今回はJ・ガイルズ・バンドのランキングを作成しました。
このバンドはB級バンドと言われることがあります。
たとえば中には「B級ローリング・ストーンズ」みたいな言い方をする人もいます。
ただそれは必ずしも悪い意味ではありません。
「普段着感覚で楽しめる愛すべき音楽」というようなニューアンスがあることが多いからです。
彼らの音楽は、極上のB級グルメみたいなものかもしれません
- 1 1位「Centerfold」(アルバム:Freeze Frame)
- 2 2位「Must of Got Lost」(アルバム:Nightmares…and Other Tales From the Vinyl Jungle)
- 3 3位「Just Can’t Wait」(アルバム:Love Stinks)
- 4 4位「Fancy Footwork」(アルバム:Hotline)
- 5 5位「The Lady Makes Demands」(アルバム:Ladies Invited)
- 6 6位「Do You Remember When?」(アルバム:Freeze Frame)
- 7 7位「One Last Kiss」(アルバム:Sanctuary)
- 8 8位「You’re the Only One」(アルバム:Monkey Island)
- 9 9位「Homework」(アルバム:The J. Geils Band)
- 10 10位「Don’t Try to Hide It」(アルバム:Bloodshot)
- 11 アンコール「Looking for a Love」(アルバム:Live Full House)
1位「Centerfold」(アルバム:Freeze Frame)
■曲名:Centerfold
■曲名邦題:堕ちた天使
■アルバム名:Freeze Frame
■アルバム名邦題:フリーズ・フレイム
■動画リンク:「Centerfold」
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なにはともあれ、やはりこの曲が1位でしょう。
まぎれもなく彼らの代表作ですが、この曲のテーマを考えると、代表曲として取り上げていいものかと思ってしまいます。
曲名は「Centerfold」つまり「見開き」という意味です。
この曲は高校時代にあこがれの存在だったクラスメートが、ヌード雑誌の見開きになっているのを見つけてショックを受けたという内容の歌詞です。
キメ台詞が「天使が(ヌードの)見開きに」です。
「ショックを受けつつも、いいよ、僕は大丈夫だよ」みたいな箇所もあって、男性もまんざらでもない様子です。
はっきり言ってしょーもない題材の曲ですが、能天気な曲の雰囲気のせいか単純に楽しめてしまいます。
ちなみにこの曲はシングルカット予定ではなかったようですが、当時彼らが所属していたアメリカEMI社長の指示によって差し替えられたそうです。
社長、グッジョブ!ではないでしょか。
きっと社長もこの曲を聞いて、大笑いしたのでしょう。
アメリカ中の男性のしょーもない共感を得て、この曲は全米シングルチャートで1位を記録しています。
2位「Must of Got Lost」(アルバム:Nightmares…and Other Tales From the Vinyl Jungle)
■曲名:Must of Got Lost
■曲名邦題:傷だらけの愛
■アルバム名:Nightmares…and Other Tales From the Vinyl Jungle
■アルバム名邦題:悪夢とビニール・ジャングル
■動画リンク:「Must of Got Lost」
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単純に曲の出来だけならば、1位の曲よりこちらの方がいいかもしれません。
彼らは「アメリカのローリング・ストーンズ」という言われ方をされることがありますが、この曲などはそういう風情の曲です。
「Centerfold」が大ヒットするまでは、この曲が彼らの最大のヒット曲でした。
シングルチャートで12位にまで上がっています。
そもそも彼らは名曲を書くというタイプではありません。
ちょっと曲を軽快に演奏して、B級的味付けをして、なんとなくいい感じにする人たちです。
たとえば料亭などのように、一流の素材を匠の技で味付けするのではなく、余り物の食材を使ってB級料理をつくるのがうまいみたいな感じです。
ただそのB級的安定性はすばらしく、楽曲の出来とは関係なく、いつもそれなりに聞かせてしまいます。
まさに「B級グルメ的ロックの達人」といえるかもしれません。
しかしこの曲などは、間違えて名曲を書いてしまったという感じがします。
この曲はストーンズのどの名曲と比べてもひけをとりません。
演奏面では、3:29からのセス・ジャストマン(Seth Justman)のオルガンが特にすばらしいです。
3位「Just Can’t Wait」(アルバム:Love Stinks)
■曲名:Just Can’t Wait
■曲名邦題:ジャスト・キャント・ウェイト
■アルバム名:Love Stinks
■アルバム名邦題:ラヴ・スティンクス
■動画リンク:「Just Can’t Wait」
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このバンドは後期になるにつれて、ポップ色が強まったといわれています。
確かにそう思いますが、単にソングライティング能力が向上しただけではないかと思ったりもします。
そもそも初期はブルースなどのカバー曲が多く、必ずしも自作曲にこだわっていませんでした。
硬派なロックファンは最初の2枚の人気が高いと思います。
私も大好物です。
ただその2枚はアルバムを通して聞くといいのですが、絶対的なキラーナンバーが少ないように思います。
後期はその点を改善したかもしれません。
この頃の曲は、初期のストイックなファンからは疎んじられがちです。
しかしこの曲などはいかがでしょうか。
同時期のザ・カーズ(The Cars)みたいなポップな曲です。
私はこの曲を聞くと、ザ・ナック(The Knack)の「グッド・ガールズ・ドント(Good Girls Don’t)」をあたりを思い出します。
このポップさには抗えない魅力があります。
4位「Fancy Footwork」(アルバム:Hotline)
■曲名:Fancy Footwork
■曲名邦題:ファンシー・フットワーク
■アルバム名:Hotline
■アルバム名邦題:ホットライン
■動画リンク:「Fancy Footwork」
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まずイントロがジャクソン5(The Jackson 5)みたいで、とてもほほえましいです。
彼らの音楽は、黒人音楽からの影響が強いのが特徴です。
ブルースやソウル・ミュージックなどの取り入れ方がとても素直で、音楽にもストレートに表れています。
たとえばこの曲のように。
また彼らがB級と言われるのは、リズムが少し軽めのせいがあるかもしれません。
ドラムとベースのリズム陣は、特に際立った個性は感じられませんが、しいていえば軽快さが魅力だと思います。
たとえばこの曲などでは、ドラムとベースは軽みのあるすばらしい演奏を披露しています。
録音のせいかドラムとベースはそれほど強調されていませんが、ヘッドホンで聞くとしゃれた演奏をしているのが分かります。
5位「The Lady Makes Demands」(アルバム:Ladies Invited)
■曲名:The Lady Makes Demands
■曲名邦題:わがままな女
■アルバム名:Ladies Invited
■アルバム名邦題:招かれた貴婦人
■動画リンク:「The Lady Makes Demands」
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この曲は4枚目からの選曲です。
この頃からポップな要素がより前面に出てきたように思います。
この曲などはロックというより、シティポップといえるかもしれません。イントロではビブラフォンも入っていますしね。
2:05から急に早くなる展開はすばらしいです。
しかしこのアルバムで彼らは、初めて壁に突き当たりました。
前作「Bloodshot」がアルバムチャートで10位にまで駆け上がったのに対して、このアルバムは51位と急降下です。
従来の支持層の趣向と、バンドの変化との間で、距離ができてしまったからかもしれません。
初期から彼らの人気を支えていたファンは、泥くさくルーツに根ざした音楽を好む人が多いと思われます。
そういう人は洗練された音楽に対して、拒否反応を示すことがあります。
現に私が知っている人でも、最初の2枚を好んで、その後のポップ路線に拒否反応を示す人がいました。
ついでにいうと、アルバムジャケットもいけなかったかもしれません。
大昔の化粧品のパッケージみたいです。
ただ率直に曲に耳を傾けると、良い曲とは思わないでしょうか。
今こそ再評価したい曲です。
6位「Do You Remember When?」(アルバム:Freeze Frame)
■曲名:Do You Remember When?
■曲名邦題:去って行く女
■アルバム名:Freeze Frame
■アルバム名邦題:フリーズ・フレイム
■動画リンク:「Do You Remember When?」
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彼らはこのアルバムで一躍世界の人気者になりました。
私も例にもれずこのアルバムで彼らを知ったのですが、「Centerfold」以外にもポップで良い曲が多いと思います。
ポップ路線の旗振り役は、セス・ジャストマンです。
セスは「Hotline」からプロデューサーに加わり、「Love Stinks」からは単独でプロデュースを担当しています。
「Love Stinks」は従来のファンからポップ過ぎると非難を浴びましたが、セールス的には人気を回復する契機になりました。
セス・ジャストマンはピーター・ウルフ(Peter Wolf)と並んで、このバンドのメインソングライターも務めています。
前作までは2人の共作が多かったのに対して、このアルバムではセスが単独で書いた曲が、大幅に増えています。
このアルバムが世界的な大ヒットになったため、バンド内の力関係も変化してきたようです。
その後にピーター・ウルフが脱退しましたが、ピーターによると実際にはクビ同然の脱退だったようです。
その後発表したアルバムが不発に終わり、一度バンドは解散しましたが、また再結成しています。
ただ再結成後もバンドはゴタゴタが続きました。
ついにはバンドの名前となっているJ・ガイルズが脱退したのに、J・ガイルズ・バンドを名乗るという事態になりました。
バンドの終盤は少し残念だったと思います。
7位「One Last Kiss」(アルバム:Sanctuary)
■曲名:One Last Kiss
■曲名邦題:ワン・ラスト・キッス
■アルバム名:Sanctuary
■アルバム名邦題:サンクチュアリ(禁猟区)
■動画リンク:「One Last Kiss」
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低迷中の時期からの選曲です。
低迷している時期には、いまいちなジャケットが多いと思うことがありますが、これもその1枚です。
ただこの曲は35位と中ヒットを記録して、少し明るい兆しが出てきました。
彼らはJ・ガイルズ・バンドというバンド名です。
要するにギター担当のJ・ガイルズの名前を冠したバンドということです。
しかしそれにしてはギターが目立つ曲が少なく、花形楽器なのに縁の下の力持ちをしているようにさえ感じることがあります。
曲作りはピーターとセス、演奏面ではピーターとマジック・ディック(Magic Dick)が目立ちます。
精神的な支柱みたいな話を聞いたことがありますが、バンド内での重要性について、今一つ分かりにくところがないでしょうか。
しかしこの曲はギターが活躍しています。
J・ガイルズのプレイの特徴もまた掴みにくいのですが、初期はブルースギターを堂々たる貫禄で弾きこなしていました。
その彼がこういう狂おしいギターを弾くのは少し珍しいですね。
まるでメタルみたいなギターですが、これはこれでなかなかいい感じです。
8位「You’re the Only One」(アルバム:Monkey Island)
■曲名:You’re the Only One
■曲名邦題:ユア・ザ・オンリー・ワン
■アルバム名:Monkey Island
■アルバム名邦題:モンキー・アイランド噴火
■動画リンク:「You’re the Only One」
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この頃バンドは過渡期を迎えていました。
このアルバムでバンド名を「Geils」に変更していますが、次のアルバムでは元のバンド名に戻しています。
ただ作品の質としては悪くありません。
そのせいかセールス的には低迷していても、業界内の評価は高かったようです。
このアルバムまでは彼らはアトランティック・レコード(Atlantic Recording)に所属していましたが、次作では大手のEMIに移籍しています。
このバンドにおいてはピーター・ウルフの存在が、とても大きいと思います。
彼の歌にはとぼけた持ち味があったり、「Fancy Footwork」みたいな荒れ気味の歌い方ができたり、思いのほか器用なシンガーです。
この曲では少しまじめな面持ちで、曲をしっかり解釈して歌っています。
ちなみに彼はなかなかのイケメンで、まだバンドがあまり売れていない頃に有名女優のフェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)と結婚して話題になりました。
この曲は結婚して3年目位の頃ですが、翌年には別居して、翌々年には離婚しています。
この曲は女性に対して「君は唯一の存在だ」と切々と訴えています。
バンドでも私生活でも大変だったのかもしれませんね。
9位「Homework」(アルバム:The J. Geils Band)
■曲名:Homework
■曲名邦題:ホームワーク
■アルバム名:The J. Geils Band
■アルバム名邦題:デビュー!
■動画リンク:「Homework」
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この曲はデビューアルバムからの選曲です。
オーティス・ラッシュ(Otis Rush)のカバーで、この曲には初期の良さを凝縮したところがあります。
初期の彼らは黒人音楽、特にブルースから強く影響を受けたロックバンドでした。
初期はピーター・ウルフのボーカルと、マジック・ディックのブルース・ハープがサウンドの要です。
重すぎないリズムをバックに、この二枚看板で勝負していました。
演奏は初期の方が好みですが、後期の方には曲の魅力が感じられます。
ただこの曲のように、楽曲の魅力というより、演奏の魅力でうならせてくれる曲も1曲ご紹介しておこうと思いました。
そういえばこのアルバムジャケットは、どのメンバーもイケメンに見えてこないでしょうか。
全員不敵な面構えです。
初期はこの曲に限らず、雰囲気イケメンなかっこいい曲が多いかもしれません。
10位「Don’t Try to Hide It」(アルバム:Bloodshot)
■曲名:Don’t Try to Hide It
■曲名邦題:隠匿するな
■アルバム名:Bloodshot
■アルバム名邦題:ブラッドショット
■動画リンク:「Don’t Try to Hide It」
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この曲は本来もう少し上位に置きたい曲です。
ただ最後に入れるとしっくりくると思い、この順位にしてみました。
サードアルバムからの選曲ですが、当時の彼ららしい持ち味を持った曲だと思います。
彼らの音楽の魅力を言葉で説明するのは、なかなか難しいものがあります。
先程B級という言葉を使いましたが、肩の力が抜けていて、堅苦しいところがありません。
かまえずに聞けて、時には飄飄とした魅力があります。
彼らの音楽には他のアーティストのようなメッセージ性もなく、シリアスさもありません。
私はこのバンドの本質は「パーティバンド」だと思っています。
しかも気の置けない仲間があつまって、陽気に騒いでいるようなパーティのイメージです。
この曲は彼らの魅力を一番よく表しているかもしれません。
アンコール「Looking for a Love」(アルバム:Live Full House)
■曲名:Looking for a Love
■曲名邦題:愛をさがして
■アルバム名:Live Full House
■アルバム名邦題:フル・ハウス
■動画リンク:「Looking for a Love」
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最後にこれを忘れてはいけません。
彼らはライブでのし上がってきたバンドです。
ライブでのアンコール替わりとして、最後にこの曲で締めたいと思います。
オリジナルは「モーニング・アフター(The Morning After)」に入っています。
ライブではスタジオバージョンよりも熱気のある演奏をしています。
演奏は完全にソウルレビュー形式です。
昔の映画が好きな方は、ブルース・ブラザーズ(The Blues Brothers)あたりを思い出すかもしれません。
3分半ぐらいのところで一旦演奏が終わったように見せかけて、また再開しています。
定番の演出とはいえ、この熱気の中でのストップ・アンド・ゴーは、とても盛り上がってしまいます。
演奏が終わった後大歓声が沸き起こっていますが、それも納得の大円団です。
ビールなどを飲みながらこのライブアルバムを聞くと、より楽しめるかもしれません。