今回はプリテンダーズのランキングを作成しました。
このバンドの中心人物クリッシー・ハインドは、女性ロッカーのロールモデルといえる人でした。
ロックバンドで女性が活躍することが珍しくなくなった現在、改めて彼女に焦点を当ててみたいと思いました。
その音楽からも、まっすぐな生き方が伝わってくるような気がします。
男性女性問わず、これほど自然体でロックの本質を教えてくれる人は、極めて稀ではないでしょうか。
- 1 1位「Don’t Get Me Wrong」(アルバム:Get Close)
- 2 2位「Kid」(アルバム:Pretenders)
- 3 3位「Back on the Chain Gang」(アルバム:Learning to Crawl)
- 4 4位「Show Me」(アルバム:Learning to Crawl)
- 5 5位「Stop Your Sobbing」(アルバム:Pretenders)
- 6 6位「Middle of the Road」(アルバム:Learning to Crawl)
- 7 7位「Talk of the Town」(アルバム:Pretenders II)
- 8 8位「Thin Line Between Love and Hate」(アルバム:Greatest Hits)
- 9 9位「Day After Day」(アルバム:Pretenders II)
- 10 10位「Brass in Pocket」(アルバム:Pretenders)
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1位「Don’t Get Me Wrong」(アルバム:Get Close)

■曲名:Don’t Get Me Wrong
■曲名邦題:ドント・ゲット・ミー・ロング
■アルバム名:Get Close(1986年)
■アルバム名邦題:ゲット・クロース
■動画リンク:「Don’t Get Me Wrong」
このバンドの代表曲です。
特に日本では、テレビ情報番組のオープニング曲に使用されたことで知られています。
このアルバム・ジャケットには、バンドのメインソングライターでリードシンガーのクリッシー・ハインド(Chrissie Hynde)1人が掲載されています。
多くの場合そうしたジャケットは、その人がバンドの中心人物であることを示しています。
日本でいえば、エレファントカシマシなどもそうでした。
実際この時点で初期メンバーで残っていたのは、彼女1人だけでした。
このアルバムは4作目ですが、その間人気バンドとしての地位を維持できたのは、彼女の存在に負うところが大きかったかもしれません。
クリッシー・ハインドという名前は、バンド名と同じくらい知られています。
この時期彼らは「クリッシー・ハインドのバンド」と言われていました。
実際、このアルバムでは後期のスティーリー・ダン(Steely Dan)のように、曲毎にメンバーが異なることも多く、バンドの実体はあやふやでした。
彼女1人のアルバム・ジャケットは、バンドの実情を反映していたようです。
2位「Kid」(アルバム:Pretenders)

■曲名:Kid
■曲名邦題:キッズ
■アルバム名:Pretenders(1980年)
■アルバム名邦題:愛しのキッズ
■動画リンク:「Kid」
彼女はアメリカ人でしたが、渡英してミュージシャンになりました。
元々彼女は「大学を出て、地元の男性と結婚して子供を産む」という平凡な幸せに安住するタイプではありませんでした。
常に「自分の居場所はここではない」という違和感を抱きながら大人になったようです。
昔から彼女はイギリスのバンドにあこがれていて、イギリスの音楽誌「NME」を愛読し、人一倍美術に興味がある、普通ではいたくない人でした。
そんな彼女の心が死にかけたある日、わずかなお金で環境を変えて、チャンスを求めて試行錯誤を繰り返した経緯は、パティ・スミス(Patti Smith)に似ています。
クリッシーは渡英してから極貧生活の中で様々な仕事を経験し、持ち前のハングリー精神で生き延びました。
そしてついにNME誌に寄稿するライターになっています。
しかし彼女の中には、取材する側ではなく「表現者として何者かになりたい」という思いがくすぶっていました。
そこでNMEの仕事を辞め、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)ズの生みの親であるマルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)とヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が経営するブティック「SEX」で働き始めました。
彼女は次第にパンク・コミュニティの中で頭角を現していきました。
このデビュー・アルバムは、セックス・ピストルズをプロデュースしたクリス・トーマス(Chris Thomas)がプロデュースしています。
3位「Back on the Chain Gang」(アルバム:Learning to Crawl)

■曲名:Back on the Chain Gang
■曲名邦題:チェイン・ギャング
■アルバム名:Learning to Crawl(1984年)
■アルバム名邦題:ラーニング・トゥ・クロール
■動画リンク:「Back on the Chain Gang」
サード・アルバムの曲です。
このアルバムの前、バンドは大きな転換点を迎えていました。
前作の後、1982年リード・ギタリストのジェイムズ・ハニーマン・スコット(James Honeyman-Scott)が、ドラッグの過剰摂取で急死。
翌1983年には、ベーシストのピート・ファーンドン(Pete Farndon)も、同じくオーバードーズで亡くなりました。
そこでこのアルバムは、新しいメンバーとゲスト・プレイヤーの参加で乗り切ることに。
つまりバンドは過渡期の真っただ中だったのですね。
一方、同時期彼女はザ・キンクス(The Kinks)のフロントマン、レイ・デイヴィス(Ray Davies)との間に子供をもうけていました。
そんなある日、彼女がアルバム・タイトルを決めようとしていた時、子供はハイハイを覚え始めた頃でした。
彼女は娘とバンドの状況を重ね合わせて、アルバム名を「Learning to Crawl」つまり「ハイハイを覚える」というタイトルにしました。
この「Back on the Chain Gang」は全米シングルチャートで5位を記録し、念願のトップテンヒットになりました。
彼女は子育てとバンドの再生という難局を、無事に乗り切ったようですね。
4位「Show Me」(アルバム:Learning to Crawl)

■曲名:Show Me
■曲名邦題:愛に抱かれて
■アルバム名:Learning to Crawl(1984年)
■アルバム名邦題:ラーニング・トゥ・クロール
■動画リンク:「Show Me」
このバンドの強みは、クリッシー・ハインドのボーカルとソングライティング力です。
ここでは彼女のソングライティングに焦点を当てたいと思います。
このバンドがデビューするきっかけとなったのは、彼女が制作したデモ・テープがレコード会社に認められたことがきっかけでした。
つまり当初から曲づくりが高く評価されていたのですね。
私は彼女の曲について、ミディアムテンポの曲に強みがあると思っています。
前述したように彼女はパンク・コミュニティ出身です。
デビュー・アルバムには一部ファスト・アンド・ラウドな曲もありましたが、パンクという印象はそれほどありません。
先程の「Back on the Chain Gang」はミディアム・アップ、こちらの「Show Me」はミディアムテンポの曲です。
速い曲はノリが重要で、スローは表現力に比重が置かれるものです。
相対的にミディアムテンポの曲では、より楽曲の良し悪しがクローズアップされやすいかもしれません。
その点、ミディアムテンポは彼女の領域でした。
加えて彼女の曲にはアメリカ出身らしく、オールディーズや古いソウルの影響がうかがえます。
そもそもバンド名からして、ザ・プラターズ(The Platters)の名曲「ザ・グレート・プリテンダー(The Great Pretender)」のサム・クック・バージョンから名付けられています。
Sam Cooke – The Great Pretender
5位「Stop Your Sobbing」(アルバム:Pretenders)

■曲名:Stop Your Sobbing
■曲名邦題:ストップ・ユア・ソビン
■アルバム名:Pretenders(1980年)
■アルバム名邦題:愛しのキッズ
■動画リンク:「Stop Your Sobbing」
キンクス(The Kinks)のカバーです
元々彼女は長年キンクスの大ファンだったようです。
時々「彼女はキンクスのレイ・デイヴィスと結婚していた」という文章を目にすることがあります。
しかし実際は事実婚ですので、レイ・デイヴィスは最初の子供の父親ではあっても、最初の夫ではありません。
彼女の最初の夫は、シンプル・マインズ(Simple Minds)のリードシンガー、ジム・カー(Jim Kerr)です。
彼女は憧れていたNMEのライターになったり、レイ・デイヴィスとの交際、パンク界隈との交流など、望むものはことごとく手に入れました。
イギリスのビザを取得するためにも、セックス・ピストルズのジョン・ライドン(John Lydon)やシド・ヴィシャス(Sid Vicious)と偽装結婚しようともしました。
彼女は美形でしたが女を武器にせず、ハングリー精神を持ったタフな人でした。
またバンド・リーダーとしては決断力があり、問題が目立つメンバーを度々クビにしています。
しかしその一方で、ソロ名義や「クリッシー・ハインド&ザ・プリテンダーズ」という名前を提案されても、エゴが強すぎるという理由で断っています。
彼女はストイックで姉御肌タイプの人でした。
6位「Middle of the Road」(アルバム:Learning to Crawl)

■曲名:Middle of the Road
■曲名邦題:情熱のロックン・ロード
■アルバム名:Learning to Crawl(1984年)
■アルバム名邦題:ラーニング・トゥ・クロール
■動画リンク:「Middle of the Road」
このバンドの最高傑作は、ファーストかこの3枚目のどちらかだと言われています。
この記事では、その2枚を含めた最初の4枚を対象にしました。
個人的には、この「Learning to Crawl」が最高傑作だと思っています。
このアルバムには、決定的な曲が多数収録されていますし。
このブログではセールスのさまたげにならないよう、1アルバム4曲までに制限しています。
その上限4曲以外にも良い曲が目白押しです。
このアルバムでは他にクリスマス・ソングとして知られる「2000 Miles」が収録されていますが、そちらはクリスマス・ソングの記事で取り上げました。
さてこのバンドの音楽については、ジャンル分けが難しいように思います。
このバンドはパンクから派生しましたが、ルーツに根差した音楽性は、それら多くのバンドとは一線を画しています。
尖ったオルタナティブな音楽ではなく、商業主義にも迎合せず飾り気もありません。
音楽的に初期はパブロックに近いと思いますが、それより単に「シンプルでストレートなロック」と呼んだ方がいいのかもしれません。
7位「Talk of the Town」(アルバム:Pretenders II)

■曲名:Talk of the Town
■曲名邦題:街のうわさ
■アルバム名:Pretenders II(1981年)
■アルバム名邦題:プリテンダーズ2
■動画リンク:「Talk of the Town」
このセカンド・アルバムは傑作との誉れ高いファーストとサードの間で、少々影が薄い作品かもしれません。
しかし勢いと実力を備えたバンドの場合、こういう狭間のアルバムも聞き逃せないものです。
さて、ここでシンガーとしてのクリッシーについて触れてみたいと思います。
彼女の歌はどこかレイジーで物憂げなところ、そして時にぶっきらぼうな歌い方が魅力でした。
それは男性女性関係なく、キース・リチャーズ(Keith Richards)などと同じく、ロックの本質に迫る特質でした。
しかし彼女の歌には、女性らしさがないわけではありません。
ただその女性らしさは計算して狙って表に出すのではなく、ごく自然ににじみ出るものでした。
たとえば私はこの曲の歌い出しに女性らしさを感じます。
しかし彼女は女らしいアピールを極度に嫌う人でした。
ちなみに彼女は「女だから苦労したなんて思ったことは一度もない」と発言したり、ある曲について女性を勇気づけると讃えられた時「ただの3分間のロックソングで、誰かを勇気づけるためには書いていない」と一蹴しています。
彼女は男性にも女性にも媚びない、一匹狼のような孤高の存在でした。
そんな彼女のたたずまいに業界内にもファンが多く、あのマドンナも感銘を受けているそうです。
8位「Thin Line Between Love and Hate」(アルバム:Greatest Hits)

■曲名:Thin Line Between Love and Hate
■曲名邦題:シン・ライン・ビトウィーン・ラヴ・アンド・ヘイト
■アルバム名:Greatest Hits(2000年)
■アルバム名邦題:グレイテスト・ヒッツ
■動画リンク:「Thin Line Between Love and Hate」
この曲は「Learning to Crawl」の収録曲ですが、ジャケットをご紹介したいので、ベスト盤の曲としてご紹介しました。
女性らしさを売りにしない彼女の魅力がよく表れたジャケットですね。
さてこの曲はザ・パースエイダーズ(The Persuaders)のカバーで、曲名通り「愛と憎しみは紙一重」という内容の曲です。
世界一やさしい女性が次の瞬間、世界一意地悪な女性になることもあるとか、全ての笑顔が幸せなわけではないなどと歌われています。
男の立場からすると、身が引き締まる感じがしてしまいますね(笑)。
彼女は「Stop Your Sobbing」など、カバー曲のセンスが絶妙です。
知名度が高すぎない良曲を優れた表現者がカバーすると、良い曲に仕上がりやすく、時にはオリジナルだと誤認されたりもします。
実際私は長い間、この曲はオリジナルだと思っていました。
カバーソングでは他に、以下のジミ・ヘンドリックスのカバーもすばらしい出来です。
The Pretenders – Room Full of Mirrors
カバー曲の選球眼と楽曲を活かす表現力は、このバンドの価値を一層高めました。
9位「Day After Day」(アルバム:Pretenders II)

■曲名:Day After Day
■曲名邦題:デイ・アフター・デイ
■アルバム名:Pretenders II(1981年)
■アルバム名邦題:プリテンダーズ2
■動画リンク:「Day After Day」
私がこのバンドのアルバムを聞いている時、よく思うことがあります。
それは代表曲、有名曲、人気曲が、アルバムのB面ばかりに置かれていること。
ファーストでは「Kid」と「Brass in Pocket」、アルバム「Get Close」では「Don’t Get Me Wrong」がB面です。
そしてセカンドでも、この「Day After Day」がB面曲。
更には「Talk of the Town」と「Stop Your Sobbing」はA面最後の曲です。
アルバム単位で聞かない方はピンとこないかもしれませんが、良い曲は最初の3曲に入れるのが通常です。
試しにこの記事の曲で数えてみたら、10曲中5曲目以内は3曲だけで、後の7曲は6曲目以降に置かれていました。
そもそも1位の曲からしてアルバムのB面ですし、これほど良い曲が後半に偏っているアーティストの記事は初めてです。
かといってA面にも特に不満はなく、しっぽまでアンコが入ったたい焼きにも似たお得感があります。
10位「Brass in Pocket」(アルバム:Pretenders)

■曲名:Brass in Pocket
■曲名邦題:恋のブラス・イン・ポケット
■アルバム名:Pretenders(1980年)
■アルバム名邦題:愛しのキッズ
■動画リンク:「Brass in Pocket」
このデビューアルバムは、当時かなりの衝撃をもって受け入れられました。
イギリスではアルバムチャート1位、アメリカでも9位とトップテン入りをはたしています。
なにせローリング・ストーン誌が「歴代最高のデビューアルバム」で第13位に選んだほどです。
その人気と高評価の一因として、このヒット曲の存在がありました。
この曲はイギリスのシングルチャートで1位を獲得しています。
先程このバンドはミディアムテンポの曲が強みだと書きましたが、デビュー時からの特徴だったのですね。
その後このバンドはトップバンドの人気を維持し、2005年のロックの殿堂入りをはたしています。
彼らはいかにも売れそうなバンドではありません。
ただこういうシンプルで飾り気のない、奇をてらっていない音楽が評価されるのは素直にうれしい。
音楽の中身で勝負しているアーティストは励まされる思いがするかもしれません。
最後に、今回の対象期間以降で1曲ご紹介して、この記事を終えたいと思います。
The Pretenders – I’ll Stand by You
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