今回はキース・ジャレットのランキングを作成しました。
彼はジャズに分類されることが多いように思いますが、その音楽性は多岐に渡っています。
ジャンルに関係なく、総合ピアノ・ミュージックを追及した人かもしれません。
なお彼の音源はYoutubeに少なく、名演と呼ばれる演奏の多くは検索してもヒットしません。
今回Youtubeの動画リンクがあるのは1位、2位、7位のみです。
そこでYoutubeにないものは、代わりにOpen Spotifyのリンクを貼ってみました。
Spotifyは無料で登録できますので、ぜひSpotifyに登録してお聞きください。
- 1 1位「Prayer」(アルバム:Death and the Flower)
- 2 2位「My Back Pages」(アルバム:Somewhere Before)
- 3 3位「Falling in Love with Love」(アルバム:Standards Live)
- 4 4位「Country」(アルバム:My Song)
- 5 5位「Autumn Leaves」(アルバム:Still Live)
- 6 6位「Be My Love」(アルバム:The Melody At Night, With You)
- 7 7位「Forest Flower – Sunrise」(アルバム:Forest Flower)
- 8 8位「God Bless the Child」(アルバム:Standards, Vol. 1)
- 9 9位「In Front」(アルバム:Facing You)
- 10 10位「Koln, January 24, 1975 Part I」(アルバム:The Koln Concert)
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1位「Prayer」(アルバム:Death and the Flower)
■曲名:Prayer
■曲名邦題:祈り
■アルバム名:Death and the Flower
■アルバム名邦題:生と死の幻想
■動画リンク:「Prayer」
この曲はYoutubeに音源がありました。
見つかった時は、ホッとしました。
最初からこの曲を1位にすると決めていましたから。
「祈り」という邦題から想像できるように、スピリチュアルな雰囲気が感じられる曲です。
「Death and the Flower」つまり「死と花」というアルバム名も意味深ですね。
アルバムのインナースリーヴを見たところ、彼の自作詩が掲載されていました。
正確に意味を読み取ることは困難ですが、死とは幻想で、花のように生きなければいけないという内容です。
そういえば彼は、神秘思想家グルジェフの影響を受けていて「G.I. Gurdjieff: Sacred Hymns」というアルバムも発表しています。
彼の最大の魅力である、精神性を感じさせてくれるのがこの曲。
この曲の聞きどころは、4:07からです。
似たような反復フレーズは後に「The Koln Concert」でも披露されていますが、この曲はそのプロトタイプだと思います。
ちなみにこのアルバムは、以下の曲も同等の名曲です。
キング・クリムゾン(King Crimson)が好きな方は、こちらの曲の方が気に入るかもしれません。
2位「My Back Pages」(アルバム:Somewhere Before)
■曲名:My Back Pages
■曲名邦題:マイ・バック・ペイジ
■アルバム名:Somewhere Before
■アルバム名邦題:サムホエア・ビフォー
■動画リンク:「My Back Pages」
この曲はカバー曲で、オリジナルはボブ・ディラン(Bob Dylan)です。
しかし彼が参考にしたのは、ザ・バーズ(The Byrds)がカバーしたバージョンとのこと。
そちらのリンクを貼っておきましょう。
この人の演奏は、途中からエンジンがかかる演奏が多いように思います。
ただこの頃のキースは若さゆえか、最初の一音からテンションが高めです。
しかしこの曲は、なかなかピアノが始まりません。
耽美的なベースのイントロの後、47秒からようやくキースのピアノが始まります。
最初からいきなり感極まったような演奏ですね。
この曲の前半では、ただオリジナルのメロディを繰り返しているにすぎません。
しかしその旋律の美しいこと!
キースの演奏によって、原曲の魅力を再発見した人も多いと思います。
1:59ぐらいからは、その美しいメロディを更に展開させていますが、そこからは更に絶品です。
3位「Falling in Love with Love」(アルバム:Standards Live)
■曲名:Falling in Love with Love
■曲名邦題:恋に恋して
■アルバム名:Standards Live
■アルバム名邦題:星影のステラ
■Spotifyリンク:「Falling in Love with Love」
彼は1980年代、ジャズ・シーンに一石を投じました。
彼はスタンダード・ナンバーを演奏するためのピアノ・トリオ、スタンダーズを結成しました。
このトリオが生み出した音楽は、当時斬新だと言われました。
ただ冷静に聞くと、どこかが新しいのか説明が難しいように感じます。
基本的な方法論はビル・エバンス(Bill Evans)を踏襲しており、画期的とは言えません。
またスタンダード・ナンバーの解釈にも新奇性はなく、むしろメロディの解釈は保守的といえるほどです。
それでも新鮮に聞こえるのが、不思議といえば不思議です。
聞きなれたスタンダード・ナンバーを、はじめて聞いたかのような。
私はこの新鮮さをどう表現したらいいか、説明できる言葉を見つけられないでいます。
まあこの演奏の前では、言葉は無粋かもしれませんが。
4位「Country」(アルバム:My Song)
■曲名:Country
■曲名邦題:カントリー
■アルバム名:My Song
■アルバム名邦題:マイソング
■Spotifyリンク:「Country」
1980年代以降彼の演奏フォーマットは、ピアノ・トリオとソロ・ピアノばかりです。
しかし1970年代には、2つのカルテットを率いていました。
1つは先程ご紹介した「Death and the Flower」のアメリカン・カルテット。
キース以外のメンバーは、以下の通りです。
・デューイ・レッドマン(Dewey Redman):テナー・サックス
・チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden):ベース
・ポール・モチアン(Paul Motian):ドラム
先程ご紹介した「Prayer」は、こちらのカルテットの演奏です。
しかし彼は同時並行でもう一組、ヨーロピアン・カルテットでも活動していました。
そちらのメンバーもご紹介しておきましょう。
・ヤン・ガルバレク(Jan Garbarek):テナー&ソプラノ・サックス
・パレ・ダニエルソン(Palle Danielsson):ベース
・ヨン・クリステンセン(Jon Christensen):ドラム
こちらの「Country」は、後者ヨーロピアン・カルテットの方の演奏です。
ヨーロピアン・カルテットの特徴は、北欧のコルトレーンと呼ばれていたヤン・ガルバレクの存在です。
この曲はヤンの情感豊かな演奏がすばらしいですね。
5位「Autumn Leaves」(アルバム:Still Live)
■曲名:Autumn Leaves
■曲名邦題:枯葉
■アルバム名:Still Live
■アルバム名邦題:枯葉/キース・ジャレット・スタンダーズ・スティル・ライヴ
■Spotifyリンク:「Autumn Leaves」
「Falling in Love with Love」と同じくスタンダーズの曲で、ライブ・アルバムからの選曲です。
キース以外のメンバーは、以下の2人。
・ゲイリー・ピーコック(Gary Peacock):ベース
・ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette):ドラム
彼らのインタープレイの凄さを味わうには、このアルバムが最適かもしれません。
この3人においては必ずしもピアノが主役ではなく、ピアノ以外の楽器が主導権を握ることも多々あります。
この曲などはその一例かもしれません。
この曲ではキースがテーマのメロディを弾いた後、しばらくの間ベースが曲をリードしています。
テーマの後、ベースのアドリブがこんなに長く続く曲は珍しいですね。
その後キースのソロが始まります。
キースの演奏が始まってからは三者混然となってきますが、4:30過ぎからは、ジャック・ディジョネットのドラムがかなり目立っています。
ドラムとベースのどちらも、リズム・キープの意識が高くないかもしれません。
しかしお互いの音を注意深く聞いて演奏しているせいか、バラバラにはなってはいませんね。
ピアノ・トリオのダイナミズムを感じさせてくれる名演だと思います。
6位「Be My Love」(アルバム:The Melody At Night, With You)
■曲名:Be My Love
■曲名邦題:ビー・マイ・ラヴ
■アルバム名:The Melody At Night, With You
■アルバム名邦題:メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー
■Spotifyリンク:「Be My Love」
これまで聞いた方は、彼の演奏をイメージできていると思います。
彼は弾きたいフレーズがありすぎて、いつも前のめりに演奏している感じがします。
あふれ出るイマジネーションを待ちきれないといわんばかりに、ピアノに落とし込んでいるような。
キースはクリエイティヴ・モンスターみたいな人かもしれません。
しかしこのアルバムでの彼は、他のアルバムとは異なり、おだやかな表情を見せています。
彼は1996年、慢性疲労症候群を患いました。
病名の通り、極度の疲労が慢性的に続き、日常生活を送ることすらままならなくなる病気です。
症状が深刻になるにつれ、彼はピアノを弾くことができなくなりました。
その時献身的に世話をしたのが、妻のローズ・アン・ジャレット。
妻の献身的な看護の結果、彼は1998年からピアノが弾けるようになり、このアルバムからレコーディングに復帰しました。
この復帰後第一弾アルバムは、妻のローズに捧げられています。
アルバム名の「The Melody At Night, With You」とは「夜、君と一緒にいるときのメロディ」という意味。
この曲の彼のプレイには、以前ほどの雄弁さはありません。
しかし表現力が抑えめにもかかわらず、胸に沁みるすばらしい演奏を聞かせてくれています。
7位「Forest Flower – Sunrise」(アルバム:Forest Flower)
■アーティスト名:Charles Lloyd
■アーティスト名カナ:チャールス・ロイド
■曲名:Forest Flower – Sunrise
■曲名邦題:フォレスト・フラワー、日の出
■アルバム名:Forest Flower
■アルバム名邦題:フォレスト・フラワー
■動画リンク:「Forest Flower – Sunrise」
今回はご紹介したい曲のほとんどがYoutubeで見つかりませんでした。
そこでチャールス・ロイドのアルバムに、サイドメンとして参加している曲を引っ張り出してきました。
しかしご安心ください。
困った末に妥協して選んだ曲ではありません。
この曲でのキースは、サイドメンの枠を超えています。
1:16からのキースのプレイは、全キャリアを通じても上位の出来かもしれません。
ただこの演奏は、まだ個性を確立する前といった感じがします。
時々キースらしさを感じるものの、まるでジョン・コルトレーン(John Coltrane)のシーツ・オブ・サウンドのみたいな演奏ではないでしょうか。
この前年彼は、アート・ブレイキー(Art Blakey)のグループに参加して、レコーディング・デビューを果たしています。
その後彼はこのチャールス・ロイドのグループに参加しました。
更にはマイルス・デイヴィス(Miles Davis)からも声が掛かり「ゲット・アップ・ウィズ・イット(Get Up With It)」のレコーディングに参加しています。
この頃のキースは、下積みの真っ只中でした。
しかし既に彼の演奏は、後の飛躍を確信させてくれる魅力を備えています。
8位「God Bless the Child」(アルバム:Standards, Vol. 1)
■曲名:God Bless the Child
■曲名邦題:ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド
■アルバム名:Standards, Vol. 1
■アルバム名邦題:スタンダーズ Vol.1
■Spotifyリンク:「God Bless the Child」
これもスタンダーズの演奏です。
キースの音楽は多岐に渡っています。
クラシックのアルバムも出していますし、初期には「キース・ジャレット&ゲイリー・バートン(Gary Burton & Keith Jarrett)」のように、ロックからの影響を感じさせるものもあります。
「My Back Pages」や「Country」のように、フォーキーだったり、土の香りを感じさせる演奏も少なくありません。
しかし一番の特徴は、ゴスペルっぽいところだと思います。
その一例として、この曲をお聞きください。
15分を超える長い曲ですが、ゴスペルの香り漂う演奏がすばらしく、いつまでも聞いていたくなります。
さて余談ですが、キースには今回ご紹介した表名盤以外に、裏名盤みたいなものがあります。
私が言うところの裏名盤とは、クセがあって受け付けない人も多いが、ハマる人はハマる作品のこと。
おすすめの1枚目は「スピリッツ(Spirits)」で、ストレンジ・フォークといった感じの音楽をやっています。
もう1枚はジャック・ディジョネットとの共同名義でリリースされた「ルータ・アンド・ダイチャ(Ruta and Daitya)」。
こちらも民族音楽的な要素を含んだ、実験色の強いプログレといった感じのアルバムです。
どちらも裏名盤のままにしておくのは、もったいない作品です。
9位「In Front」(アルバム:Facing You)
■曲名:In Front
■曲名邦題:イン・フロント
■アルバム名:Facing You
■アルバム名邦題:フェイシング・ユー
■Spotifyリンク:「In Front」
この曲はECM第一弾で、初のソロ・ピアノ・アルバムからの選曲です。
しかしソロ・ピアノとは思えないほど、満腹感を味わえる演奏です。
当時彼はマイルスのバンドにいました。
多くのメンバーの内の1人に過ぎませんでしたが、彼は思う存分ピアノを弾きたいとウズウズしていたようです。
そんなキースにソロ・ピアノのレコーディングを提案したのが、ECMの総帥マンフレート・アイヒャー(Manfred Eicher)。
アイヒャーには勝算がありました。
1971年チック・コリア(Chick Corea)の「Piano Improvisations Vol. 1」というソロ・ピアノ盤をリリースしたところ、大評判を呼びました。
アイヒャーはその再現を狙い、キースに声を掛けたというわけです。
その結果生まれたのが、このアルバム。
先程キースの一番の特徴は、ゴスペルっぽい演奏だと書きました。
この曲にもゴスペルからの影響が強く感じられます。
10位「Koln, January 24, 1975 Part I」(アルバム:The Koln Concert)
■曲名:Koln, January 24, 1975 Part I
■曲名邦題:ケルン、1975年1月24日 パートI
■アルバム名:The Koln Concert
■アルバム名邦題:ケルン・コンサート
■Spotifyリンク:「Koln, January 24, 1975 Part I」
このアルバムがキースの最高傑作だと言われています。
セールス的にも350万枚以上売れていて、この種のアルバムとしては、異例のヒットを記録しています。
彼はソロ・ピアノの傑作が多く、今回ご紹介した以外にも「ソロ・コンサート(Solo Concerts:Bremen and Lausanne)」「ステアケイス( Staircase)」なども、ほぼ同水準の充実作です。
もしお金に余裕のある方は、6枚組の「サン・ベア・コンサート(Sun Bear Concerts)」もすばらしいので、ぜひチェックしてみてください。
ではその中で、なぜこのアルバムが特に人気が高いのか。
私はこのアルバムのロマンティシズムにあると思います。
7:14からの演奏は特に陶酔感が強く、キースの自己没入感も半端ありません。
時々入るうなり声は、慣れるしかありませんが(笑)
次のピークは、21:34からのゴスペル的反復フレーズ。
これほど純粋に音楽の喜びを表現した演奏は、他に思い出せないぐらいの快演です。
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