今回は渡辺貞夫のランキングを作成しました。
昔ある前途有望なジャズ・プレイヤーが渡米し、フュージョン/クロスオーバー・シーンで頭角を現しました。
彼の名前は渡辺貞夫。
彼はアメリカの一流プレイヤーと共演し、主役級の活躍をしました。
この記事ではフュージョン時代に焦点を当てて選曲しました。
- 1 1位「カリフォルニア・シャワー」(アルバム:カリフォルニア・シャワー)
- 2 2位「浜辺のサンバ」(アルバム:マイ・ディア・ライフ)
- 3 3位「ダウン・イースト」(アルバム:モーニング・アイランド)
- 4 4位「ヒアズ・トゥ・ラヴ」(アルバム:ランデブー)
- 5 5位「モーニング・アイランド」(アルバム:モーニング・アイランド)
- 6 6位「ランデブー」(アルバム:ランデブー)
- 7 7位「マイシャ」(アルバム:マイシャ)
- 8 8位「オレンジ・エクスプレス」(アルバム:オレンジ・エクスプレス)
- 9 9位「フィル・アップ・ザ・ナイト」(アルバム:フィル・アップ・ザ・ナイト)
- 10 10位「オレンジ・バイパス」(アルバム:オータム・ブロー)
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1位「カリフォルニア・シャワー」(アルバム:カリフォルニア・シャワー)
■曲名:カリフォルニア・シャワー
■アルバム名:California Shower
■アルバム名邦題:カリフォルニア・シャワー
■動画リンク:「カリフォルニア・シャワー」
彼の作風を象徴する曲です。
太陽の日差しを感じる、開放感あふれるサウンド。
その音楽は親しみやすく、屈託がありません。陽性の音色がとても心地よいですね。
この曲はアルバム・タイトルの通り、カルフォルニアでレコーディングされました。
当時のアメリカ西海岸は、この曲のようにさわやかな音楽を生む土壌がありました。
ウェストコースト・サウンドという音楽カテゴリーもあるぐらいです。
いまは土地柄に依存する音楽性は少なくなりましたが、当時はスタジオや地域特有の音楽がありました。
おそらく西海岸でレコーディングすると決めた時点で、こういう音楽を想定していたのでしょう。
とてもさわやかで心地よい音楽に仕上がっています。
2位「浜辺のサンバ」(アルバム:マイ・ディア・ライフ)
■曲名:浜辺のサンバ
■アルバム名:My Dear Life
■アルバム名邦題:マイ・ディア・ライフ
■動画リンク:「浜辺のサンバ」
※少し音が大きいので、ボリュームを下げてお聞きください
彼は元々ストレート・アヘッドなジャズ・プレイヤーでした。
そんな彼の転機となったのがこのアルバム。
前作までの彼はザ・グレイト・ジャズ・トリオ(The Great Jazz Trio)と共演していました。
ザ・グレイト・ジャズ・トリオは、本格派ジャズのドリームチームみたいな存在でした。
なにせメンバーは、ハンク・ジョーンズ(Hank Jones)、ロン・カーター(Ron Carter)、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)なのですから。
しかし彼はこのアルバムからフュージョンに路線を変更しました。
このアルバムの参加メンバーを挙げておきましょう。
リー・リトナー(Lee Ritenour):ギター
デイヴ・グルーシン(Dave Grusin):ピアノ、キーボード
チャック・レイニー(Chuck Rainey):ベース
ハーヴィー・メイソン(Harvey Mason):ドラム
スティーヴ・フォーマン(Steve Forman): パーカッション
福村博:トロンボーン
こちらはフュージョン・オールスターズみたいな顔ぶれですね。
日本人のサッカー選手が海外の名門チームから別の名門チームに移籍したような誇らしさを感じます。
3位「ダウン・イースト」(アルバム:モーニング・アイランド)
■曲名:ダウン・イースト
■アルバム名:Morning Island
■アルバム名邦題:モーニング・アイランド
■動画リンク:「ダウン・イースト」
昔の日本のフュージョンはイメージ戦略が巧みでした。
アメリカのロサンゼルスやニューヨークなどのスタジオで録音し、その都会的なイメージをアピールしました。
実際このアルバムは、ニューヨークでレコーディングされています。
このアルバム・ジャケットも、海外へのあこがれを喚起しそうな写真が使われていますね。
またスタッフ(Stuff)は、ニューヨークのフュージョン・グループの筆頭格といえる存在です。
このアルバムではスタッフのメンバーと共演しています。
ドラムはスティーヴ・ガッド(Steve Gadd)し、ギターはエリック・ゲイル(Eric Gale)。
特にエリック・ゲイルの演奏はすばらしく、1:35からのギターは聞きものです。
4位「ヒアズ・トゥ・ラヴ」(アルバム:ランデブー)
■曲名:ヒアズ・トゥ・ラヴ
■アルバム名:RENDEZVOUS
■アルバム名邦題:ランデブー
■動画リンク:「ヒアズ・トゥ・ラヴ」
ゲスト・ボーカルとして、ロバータ・フラック(Roberta Flack)が参加した曲です。
フュージョンのグループは、ボーカルを起用した曲があるとセールス上で有利に働きます。
日本でも事情は同じですが、つまりインストゥルメンタルだけではなかなか売れません。
そこでボーカル曲を入れて、リスナーとラジオ局にアピールするということが行われていました。
つまりボーカル曲の出来がカギを握っていますが、この曲はなかなかではないでしょうか。
歌以外に彼のサックスの見せ場もありますし、何より楽曲が魅力的です。
渡辺貞夫は自然に売れる音楽を生み出せる人でした。
フュージョンやボーカルの起用など、売れ線と非難されそうな方法をを取り入れながらも、音楽の充実によって批判を回避しました。
5位「モーニング・アイランド」(アルバム:モーニング・アイランド)
■曲名:モーニング・アイランド
■アルバム名:Morning Island
■アルバム名邦題:モーニング・アイランド
■動画リンク:「モーニング・アイランド」
しかしこの人は言葉のセンスが秀逸ですね。
一流のコピーライターが付いていたのではないかと疑ってしまうほどです。
当時の日本は現在より海外への憧れが強く、海外でレコーディングすること自体、ある種のステータスでした。
レコード・ジャケットなどで、非日常的な外国をアピールしていました。
また「モーニング・アイランド」というアルバム名も、よく考えたら意味不明です。
直訳すると「朝の島」ですし(笑)
私の推測ですが、このアルバム名は翌年ヒットしたランディ・ヴァンウォーマー(Randy Vanwarmer)の「アメリカン・モーニング(Just When I Needed You Most)」の邦題に影響を与えたかもしれません。
どちらも「アメリカの朝」に特別なイメージを付与しています。
この曲には当時のそうした風潮の残り香が感じます。
6位「ランデブー」(アルバム:ランデブー)
■曲名:ランデブー
■アルバム名:RENDEZVOUS
■アルバム名邦題:ランデブー
■動画リンク:「ランデブー」
この人は「世界のナベサダ」と呼ばれています。
当時の日本人は、自国のアーティストのレコードを国内盤で買っていました。
しかしこの人については、日本人が輸入盤で買う可能性がありました。
実際このアルバムは、ジャズ・アルバムチャートで2位を記録し28週チャートインしているのですから。
このアルバムがリリースされた1984年は、終盤戦とはいえ依然フュージョンが人気でした。
彼の音楽は聞きやすさと質の高さを備えていて、いかにもアメリカで売れそうな音楽でした。
当時日本の音楽は演歌などウェットな曲が多かったですが、当時の日本人はこの曲を聞いて、その乾いた音楽性を新鮮に感じたかもしれません。
7位「マイシャ」(アルバム:マイシャ)
■曲名:マイシャ
■アルバム名:MAISHA
■アルバム名邦題:マイシャ
■動画リンク:「マイシャ」
彼は昔からブラジル音楽に関心があったようです。
実際以下の曲が収録されたアルバムは、なかなか聞きごたえがあります。
Sadao Watanabe – The Girl From Ipanema
ブラジル音楽に詳しい人は、アメリカでレコーディングされたブラジル音楽に拒否反応を示すことがあります。
本物のブラジル音楽とは違うと。
私はその意見に一部同意しつつも、違うものとして聞いけばいいと思っています。
この作品のアルバム名「MAISHA」はスワヒリ語なので、ブラジル音楽がテーマのアルバムではありません。
しかしこの曲での彼のフルートの演奏には、ブラジルっぽいニューアンスが感じられます。
彼はブラジル音楽の表現者としても、一流だったと思います。
8位「オレンジ・エクスプレス」(アルバム:オレンジ・エクスプレス)
■曲名:オレンジ・エクスプレス
■アルバム名:Orange Express
■アルバム名邦題:オレンジ・エクスプレス
■動画リンク:「オレンジ・エクスプレス」
またしても「オレンジ・エクスプレス」という語感がすばらしいですね。
曲そのものも非常に楽しく、曲名とイメージが合致しています。
先程彼の音楽がアメリカで売れたと書きましたが、この曲などを聞くとその理由が分かる気がします。
彼のサックスは抜けが良く、屈託のないメロディがあり、嫌味や皮肉などネガティブな要素がありません。
それなのに音楽の質はすこぶる高い。
減点する箇所がなく、プラスしかありません。
また彼の音楽はスムース・ジャズとしてBGMになるのもいいと思います。
9位「フィル・アップ・ザ・ナイト」(アルバム:フィル・アップ・ザ・ナイト)
■曲名:フィル・アップ・ザ・ナイト
■アルバム名:Fill Up The Night
■アルバム名邦題:フィル・アップ・ザ・ナイト
■動画リンク:「フィル・アップ・ザ・ナイト」
ボーカル入りの曲です。
ゲスト・ボーカルのグラディ・テイト(Grady Tate)は控えめで、とても趣味の良いシンガーですね。
彼の音楽においてサックス以外では、キーボードがカギを握っています。
当時の彼のキーボードは、デイヴ・グルーシンかリチャード・ティー(Richard Tee)が多かったように思います。
特にグルーシンは、アレンジなどで多大な貢献をしました。
それに比べるとリチャード・ティーの役割は地味ですが、演奏面ではかなり貢献しています。
この曲でもひんやりした音色のエレピが隠し味として利いています。
ポール・グリフィン(Paul Griffin)によるスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)風のキーボードもいいですね。
渡辺貞夫は主役感のある人ですが、彼を引き立てる良い脇役がいる時、より輝くように思います。
10位「オレンジ・バイパス」(アルバム:オータム・ブロー)
■曲名:オレンジ・バイパス
■アルバム名:Autumn Blow
■アルバム名邦題:オータム・ブロー
■動画リンク:「オレンジ・バイパス」
最後に彼の経歴について、少し触れておきましょう。
この人は伝説のピアニスト守安祥太郎や穐吉敏子とも活動していました。
ジョージ川口など、当時の日本のジャズシーンの大物たちと軒並み共演していました。
そんな彼は1962年にバークリー音楽院に入学し、活躍の舞台をアメリカに移しました。
そこで音楽理論を学び、その後フュージョン・ブームの波に乗ってブレイクしたというわけです。
その昔ロック・ギタリストにブルースがあったように、彼の根本には常にジャズがありました。
彼の音楽は一聴軽く感じられるかもしれませんが、時には硬派な側面を垣間見せることがあります。
試しにこの曲の4:01からのサックスをお聞きになってみてください
ジャズ・サックス奏者の顔をのぞかせています。
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