今回はキリンジのランキングを作成しました。
彼らの書く曲は、単にメロディが良いというだけではありません。
何度か聞き返して初めて理解できる、含蓄のある曲が少なくありません。
兄弟2人が在籍していた時期を対象に選曲しました。
- 1 1位「エイリアンズ」(アルバム:3)
- 2 2位「愛のCoda」(アルバム:For Beautiful Human Life)
- 3 3位「スウィートソウル」(アルバム:スウィートソウル ep)
- 4 4位「風を撃て」(アルバム:ペイパードライヴァーズミュージック)
- 5 5位「鼻紙」(アルバム:DODECAGON)
- 6 6位「グッデイ・グッバイ」(アルバム:3)
- 7 7位「Drifter」(アルバム:Fine)
- 8 8位「双子座グラフィティ」(アルバム:ペイパードライヴァーズミュージック)
- 9 9位「Love is on line」(アルバム:DODECAGON)
- 10 10位「雨は毛布のように」(アルバム:Fine)
- 11 11位「牡牛座ラプソディ」(アルバム:47’45”)
- 12 12位「来たるべき旅立ちを前に」(アルバム:OMNIBUS)
- 13 13位「涙にあきたら」(アルバム:SUPER VIEW)
- 14 14位「今日も誰かの誕生日」(アルバム:7)
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- 17 他ブログ・SNS等
1位「エイリアンズ」(アルバム:3)
■曲名:エイリアンズ
■アルバム名:3
■動画リンク:「エイリアンズ」
この曲はヒット曲とは言い難いかもしれません。
なにせオリコンのシングル・チャートで、最高位が42位なのですから。
当然ながらヒットチャートの評価は、曲の評価とイコールではありませんが。
この曲は2000年10月12日にリリースされました。
その後この曲は大きな評価を得ることになりました。
「関ジャム 完全燃SHOW」にて行われた「プロが選んだ最強のJ-POPベスト30」にて16位にランクイン。
2021年5月1日 (土曜日) 深夜 25:00 – 25:55にはBSフジで『アワー・フェイバリット・ソング 私が「エイリアンズ」を愛する理由』と題して、本曲だけに着目した番組が放送された
ちなみに現時点で、24曲ものカバー曲が確認されています。
ウィキペディアには記載されていませんが、CMにも何度か取り上げられています。
この曲の魅力は、ヒットチャートという一過性の指標では測ることができないようですね。
2位「愛のCoda」(アルバム:For Beautiful Human Life)
■曲名:愛のCoda
■アルバム名:For Beautiful Human Life
■動画リンク:「愛のCoda」
当時の彼らは、以下の2人組みでした。
堀込高樹(兄):ギター、キーボード
堀込泰行(弟):ボーカル、ギター
彼らの特徴は、卓越したソングライティング能力です。
おそらく2人とも日本の音楽の歴史において、トップクラスの実力者だと思います。
それがたまたま2人が兄弟で一緒に活動していたのですから、リスナーからしたら幸運だったかもしれません。
先程の「エイリアンズ」は弟の堀込泰行が書いた曲ですが、こちらは兄の堀込高樹が書いた曲です。
この洗練された曲に含まれる憂いは、かなり骨身に沁みます。
「エイリアンズ」は確かに希代の名曲ですが、私はこの曲も同じぐらい好きです。
3位「スウィートソウル」(アルバム:スウィートソウル ep)
■曲名:スウィートソウル
■アルバム名:スウィートソウル ep
■動画リンク:「スウィートソウル」
この曲は「For Beautiful Human Life」というアルバムに収録されています。
しかし今回はEPの収録曲としてご紹介してみました。
このEPは、新曲6曲とそのインスト6曲から成る12曲の構成です。
当時このEPは、アルバムに先行して発売されました。
新曲にはこの曲や「愛のCoda」が含まれていて、当時はすごいEPが出たと話題になったものです。
しかも他の4曲は「For Beautiful Human Life」に収録されていない、アルバム未収録曲です。
現時点で私が知る限りでは、他のアルバムにも収録されていません。
ファンなら素通りできないEPです。
4位「風を撃て」(アルバム:ペイパードライヴァーズミュージック)
■曲名:風を撃て
■アルバム名:ペイパードライヴァーズミュージック
■動画リンク:「風を撃て」
彼らは渋谷系の流れから出てきたように思います。
渋谷系は豊富な音楽の知識を、高度なセンスで切り貼りして、おしゃれな音楽を生み出していました。
しかしそれらの音楽は副作用としてダイナミズムを失い、箱庭ポップ化しがちな一面もありました。
限られた人にだけ分かるマニアックな音の引用で武装すればするほど、密室的で広がりに欠ける面があったかもしれません。
彼らはその点に自覚的であったように思います。
このアルバム・ジャケットにはその箱庭感が表現されていますし、アルバム名が「ペイパードライヴァーズミュージック」なのですから。
当時の彼らはいくら完成度が高くても、スケール感やダイナミズムに欠けることに自覚的だったかもしれません。
ただその後の彼らの音楽から、箱庭感は消えていきました。
彼らの強みであるソングライティング能力を活かして、ポップスの王道を歩んでいきました。
5位「鼻紙」(アルバム:DODECAGON)
■曲名:鼻紙
■アルバム名:DODECAGON
■動画リンク:「鼻紙」
彼らの日本語は、あまりに自由です。
私はJ-POPは、日本語の可動域が狭いと感じることがあります。
しかし彼らの場合は多様な語彙を駆使し、曲の設定なども工夫されています。
逆に自由すぎると思えるぐらいですし。
そもそも「鼻紙」という曲名を付ける人は他に誰もいないでしょう。
また私は以前から「DODECAGON」とは何だろうと思っていました。
そこでこの機会に調べてみようと思い立ちました。
調べたところ「正十二角形」という意味のようで、12曲入りということから名付けられたそうです。
現在出回っているCDは、ほとんどがボーナストラック入りで、13曲のものばかりですが。
ただ彼らの場合は、そうした不整合にほくそ笑んでいる可能性もあります。
6位「グッデイ・グッバイ」(アルバム:3)
■曲名:グッデイ・グッバイ
■アルバム名:3
■動画リンク:「グッデイ・グッバイ」
しかしこのアルバム・ジャケットは、絶対狙っていますよね。
わざと顔をテカらせて、脂ぎった顔をアップにして、さあどうだ!といわんばかりです。
彼らの術中にはまって、つっこみを入れたらこちらの負けです(笑)
さて一般に新人バンドの場合は、2枚目が勝負だと言われています。
デビュー前に書きためた曲を使い果たして、曲の質が落ちることが多いですから。
しかし彼らは高レベルの楽曲を維持して、無事セカンド・アルバムの壁を乗り越えました。
ただそれは更なる飛躍の序章にすぎなかったかもしれません。
その後リリースされたこの3枚目では、過去最高の楽曲が収録されています。
彼らはこのアルバムあたりから、底なしの才能の持ち主であることを、世間に知らしめていきました。
7位「Drifter」(アルバム:Fine)
■曲名:Drifter
■アルバム名:Fine
■動画リンク:「Drifter」
彼らの音楽には、古き良きソングライターの系譜を感じます。
彼らはバート・バカラック(Burt Bacharach)、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)などから、曲づくりの影響を受けたのだとか。
確かに彼らの曲には、上記の人たちの影響を感じます。
さてこの曲は「Drifter」という曲名です。
ポップス・マニアの方は、ロジャー・ニコルス(Roger Nichols)とポール・ウィリアムズ(Paul Williams)が書いた「The Drifter」という曲を思い出すかもしれません。
ポップスの歴史に残る名曲です。
実際キリンジの「Drifter」には、ポール・ウィリアムズっぽいニューアンスを感じます。
8位「双子座グラフィティ」(アルバム:ペイパードライヴァーズミュージック)
■曲名:双子座グラフィティ
■アルバム名:ペイパードライヴァーズミュージック
■動画リンク:「双子座グラフィティ」
キリンジは、兄が弟を誘って結成されました。
当時はホリゴメズというバンド名でしたが、その後キリンジという名前に改名しました。
おそらく将来有望な子供を指す言葉「麒麟児」が由来だと思われます。
その後彼らは、NATURAL FOUNDATIONというインディー・レーベルからデビューしました。
その翌年には、メジャー・デビューを果たしています。
さてこのファースト・アルバムに収録された「風を撃て」と「冬のオルカ」はインディーズ時代の曲を、再録音して収録しています。
オリジナル・バージョンは「キリンジ SINGLES BEST Archives」というベスト盤で聞くことができます。
「冬のオルカ」のオリジナル・バージョンをご紹介しようとしましたが、動画が見つかりませんでした。
代わりに再録音バージョンをご紹介しておきましょう。
彼らはデビュー時から新人らしからぬ完成度がありました。
9位「Love is on line」(アルバム:DODECAGON)
■曲名:Love is on line
■アルバム名:DODECAGON
■動画リンク:「Love is on line」
彼らはデビューから冨田恵一がプロデュースを担当していました。
その関係は「For Beautiful Human Life」まで、5作続いています。
しかし彼らはこのアルバムでは、セルフ・プロデュースを選択しました。
このアルバムでは、打ち込みやエレクトロニクスを導入した曲が散見されました。
流行だから悪いということはありませんが、時代と心中するリスクがあります。
実際シングルカットされた「ロマンティック街道」は、少しその傾向がありますし。
しかし彼らの書くメロディには、時間の経過に耐えうる普遍性があります。
今回「Love is on line」はいつも通りのアレンジの曲なので、安心して聞くことができます。
10位「雨は毛布のように」(アルバム:Fine)
■曲名:雨は毛布のように
■アルバム名:Fine
■動画リンク:「雨は毛布のように」
彼らの最高傑作は、「ペイパードライヴァーズミュージック」「3」「For Beautiful Human Life」あたりの声が多いように思います。
ただそれ以外のアルバムも高品質で、大きな品質の差はありません。
このアルバムも、ほぼ同水準の出来といえます。
ただ一番大きな違いは、先程挙げた3作には、定番や有名曲が入っていることです。
このアルバムでは「ムラサキ☆サンセット」あたりが有名ですが、少しインパクトに欠けるように思いますし。
ただ一方でそれは完成度が高まったゆえかもしれません。
今回私が選んだ「雨は毛布のように」は、とても完成度が高い曲です。
ただ洗練度合いが進み完成度が高くなればなるほど、即効性や直接的な魅力を失ってしまうジレンマがあるように思います。
そうした問題は、スティーリー・ダン(Steely Dan)あたりと共通しているかもしれません。
11位「牡牛座ラプソディ」(アルバム:47’45”)
■曲名:牡牛座ラプソディ
■アルバム名:47’45”
■動画リンク:「牡牛座ラプソディ」
この曲は「双子座グラフィティ」と、混同してしまうことがあります。
彼らは意味不明な歌詞が多いですが、この曲は特に意味不明です。
一部を引用してみましょう。
うわさが廃都に集まれば
男の挽歌で尻を拭く奴、俺は
はにかみまぎれにギターを破る
ここはひとつ、高笑いで飛躍としよう
朝からコントではずむよ
あらすじ読んで深呼吸
これはカラオケで歌う時に、モニターをガン見しなければいけないやつですね。
こんなにキャッチーな曲なのに。
カラオケ文化への挑戦でしょうか(笑)
ちなみにGoogleで検索すると、この歌詞について考察しているらしき記事がヒットします。
私は、特に意味はないと思いますが。
ちなみにこの曲を書いたのは兄の高樹ですが、兄の方が歌詞が難解で毒があります。
12位「来たるべき旅立ちを前に」(アルバム:OMNIBUS)
■曲名:来たるべき旅立ちを前に
■アルバム名:OMNIBUS
■動画リンク:「来たるべき旅立ちを前に」
彼らは多くの人に楽曲を提供しています。
この作品は、他人に提供した曲をセルフ・カバーしたアルバムです。
ただ内容には、オリジナル・アルバムと遜色ありません。
最も有名なのは、藤井隆に提供した以下の曲です。
このアルバムには、クイーン(Queen)の「ファット・ボトムド・ガールズ(Fat Bottomed Girls)」やランディ・ニューマン(Randy Newman)の「サイモン・スミスと踊る熊(Simon Smith and the Amazing Dancing Bear)」のカバーも収録されています。
ただセールス的には、オリコン・チャート最高位42位とふるいませんでした。
もう少しアルバム・ジャケットがどうにかならなかったのかと思わないでもありません。
13位「涙にあきたら」(アルバム:SUPER VIEW)
■曲名:涙にあきたら
■アルバム名:SUPER VIEW
■動画リンク:「涙にあきたら」
※動画はショート・バージョンです
2人はどちらもすぐれたソングライターで、タイプ的にも似ていると思います。
ただ兄の方がより技巧的で奥行きの感じるメロディ、そして諧謔的な歌詞が多いように思います。
弟の方は、よりシングル向きで純度が高いメロディが多いかもしれません。
その違いはクレジットを確認しながら聞けば、感覚的に分かるようになってきます。
その意味で、この曲などはいかにも弟の曲だと感じます。
涙にあきたら
いつでもここにおいで
宇宙のすみで出会った
僕と君をつなぐ
ささやかな魔法が
世界を回すのだろう
こういう素朴で純粋な歌詞も、弟らしいと感じる部分です。
3位の「スウィートソウル」の歌詞も、同じく堀込泰行が書いています。
どちらもナイーヴな感じがしますね。
先程挙げた兄の堀込高樹の歌詞と比較すると、違いは一目瞭然です。
彼らの歌詞には様々なバリエーションがあって、必ずしも今回説明した通り明確に分かれていない場合もありますが。
14位「今日も誰かの誕生日」(アルバム:7)
■曲名:今日も誰かの誕生日
■アルバム名:7
■動画リンク:「今日も誰かの誕生日」
当時彼らは、毎月インターネット配信限定のシングルをリリースして、このアルバムに収録しました。
そういう経緯のせいか、このアルバムはキャッチーな曲が多いように感じます。
この曲以外にも「SHOOTIN’ STAR」など、一般受けしそうな曲が多いように思います。
ただその後の彼らは、作風が変化しました。
次作の「BUOYANCY」は良い作品でしたが、キャッチーな曲が大幅に減りました。
その後の「SUPER VIEW」「Ten」も、シングル向けの曲が少なくなりました。
ただ聞き込んで初めて良さが分かるような曲は、逆に増えたように思いますが。
ところが「Ten」をリリースした後、弟が脱退することになりました。
「11」からは兄を中心に新メンバーを迎えて、バンドらしいサウンドになりました。
現在は兄を中心に存続していますが、音楽の質は相変わらず高水準をキープしています。
弟は「馬の骨」名義や堀込泰行名義で活動しています。
もしこのランキングが気に入ったら、そちらもチェックしてみてください。
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