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フリッパーズ・ギター(Flipper’s Guitar)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はフリッパーズ・ギターを取り上げます。

このアーティストは、Cornelius(コーネリアス)の小山田圭吾と小沢健二から成る2人組チームです。

もしかしたら2人は知っていても、フリッパーズ・ギターを初めて聞く方がいらっしゃるかもしれません。

この記事ではそういう方に向けて、フリッパーズ・ギターを知るきっかけになればと思い書いてみました。

1位「グルーヴ・チューブ」(アルバム:ヘッド博士の世界塔)

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■曲名:GROOVE TUBE
■曲名邦題:グルーヴ・チューブ
■アルバム名:DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER
■アルバム名邦題:ヘッド博士の世界塔(1991年)
■動画リンク:「グルーヴ・チューブ」

このアルバムでは、ダンス・ミュージックの大胆な導入が大きな反響を呼びました。

以前私はこのアルバムについて、プライマル・スクリーム(Primal Scream)の「スクリーマデリカ(Screamadelica)」の影響下にあるという文章を読んだことがあります。

しかしそれは事実ではないかもしれません。

なぜならフリッパーズ・ギターの方が、先にリリースされていますから。

このアルバムは1991年7月発売で、スクリーマデリカは1991年9月発売です。

ただプライマル・スクリームは1990年に発売されたシングル「ローデッド(Loaded)」で、既に新しい方向性を垣間見せていました。

「ローデッド(Loaded)」は、当時最先端のレイヴ・カルチャーの影響下にある曲です。

当時先見性のある人は、クラブ・カルチャーの要素をうまく取り入れていました。

フリッパーズ・ギターもそうした時代の空気の中で、プライマル・スクリームと一緒に先頭を歩いていたのだと思われます。

 

2位「恋とマシンガン」(アルバム:カメラ・トーク)

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■曲名:Young, Alive, in Love
■曲名邦題:恋とマシンガン
■アルバム名:CAMERA TALK
■アルバム名邦題:カメラ・トーク(1990年)
■動画リンク:「恋とマシンガン」

この頃から彼らは一般的な人気が高まってきました。

その起爆剤となったこの曲は、様々なタイアップに引っ張りだこでした。

TVドラマの「予備校ブギ」の主題歌、日産マーチのCM曲、ワイドショーのテーマ曲にも採用されました。

時代はバブル真っ盛りで、彼らは一躍時代の寵児として昇りつめようとしていました。

この曲は渋谷系らしくスキャットから始まります。

途中に入る映画音楽風の女性コーラス、ビブラフォンやホーンの使い方などどれをとっても、完全無欠のおしゃれな音楽でした。

当時彼らの音楽は浮ついた時代を彩る最高のBGMだったかもしれません。

しかもこの曲がリリースされた頃、彼らはまだ21・22歳ぐらいでした。

音楽的な処理能力があまりに高い、恐るべき才能を持った若者だったのですね。

 

3位「さようならパステルズ・バッヂ」(アルバム:海へ行くつもりじゃなかった)

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■曲名:Goodbye, our Pastels Badges
■曲名邦題:さようならパステルズ・バッヂ
■アルバム名:three cheers for our side
■アルバム名邦題:海へ行くつもりじゃなかった(1989年)
■動画リンク:「さようならパステルズ・バッヂ」

ファースト・アルバムの曲です。

彼らは1990年から本格的にブレークしたので、この頃はまだそれほど知られていませんでした。

ベスト盤でも、この頃の曲は冷遇されているように思います。

しかもこの曲はシングルカットされていません。

そのためこの曲は「Singles」には収録されていませんのでご注意ください。

さて曲名にある「パステルズ(The Pastels)」とは、イギリスのインディポップ・バンドのこと。

しかし曲名に「さよなら」とありますね。

歌詞は「アノラックからバッヂを取って、引き出しにしまってしまおう。しかしそのフィーリングは決して忘れない」という内容です。

アノラックとは、パステルズのメンバーが良く着ていた服のことで、彼らのようなヘタウマで良質なギターポップを「アノラック・サウンド」と呼びます。

ある種インディポップの良心を象徴する音楽といえるかもしれません。

当時彼らはデビューして音楽で食べていこうとしていました。

この曲は「パステルズ」の良心を継承しつつも、非商業的なアマチュアリズムには別れを告げる決意表明だったかもしれません。

 

4位「星の彼方へ」(アルバム:ヘッド博士の世界塔)

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■曲名:BLUE SHININ’ QUICK STAR
■曲名邦題:星の彼方へ
■アルバム名:DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER
■アルバム名邦題:ヘッド博士の世界塔(1991年)
■動画リンク:「星の彼方へ」

ダンス・ミュージックに影響を受けた曲です。

まずイントロのギターの音色からしてたまりません。

先程のファースト・アルバムの曲と比べると、リズムのアプローチが全く違うことに気付きます。

ちなみにデビュー・アルバムは1989年8月25日のリリース、このサード・アルバムは1991年7月10日です。

つまり2年も経過していないのに、これほどサウンドが変化したのですね。

この曲名の「青く輝く素早く動く星」とは、彼ら自身のことではないかと思ったりもします。

彼らは猫のような気まぐれさで、短い間にめまぐるしく音楽性を変えながら、リスナーを振り回してきました。

こうした急激な変化はスーパーカー(SUPERCAR)を思い起こさせます。

思えばデヴィッド・ボウイ(David Bowie)も、レディオヘッド(Radiohead)も、随分我々を振り回してくれました。

ただ野心的なアーティストに振り回されることは、リスナーにとって幸せなことかもしれません。

 

5位「バスルームで髪を切る100の方法」(アルバム:カメラ・トーク)

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■曲名:Haircut 100
■曲名邦題:バスルームで髪を切る100の方法
■アルバム名:CAMERA TALK
■アルバム名邦題:カメラ・トーク(1990年)
■動画リンク:「バスルームで髪を切る100の方法」

セカンド・アルバムの曲です。

彼らはデビュー時5人グループだったことは、ご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。

ファーストの頃は2人組ではなかったのですね。

しかし次作ではメンバーが2人になって、足りない演奏はプロのミュージシャンで補いました。

脱退したメンバーには申し訳ありませんが、それが商業的に彼らが飛躍するきっかけになったかもしれません。

なぜなら当時彼らの音楽は、多彩なアレンジを前提としていましたから。

彼らはセカンドの頃から注目度が高まってきましたが、その人気の要因の1つは多彩なアレンジと演奏力です。

この曲でもイントロのワウが入っているギター、曲の間中ずっと鳴り響いてるオルガンの使い方、要所でのホーンの使い方、どれも効果的です。

時代の寵児になるのにふさわしい、完成度が高い仕上がりになりました。

 

6位「カメラ!カメラ!カメラ!」(アルバム:シングルス)

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■曲名:Camera! Camera! Camera!
■曲名邦題:カメラ!カメラ!カメラ!
■アルバム名:Singles
■アルバム名邦題:シングルス(1992年)
■動画リンク:「カメラ!カメラ!カメラ!」

2枚目からの曲ですが、ベスト・アルバムの曲としてご紹介します。

彼らはネオアコと呼ばれる音楽の影響を受けています。

彼らのバンド名はオレンジ・ジュース(Orange Juice)というネオアコ・バンドのアルバム・ジャケットから取られているほど。

ネオアコとオレンジ・ジュースについては、別途記事を書きました。

ネオアコ(Neo Acoustic)の名曲名盤14選
オレンジ・ジュース(Orange Juice)の名曲名盤10選

そもそも彼らはオレンジ・ジュースのアルバムを再発させることが目的で活動していると公言していました。

当時ネオアコのCDを買うと「ネオアコ通信」という、彼らの好きなネオアコのアルバムを紹介する小冊子が入っていました。

確か彼らは、オレンジ・ジュースのような激しく動くベースのネオアコが好きみたいなことを書いていたように記憶しています。

この曲などはまさしくそういう曲です。

 

7位「ゴーイング・ゼロ」(アルバム:ヘッド博士の世界塔)

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■曲名:GOING ZERO
■曲名邦題:ゴーイング・ゼロ
■アルバム名:DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER
■アルバム名邦題:ヘッド博士の世界塔(1991年)
■動画リンク:「ゴーイング・ゼロ」

彼らの音楽は渋谷系と呼ばれています。

ただウィキペディアによると、渋谷系という言葉が定着したのは、彼らが解散した後なのだそうです。

もちろん渋谷系っぽい音楽はその前から存在していて、後から名前ができたのだと思われますが。

渋谷系の特徴の1つは、音楽に博識な人が様々な音楽的意匠をつぎはぎする編集感覚です。

たとえばこの曲も、イントロのスパイ映画のようなモチーフとか、ジャンクなモンドのような効果音の使い方、大胆なダンスビート、ギターの音響処理など、情報量がとても多い曲です。

またこのアルバムの価値観は、岡崎京子の「リバーズ・エッジ」のような漫画にも影響を与えています。

「リバーズ・エッジ」には、モンキーズ(The Monkees)の「ヘッド(Head)」というスカムでジャンクなアルバムが登場しています。

重要な登場人物が欲しかったアルバムとして。

あんな聞きにくいが玉手箱のようなおもしろさを持ったアルバムに注目する価値観も、フリッパーズ・ギターの後ならではという感じがします。

そういえば岡崎京子は、小沢健二と仲が良かったそうです。
 

8位「コーヒーミルク・クレイジー」(アルバム:海へ行くつもりじゃなかった)

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■曲名:Coffee-milk Crazy
■曲名邦題:コーヒーミルク・クレイジー
■アルバム名:three cheers for our side
■アルバム名邦題:海へ行くつもりじゃなかった(1989年)
■動画リンク:「コーヒーミルク・クレイジー」

私は初めて彼らの音楽を聞いた時、完成度の高さに驚きました。

今回久しぶりに聞きなおすと、次作の隙のなさに比べるとスキがあるように感じましたが。

しかし背伸びをした感じは、逆に好ましいように感じます。

この曲は少しジャズっぽいところがあります。

スタイル・カウンシル (The Style Council)やエヴリシング・バット・ザ・ガール(Everything But the Girl)にも似たジャズっぽさがいいですね。

確か当時のインタビューで彼らは、本物のジャズよりもジャズっぽいぐらいの方がいいみたいなことを言っていました。

当時生真面目にジャズを掘っていた私は、そうした発言に対してそうかなと思っていました。

ただ改めてこの曲を聞くと、彼らが言っていることも一理あるような気がします。

 

9位「ピクニックには早すぎる」(アルバム:海へ行くつもりじゃなかった)

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■曲名:Happy Like a Honeybee
■曲名邦題:ピクニックには早すぎる
■アルバム名:three cheers for our side
■アルバム名邦題:海へ行くつもりじゃなかった(1989年)
■動画リンク:「ピクニックには早すぎる」

ブルーベルズ(The Bluebells)とかフレンズ・アゲイン(Friends Again)のようなバンドに影響された曲だと思われます。

露骨すぎるほどに。

さて解散後の2人はどちらもソロで活躍しているので、フリッパーズ・ギター時代も同格だったと思われるかもしれません。

しかし初期のソングライティングでは、小山田圭吾の方が上回っていたと思われます。

今回取り上げたファーストの曲は、全て小山田圭吾の作曲です。

小山田圭吾の方が1歳年下ですから、かなり早熟だったのですね。

ファーストは5人組グループでしたが、そもそも小山田圭吾のバンドに、後から小沢健二が加入した形です。

しかしセカンドでは小沢健二が台頭しました。

なにせ小沢健二はあの決定的な曲「恋とマシンガン」を書いたのですから。

「カメラ!カメラ!カメラ!」は小沢健二、「バスルームで髪を切る100の方法」は小山田圭吾が書いた曲です。

この時期彼らは競い合うかように良い曲を書いていました。

 

10位「全ての言葉はさよなら」(アルバム:カメラ・トーク)

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■曲名:Camera Full of Kisses
■曲名邦題:全ての言葉はさよなら
■アルバム名:CAMERA TALK
■アルバム名邦題:カメラ・トーク(1990年)
■動画リンク:「全ての言葉はさよなら」

ファースト・アルバムからセカンド・アルバムの間、歌詞が大きく変わりました。

ファーストでは全曲英語の歌詞でしたが、セカンドでは日本語の歌詞に変わりました。

しかし歌詞の内容は、一筋縄ではいかないひねくれた内容が少なくありません。

たとえばこの曲でも、笑ったりしゃべったり恋をしたとしてもさよならしようとか、分かり合えないことを分かり合えたとか。

どの曲も彼らの中二病的な資質が表れています。

この曲は小沢健二が書いた曲。

もしかしたら精神的に荒れていた時期ではないかと推察されます。

その後小沢健二はソロ活動に移行し大傑作「犬は吠えるがキャラバンは進む」を発表しました。

そのアルバムでは言葉遊びしつつも、ストレートに自分の気持ちを表現しています。

 

番外編「ドルフィン・ソング」(アルバム:ヘッド博士の世界塔)

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■曲名:DOLPHIN SONG
■曲名邦題:ドルフィン・ソング
■アルバム名:DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER
■アルバム名邦題:ヘッド博士の世界塔(1991年)
■動画リンク:「ドルフィン・ソング」

この曲は順位を付けにくいので番外編としてご紹介しました。

彼らは膨大な音楽の断片を様々な形で曲にちりばめています。

中にはその引用をパクリと言う人もいます。

もちろんそうした意見は彼らの耳にも入っていたことでしょう。

この曲はそれらの外野の声に対する、彼らなりの回答なのかもしれません。

イントロからビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の「神のみぞ知る(God Only Knows)」のコーラスを、とても分かりやすく引用しています。

コーラスの使い方も、スマイル時代のビーチ・ボーイズの影響を感じます。

しかしそれにもかかわらず、彼らにしか表現できないオリジナルな曲ができ上がりました。

これみよがしに堂々と引用して、しかし借り物ばかりで構成した曲には確固たるオリジナリティがあるとか、狙いが高度すぎて乾いた笑いしか出てきません。

 

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