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ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)の名曲名盤11選【代表曲・隠れた名曲】

今回はウェス・モンゴメリーのランキングを作成しました。

彼は史上最高のジャズ・ギタリストの1人だと言われています。

オクターブ奏法で有名な人ですが、その切り口だけで済ますわけにはいきません。

今回はウェスの多彩な魅力に迫ってみました。

 

1位「No Blues」(アルバム:Smokin’ at the Half Note)

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■曲名:No Blues
■曲名邦題:ノー・ブルース
■アルバム名:Smokin’ at the Half Note
■アルバム名邦題:ハーフノートのウェスモンゴメリーとウイントンケリー
■動画リンク:「No Blues」

このアルバムは、ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)のピアノ・トリオに、ウェスが加わった編成です。

A面がライブ録音、B面がスタジオ録音という二部構成です。

ライブ・アルバムみたいなアルバム名ですが、A面の2曲だけなのですね。

続編っぽいタイトルの「Smokin’ At The Half Note Vol. 2」というアルバムもありますが、そちらは一枚通して同じハーフノートのライブ演奏がまとめられています。

ただこのアルバムとは、A面の2曲が重複しています。

このアルバムのスタジオ録音も名演ぞろいですので、ファンなら2枚とも買わざるを得ません。

ハーフノート音源は、他にも「Willow Weep For Me」など、様々な作品に分散して収録されています。

ここを詳しく書くとかなりの文字数になるので、この辺にしておきましょう。

そのハーフノート音源の中でも、一際目立っているのがこの曲です。

ウェスについては、とかくオクターブ奏法ばかりが引き合いに出されがちかもしれません。

しかしこの曲では、コード奏法を効果的に織り交ぜていますね。

マイルス・デイヴィス(Miles Davis)が書いた曲ですが、いかにもマイルスらしい曲名もかっこいいです。

 

2位「Impressions」(アルバム:Complete Live in Paris 1965)

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■曲名:Impressions
■曲名邦題:インプレッションズ
■アルバム名:Complete Live in Paris 1965
■動画リンク:「Impressions」

長年私が最高傑作だと思っていたのは、先程ご紹介した「Smokin’ at the Half Note」です。

しかしその後、それを上回るCDがあるという話を聞きました。

それが「ソリチュード ~ライブ・イン・パリ(Solitude Complete Live in Paris)」というアルバムです。

「Complete」とありますが「Solitude Complete Live in Paris」はコンプリート盤ではありません。

本当のコンプリート盤としてリリースされたのが、こちらの「Complete Live in Paris 1965」です。

私は最初聞いた時、本当に驚きました。

通常は死後発表された作品が、最高傑作になることはありません。

しかしこのライブ・アルバムは、最高傑作と呼ぶにふさわしい堂々たる内容です。

オリジナルは、モード奏法の金字塔として知られるジョン・コルトレーン(John Coltrane)の曲。

ここでのウェスは、鬼気迫る演奏を聞かせてくれます。

思い出補正がなければ「No Blues」を差し置いて、この曲を1位にしたかもしれません。

こういうテンポの早い曲だとテクニック勝負になりがちですが、まだソロ作を発表していないピアノのハロルド・メイバーン(Harold Mabern)も健闘しています。

 

3位「Fly Me to the Moon」(アルバム:Road Song)

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■曲名:Fly Me to the Moon
■曲名邦題:フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
■アルバム名:Road Song
■アルバム名邦題:ロード・ソング
■動画リンク:「Fly Me to the Moon」

まずバロック調のイントロは、お好みに合わなければ飛ばしてください。

ウェスの演奏は27秒から始まりますので、そこから実質的に本編がスタートします。

ちなみに私はいつも必ず飛ばしています。

この頃のウェスはA&M/CTIレーベルから、イージーリスニング系の作品を次々にリリースしていました。

この曲の室内楽的なアレンジも、白人中間層の音楽的趣向に合わせたものだといえるでしょう。

しかしことウェスの演奏に関しては、イージーリスニング路線でも、それほど大きく変わっていない気もします。

そもそもウェスはデビュー時から、そういうところがありました。

初リーダー作「ザ・ウェス・モンゴメリー・トリオ(The Wes Montgomery Trio)」にも、少しイージーリスニングを感じさせる曲が入っています。

自分の音楽性を曲げているわけではないですね。

それを踏まえてこの演奏を聞くと、ウェスのギターが跳ねているように感じないでしょうか。

私はこの跳ね感が、彼の特徴の1つだと思っています。

ライブでの野性的な演奏にも感じますが、この跳ね感が独特の躍動感を生み出しています。

イージーリスニング的な素養と、野性味あふれる演奏の奇妙な共存。

ウェスのギターは、そのバランスの上で成立しています。

 

4位「Stablemates」(アルバム:Bags Meets Wes)

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■曲名:Stablemates
■曲名邦題:ステイブルメイツ
■アルバム名:Bags Meets Wes
■アルバム名邦題:バグス・ミーツ・ウェス
■動画リンク:「Stablemates」

ウェスはすごさは、曲調やテンポに関係なく、常に質の高さを維持していることです。

また好不調の波が少なく、若干の好みの問題こそあれ、つまらないと思ったアルバムはありません。

つまり最低ラインが高いといえます。

しかし同時に上限も高く、好調時には天井知らずです。

特に相性が良い共演者が得られた場合は、汲めども尽きせぬ豊かなフレーズを連発します。

たとえばこのミルト・ジャクソン(Milt Jackson)と共演した、この曲をお聞きください。

ミルトのヴィブラフォンとウェスのギターの組み合わせは、まるで酸味が利いた極上のスパークリング・ワインのように弾けています。

ピアノもウィントン・ケリですし。

これで名演にならないわけがありません。

 

5位「Airegin」(アルバム:The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery)

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■曲名:Airegin
■曲名邦題:エアジン
■アルバム名:The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery
■アルバム名邦題:インクレディブル・ジャズ・ギター
■動画リンク:「Airegin」

ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)が書いたジャズ・スタンダードです。

「Airegin」という曲名は、ナイジェリアの国名「Nigeria」を逆読みにしたものなのだとか。

アルバム名の「The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery」は「ウェス・モンゴメリーの信じられないジャズ・ギター」という意味です。

この曲などを聞くと、看板に偽りなしといった感じでしょうか。

このアルバムは2作目ですが、最初から彼が完成していたことが分かります。

彼はアメリカのインディアナポリスで生まれました。

彼は20歳の頃に結婚しましたが、ギターを始めたのも同じ頃のようです。

彼はのしばらくの間7人の子供を養うために、溶接工として働いていました。

しかしその後彼は音楽の道に進むことを希望し、1957年兄弟と一緒にモンゴメリー・ブラザーズ(Montgomery Brothers)としてデビューしています。

その後1960年に、この作品で一躍脚光を浴びました。

彼はこのアルバムが評価されて、1960年メトロノーム誌の読者投票で、ギター部門の第二位を獲得しました。

 

6位「California Nights」(アルバム:A Day in the Life)

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■曲名:California Nights
■曲名邦題:カリフォルニア・ナイツ
■アルバム名:A Day in the Life
■アルバム名邦題:ア・デイ・イン・ザ・ライフ
■動画リンク:「California Nights」

イージーリスニング時代の最高傑作といわれるアルバムです。

ウェスのアルバムには、とにかく駄作がありません。

しかしそんなアベレージが高い中でも、このアルバムは突出した人気作となっています。

人気の秘密は、印象的なアルバム・ジャケットと、ビートルズ(The Beatles)のカバーかもしれません。

ビートルズの曲は、アルバム・タイトル曲の「A Day in the Life」と「Eleanor Rigby」の2曲が取り上げられています。

「Eleanor Rigby」のリンクも貼っておきましょう。

Wes Montgomery – Eleanor Rigby

さてそれらを差し置いて選んだ「California Nights」は、レスリー・ゴーア(Lesley Gore)のヒット曲です。

プロデューサーのクリードテイラー(Creed Taylor)が提案した選曲かもしれません。

アレンジャーのドン・セベスキー(Don Sebesky)が手がけた淡い音像のホーン・アレンジも光っています。

 

7位「Four on six」(アルバム:Complete Live in Paris 1965)

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■曲名:Four on six
■曲名邦題:フォー・オン・シックス
■アルバム名:Complete Live in Paris 1965
■動画リンク:「Four on six」

この曲は「Smokin’ at the Half Note」に収録されているスタジオ・バージョンが有名ですが、私はこちらの方を推します。

この曲はウェスが書いたオリジナル曲です。

彼は初リーダー作でも「ミサイル・ブルース(Missile Blues)」「ジングルズ(Jingles)」など、後に定番になる曲を自ら書いています。

さて先程このアルバムは、死後リリースされた音源だと申し上げました。

元々このライブ音源は、「ORTF」というフランスの国営放送が所有していたものです。

それをBYGというフランスのジャズ・レーベルが買い取り、フランスでリリースしようとしました。

しかし何らかの事情でそれが実現せず、代わりに日本でライセンスを取得していた東宝芸音によって、1973年にリリースされたのが「Solitude Complete Live in Paris」。

しかしあまりの評判の良さに、上のアルバムから曲を追加して再発したのが、この「Complete Live in Paris 1965」です。

「Solitude Complete Live in Paris」にあった曲名の間違いが、こちらのコンプリート盤では正しい表記に訂正されています。

 

8位「Twisted Blues」(アルバム:So Much Guitar!)

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■曲名:Twisted Blues
■曲名邦題:ツイステッド・ブルース
■アルバム名:So Much Guitar!
■アルバム名邦題:ソー・マッチ・ギター!
■動画リンク:「Twisted Blues」

個人的に偏愛している曲です。

この曲はレイ・バレット(Ray Barretto)のコンガが入っていますが、他にもオルガンと共演した作品などもあり、意外とウェスの編成は多種多様です。

ウェスについて初期のリバーサイド(Riverside)時代がいいと言う人と、後期のイージーリスニング時代がいいと言う人に分かれます。

ただ玄人ほどリバーサイド時代を評価しているかもしれません。

この曲はリバーサイド時代のものですが、こういう熱気のある演奏がお好みなら、リバーサイド時代がおすすめです。

さてこの曲はブルースの曲ですが、彼のシングル・ノートに注目してお聞きください。

ウェスの演奏については、まずオクターブ奏法、次にコード奏法が取り上げられますが、単音でメロディを弾く演奏についてはあまり触れられません。

しかしこの曲などはいかがでしょうか。

31秒ぐらいから彼のアドリブが始まりますが、単音でもすばらしい演奏を聞かせてくれています。

この人はコードでもオクターブでも単音でも、何でもできてしまう人みたいですね。

思えばウェスが影響を受けたチャーリー・クリスチャン(Charlie Christian)は、シングルノートの達人でした。

この曲ではチャーリー・クリスチャン直系のすばらしい即興を聞かせてくれています。

 

9位「Blue ‘n’ Boogie」(アルバム:Full House)

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■曲名:Blue ‘n’ Boogie
■曲名邦題:ブルーン・ブギ
■アルバム名:Full House
■アルバム名邦題:フル・ハウス
■動画リンク:「Blue ‘n’ Boogie」

ホーン入りの人気作で、最高傑作の一枚です。

このアルバムには、テナー・サックスのジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)が参加しています。

まずウェスのソロから始まりますが、33秒からの入り方がいいですね。

その後4:37から、グリフィンのアドリブが始まります。

この曲でのグリフィンの演奏はとてもすばらしく、適度に熱く適度にリラックスした演奏は、まさに絶品ではないでしょうか。

ジャムセッションの延長みたいな曲ですが、だからこそ個人の力量が出やすいように思います。

このアルバムは、カルフォルニアのバークレーにあるライブ・ハウスで収録されました。

後に名盤「Smokin’ at the Half Note」を生んだメンバーとの初共演でした。

改めてリズムの3人をご紹介しておきましょう。

・ウィントン・ケリー(Wynton Kelly):ピアノ
・ポール・チェンバース(Paul Chambers):ベース
・ジミー・コブ(Jimmy Cobb):ドラム

相性の良い優れたプレイヤーを集めた時点で、このアルバムの成功は約束されていたかもしれません。

その意味でプロデューサーのオリン・キープニュース(Orrin Keepnews)の貢献は、とても大きいかったように思います。

 

10位「Canadian Sunset」(アルバム:Boss Guitar)

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■曲名:Canadian Sunset
■曲名邦題:カナディアン・サンセット
■アルバム名:Boss Guitar
■アルバム名邦題:ボス・ギター
■動画リンク:「Canadian Sunset」

ウェスの演奏について語る人は、誰もがオクターブ奏法のことを取り上げます。

オクターブ奏法とは、ある音とその1オクターブ上の音を同時に鳴らすことです。

といっても感覚的に分からない方も多いかもしれません。

ざっくり言えば、2本のギターでハモっている感じといいますか、2人で同じフレーズを重ねて弾いている感じになります。

その例として、この曲を最初から聞いてみてください。

ギターの音を重ねているように感じないでしょうか。

少なくとも単音ではないだろうと。

そこのところがオクターブ奏法です。

彼のギターの音色は澄んでいてクリアーなトーンが多いのですが、オクターブ奏法によって音にふくらみが出ています。

 

11位「Sunny」(アルバム:California Dreaming)

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■曲名:Sunny
■曲名邦題:サニー
■アルバム名:California Dreaming
■アルバム名邦題:夢のカリフォルニア
■動画リンク:「Sunny」

彼はこのあたりからイージーリスニング色を強めました。

イージーリスニングのアルバムには、以下のような特徴があります。

・クラシックっぽいアレンジ
・おしゃれで洗練されたアルバム・ジャケット
・ジャズの曲ではなく、ロック・ポップスの曲をカバー

この曲は、ボビー・ヘブによって大ヒットした有名曲のカバーです。

正直私はそれほど好きな曲ではないのですが、ウェスの演奏がすばらしすぎるので、思わず選んでしまいました。

彼は譜面が読めなかったそうですが、こういうアレンジされた曲でも問題ありませんね。

ちなみに彼はピックを使わず、親指でギターを弾いています。

そのためアタック音が柔らかいのですが、そういうところもイージーリスニング向きといえます。

オクターブ奏法も含めて、こういう音楽を演奏するにうってつけのプレイヤーだといえるでしょう。

さてそんな絶頂期を迎えていたウェスですが、この2年後の1968年、45歳の若さでこの世を去っています。

死因は心臓発作。

彼の死後、1970年代はフュージョン/クロスオーバーの全盛期でした。

生きていたらどんな演奏を聞かせてくれたかと思うと、とても残念に思います。

実質的な活動期間は10年ぐらいですから、それほど長くありませんでしたし。

しかし彼が与えた影響は大きく、discovermusic.jpの「史上最高のジャズ・ギタリストBEST50」という特集で、1位を獲得しています。

彼が与えた影響は、今後も残り続けていくに違いありません。

 

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