今回はナラ・レオンのランキングを作成しました。
この人の魅力を説明するのは、少々難しいように感じます。
他人が書いた曲を歌っているせいか、それほど作家性は感じられません。
突出して歌がうまいわけでもなく、強い個性で圧倒するタイプでもありません。
しかしそれにもかかわらず、彼女はすばらしいアーティストです。
ぜひ曲を聞いて実際に体感してみてください。
- 1 1位「Colar de Estrelas」(アルバム:Meu Primseiro Amor)
- 2 2位「Odara」(アルバム:Meus Amigos Sao Um Barato)
- 3 3位「Pranto De Poeta」(アルバム:Nara Pede Passagem)
- 4 4位「Marcha Dos Gafanhotos」(アルバム:Meu Primeiro Amor)
- 5 5位「Rosa Da Gente」(アルバム:Coisas do Mundo)
- 6 6位「Vento de Maio」(アルバム:Vento de Maio)
- 7 7位「Onde E Que Voce Estava」(アルバム:Com Acucar Com Afeto)
- 8 8位「Detras Del Horizonte」(アルバム:Nara Canta en Castellano)
- 9 9位「Garota de Ipanema」(アルバム:Dez Anos Depois)
- 10 10位「Coisas Que Lembram Voce (These Foolish Things)」(アルバム:Meus Sonhos Dourados)
- 11 関連記事
- 12 記事一覧
- 13 他ブログ・SNS等
1位「Colar de Estrelas」(アルバム:Meu Primseiro Amor)
■曲名:Colar de Estrelas
■曲名邦題:星の首飾り
■アルバム名:Meu Primeiro Amor
■アルバム名邦題:私の初恋
■動画リンク:「Colar de Estrelas」
私はこのアルバムが、彼女の最高傑作だと思います。
一般的には「Dez Anos Depois」や「Meus Amigos Sao Um Barato」あたりが代表作と言われています。
つまりこのアルバムの前作と次作の評価が高いのですね。
しかし私はこのアルバムを推します。
私がこのアルバムを推薦する理由は、単純にすばらしい曲が多いからです。
今回このアルバムから唯一2曲選びましたが、他にもまだまだご紹介したい曲があります。
もう1曲「四葉のクローバー(Trevo de Quatro Folhas)」という曲もご紹介しておきましょう。
Nara Leao – Trevo de Quatro Folhas
上の曲では、彼女の幼い子供もレコーディングに参加しています。
さて1位に推した「Colar de Estrelas」は、彼女のサンバ好きがよく分かりますね。
どちらの曲も多幸感があります。
2位「Odara」(アルバム:Meus Amigos Sao Um Barato)
■曲名:Odara
■曲名邦題:オダーラ
■アルバム名:Meus Amigos Sao Um Barato
■アルバム名邦題:ナラと素晴らしき仲間たち
■動画リンク:「Odara」
このアルバムは「ナラと素晴らしき仲間たち」というタイトル通り、1曲毎に別々の人と共演しています。
共演相手は大変豪華です。
・アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)
・カルロス・リラ(Carlos Lyra)
・ホベルト・メネスカル(Roberto Menescal)
のようなボサノヴァ系の人だけでなく、
・エドゥ・ロボ(Edu Lobo)
・シコ・ブアルキ(Chico Buarque)
・ジョアン・ドナート(Joao Donato)
などMPBの大物の名前がずらりと並んでいます。
そしてこのアルバムで有名なのが、ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)との以下の曲。
そして真打ちはランクインした「Odara」で、こちらはカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)と共演しています。
カエターノとナラが息の合ったデュエットを聞かせてくれています。
3位「Pranto De Poeta」(アルバム:Nara Pede Passagem)
■曲名:Pranto De Poeta
■曲名邦題:詩人の涙
■アルバム名:Nara Pede Passagem
■アルバム名邦題:ナラがサンバを歌う(ペーヂ・パッサージェン)
■動画リンク:「Pranto De Poeta」
私は数多いブラジル音楽の中で、サンバが一番好きです。
ボサノヴァのイメージが強いナラのランキングでも、サンバの曲を1位に推しました。
そんなサンバ好きの私は、ナラのサンバ曲集といえるこのアルバムが大好物です。
この曲で彼女は、以下のような古き良きサンビスタの曲を取り上げています。
・ネルソン・カヴァキーニョ(Nelson Cavaquinho)
・エルトン・メデイロス(Elton Medeiros)
・パウリーニョ・ダ・ヴィオラ(Paulinho Da Viola)
サンバ好きの私からしたら、目がハートになる名前ばかりです。
この曲は、ブラジル音楽の至宝カルトーラ(Cartola)のバージョンなどで知られています。
この伝統ある曲を、ナラは堂々と歌いこなしていますね。
こういう曲がお好きな方は、以下の記事も読んでみてください。
シコ・ブアルキ(Chico Buarque)の名曲名盤10選
4位「Marcha Dos Gafanhotos」(アルバム:Meu Primeiro Amor)
■曲名:Marcha Dos Gafanhotos
■曲名邦題:マルシャ・ドス・ガファニョットス(イナゴのマルシャ)
■アルバム名:Meu Primeiro Amor
■アルバム名邦題:私の初恋
■動画リンク:「Marcha Dos Gafanhotos」
初期の彼女の曲にはどことなく陰りがあって、歌い方も少しカタい感じがします。
1964年のデビュー・アルバム「ナラ(Nara)」から、以下の曲をご紹介しておきましょう。
すばらしいですが、どことなく生硬な感じがしないでしょうか。
一般的なボサノヴァのイメージは、軽やかでおしゃれな音楽といったところでしょうか。
しかし初期のナラのボサノヴァは、冬っぽいと言われたり、内省的などと言われます。
そういう曲を集めた「クラウディ・サイド・オブ・ナラ・レオン~ミュージック・フォー・サンデイ・ラヴァーズ(Cloudy Side Of Nara Leao)」という編集盤もあるぐらいです。
しかしこのアルバムから彼女の音楽は、明るく穏やかな表情を見せ始めました。
彼女の転換点になったアルバムだと思います。
5位「Rosa Da Gente」(アルバム:Coisas do Mundo)
■曲名:Rosa Da Gente
■曲名邦題:ホーザ・ダ・ジェンチ
■アルバム名:Coisas do Mundo
■アルバム名邦題:コイザス・ド・ムンド
■動画リンク:「Rosa Da Gente」
彼女はデビューしてしばらくすると、社会的なメッセージを発信するようになりました。
1967年に社会派映画監督のカカ・ヂエギスと結婚すると、翌年1968年にはトロピカリア運動に参加しています。
政治的なメッセージを発信するにつれて、彼女に対する軍事政権の締め付けが厳しくなりました。
その結果彼女は、パリへの亡命を余儀なくされました。
このアルバムは亡命直前に録音されたアルバムです。
そういう背景を知った上でこのアルバム・ジャケットを見ると、意味深な表情に見えてきますね。
この曲はエドゥ・ロボ(Edu Lobo)とデュエットした曲です。
全編に渡って鳴り響く美しいピアノの響きが、この曲を更なる高みに押し上げています。
この曲はボーナス・トラックですので、これからCDを買う予定の方は、事前にご確認ください。
6位「Vento de Maio」(アルバム:Vento de Maio)
■曲名:Vento de Maio
■曲名邦題:五月の風
■アルバム名:Vento de Maio
■アルバム名邦題:五月の風
■動画リンク:「Vento de Maio」
1967年に発表された曲です。
このアルバムと曲の邦題は「五月の風」です。
直訳すると「風が吹くかもしれない」という意味で、こちらの方が良いタイトルかもしれません。
この曲にはオーケストラのアレンジが施さています。
ボサノヴァの曲ではありませんが、彼女の歌がそれっぽいせいか、ボッサ風味に仕上がっていますね。
この曲の聞きどころは、55秒からです。
歌のテンポが早くなった箇所は、まさしく「風が吹いた」といったところでしょうか。
このアルバムは彼女の作品の中でも、あまり目立たない方かもしれません。
しかしファンから愛されている地味盤で、他にも以下のような名曲が収録されています。
Nara Leao – Quem Te Viu, Quem Te Ve
どちらを取り上げるか迷った曲です。
7位「Onde E Que Voce Estava」(アルバム:Com Acucar Com Afeto)
■曲名:Onde E Que Voce Estava
■曲名邦題:君は一体どこにいたの
■アルバム名:Com Acucar Com Afeto
■アルバム名邦題:お砂糖と愛情で
■動画リンク:「Onde E Que Voce Estava」
彼女の足跡をたどると、実に様々な種類の音楽をやっていることに気が付きます。
それは子育てに手がかからなくなった1980年代以降に顕著かもしれません。
たとえば1982年からは、以下のような変遷をたどっています。
1982年: Nasci Para Bailar →MPB
1983年: Meu Samba Encabulado →サンバ
1984年: Abraços E Beijinhos e Carinhos Sem Ter Fim… Nara →ボサノヴァ
ただどれも充実作のせいか、迷走している感じはしません。
上の3作の中で、私はモダンなサンバ盤「Meu Samba Encabulado」がイチオシです。
そのアルバムから1曲ご紹介しておきましょう。
さて一方このアルバムは、彼女の盟友シコ・ブアルキの作品集です。
オクタヴィオ・ブルニエール(Octavio Burnier)によるアレンジがさわやかです。
8位「Detras Del Horizonte」(アルバム:Nara Canta en Castellano)
■曲名:Detras Del Horizonte
■アルバム名:Nara Canta en Castellano
■動画リンク:「Detras Del Horizonte」
私は1970年代が、彼女の全盛期だと思っています。
その期間の彼女はボサノヴァのイメージから離れた、コンテンポラリーな音楽をやっていました。
このアルバムは1979年にリリースされています。
アルバム・ジャケットからうかがえるように、ライトでメロウな曲が収録されています。
このアルバムはホベルト・カルロス(Roberto Carlos)とエラズモ・カルロス(Erasmo Carlos)の作品集。
アントニオ・アドルフォ(Antonio Adolfo)のフェンダーローズが活躍しています。
同じアルバムから、もう1曲ご紹介しておきましょう。
カフェ・ミュージックとしても、最適かもしれません。
リラックスしたい時に聞きたいアルバムです。
9位「Garota de Ipanema」(アルバム:Dez Anos Depois)
■曲名:Garota de Ipanema
■曲名邦題:イパネマの娘
■アルバム名:Dez Anos Depois
■アルバム名邦題:美しきボサノヴァのミューズ
■動画リンク:「Garota de Ipanema」
当時ナラはパリに政治亡命していました。
このアルバム名の「Dez Anos Depois」は、直訳すると「10年後」という意味です。
リリースされたのは1971年のこと。
では10年前の1961年には、何があったのでしょうか。
ボサノヴァという音楽はナラ・レオンの部屋、通称「ナラのサロン」に、ジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)などが集まって生まれたと言われています。
ボサノヴァは、ナラの部屋で生まれた音楽なのですね。
それが1950年代の終わり頃。
しかしナラはその後社会派に転じて、ボサノヴァ嫌いをアピールし始めました。
おそらく1961年とは、ナラがボサノヴァを好きだった最後の年のことだと思われます。
このアルバムのタイトルは、ボサノヴァを好きだった昔の気持ちに戻ったという意味かもしれません。
10位「Coisas Que Lembram Voce (These Foolish Things)」(アルバム:Meus Sonhos Dourados)
■曲名:Coisas Que Lembram Voce (These Foolish Things)
■曲名邦題:思い出のたね
■アルバム名:Meus Sonhos Dourados
■アルバム名邦題:あこがれ
■動画リンク:「Coisas Que Lembram Voce (These Foolish Things)」
彼女はデビュー時の1964年には既にボサノヴァ嫌いで、その後もほとんどボサノヴァを歌っていません。
1971年の亡命中に、トゥッカ(Tuca)という女性ギタリストと出会い、ボサノヴァのアルバムを発表したぐらいです。
しかしその後彼女は、またボサノヴァから離れました。
そんな彼女が三度ボサノヴァに取り組んだのが「Abraços E Beijinhos e Carinhos Sem Ter Fim… Nara(わたしのボサノヴァ)」というアルバムです。
そのアルバムは大変好評でしたが、その時彼女は身体の異変を感じていました。
彼女は1989年に脳腫瘍で亡くなりました。
享年47歳という早すぎる死です。
彼女は一時ボサノヴァのイメージを払拭しようと「私はボサノヴァの女神なんかじゃない」と発言したこともあります。
しかし最後はボサノヴァの歌手としてキャリアを終えたのですね。
この曲は死の2年前の曲です。
このアルバムでは有名なスタンダード・ナンバーが数多く取り上げられ、商業ボサノヴァと言われかねません。
しかしこれがなかなか悪くありません。
どんな音楽をやっていても、いつも彼女の中にはボサノヴァ的な部分があったように思います。
彼女はボサノヴァから選ばれた人なのかもしれません。
それゆえこんな企画色が強い、いかにも売れ線なアルバムにも、本物のボサノヴァを感じさせてくれます。
やはり彼女は「ボサノヴァのミューズ」だったようです。
関連記事
■マルコス・ヴァーリ(Marcos Valle)の名曲名盤12選
■アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)の名曲名盤10選
■バーデン・パウエル(Baden Powell)の名曲名盤10選
記事一覧
他ブログ・SNS等
■このブログの「トップページ」に戻る
※お気に入りに登録をお願いいたします!
■おとましぐらの音楽ブログ(サブブログ)
※オピニオン記事、企画色の強い記事を連載しています
■note(ジャンル別おすすめ曲一覧)
※選りすぐりの名曲を1曲単位でご紹介しています
■おとましぐらXアカウント
※フォローをお願いいたします!