今回はウェザー・リポートのランキングを作成しました。
彼らは楽曲、演奏力、グループ表現など全てにおいて、最強のフュージョン・グループです。
今回は全盛期の誉れ高い中期を中心に選曲しました。
フュージョンのドリーム・チームみたいなグループです。
- 1 1位「Birdland」(アルバム:Heavy Weather)
- 2 2位「Black Market」(アルバム:Black Market)
- 3 3位「Teen Town」(アルバム:8:30)
- 4 4位「A Remark You Made」(アルバム:Heavy Weather)
- 5 5位「Herandnu」(アルバム:Black Market)
- 6 6位「Young and Fine」(アルバム:Mr. Gone)
- 7 7位「Umbrella」(アルバム:Weather Report)
- 8 8位「Nubian Sundance」(アルバム:Mysterious Traveller)
- 9 9位「Night Passage」(アルバム:Night Passage)
- 10 10位「Man In The Green Shirt」(アルバム:Tale Spinnin’)
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1位「Birdland」(アルバム:Heavy Weather)
■曲名:Birdland
■曲名邦題:バードランド
■アルバム名:Heavy Weather
■アルバム名邦題:ヘヴィ・ウェザー
■動画リンク:「Birdland」
このバンドの定番であり有名曲です。
この曲の人気や知名度は、ジャズ/フュージョンという枠を超えているかもしれません。
まず注目は18秒のところから、一瞬ギターのように聞こえる演奏がありますね。
それはベースの演奏です。
弾いているのは、奇才ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)。
ギターに聞こえる箇所はハーモニクスという技術で、ギターでもよく使われます。
通常左手で弦を押さえる時ある程度力を入れますですが、ハーモニクスの場合は軽く弦に触れる程度にして指を離します。
なぜそんな弾き方をするかというと、通常では出ない高い音が出せるからです。
ベースでハーモニクスを使うと、ギターの音域も可能となります。
ただ通常は単発で用いられる技で、こんな風にギターみたいに聞かせることはありません。
ジャコ・パスらしいトリッキーな技の常態化といえるでしょう。
2位「Black Market」(アルバム:Black Market)
■曲名:Black Market
■曲名邦題:ブラック・マーケット
■アルバム名:Black Market
■アルバム名邦題:ブラック・マーケット
■動画リンク:「Black Market」
アフリカ観光をした気分にさせてくれる曲です。
曲名の「Black Market」とは、闇市場のこと。
しかしその語感から想像されるイメージとは異なる、とても楽しい曲です。
この曲の展開はストーリー仕立てだと思われます。
最初のざわめきは、闇市場がにぎわっている様子でしょうか。
イントロからザヴィヌルのとろけるようなアナログ・シンセの演奏がたまりません。
次第にボリュームが上がり、演奏が熱を帯び始めてくるのは、テンションの高まりを表現しているのでしょうか。
その後の2:25ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)のサックスで、ひと盛り上がりしています。
現地に到着したのかもしれません。
その後しばらく熱演が続いた後、少しスローダウンしています。
楽しんだ後の帰路のシーンだと思われます。
最後には花火を打ち上げた音も入っていますね。
3位「Teen Town」(アルバム:8:30)
■曲名:Teen Town
■曲名邦題:ティーン・タウン
■アルバム名:8:30
■アルバム名邦題:8:30
■動画リンク:「Teen Town」
彼らの最高傑作は「Heavy Weather」だと言われていますが、私はこのライブ・アルバムも同じぐらい推したいと思います。
彼らの魅力は演奏力ですが、ライブでのラフさが良い方向に振れているように思います。
その一例がこの曲。
まずは1:30から小刻みに躍動するベースをお聞きください。
またこのバンドではショーターのサックスが歌ものではサビにあたる、キメの場面で使われている印象があります。
しかしこの曲でのショーターは、そういう使われ方ではありません。
曲の間中ずっと激しくブロウしています。
3:40以降の熱演ぶりは、アーチー・シェップ(Archie Shepp)顔負けではないでしょうか。
ウェザー・リポートでのショーターについて物足りないと仰る方も、きっとご満足いただけることでしょう。
上の2位までが彼らの表の顔だとしたら、この曲は裏の代表曲といえそうな快演です。
この曲が気に入った方は「ライヴ&アンリリースド(Live and Unreleased)」の「フリージング・ファイアー(Freezing Fire)」も要チェックです。
4位「A Remark You Made」(アルバム:Heavy Weather)
■曲名:A Remark You Made
■曲名邦題:お前のしるし
■アルバム名:Heavy Weather
■アルバム名邦題:ヘヴィ・ウェザー
■動画リンク:「A Remark You Made」
イントロはアーバン・フュージョンといった感じかもしれません。
その後36秒からのジャコのベースは、まるでキーボードのように聞こえないでしょうか。
ヨーロピアンな香りと、アンニュイ且つデカダンスを感じさせる音のたたずまいがたまりません。
その後2:00ぐらいからジャコのベースがショーターのサックスを伴って、クライマックスを迎える瞬間の美しいこと!
ジャコ・パストリアスは、フレットレス・ベースを使っています。
この曲ではフレットレス・ベースの良さが活きているように思います。
そもそもがジャコの頭の中には、ベースは低音部でサウンドの土台を支えるという発想がないかもしれません。
完全にサックスやキーボードと同じような、上もの楽器と思っているような気がします。
しかしそれでもすばらしい演奏になってしまうから困ります(いや、全然困りませんが)。
5位「Herandnu」(アルバム:Black Market)
■曲名:Herandnu
■曲名邦題:ヘランドヌ
■アルバム名:Black Market
■アルバム名邦題:ブラック・マーケット
■動画リンク:「Herandnu」
ジャコの前任であるアルフォンソ・ジョンソン(Alphonso Johnson)が書いた曲です。
このバンドは、ジャコ在籍時代が全盛期だと言われています。
実際私もその頃を中心に選曲していますし。
しかしアルフォンソが持ち込んでいたファンクっぽいフィーリングによって、グループはバイタルな方向に変わる過程にありました。
ジャコは確かに常識破りで破天荒な演奏が魅力です。
しかしアルフォンソもやんちゃなプレイでは負けていません。
この曲でも1:18から歪んだベースを披露し、その後も変幻自在なプレイを繰り広げています。
このアルバムにはジャコが参加した曲もありますが、私は両者互角だと思います。
アルフォンソ時代には既に、バンドの全盛期は始まっていました。
このアルバムではキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)に捧げられた「キャノン・ボール(Cannon Ball)」も聞き逃せません。
こちらはジャコがベースを弾いている曲です。
6位「Young and Fine」(アルバム:Mr. Gone)
■曲名:Young and Fine
■曲名邦題:ヤング・アンド・ファイン
■アルバム名:Mr. Gone
■アルバム名邦題:ミスター・ゴーン
■動画リンク:「Young and Fine」
このアルバムは少しとっつきにくいかもしれません。
「Black Market」や「Heavy Weather」ほど、ポップで分かりやすくありませんから。
ただ最初はとらえどころがないように感じられますが、聞き込むと奥深い味わいがにじみ出てきます。
その中でこの曲は、即効性の魅力を持った曲です。
今回改めて彼らの曲を聞き返して、このバンドはザヴィヌルの作曲能力に負うところが大きいと感じました。
この曲もザヴィヌルが書いた曲です。
またザヴィヌルは、バンドの方向性を決定づけていた存在でした。
全盛期の彼らの音楽は、楽園的と形容されていました。
後のザヴィヌルのソロ作やザヴィヌル・シンジケート(Zawinul Syndicate)などを聞くと、そうした部分は彼の好みを反映していたことが分かります。
この曲では、5分少し手前からお聞きください。
ザヴィヌルは自身がバンドの大黒柱であることを証明するすばらしい演奏をしています。
7位「Umbrella」(アルバム:Weather Report)
■曲名:Umbrella
■曲名邦題:アンブレラ
■アルバム名:Weather Report
■アルバム名邦題:ウェザー・リポート
■動画リンク:「Umbrella」
今回は中期の曲ばかり取り上げました。
しかし初期にも多くの名演があります。
その代表として、ファースト・アルバムからこの曲を取り上げてみました。
私はこのアルバムを買って、1曲目の「ミルキー・ウェイ(Milky Way)」を聞いた時、ハズしたかもと思ったことを覚えています。
当時はスペーシーな演奏の魅力を理解していませんでした。
私は当時マイルス・デイビス(Miles Davis)の「ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)」「イン・ア・サイレント・ウェイ(In a Silent Way)」を、既に聞いていました。
それらの音楽性を継承しているというレビューを読んで、このアルバムも買ってみたというわけです。
しかし意外とアンビニエントな音楽なので、私は大変とまどいました。
しかし2曲目としてこの曲のイントロが始まると、もしかしたら大丈夫かもと思いました。
若くお金がない時に買ったCDは、たとえハズレだと思っても認めたくないものです。
私は食らいつくように聞き、ついに魅力に気付くことができました。
そのきっかけとなったこの曲は、今でも一番好きな曲です。
イントロのディストーションがかかったベースがすばらしいですね。
8位「Nubian Sundance」(アルバム:Mysterious Traveller)
■曲名:Nubian Sundance
■曲名邦題:ヌビアン・サンダンス
■アルバム名:Mysterious Traveller
■アルバム名邦題:ミステリアス・トラヴェラー
■動画リンク:「Nubian Sundance」
私はこのブログで長い曲を選ばないようにしています。
皆様もお忙しいと思いますし。
しかしこの曲は10分を超えている長尺です。
それでもあえて選んだということは、どうしても外せないと思った名演だからです。
初期の彼らはストイックな音楽性でしたが、次第にファンクっぽい路線に変化しました。
2枚目の「アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック(Sing the Body Electric)」は前作を踏襲していましたが、3枚目の「スウィートナイター(Sweetnighter)」から変化の兆しが表面化し始めました。
その後この作品では路線変更がより明確になっています。
さて初期の彼らはアルバム毎にドラムが変わり、メンバーが固定されませんでした。
後の時期はピーター・アースキン(Peter Erskine)とオマー・ハキム(Omar Hakim)時代が続きましたが、初期はアルバム毎に違う人が叩いていました。
目まぐるしく交代していった中、この曲で叩いているのはスキップ・ハデン(Skip Hadden)。
この曲などは、彼のドラムが主役と言ってもいいと思います。
9位「Night Passage」(アルバム:Night Passage)
■曲名:Night Passage
■曲名邦題:ナイト・パッセージ
■アルバム名:Night Passage
■アルバム名邦題:ナイト・パッセージ
■動画リンク:「Night Passage」
今回は後期から1曲も選びませんでした。
最初は良い曲がないか聞き返してみました。
しかし初期や中期の名曲を差し置いてまでご紹介したい曲は見つかりません。
ちなみに私が考える後期とは、ジャコが抜けた後の以下の時代です。
「プロセッション(Procession)」
「ドミノ・セオリー(Domino Theory)」
「スポーティン・ライフ(Sportin’ Life)」
「ディス・イズ・ディス(This Is This!)」
これらの作品がお好きな方には申し訳ありませんが、私は物足りなく感じます。
その点このアルバムにはまだジャコもいますし、代表作として挙げる人も少なくありません。
この曲は後のポップ路線を予感させますが、なかなか良い出来だと思います。
あとこのアルバムではデューク・エリントン(Duke Ellington)の「ロッキン・イン・リズム(Rockin’ in Rhythm)」のカバーが話題になりました。
次作の「ウェザー・リポート’81(Weather Report)」を含め、私が一番好きなのはこのあたりまでです。
10位「Man In The Green Shirt」(アルバム:Tale Spinnin’)
■曲名:Man In The Green Shirt
■曲名邦題:マン・イン・ザ・グリーン・シャツ
■アルバム名:Tale Spinnin’
■アルバム名邦題:テイル・スピニン (幻祭夜話)
■動画リンク:「Man In The Green Shirt」
この曲は「Teen Town」と同じく、ショーターの演奏を堪能できる曲です。
このアルバムがリリースされた1975年、ショーターは名盤「ネイティヴ・ダンサー(Native Dancer)」をリリースし、絶好調といえる時期でした。
その好調さは、この曲にも感じられます。
ただこの後バンドはショーターとザヴィヌルの二頭体制から、ザヴィヌル一強体制に移行しました。
しかしそれは結果的にバンドに良い変化をもたらしました。
当時ザヴィヌルは、魅力的なコンセプトとサウンド・ビジョンを持っていましたから。
ザヴィヌルのリーダーシップの下、彼らは全盛期を迎えました。
しかしジャコが抜け、以前ほどザヴィヌルの神通力が通じなくなった後期、再びショーターがリーダーシップを握ることはありませんでした。
在籍中ショーターが発表したソロは、どれも傑作ばかりにもかかわらず。
一方ザヴィヌルもバンドを解散後、新たなバンドで充実作を連発しました。
どちらも音楽の才能が枯れていたわけではなさそうです。
私はこのグループの後期、メンバーの実力がアルバムの出来に反映していなかったように思います。
ジャズやフュージョンは、マンネリになるといけないのですね。
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