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シコ・ブアルキ(Chico Buarque)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はシコ・ブアルキのランキングを作成しました。

この人は本国ブラジルで国民的な人気を博していると言われています。

「言葉の芸術」と言われる歌詞や親しみやすいメロディが魅力です。

なぜこの人がMPBを代表するアーティストと呼ばれているのか、皆様の耳でお確かめください。

 

1位「Fantasia」(アルバム:Vida)

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■曲名:Fantasia
■アルバム名:Vida(1980年)
■動画リンク:「Fantasia」

この曲は構成が見事です。

最初の方だけ聞いて合わないと感じても、ためしに最後まで聞いてみてください。

孤独で辛い境遇を思わせる前半は伏線で、後半では次々に人や楽器が加わりその伏線を回収していきます。

口笛軍団が高らかに人間賛歌を歌い、更にダメ押しのごとくハンドクラッピングが入り、最後はフルキャストで感動のフィナーレを迎えます。

この演劇的な展開はブラボーとしか言いようがありません。

私は歌詞を読んでいませんが、音の力だけで人の一生を感じさせるすばらしい曲です。

しかし残念なことにこのアルバムは現在廃盤。

他にも名曲「Bye Bye Brasile」が入っているというのに。

こんな曲がリリースされず眠っているのは、とてももったいないと思います。

 

2位「Vai Passar」(アルバム:Chico Buarque(1984))

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■曲名:Vai Passar
■曲名邦題:ヴァイ・パッサー
■アルバム名:Chico Buarque(1984年)
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ
■動画リンク:「Vai Passar」

この人の代表作であり、最高傑作と言われることの多いアルバムです。

彼は1966年にデビューしていますから、この時点で18年が経過していることになります。

しかもかなり多作な人で、1年にアルバムを2-3枚リリースすることも珍しくありません。

ウィキペディアでアルバム枚数を数えてみたら、DVDを除いて50枚もありました。

日本ではリリースされていなかったり、廃盤になっているものも多く、入手できる作品が限られています。

このアルバムはさすがに代表作なので、入手できますが。

彼は本国の人気ぶりに比べて、日本ではそれほど知られていません。

こういう現状がが嘆かわしいと思い、今回微力ながら記事を書くことにしました。

 

3位「Samba de Orly」(アルバム:Construcao)

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■曲名:Samba de Orly
■曲名邦題:オルリーのサンバ
■アルバム名:Construcao(1971年)
■アルバム名邦題:コンストゥルサォン
■動画リンク:「Samba de Orly」

この作品は以前から人気作でしたが、近年再評価が著しいように思います。

ブラジル版ローリングストーン誌の「ブラジル音楽の偉大なアルバム100選」というランキングで、なんと3位を獲得しています。

ちなみに1位はNovos Baianosの「Acabou Chorare」。

確かにそちらもすばらしいアルバムです。

しかしジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)の歴史的傑作「想いあふれて(Chega de Saudade)」を上回る3位とは驚きました。

ただこの曲を含めて、内容的には申し分ありません。

この曲はタニア・マリア(Tania Maria)がカバーしたバージョンの方が有名かもしれません。

オリジナルのこちらも充分すばらしい出来です。

この曲はシコ、トッキーニョ(Toquinho)、ヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinicius de Moraes)の3人の共作。

イタリア亡命中の心境を綴った曲とのことですが、そのせいかサウダージを感じます。

 

4位「Rosa Dos Ventos」(アルバム:Chico Buarque De Hollanda Vol.4)

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■曲名:Rosa Dos Ventos
■アルバム名:Chico Buarque De Hollanda Vol.4(1970年)
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ・ジ・オランダ Vol.4
■動画リンク:「Rosa Dos Ventos」

サンバ以外の曲もご紹介しておきましょう。

この人はジャンルでいえば、MPBに分類されます。

ボサノヴァやサンバの人というより、コンテンポラリーなブラジル音楽のアーティストという位置づけといえるでしょう。

シコは当初からすぐれた職業作曲家と評価され、多くのヒット曲を生み出しました。

1970年にリリースされたこの曲は、普通のポップス寄りの曲です。

大仰でサイケなイントロが謎ですが、29秒から肩の力が抜けた歌を聞かせてくれます。

この曲は構成が変わっています。

普通の曲はAメロ、Bメロ、サビといった構成が多いかもしれません。

しかしこの曲は2:41という短い曲なのに、2:00でようやくサビが始まり、しかも1回だけ。

私はその変な展開やアレンジを含めて、この曲が好きです。

シコのメロディメイカーとしての魅力が、よく表れている曲だと思います。

 

5位「Amor Barato」(アルバム:Almanaque)

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■曲名:Amor Barato
■曲名邦題:安っぽい愛
■アルバム名:Almanaque(1981年)
■動画リンク:「Amor Barato」

ただこの曲は「安っぽい愛」という曲名が気になって、歌詞を読んでみることにしました。

いくつかの自動翻訳を通して、ようやく意味が取れました。

この曲で彼は人々に愛を届けたいと歌っています。

愛は最後に花のように価値を持つのだと。

ちなみにシコは特権階級に生まれ、貧しさとは無縁の環境で育った人です。

しかし彼の民衆に寄り添う姿勢は、時にナイーヴとやゆされるほどでした。

先程取り上げた「Construcao」というアルバムのタイトル曲でも、あるレンガ職人の無念の死を取り上げていました。

彼は民衆を抑圧する軍事政権から目をつけられて、1969年イタリアに亡命しています。

しかし翌年1970年には他の亡命アーティストに先んじて、いち早くブラジルに帰国しています。

彼はあえて圧政下のブラジルに戻り、人々と一緒に抗議しようとしました。

彼は上流階級出身でインテリでしたが、常に民衆の側に立ち、共に戦う姿勢を示してくれた人でした。

 

6位「De Volta Ao Samba」(アルバム:Paratodos)

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■曲名:De Volta Ao Samba
■曲名邦題:デ・ホルタ・アオ・サンバ
■アルバム名:Paratodos(1993年)
■アルバム名邦題:パラトードス
■動画リンク:「De Volta Ao Samba」

この曲は今回ご紹介した中で最も新しく、1993年に発表されています。

このアルバムは地味な曲が多いものの、より一層成熟しているように感じます。

ガル・コスタ(Gal Costa)とのデュエット「Biscate」など、他にもすばらしい曲が多く、このアルバムが最高傑作と言う人がいてもおかしくありません。

ちなみにシコは、2017年にも「Caravanas」という充実作を残しています。

この人の全盛期や最高傑作については、人によってかなり異なると思います。

今回私は改めて聞き返しましたが、多作な割りには好不調の波があまりなく、どの時期にも傑作といえる作品がありました。

もしかしたらずっと全盛期のままなのかもしれません。

この記事では80年代までの曲が多くなりましたが、音楽の味わい深さを考えると、それ以降の方が上ではないかと思ったりもします。

この曲もその1曲。

私はそれほど歌の上手い人だとは思いません。

声質も、ビロードのような艶と色気を持つカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)と比べるべくもありません。

しかしこのあっさりした歌声は、あきずに聞いていたくなる魅力があります。

服でいえば着心地の良い普段着みたいな歌かもしれません。

 

7位「Acorda Amor」(アルバム:Sinal Fechado)

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■曲名:Acorda Amor
■曲名邦題:アコルダ・アモール
■アルバム名:Sinal Fechado(1974年)
■アルバム名邦題:シナル・フェシャード
■動画リンク:「Acorda Amor」

このアルバムでは、珍しく他の人の曲を歌っています。

取り上げられたのはどれも有名曲ばかりですが、この曲など知らない名前もありました。

この曲を書いたのは、Leonel PaivaとJulinho Da Adelaideという人物とのこと。

実はJulinho Da Adelaideはシコの変名で、軍事政権の検閲を逃れるために、他人を装ったのだそうです。

彼は外見的には穏やかに見えますし、音的にもそれほど過激ではありません。

しかしその内実はかなり気骨に満ちています。

シコは反政府的な活動によって、1968年に逮捕され、1969年にイタリアに亡命する。その後1970年にブラジルに戻り、彼の知名度を生かして、独裁政権へのプロテスト・ソングを制作しはじめる。

シコ・ブアルキ ウィキペディア

この曲も検閲をすり抜けるため多少ぼかしていますが、軍事政権を批判した内容だそうです。

とてもかわいらしい曲ですが、その衣の下に反骨精神を忍ばせていたようですね。

 

8位「Ate Segunda-Feira」(アルバム:Chico Buarque De Hollanda Vol.3)

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■曲名:Ate Segunda-Feira
■曲名邦題:また月曜に
■アルバム名:Chico Buarque De Hollanda Vol.3(1968年)
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ・ジ・オランダ Vol.3
■動画リンク:「Ate Segunda-Feira」

彼はデビュー時から注目を浴びる存在でした。

彼は1966年に「Chico Buarque de Hollanda Vol.1」でデビューし、「ア・バンダ(A Banda)」などのヒット曲を送り出しました。

その後オランダを冠したアルバムは人気シリーズとなり、第四弾までリリースされています。

この作品はオランダ・シリーズの3枚目で、初期の代表作といえるかもしれません。

このアルバムでは、ジョイス(Joyce)など多くの人にカバーされた「白と黒のポートレイト(Retrato Em Branco E Preto)」が有名です。

本来はその曲を選ぶべきだと思います。

しかし私にとってその曲はジョアン・ジルベルトの印象が強すぎるので、ここでは選外とさせていただきました。

一応リンクだけ貼っておきましょう。

Chico Buarque – Retrato Em Branco e Preto

代わりに選んだ「Ate Segunda-Feira」は有名曲ではありませんが、個人的に偏愛している曲です。

隠れ名曲枠として取り上げてみました。

 

9位「Apesar De Voce」(アルバム:Chico Buarque(1978))

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■曲名:Apesar De Voce
■曲名邦題:アペザール・ヂ・ヴォセ
■アルバム名:Chico Buarque(1978年)
■アルバム名邦題:シコ・ブアルキ
■動画リンク:「Apesar De Voce」

この人はよくカエターノ・ヴェローゾと比較されます。

確かに作風も似ています。

しかしあえて違う面に着目すると、シコはカエターノほど音楽的に尖っていません。

そのあたりは良くも悪くも、日本のシコの評価に影響を及ぼしているかもしれません。

先鋭的な部分があった方が、日本の音楽ジャーナリズムの一部にはウケがいいようですから。

シコはとても良い曲を書きますが、反骨心を織り込んだ歌詞はともかく、音楽的にはそれほど過激ではありません。

あと私が考える最も大きな両者の違いは、サンバに対する取り組みです。

カエターノもサンバの曲がありますが、シコの方がサンバに対してこだわりが強いように感じます。

そこが最もカエターノと差別化できるポイントかもしれません。

彼は伝統的なサンバの曲に、自由への願いを込めました。

若干ベールをかぶせたプロテスト・シングル “Apesar de Você” (In spite of you)は、どういうわけか軍の検閲の目をすり抜け、民主主義運動のアンセムとなった。10万枚が売れた後、結局弾圧の対象となり、すべて店頭から姿を消した。

シコ・ブアルキ ウィキペディア

この曲には「明日はきっと別の日になる」という一節があって、自由を求める民衆の願いを代弁しています。

 

10位「O Que Sera (A Flor Da Terra)」(アルバム:Meus Caros Amigos)

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■曲名:O Que Sera (A Flor Da Terra)
■曲名邦題:オー・ケ・セラ
■アルバム名:Meus Caros Amigos(1976年)
■動画リンク:「O Que Sera (A Flor Da Terra)」

まずジャケットにご注目ください。

スーパーマリオをイケメンにした感じのシコが映っています。

まるで何かの映画のワンシーンみたいですが、上と下に映画のフィルムのような模様がありますね。

このアルバムは映画や舞台、テレビドラマのために書かれた曲が収録されています。

この曲も映画「未亡人ドナ・フロール理想的再婚生活」のテーマ曲とのこと。

ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)も参加しているようですね。

実はシコの創作活動は多岐に渡っており、音楽でさえその一部でしかありません。

彼は舞台の脚本や小説などの文筆活動もしています。

特に「ブダペスト(Budapeste)」という小説は、ジャブチ文学賞とパッソ・フンド文学賞という、ブラジルでも最高権威の文学賞をダブル受賞しています。

甘いルックスに気骨を秘めた人、民衆への共感を行動で示し、知性と音楽の才能どちらも高い次元で備えている。

あの偉大なカエターノ・ヴェローゾと並び立つ存在なのも分かろうというものです。

 

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