今回はシコ・ブアルキのランキングを作成しました。
この人は本国ブラジルで国民的な人気だと言われています。
「言葉の芸術」と言われる歌詞や親しみやすいメロディなどが魅力の人です。
なぜこの人がMPBを代表するアーティストと呼ばれているのか、ご自身の耳でお確かめください。
- 1 1位「Fantasia」(アルバム:Vida)
- 2 2位「Vai Passar」(アルバム:Chico Buarque(1984))
- 3 3位「Samba de Orly」(アルバム:Construcao)
- 4 4位「Rosa Dos Ventos」(アルバム:Chico Buarque De Hollanda Vol.4)
- 5 5位「Amor Barato」(アルバム:Almanaque)
- 6 6位「De Volta Ao Samba」(アルバム:Paratodos)
- 7 7位「Acorda Amor」(アルバム:Sinal Fechado)
- 8 8位「Ate Segunda-Feira」(アルバム:Chico Buarque De Hollanda Vol.3)
- 9 9位「Apesar De Voce」(アルバム:Chico Buarque(1978))
- 10 10位「O Que Sera (A Flor Da Terra)」(アルバム:Meus Caros Amigos)
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1位「Fantasia」(アルバム:Vida)
■曲名:Fantasia
■アルバム名:Vida
■動画リンク:「Fantasia」
この曲は構成が見事です。
最初の方だけで合わないと感じても、ためしに最後まで聞いてみてください。
しっとりした曲調から始まっていますが、柔らかなリズムが入り、次第に楽器が加わってきます。
一旦静かな展開になった後、3:07からは女性シンガーとデュエットで歌い上げています。
その時のピアノの美しいことと言ったら、言葉もありません。
ところどころでベースも跳ねていますね。
その後コーラスと沢山の楽器が加わわって大団円を迎えようとしていますが、特に4:20からの口笛軍団には胸が締めつけられます。
ラスト10秒ほどでダメ押しのごとくハンドクラッピングまで入ってきて、最高のフィナーレを迎えています。
もうこの展開は反則としか言いようがありません。
しかし残念なことにこのアルバムは、現在廃盤なんですよね。
他にも「Bye Bye Brasile」という名曲も入っているのに。
こんな曲がリリースされず眠っているのは、もったいないと思います。
2位「Vai Passar」(アルバム:Chico Buarque(1984))
■曲名:Vai Passar
■曲名邦題:ヴァイ・パッサー
■アルバム名:Chico Buarque(1984)
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ(1984)
■動画リンク:「Vai Passar」
この人の代表作であり、最高傑作と言われることの多いアルバムです。
彼は1966年にデビューしていますから、この時点で18年が経過したことになります。
しかもかなり多作な人で、1年にアルバムを2-3枚リリースすることも珍しくありません。
ウィキペディアでアルバム枚数を数えてみたら、DVD作品を除いて50枚もありました。
日本ではリリースされていなかったり、廃盤になっているものも多く、入手できる作品が限られています。
このアルバムはさすがに代表作なだけに、入手可能ですが。
この人は本国での人気に比べて、日本ではあまり知られていません。
こういう現状がが嘆かわしいと思い、今回微力ながら取り上げることにしました。
さてこのアルバムの人気の一端は、この曲の存在にあります。
最初の1音から、サンバの豊穣さがぎっしり詰まった大名曲だと思います。
3位「Samba de Orly」(アルバム:Construcao)
■曲名:Samba de Orly
■曲名邦題:オルリーのサンバ
■アルバム名:Construcao
■アルバム名邦題:コンストゥルサォン
■動画リンク:「Samba de Orly」
この作品は以前から人気作でしたが、近年再評価が著しいように思います。
それにはあるきっかけがありました。
ブラジル版ローリングストーン誌の「ブラジル音楽の偉大なアルバム100選」という特集で、なんと3位を獲得しています。
ちなみに1位はNovos Baianosの「Acabou Chorare」。
確かにそれもすばらしいアルバムです。
しかしジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)の歴史的傑作「想いあふれて(Chega de Saudade)」を上回る3位とは驚きました。
ただこの曲を含めて、内容的には申し分ありません。
この曲はタニア・マリア(Tania Maria)がカバーしたバージョンの方が有名かもしれません。
オリジナルのこちらもすばらしい出来です。
少しトリッキーなイントロの後、軽快なサンバのリズムが始まります。
この曲はシコ、トッキーニョ(Toquinho)、ヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinicius de Moraes)の三人の共作。
イタリア亡命中の心境を綴った曲だそうですが、そのせいかサウダージを強く感じます。
4位「Rosa Dos Ventos」(アルバム:Chico Buarque De Hollanda Vol.4)
■曲名:Rosa Dos Ventos
■アルバム名:Chico Buarque De Hollanda Vol.4
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ・ジ・オランダ Vol.4
■動画リンク:「Rosa Dos Ventos」
サンバ以外の曲もご紹介しておきましょう。
この人はジャンルでいえば、MPBに分類されます。
コンテンポラリーなブラジル音楽のアーティストという位置づけだといえるでしょう。
裏を返せば、ボサノヴァやサンバだけの人ではないということです。
シコは初期からすぐれた職業作曲家と評価されて、多くのヒット曲を生み出しました。
1970年にリリースされたこの曲は、普通のポップス寄りの曲です。
大仰でサイケなイントロが謎ですが、29秒から肩の力が抜けた歌を聞かせてくれます。
この曲は構成が変わっています。
普通はAメロ、Bメロ、サビを2回繰り返す構成の曲が多いかもしれません。
しかしこの曲は2:41という短い曲なのに、2:00でようやくサビが始まりますが、それも1回限り。
私はその変な展開やアレンジを含めて、この曲が好きです。
シコのメロディメイカーとしての魅力が、よく表れている曲だと思います。
5位「Amor Barato」(アルバム:Almanaque)
■曲名:Amor Barato
■曲名邦題:安っぽい愛
■アルバム名:Almanaque
■動画リンク:「Amor Barato」
ただこの曲は「安っぽい愛」という曲名が気になって、歌詞を読んでみることにしました。
いくつかの自動翻訳を通して、ようやく意味が取れました。
この曲で彼は人々に愛を届けたいと歌っています。
愛は最後に花のような価値を持つのだと。
シコは特権階級に生まれ、貧しさとは無縁に育った人です。
しかし彼の民衆に対する寄り添い方は、時にナイーヴだとやゆされるほどでした。
先程取り上げた「Construcao」というアルバムのタイトル曲でも、あるレンガ職人の無念の死を取り上げていました。
彼は民衆を抑圧していた軍事政権から目をつけられて、1969年イタリアに亡命しています。
しかし翌年1970年には他の亡命アーティストに先んじて、いち早くブラジルに帰国しています。
彼は圧政下のブラジルに戻り、人々と一緒に抗議活動をしようとしました。
彼は上流階級出身でインテリでしたが、同時に民衆の側に立ち、共に戦う気持ちを行動で示してくれた人でした。
6位「De Volta Ao Samba」(アルバム:Paratodos)
■曲名:De Volta Ao Samba
■曲名邦題:デ・ホルタ・アオ・サンバ
■アルバム名:Paratodos
■アルバム名邦題:パラトードス
■動画リンク:「De Volta Ao Samba」
この曲は今回ご紹介した中で一番新しく、1993年に発表されています。
このアルバムは地味な曲が多いものの、以前よりも音楽が成熟しているように感じます。
ガル・コスタ(Gal Costa)とのデュエット「Biscate」など、他にもすばらしい曲が多く、このアルバムが最高傑作だと言う人がいてもおかしくありません。
ちなみにシコは、2017年にも「Caravanas」という充実作を残しています。
この人の全盛期や最高傑作については、人によってかなり異なるように思います。
今回私はこの人の曲を初期から聞き返してみましたが、好不調の波があまりなく、どの時期にも傑作があると思いました。
もしかしたらずっと全盛期なのかもしれません。
今回は1970~80年代の曲が多めになりましたが、歌の味わいだけを考えると、それ以降の方が上ではないかと思うことがあります。
この曲もその1曲。
私はそれほど歌の上手い人だとは思いません。
声質もビロードのような艶や色気を持つカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)と比べるべくもありません。
しかしこのあっさりした歌声は、不思議といつまでも聞いていたくなる魅力があります。
服でいえば着心地の良い普段着みたいな感じといえるかもしれません。
7位「Acorda Amor」(アルバム:Sinal Fechado)
■曲名:Acorda Amor
■曲名邦題:アコルダ・アモール
■アルバム名:Sinal Fechado
■アルバム名邦題:シナル・フェシャード
■動画リンク:「Acorda Amor」
このアルバムでは、珍しく他の人の曲を歌っています。
取り上げられたのは有名な人の曲が多いのですが、知らない名前がありました。
この曲を書いたのは、Leonel PaivaとJulinho Da Adelaideという人物とのこと。
実はJulinho Da Adelaideはシコの変名で、軍事政権の検閲を逃れるために、他人を装ったのだそうです。
彼は外見的には穏やかに見えますし、音楽的にもそれほど過激ではありません。
しかし中身はかなり気骨が感じられます。
シコは反政府的な活動によって、1968年に逮捕され、1969年にイタリアに亡命する。その後1970年にブラジルに戻り、彼の知名度を生かして、独裁政権へのプロテスト・ソングを制作しはじめる。
この曲も検閲をすり抜けようとぼかした表現をしていますが、軍事政権を批判した内容だそうです。
確かにこの曲の歌詞には、弾圧されているらしき状況が読み取れます。
とてもかわいらしい曲ですが、その衣の下に反骨精神を忍ばせていたようですね。
8位「Ate Segunda-Feira」(アルバム:Chico Buarque De Hollanda Vol.3)
■曲名:Ate Segunda-Feira
■曲名邦題:また月曜に
■アルバム名:Chico Buarque De Hollanda Vol.3
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ・ジ・オランダ Vol.3
■動画リンク:「Ate Segunda-Feira」
彼はデビュー時から注目される存在でした。
彼は1966年に「Chico Buarque de Hollanda Vol.1」でデビューし、「ア・バンダ(A Banda)」などのヒット曲を送り出しました。
その後オランダを冠したアルバムは人気シリーズとなり、第四弾までリリースされています。
この作品はオランダ・シリーズの3枚目で、初期の代表作といえるかもしれません。
このアルバムでは、ジョイス(Joyce)など多くの人にカバーされた「白と黒のポートレイト(Retrato Em Branco E Preto)」が有名です。
本来はその曲を選ぶべきだと思います。
しかし私にとってその曲はジョアン・ジルベルトの印象が強すぎるため、ここではランク外とさせていただきました。
一応リンクだけ貼っておきましょう。
Chico Buarque – Retrato Em Branco e Preto
代わりに選んだ「Ate Segunda-Feira」は有名曲ではありませんが、極私的に偏愛している曲です。
隠れ名曲枠として取り上げてみました。
9位「Apesar De Voce」(アルバム:Chico Buarque(1978))
■曲名:Apesar De Voce
■曲名邦題:アペザール・ヂ・ヴォセ
■アルバム名:Chico Buarque(1978)
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ(1978)
■動画リンク:「Apesar De Voce」
この人はよくカエターノ・ヴェローゾと比較されます。
確かに作風も似ています。
しかしあえて違う面に注目すると、シコはカエターノほど音楽的に尖っていません。
そのあたりは良くも悪くも、日本のシコの評価に影響を及ぼしているかもしれません。
先鋭的な部分があった方が、一部の人には受けがいいでしょうから。
シコはとても良い曲を書きますが、反骨心を織り込んだ歌詞はともかく、音楽的にはそれほど過激ではありません。
あと私が考える最も大きな両者の違いは、サンバに対する取り組みです。
カエターノもサンバをやりますが、シコの方がサンバに対するこだわりが強いように感じます。
私はサンビスタとしてのシコが大好物で、そこが最もカエターノと差別化できるポイントだと思っています。
彼は伝統的なサンバに、自由に対する願いを込めました。
若干ベールをかぶせたプロテスト・シングル “Apesar de Você” (In spite of you)は、どういうわけか軍の検閲の目をすり抜け、民主主義運動のアンセムとなった。10万枚が売れた後、結局弾圧の対象となり、すべて店頭から姿を消した。
この曲では歌詞に「明日はきっと別の日になる」という箇所があって、自由を求める民衆の願いを代弁しています。
10位「O Que Sera (A Flor Da Terra)」(アルバム:Meus Caros Amigos)
■曲名:O Que Sera (A Flor Da Terra)
■曲名邦題:オー・ケ・セラ
■アルバム名:Meus Caros Amigos
■動画リンク:「O Que Sera (A Flor Da Terra)」
まずジャケットにご注目ください。
マリオをイケメンにした感じのシコが映っています。
まるで何かの映画のワンシーンみたいですが、上と下に映画のフィルムのような模様がありますね。
このアルバムは映画や舞台、テレビドラマのために書かれた曲が収録されています。
この曲も映画「未亡人ドナ・フロール理想的再婚生活」のテーマ曲とのこと。
ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)も参加しているようですね。
1:50からの感情がほとばしる展開に胸が熱くなります。
実はシコの創作活動は多彩で、音楽もその一部でしかありません。
彼は舞台の脚本や小説などの文筆活動もしています。
特に「ブダペスト(Budapeste)」という小説は、ジャブチ文学賞とパッソ・フンド文学賞という、ブラジル最高権威の文学賞をダブル受賞しています。
詳しい人には、歌詞を読まないとこの人の魅力は理解できないと言う人も。
ただ私はポルトガル語が読めないので、自動翻訳の不確かな翻訳にもどかしさを募らせました。
そこで音楽だけでもと、代表曲と私のお気に入り曲をご紹介してみました。
いつか歌詞の翻訳付きで再発してほしいものです。
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