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ビル・エバンス(Bill Evans)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はビル・エバンスのランキングを作成しました。

ビル・エバンスはアメリカのジャズ・ピアニストです。

彼はジャズピアノのあり方に大きな影響を与えました。

・右手だけに頼った演奏からの脱却
・周囲のプレイヤーとの柔軟かつ相互触発的な演奏
・新鮮な和音の響き

その後エヴァンス派と呼ばれるピアニストが続々と出てきましたが、その本家といえる存在です。

ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、チック・コリア(Chick Corea)、キース・ジャレット(Keith Jarrett)あたりもエヴァンス派に入ります。

ただ今回本当にお伝えしたいのは、ジャズの大物とか、ジャズピアノの歴史とかではありません。

ピアノ馬鹿で、同時に病的に内気なゆえに、次第に破滅願望を持つに至ったあるピアノ弾きの話です。

それと引き換えに生み出した音楽には、おしゃれとか趣味が良いとかではなく、一種独特の美しさとスリルがあります。

ジャンルは関係ありません。

むしろロックファンにこそ聞いていただきたいと思っています。

今回はギターやホーンと共演したものを除外して、彼のピアノにフォーカスしてみました。

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1位「Someday My Prince Will Come」(アルバム:At the Montreux Jazz Festival)

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■曲名:Someday My Prince Will Come
■曲名邦題:いつか王子様が
■アルバム名:At the Montreux Jazz Festival
■アルバム名邦題:モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス
■動画リンク:「Someday My Prince Will Come」
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ご存知ディズニーの名曲です。

ディズニーの曲はよくジャズメンに取り上げられますが、どうやらエヴァンスはこの曲が一番のお気に入りのようです。

演奏回数からすると二番目のお気に入りは、後で取り上げる「Alice in Wonderland」です。

彼は何度もこの曲を演奏していますが、どれもおおよそメロディの解釈が似ているように思います。

このアルバムはスイスのモントルーで開催されたジャズ・フェスティバルのライブです。

基本的にジャズメンはジャズクラブという狭い空間で演奏することが多いです。

しかしフェスティバルということは、この曲は解放された屋外で演奏されたということでしょう。

エヴァンスは本来バリバリ弾くような、ヴァーチュオーゾ的プレイヤーではありません。

しかしここでのエヴァンスは、解放感のせいか非常に伸びやかで推進力のある演奏をしています。

成功の要因は、ドラムにジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)を起用したことかもしれません。

この人は攻めの演奏に強みを持つドラマーですが、この曲で後方からエヴァンスを強力にプッシュしています。

 

2位「Autumn Leaves」(アルバム:Portrait in Jazz)

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■曲名:Autumn Leaves
■曲名邦題:枯葉
■アルバム名:Portrait in Jazz
■アルバム名邦題:ポートレイト・イン・ジャズ
■動画リンク:「Autumn Leaves」
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この曲はスコット・ラファロ(Scott LaFaro)がベースを務めています。

「枯葉」という曲はマイルス・デイビス(Miles Davis)の名演で有名ですが、それと並ぶと言われているのがこの演奏です。

この曲ではエヴァンスとラファロがバラバラなのか、息が合っているのか分からないような演奏をしています。

こういう風に相互の反応を演奏の中心に据えていることについて、周囲は驚きの反応を示しました。

互いによく相手の音を聞いているのだなと。

この曲では45秒あたりからを聞いていただければと思います。

同時代のピアノプレイヤーは、この相互触発的な反応に、ピアノトリオの新しい可能性を見たと思われます。

ちなみにインタープレイとは、こういうプレイヤー同士の相互作用を指す言葉です。

時々ドラムのポール・モチアン(Paul Motian)も、2人に割って入っています。

まさに三すくみです。

この互いに反応し合う連鎖反応地獄の緊張状態から真っ先に抜き出たのは、やはりエヴァンスです。

2:01から駆け上がるかのような演奏が始まり、他の2人は「待てゴラァ」とばかりに、エヴァンスを追いかけます。

この時のモチアンのドラムは、ぎこちなくワルツを刻んでいますが、エヴァンスのピアノにしっかり反応していますね。

その後のエヴァンスのピアノは快調そのものです。

ピアノを弾く喜びしか感じません。

 

3位「Alice in Wonderland」(アルバム:Sunday at the Village Vanguard)

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■曲名:Alice in Wonderland
■曲名邦題:不思議の国のアリス
■アルバム名:Sunday at the Village Vanguard
■アルバム名邦題:サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
■動画リンク:「Alice in Wonderland」
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この曲もスコット・ラファロとの共演です。

最初はエヴァンスが散文的にパラパラと弾いていますが、ベースが入ると少し熱を帯びてきます。

この曲でピアノとベースは別々のメロディを平行して歌いながら、矛盾なく音楽として成立させるという離れ業をやってのけています。

その後ラファロが躍動しはじめます。

ラファロの演奏は野性味があり、天才的なひらめきがあります。

ラフでセオリーを無視しているようなところがありますが、逆にそれがすばらしいです。

まるで既存の公式を使わずに数学の難しい問題を解いてしまう不良生徒といった趣きがあります。

この時スコット・ラファロは25歳です。

ラファロは、このレコーディングの後にすぐ自動車事故で命を落としてしまいます。

とても悲しい出来事ですが、死ぬ前にこれだけの演奏を残してくれたと感謝すべきかもしれません。

エヴァンスとの共演によって、ラファロは人々の記憶に刻まれました。

 

4位「Noelle’s Theme」(アルバム:Paris Concert, Edition One)

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■曲名:Noelle’s Theme
■曲名邦題:ノエルズ・テーマ
■アルバム名:Paris Concert, Edition One
■アルバム名邦題:ザ・パリ・コンサート・エディション1
■動画リンク:「Noelle’s Theme」
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この曲は極私的名曲で、以前「無人島の一枚を探すブログ」という兄弟ブログで、この曲について書いたことがあります。

ビル・エヴァンスの晩年の人生を追いかけたストーリー仕立ての記事になっています。

もしよかったら下の記事をお読みください。

Bill Evans「Noelle’s Theme」(アルバム:The Paris Concert: Edition One)

Bill Evans「Noelle’s Theme」(アルバム:The Paris Concert: Edition One)

この曲はミッシェル・ルグランの映画「真夜中は別の顔(The Other Side of Midnight)」で使われた曲です。

ここでエヴァンスは、どんどん深みに潜るように自己の内面に没入していきます。

問題はその異常なまでの深さです。

その後技量では本家を上回るかもしれないエヴァンス派の天才たちの多くが、この深みにまでは到達できませんでした。

もしかしたらこの域まで達することができたのは、キース・ジャレット(Keith Jarrett)ぐらいかもしれません。

単に演奏がうまいとかそういう問題ではなく、内向的な性格や美を探求する一途な思いが余程強くないと、ここまでにはならないかもしれません。

極度の人見知りだった彼がピアノだけを命綱にして、深海に潜って降りていくような演奏だと思います。

 

5位「Waltz for Debby」(アルバム:Waltz for Debby)

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■曲名:Waltz for Debby
■曲名邦題:ワルツ・フォー・デビイ
■アルバム名:Waltz for Debby
■アルバム名邦題:ワルツ・フォー・デビイ
■動画リンク:「Waltz for Debby」
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この曲が一般的に彼の代表作と言われています。

まず最初の一音から美しいですし、エヴァンスに添えられるラファロのベースも優雅です。

ラファロと共演した曲では、とかくラファロのことばかりが取り上げられがちですが、やはりエヴァンスのピアノ演奏はすばらしいです。

この曲は端正でとても美しい演奏だと思います。

しかしそれは何かと引き換えに手に入れた、捨て身の美しさかもしれません。

彼は病的に内気でシャイな人でした。その彼は次第に麻薬にはまっていきます。

彼がアルバムジャケットで口を開いて笑わないのは、ジャンキーだったせいで歯がボロボロだったからです。

彼はダークサイドに堕ちていき、ライフゼロにまで追い込まれた時に、ギリギリのところで美しさを絞り出しました。

絞り出された一滴には、耽美な響きが宿っています。

彼の音楽には、そういうダークサイドを抱えた人の業が生み出した美しさがあります。。

この曲はソフトロックファンにとって、カメレオン・チャーチ(Chamaeleon Church)がカバーしていたことで、おなじみの曲かもしれません

そういう方もきちんとオリジナルを聞いて、別格の美しさを味わっていただきたいと思います。

また森口博子さんもこの曲をお好きらしく「私のビル」と発言したとかいう話もありましたね。

 

6位「The Dolphin-Before」(アルバム:From Left to Right)

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■曲名:ザ・ドルフィン~ビフォア
■曲名邦題:The Dolphin-Before
■アルバム名:From Left to Right
■アルバム名邦題:フロム・レフト・トゥ・ライト
■動画リンク:「The Dolphin-Before」
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この曲は少し異色です。

純粋なピアノ音楽ではなく、イージーリスニングといった曲です。

エヴァンスの曲は、とかく生まじめなところがあります。

エヴァンスがもう少し軽やかでポップな曲を演奏したらどうなるか。その答えがこの曲です。

エヴァンスの特徴は、上質のリリシズムと言われています。

普段は生まじめさゆえに硬質な響きがありますが、この曲ではリラックスしてメロディの美しさを表現しています。

まるでジャズ・ボッサともいえるこの曲には、切れ味や凄みのある美しさはありません。

この曲は普段の彼とは異なりますが、本質的な持ち味は失われていませんし、これはこれで私は大好きです。

もっとこういう気楽に聞ける曲を残してほしかったと思わずにはいられません。

私はランキングを作成する時に、裏の1位は何にしようと考えることがあります。

人の好みは様々ですから、少し多様性を持たせておきたいというわけです。

今回のランキングで裏の1位はこの曲で決定です。

 

7位「We Will Meet Again (For Harry)」(アルバム:You Must Believe In Spring)

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■曲名:We Will Meet Again (For Harry)
■曲名邦題:ウィ・ウィル・ミート・アゲイン(兄ハリーに捧ぐ)
■アルバム名:You Must Believe In Spring
■アルバム名邦題:ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング
■動画リンク:「We Will Meet Again (For Harry)」
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このアルバムは彼の兄に捧げられています。

この頃エヴァンスには、不幸な出来事が続いていました。

追い打ちをかけるように、彼は兄の死に直面しました。

ちなみに彼の代表曲「Waltz for Debby」は、兄の娘に対して贈られた曲です。

兄弟仲はとても良かったようで、それによって少し前に元恋人の自殺で衰弱していたエヴァンスは、更に追い詰められていきました。

彼はこの曲のタイトルで、亡くなった兄に対して「また会おう」と呼びかけています。

エヴァンスは晩年に深刻な病を患っていたにもかからず治療を拒み続けた末に、早死にしています。

最後の数日には病気のせいで異常に指が膨れあがり、キーを押すと隣のキーまで押してしまうような状態だったそうです。

それでもピアノを弾こうとしていたというエピソードが残されています。

結局倒れて病院に運び込まれた時には、医者もあきれるほどの手遅れでした。

きちんと治療をしていれば助かったと言われている為、彼の死は「緩慢な自殺」と言われていますが、この時にはもう終わりが始まっていました。

話題は変わりますが、このアルバムはロックファン受けするように思います。

ある時このアルバムを聞いていたところ、友達のロックファンが「これは何だ」と激しく食いついてきたことがあります。

その後試しに違うロック仲間が遊びに来ていた時に、このアルバムを掛けてみたところ、その彼も気に入ってしまいました。

彼が捨て身で表現した美しさは、軽くジャンルの壁を超えているのかもしれません。

 

8位「Beautiful Love」(アルバム:Explorations)

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■曲名:Beautiful Love
■曲名邦題:ビューティフル・ラヴ
■アルバム名:Explorations
■アルバム名邦題:エクスプロレイションズ
■動画リンク:「Beautiful Love」
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これはリバーサイド四部作の1つです。

リバーサイド四部作とは、ジャズの歴史に輝く「Portrait in Jazz」「Portrait in Jazz」「Sunday at the Village Vanguard」「Waltz for Debby」4枚のことです。

ジャズピアノの金字塔ともいえるアルバムの数々です。

エヴァンスはこのアルバムが、自分のベストワークの1つと考えていたそうです。

確かに名演ぞろいで「イスラエル(Explorations)」など、この曲と甲乙つけがたい曲が多数収録されています。

ただこのアルバムのレコーディングは、エヴァンスにとってあまり良い思い出ではないかもしれません。

このアルバムのレコーディングの間ずっと、共演者のスコット・ラファロと口論をしていたそうです。

エヴァンスは本来争いごとを好む人ではありません。

マイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー(Kind of Blue)」で、エヴァンスは自分が作曲した曲を、マイルスの作曲と記載されても泣き寝入りしたぐらいです

彼は自分が自分がという人ではありません。

レコードデビューについても、周囲が尻ごみをするエヴァンスを説得してでビューさせたそうです。

そういう彼が、何があってラファロと仲たがいしていたのでしょうね。

エヴァンスは「Waltz for Debby」もそうですが、かわいらしく小粋な曲の解釈がすばらしいです。

この小粋な名曲を端正に表現しています。

しかしそこに加わるのが、喧嘩で気が立っている野蛮なラファロです。

ケンカ腰の演奏をしていると思いきや、この曲では殊勝にウォーキングベースを刻んでいる場面があります。

ラファロのジャズっぽい演奏は、少し新鮮かもしれません。

 

9位「Funkallero」(アルバム:The Bill Evans Album)

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■曲名:Funkallero
■曲名邦題:ファンカレロ
■アルバム名:The Bill Evans Album
■アルバム名邦題:ザ・ビル・エヴァンス・アルバム
■動画リンク:「Funkallero」
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この曲はエレピ、フェンダーローズを弾いている曲です。

一時期エヴァンスは結構エレピを弾いていました。

彼は基本あまり音楽的な変化を好まない人です。同じようなアルバムを10年以上淡々とリリースし続けていました。

1970年代に入ってからようやくエレピを導入したり、晩年はダイナミックな演奏が多くなってきました。

彼のピアノはタッチの繊細さが命ですので、ジャズファンからこうしたエレピの演奏は忌避されがちです。

私みたいな他のジャンルも聞く人からすると、こちらもすばらしいと思いますけどね。

そういう中でもこの曲は屈指の出来です。

この人は気分が低め安定の人ですが、その気質とエレピのひんやりとした音色が合っているような気がします。

またエヴァンス音楽特有の気品や知性も失っていません。

さてこの曲は構成が興味深くて、エレピから途中で生ピアノに変えています。

他に注目すべき点としては、ゲイリー・ピーコック(Gary Peacock)のベースプレイです。

「We Will Meet Again (For Harry)」もこの人のベースですが、私はスコット・ラファロに負けないすばらしいベースプレイヤーだと思います。

野蛮さや才気のきらめきはラファロに分がありますが、美しさではゲイリー・ピーコックの方が上かもしれません。

この曲でもうまく高音域を使って、エヴァンスを支えています。

 

10位「You and the Night and the Music」(アルバム:Green Dolphin Street)

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■曲名:You and the Night and the Music
■曲名邦題:あなたと夜と音楽と
■アルバム名:Green Dolphin Street
■アルバム名邦題:グリーン・ドルフィン・ストリート
■動画リンク:「You and the Night and the Music」
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この曲はエヴァンスにしてはリラックスした演奏です。

普通のジャズらしい演奏といえるかもしれません。

この人はメランコリー気質があるせいで、少し暗い演奏になることがあります。

明るくソウルフルなピアノを好む人には避けられてしまいそうですが、この曲などはいかがでしょうか。

まるでウィントン・ケリー(Wynton Kelly)かと思えるような明快な演奏です。

他の曲でスコット・ラファロについて普通の演奏と違うみたいなことを書きましたが、私が言う普通のベースとはこの曲みたいな演奏のことです。

このスムースなベースラインを紡いでいるのは、ポール・チェンバース(Paul Chambers)です。

エヴァンスは他のプレイヤーの影響を受けやすい人なのかもしれませんね。

リラックスして気軽に楽しみたい人に向けて選曲してみました。

こういう曲が好きな人には「ハウ・マイ・ハート・シングス(How My Heart Sings!)」というアルバムがおすすめです。

最後に少しほっとする曲を選んでみました。

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