今回はイギー・ポップのランキングを作成しました。
1977年以降から「ブラー・ブラー・ブラー(Blah Blah Blah)」より前に時期を限定しました。
つまりストゥージズ(The Stooges)以降のソロキャリア前期が対象期間です。
私はこの時期が一番おもしろいと思っています。
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)のサポートを得てソロデビューしてから、低迷期と言われるアリスタ(Arista)時代を含めています。
後にイギーは映画「トレインスポッティング(Trainspotting)」で脚光を浴びています。
ランキングでも、その頃に再評価された時期の曲を多めにしています。
ただ低迷期でも試行錯誤の結果、たいへんおもしろい曲が生まれていて、特に10位の曲は裏の目玉ともいえる曲です。
- 1 1位「Lust for Life」(アルバム:Lust for Life)
- 2 2位「The Passenger」(アルバム:Lust for Life)
- 3 3位「China Girl」(アルバム:The Idiot)
- 4 4位「Tell Me a Story」(アルバム:New Values)
- 5 5位「Funtime」(アルバム:The Idiot)
- 6 6位「Eggs On Plate」(アルバム:Party)
- 7 7位「Some Weird Sin」(アルバム:Lust for Life)
- 8 8位「Neighborhood Threat」(アルバム:Lust for Life)
- 9 9位「Sister Midnight」(アルバム:The Idiot)
- 10 10位「Street Crazies」(アルバム:Zombie Birdhouse)
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1位「Lust for Life」(アルバム:Lust for Life)
■曲名:Lust for Life
■曲名邦題:ラスト・フォー・ライフ
■アルバム名:Lust for Life
■アルバム名邦題:ラスト・フォー・ライフ
■動画リンク:「Lust for Life」
ご存知「トレインスポッティング」のオープニング曲です。
ちなみにこのアルバムは1977年にリリースされていますが、全然古さを感じません。
「トレインスポッティング」は1996年に上演された映画ですから、19年前の曲を映画に使用したということになります。
イントロからリズムがとてもかっこいいです。
この曲は基本的にリズムが主体の曲で、延々と同じリフが繰り返されます。
あまり指摘されませんが、このリズムは明らかにモータウン由来だと思います。
特にベースラインが、いかにもモータウンのヒット曲にありそうです。
しかしモータウン色を感じさせないのは、イギーの型にはまらない野性味のあるボーカルのせいかもしれません。
曲名は直訳すると「生への渇望」といった感じでしょうか。
映画では「クソみたいな人生だけど上等だ、それでも自分たちらしく生きてやるよ」という感じでしたが、この曲もまさしくそういう内容です。
映画に似合いすぎです。
2位「The Passenger」(アルバム:Lust for Life)
■曲名:The Passenger
■曲名邦題:パッセンジャー
■アルバム名:Lust for Life
■アルバム名邦題:ラスト・フォー・ライフ
■動画リンク:「The Passenger」
この曲は一時テレビコマーシャルに使われていました。
聞いたことがある方も多いと思いますが、ぜひフルバージョンでお聞きください。
こちらはアウトロー感が漂うギターのカッティングの上で、イギーが少し抑え気味に歌っています。
イギーにバラードの曲がないわけではありませんが、基本的にバラードを聞かせるタイプのシンガーではありません。
ただこの曲には、荒くれ者特有の哀愁が感じられます。
当時イギーはデヴィッド・ボウイと一緒に過ごす時間が長かったようです。
イギーは運転免許を持っていなかったため、デヴィッド・ボウイが運転する車で移動していたそうです。
曲名の「乗客」とはそういう意味です。
男くさい曲ですが、男の友情を感じさせてくれる曲です。
3位「China Girl」(アルバム:The Idiot)
■曲名:China Girl
■曲名邦題:チャイナ・ガール
■アルバム名:The Idiot
■アルバム名邦題:イディオット
■動画リンク:「China Girl」
デヴィッド・ボウイが「レッツ・ダンス(Let’s Dance)」でセルフカバーしたことで有名な曲です。
しかし私はこちらのバージョンの方が好みです。
最初は普通のテンションで歌うイギーが、中盤あたりから急激にテンションを上げてくるところがドラマティックです。
あのパーフェクトに思えるデヴィッド・ボウイが、なぜイギー・ポップの支援を買って出たのか。
私はイギーの「野生味」にあこがれたのではないかと思います。
たとえば2:37ぐらいから見せる、ギラリとした感じはボウイが持っていない部分かもしれません。
しかしイギーではそれが通常運転です。
演奏もドラマティックで、1:36や3:52などでギターが入るところは、本当に鳥肌ものです。
野生児イギーのボーカルと演奏が、高次元で拮抗している名曲だと思います。
4位「Tell Me a Story」(アルバム:New Values)
■曲名:Tell Me a Story
■曲名邦題:テル・ミー・ア・ストーリー
■アルバム名:New Values
■アルバム名邦題:ニュー・ヴァリューズ
■動画リンク:「Tell Me a Story」
こちらは打って変わって軽快な曲です。
少しだけ昔のボブ・ディラン(Bob Dylan)の香りもします。
よくイギーポップのソロアルバムは「The Idiot」と「Lust for Life」ばかりが話題になりがちです。
しかし私は「New Values」を加えたサードアルバムまでを、三大傑作として考えています。
10選では「The Idiot」と「Lust for Life」の曲が多めになりましたが、もし20選で選んだら「New Values」の曲がたくさん入りそうです。
このアルバムはイギーにとっては珍しく、曲の粒がそろっています。
ではイギーにハズレ曲が多いのかといったら、残念ながらその通りだと思います。
ただこの人は平均値が高くなくても、最高到達地点がとても高い人です。
それに私は、それほど音楽にアベレージの高さを求めていません。
このアルバムは一部をスコット・サーストン(Scott Thurston)と共作しているものの、多くの曲をイギーが単独で書いています。
パフォーマー色の強い人かと思っていたら、イギーも良い曲を書けるじゃないかと思いました。
5位「Funtime」(アルバム:The Idiot)
■曲名:Funtime
■曲名邦題:ファンタイム
■アルバム名:The Idiot
■アルバム名邦題:イディオット
■動画リンク:「Funtime」
この曲もデヴィッド・ボウイとタッグを組んでいた頃の曲です。
重ぐるしい雰囲気が漂う曲が多い「The Idiot」の中で、珍しくアッパーな曲です。
この頃の音づくりは、どうしてもボウイの影響があることは仕方ありません。
なぜなら作曲とプロデュースがボウイで、演奏メンバーも当時のボウイと同じメンバーで固められているからです。
ちなみにこのアルバムが発売されたのと同じ年にボウイは、名盤「英雄夢語り(Heroes)」を発表しています。
いわゆるベルリン三部作のど真ん中です。
その頃のボウイを好きな人は、間違いなくこのアルバムを気に入るはずです。
ちなみにデヴィッド・ボウイと組んだ「The Idiot」と「Lust for Life」は、同じ1977年にリリースされています。
どうやら当時のイギーとボウイの創作意欲は、頂点に達していたようですね。
6位「Eggs On Plate」(アルバム:Party)
■曲名:Eggs On Plate
■曲名邦題:エッグス・オン・ア・プレート
■アルバム名:Party
■アルバム名邦題:パーティ
■動画リンク:「Eggs On Plate」
アリスタ時の曲です。
アリスタ時代は「New Values」で順調に滑り出しでしたが、その後がいけませんでした。
この時期は一般的な評価がとても低い時期です。
私はよくこのブログで低評価な時代にも良い曲はあるのだと主張し、積極的に曲をご紹介してきました。
しかしこのアルバムの前作である「ソルジャー(Soldier)」は、正直私も擁護しようがありません。
その次作であるこのアルバムではやや上向いたものの、やはり出来はかんばしくありません。
ただ良い曲が見つかりました。あきらめずに聞きなおしてみるものです。
この曲は、イギーが映えるロック色が強いナンバーです。
特にギターのリフが小気味良いです。
イギーのボーカルは、ざらついた攻撃的なギターとの相性がいいです。
ギターは少しガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)のスラッシュ(Slash)に似た感じの演奏ですね。
「イギーはこういうのでいいんだよ」と言いたくなる名曲です。
7位「Some Weird Sin」(アルバム:Lust for Life)
■曲名:Some Weird Sin
■曲名邦題:サム・ウィアード・シン
■アルバム名:Lust for Life
■アルバム名邦題:ラスト・フォー・ライフ
■動画リンク:「Some Weird Sin」
こちらもイントロからギターがすばらしい曲です。
とにかくイギーのボーカルを味わう曲です。
イギーはメロディを歌うことに長けているような、いわゆる上手いボーカリストではありません。
ロックを体現するワイルドなところが魅力のボーカリストです。
技術では劣るけれど、身体能力だけで技術にすぐれた人をごぼう抜きするアスリートみたいなものです。
とてもスケールが大きいボーカリストといえるかもしれません。
たとえばこの曲などは、他の誰かが歌っても、このぐらいの出来にするのは難しいかもしれません。
あとこの人はキャラクターにも魅力があります。
まるでプロレスラー出身の芸能人みたいに、ワイルドだけどどこか愛嬌がある人柄も、この人が愛される理由かもしれません。
8位「Neighborhood Threat」(アルバム:Lust for Life)
■曲名:Neighborhood Threat
■曲名邦題:ネイバーフッド・スレット
■アルバム名:Lust for Life
■アルバム名邦題:ラスト・フォー・ライフ
■動画リンク:「Neighborhood Threat」
この曲も先程と同じく「Lust for Life」からの選曲です。
結局このアルバムからは4曲がランクインしました。
良い曲をガチンコで選ぶと、時にはこういう偏りが生じるのは仕方ありません。
この曲の魅力についても、先程の「Some Weird Sin」とほぼ同じです。
ただこちらの方が、サウンド的にドラマティックですね。
イントロからテンションがマックスです。
ちなみにこの曲のタイトルは「近所の脅威」という意味で、近所に狂った男が住んでいるという内容です。
割れたガラスの破片の上を上半身裸で転がりながら血だらけで歌っていたイギーが、おかしな男に気を付けろなど、どの口で歌うのかと、つっこみを入れたくなります。
まあそんなことを考えるよりも、この曲の熱狂的な雰囲気に浸るべきかもしれませんが。
9位「Sister Midnight」(アルバム:The Idiot)
■曲名:Sister Midnight
■曲名邦題:シスター・ミッドナイト
■アルバム名:The Idiot
■アルバム名邦題:イディオット
■動画リンク:「Sister Midnight」
さてここからが、少し人を選ぶ曲かもしれません。
ただ人によってはこの曲が1位になってもおかしくありません。
程度の差こそあれ、8位までは比較的キャッチーな曲が多かったと思います。
しかしこの曲は聞きどころが分からない方も多いと思われます。ロック初心者には少々難しいかもしれません。
挑戦して聞いていただければうれしいですけどね。
曲調としては当時のボウイの先鋭的な色彩が強く、そもそもの話イギーの音楽という感じもしません。
明らかにサウンドが優勢な曲ですが、やたらかっこいいです。
重厚でダウナーな一方でファンキー音づくりは、当時のニューウェーヴの醍醐味の1つです。
ボーカルもそのサウンドの一部として機能していますが、冷徹なサウンドと熱気を隠し切れないイギーのボーカルの対比に注目です。
ちなみに曲づくりには、カロルス・アロマー(Carlos Alomar)も参加しています。
10位「Street Crazies」(アルバム:Zombie Birdhouse)
■曲名:Street Crazies
■曲名邦題:ストリート・クレイジーズ
■アルバム名:Zombie Birdhouse
■アルバム名邦題:ゾンビー・バードハウス
■動画リンク:「Street Crazies」
この曲は更に異色の曲です。
実は今回のランキングを作成した動機の主要部分は、この曲をご紹介したいということでした。
「Zombie Birdhouse」というアルバムは、入手しにくさのせいもあるかもしれませんが、明らかに過小評価されています。
イギーのアルバムの中では、いい意味でまとまりがありません。
私などは「イギー・ポップのホワイトアルバム」とでも呼びたい作品です。
その中でこの曲は特に異端性を感じさせてくれます。
分かる人にだけ伝わる言い方をすれば「フラワーズ・オブ・ロマンス(The Flowers of Romance)」の頃のPIL(Public Image Ltd)の中近東な要素を、エスノ路線のトーキングヘッズ風に再現した曲です。
どちらかのバンドが好きならば、決して聞き逃すことはできません。
私は長年この曲の良さに気づいていませんでしたが、ある時ヘッドホンで聞いたところ、はじめて魅力に気がづきました。
おそらく小さな音では、この曲の魅力に気付きにくいと思います。
もし良かったらヘッドホンか、環境が許せばボリュームを上げて聞くことをおすすめします。
先程の曲以上に、特定の人をピンポイントでノックアウトする曲です。
もしかしたら「他の曲はピンとこなかったけど、この曲だけはすごいね」という人がいてもおかしくありません。
はまる人には、めちゃくちゃスリリングな音楽体験が味わえる曲です。
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