままで結婚はしていませんでした。

しかしエヴァンスは子供がほしいと望み、ついにエレインと別れることを決意します。

エレインは子供が産めない身体だったようですね。

エヴァンスと別れた後、エレインは地下鉄で投身自殺しました。

一方エバンスは別の女性と結婚して子供を授かりましたが、この頃から彼は少しずつ壊れていきました。

エヴァンスがエレインに捧げた曲をご紹介します。

Bill Evans – Hi Lili, Hi Lo (For Ellaine)

さてご紹介した「Noelle’s Theme」は、ミッシェル・ルグランの映画「真夜中は別の顔(The Other Side of Midnight)」で使われた曲です。

ノエルとは映画に出てくる女性のことで、彼女は美貌を武器に男たちを踏み台にしてスターにのし上がりました。

しかし彼女の心の中では常に自分を捨てた男への愛憎がくすぶっていました。

私の憶測にすぎませんが、エヴァンスがこの曲を選んだ動機には、エレインへの罪悪感があったのかもしれません。

この頃の彼はようやく授かった子供のいる家庭には寄り付かず、ドラッグに耽溺するようになりました。

 

5位「Waltz for Debby」(アルバム:Waltz for Debby)

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■曲名:Waltz for Debby
■曲名邦題:ワルツ・フォー・デビイ
■アルバム名:Waltz for Debby(1961年)
■アルバム名邦題:ワルツ・フォー・デビイ
■動画リンク:「Waltz for Debby」

このアルバムは彼の最高傑作との誉れが高く、この曲も彼の代表的名演と言われています。

まず最初の一音からとても美しく、添えられているラファロのベースも優雅です。

しかしそれは何かと引き換えにした類の美かもしれません。

彼は病的に内気でシャイな人でしたが、一方で昔ながらの破滅型のジャズメンでもありました。

彼がジャケットで口を開いて笑わないのは、クスリをやりすぎて歯がボロボロだったからです。

世の中には美しい演奏は沢山あります。

しかしビル・エヴァンスのピアノの美しさには、業の深さと繊細な内面を投影した陰影を感じさせました。

「スワンソング」とは生前最後の作品やパフォーマンスを指す言葉で、白鳥が最も美しい声で鳴くのは死の間際という伝説に由来しています。

彼の音楽には「スワンソング」のような美しさを感じます。

 

6位「The Dolphin-Before」(アルバム:From Left to Right)

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■曲名:The Dolphin-Before
■曲名邦題:ザ・ドルフィン~ビフォア
■アルバム名:From Left to Right(1970年)
■アルバム名邦題:フロム・レフト・トゥ・ライト
■動画リンク:
「The Dolphin-Before」

さてここでは趣向を変えて、ボサノヴァぽい曲をご紹介します。

彼の演奏は生まじめすぎる面がありますが、そんな彼がポップで軽やかな曲を演奏したらどうなるか、その答えがこの曲です。

エヴァンスの特徴は、上質のリリシズムと言われています。

彼の音楽には硬質の美しさがありますが、この曲では逆にリラックスして演奏してますね。

いつもの彼とは異なりますが、これはこれで私は大好きです。

もっとこういう風に気楽に聞ける曲を残してほしかったと思わずにはいられません。

私はランキングを作成する時に、裏の1位は何にしようと考えることがあります。

人の好みは様々ですから、曲に多様性を持たせておきたいというわけです。

今回のランキングでは裏の1位はこの曲かもしれません。

 

7位「We Will Meet Again (For Harry)」(アルバム:You Must Believe In Spring)

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■曲名:We Will Meet Again (For Harry)
■曲名邦題:ウィ・ウィル・ミート・アゲイン(兄ハリーに捧ぐ)
■アルバム名:You Must Believe In Spring(1977年)
■アルバム名邦題:ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング
■動画リンク:「We Will Meet Again (For Harry)」

このアルバムは亡くなった兄に捧げられています。

兄弟仲はとても良かったようです。

彼の代表曲「Waltz for Debby」は、兄の娘に贈った曲ですし。

エヴァンスの自暴自棄な生き方は、元恋人の自殺と大好きな兄の死を受けて加速しました。

彼はこの曲のタイトルで、亡くなった兄に対して「また会おう」と呼びかけています。

晩年の彼は、深刻な病を患っていたのに治療を拒み続けた結果、51歳という若さで亡くなりました。

生前最後の数日は指が異常に膨れあがり、ある鍵盤を押すと隣の鍵盤まで押してしまう状態だったそうです。

しかし彼はそんな状態でもピアノを弾こうとしていました。

結局倒れて病院に運び込まれた時には既に、医者があきれるほどの手遅れだったそうです。

早くから病院で治療を受けていれば助かった可能性が高いことから、そのため彼の死は「緩慢な自殺」と言われています。

 

8位「Beautiful Love」(アルバム:Explorations)

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■曲名:Beautiful Love
■曲名邦題:ビューティフル・ラヴ
■アルバム名:Explorations(1961年)
■アルバム名邦題:エクスプロレイションズ
■動画リンク:「Beautiful Love」

リバーサイド四部作の1つです。

リバーサイド四部作とは、ジャズの歴史に輝く「Portrait in Jazz」「Portrait in Jazz」「Sunday at the Village Vanguard」「Waltz for Debby」4枚のこと。

エヴァンスはこのアルバムが、自分のベストワークと考えていたそうです。

確かに名演ぞろいで他にも「Israel」などの名演が収録されています。

Bill Evans – Israel

ただこのアルバムのレコーディングは、エヴァンスにとって良い思い出ではなかったかもしれません。

レコーディングの間中ずっとスコット・ラファロと口論していたそうですから。

エヴァンスは本来争いごとを好まないどころか、極度に引っ込み思案な人でした。

デビュー時も、尻ごみをするエヴァンスを周囲が説得しなければいけなかったほど。

しかしそんな彼がこの日はラファロと大喧嘩していたのですね。

この時スコット・ラファロは25歳。

ラファロはこのレコーディングの直後、自動車事故で亡くなりました。

 

9位「Funkallero」(アルバム:The Bill Evans Album)

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■曲名:Funkallero
■曲名邦題:ファンカレロ
■アルバム名:The Bill Evans Album(1971年)
■アルバム名邦題:ザ・ビル・エヴァンス・アルバム
■動画リンク:「Funkallero」

この曲でエヴァンスはエレピを弾いています。

彼はあまり音楽的な変化を好まない人で、似たようなアルバムを10年以上淡々とつくり続けていました。

しかし1970年代に入ると彼は時々エレピを弾くようになりました。

彼のピアノは繊細なタッチが生命線なので、エレピとは相性が悪いと思われるかもしれません。

しかし心配無用でした。

この曲では途中でエレピから生ピアノに変えています。

あとゲイリー・ピーコック(Gary Peacock)のベースプレイも聞きごたえがあります。

先程ご紹介した「We Will Meet Again (For Harry)」のベースもこの人ですが、私はスコット・ラファロに匹敵するベーシストだと思います。

 

10位「You and the Night and the Music」(アルバム:Green Dolphin Street)

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■曲名:You and the Night and the Music
■曲名邦題:あなたと夜と音楽と
■アルバム名:Green Dolphin Street(1959年)
■アルバム名邦題:グリーン・ドルフィン・ストリート
■動画リンク:「You and the Night and the Music」

この曲はエヴァンスにしてはスイングしている演奏です。

この人はメランコリー気質のせいか、少し暗い印象の演奏が多いかもしれません。

そのせいか彼は明快なスイングを求める人には好まれていないようですが、この曲はいかがでしょうか。

実にハードバップ・ピアノらしい名演ですね。

他の曲の箇所で私はスコット・ラファロについて、普通のベーシストと違うと書きました。

私が言う普通のベースの演奏とは、この曲みたいな演奏のことです。

このスムースなベースラインを紡いでいるのは、名手ポール・チェンバース(Paul Chambers)です。

ビル・エヴァンスは、ベースやドラムから触発されやすい人かもしれません。

そして共演者によって彼の音楽は様々な表情を見せてきました。

この記事では彼の様々な側面をご紹介することを意識して選曲してみました。

 

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