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イヴァン・リンス(Ivan Lins)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はイヴァン・リンスのランキングを作成しました。

この人は天才だと思います。

彼には非凡なメロディ・センスがありますが、それだけではありません。

コード進行や曲の展開など自由奔放でありながら、しっかりポップスとしても機能しています。

聞きやすいのですが、ある意味ラディカルな音楽です。

まずは最初の2曲をお聞きください。

 

1位「Dinorah, Dinorah」(アルバム:Somos Todos Iguais Nesta Noite)

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■曲名:Dinorah, Dinorah
■曲名邦題:ジノラー・ジノラー
■アルバム名:Somos Todos Iguais Nesta Noite
■アルバム名邦題:今宵楽しく
■動画リンク:「Dinorah, Dinorah」

メロディセンスが天才的な人です。

その筆頭はこの曲。

すぐれたソングライターには、2種類のタイプがあるように思います。

1つは、普通の感覚の延長ですぐれている人。

普通の感覚で、ただひたすら美しかったりキャッチーなメロディを書ける人。

もう1つのタイプは、どこからそんなメロディが湧き出てくるのか分からない奇才タイプ。

この人は後者のタイプです。

まずこの曲の歌メロをお聞きください。

摩訶不思議としか言いようがないメロディではないでしょうか。

歌だけではなく、コード進行も少し変かもしれません。

メロディとコード進行が、どこに着地するのか分かりません。

普通のコード進行は、コードを知らない人でも感覚的によくある展開だなと感じるものです。

コード進行を変にするのは簡単ですが、聞いていて落ち着かない気持ちにさせることが多いように思います。

しかしこの人は天才ですから、変なまま音楽の力でリスナーをねじ伏せてくる感じがしますね。

プログレッシヴ・ブラジリアン・ポップとでも表現すべきかもしれません。

 

2位「Abre Alas」(アルバム:Modo Livre)

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■曲名:Abre Alas
■曲名邦題:アブリ・アラス
■アルバム名:Modo Livre
■アルバム名邦題:モード・リーヴリ
■動画リンク:「Abre Alas」

彼はデビュー時から、短期間で大きな変貌を遂げました。

まるで脱皮を繰り返す生物のごとく、アルバム毎に変化し、その都度成熟度を上げてきました。

その最初の到達地点といえそうなのが、このアルバムです。

このアルバムで彼の音楽性が確立したように思います。

彼は短期間に成長しましたが、実は遅咲きでした。

この時既に29歳でしたから。

「Abre Alas」とは「フリーモード」という意味だそうです。

当時ブラジルは軍事政権でした。

当時アーティストに対しても制約が多かったようですから、その風潮を揶揄したと言われています。

このアルバムは「Somos Todos Iguais Nesta Noite」と並んで最高傑作の評価を分け合っていますが、それはこの曲が入っていることが大きいように思います。

さてこの曲も不思議なメロディセンスが味わえる曲です。

イントロの段階で名曲の香りが漂いますが、その後のコーラスも最高ですね。

 

3位「Comecar De Novo」(アルバム:A Noite)

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■曲名:Comecar De Novo
■曲名邦題:コメサール・ヂ・ノーヴォ(夜明け)
■アルバム名:A Noite
■アルバム名邦題:ある夜
■動画リンク:「Comecar De Novo」

彼の全盛期は、EMI時代だと言われています。

具体的には、以下の4枚です。

「今宵楽しく(Somos Todos Iguais Nesta Noite)」
「ノス・ヂアス・ヂ・オージェ(Nos Dias de Hoje)」
「ある夜(A Noite)」
「ノーヴォ・テンポ(Novo Tempo)」

今回「Nos Dias de Hoje」からは選曲していませんが、これも傑作といってもいい出来です。

この曲は当時絶好調の中にあって、一際美しい曲だと思います。

ただ他にも良い曲が多く、苦渋の決断でこの曲だけにしました。

このアルバムからもう1曲「アンチス・キ・セージャ・タルヂ(今を生きよう)(Antes Que Seja Tarde)」をご紹介しておきましょう。

Ivan Lins – Antes Que Seja Tarde

EMI時代は、彼にとって飛躍のきっかけになりました。

EMIは大手で配給力がありましたので、彼の音楽は世界中に届けられることになりました。

今の彼の名声は、この時期の評価が影響しています。

その後彼は1981年クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)の「愛のコリーダ(The Dude)」に「ベラス(Velas)」という曲を提供し、更に名声を高めました。

またジョージ・ベンソン(George Benson)の名作「ギヴ・ミー・ザ・ナイト(Give Me The Night)」でも「Dinorah, Dinorah」がカバーされています。

イヴァンは当時の音楽シーンにおいて、キーマンみたいな存在だったかもしれません。

 

4位「Somos Todos Iguais Nesta Noite」(アルバム:Somos Todos Iguais Nesta Noite)

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■曲名:Somos Todos Iguais Nesta Noite
■曲名邦題:今宵楽しく
■アルバム名:Somos Todos Iguais Nesta Noite
■アルバム名邦題:今宵楽しく
■動画リンク:「Somos Todos Iguais Nesta Noite」

彼の音楽の本質は、美しさと楽しさだと思います。

特にこのアルバムの音楽はコンセプトゆえか、聞き終わった後に楽しい気分になります。

バラードも収録されていますが、不思議と悲しい印象は残しません。

彼の音楽は、怒りや悲しみなどの負の感情を感じさせない曲ばかりのように感じます。

このアルバム名を直訳すると「今夜はみんな平等」らしいのですが、邦題の「今宵楽しく」は、シンプルで良いネーミングだと思います。

彼は政治やパーソナルな表現に傾いた時期もありますが、音楽面ではいつもポジティブでした。

まず土台にすばらしい音楽があって、そこから自然に感動が湧き上がります。

この曲のサビの部分などは、音楽仲間と飲んで一緒に歌うと楽しいかもしれませんね。

 

5位「Sertaneja」(アルバム:Novo Tempo)

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■曲名:Sertaneja
■曲名邦題:セルタネージャ
■アルバム名:Novo Tempo
■アルバム名邦題:ノーヴォ・テンポ
■動画リンク:「Sertaneja」

とにかくイントロがすばらしい曲です。

全然悲しいメロディではないのに、音楽のすばらしさゆえに涙腺を刺激するというお得意のパターンです。

この秀逸なアレンジは、ジルソン・ペランゼッタ(Gilson Peranzzetta)の手によるものです。

無駄に胸毛と腹毛を出しているジャケットのマイナスを、打ち消して余りあるすばらしさではないでしょうか。

涙腺刺激度に関しては、このアルバムが一番かもしれません。

そういう曲を、もう1曲ご紹介しておきましょう。

Ivan Lins – Setembro

このアルバム・タイトル「Novo Tempo」は「新しい時代」という意味だそうです。

この時期ブラジルは、軍事政権から民主主義に移行する途中で、希望の光が見えていました。

曲名の「Sertaneja」は「国」という意味です。

軍事政権では歌詞の検閲も行われていたので、まだその喜びを大っぴらに表現できませんでした。

イヴァンの作詞パートナー、ヴィトール・マルティンス(Vitor Martins)は、この曲の歌詞でひかえめに喜びを表現しています。

 

6位「Daquilo Que Eu Sei」(アルバム:Daquilo Que Eu Sei)

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■曲名:Daquilo Que Eu Sei
■アルバム名:Daquilo Que Eu Sei
■動画リンク:「Daquilo Que Eu Sei」

彼はEMIの後Philipsに移籍しました。

ここからは聞いていない方も多いかもしれません。

しかしこのアルバムを聞く限り、好調を維持しています。

相性抜群のジルソン・ペランゼッタとの関係も健在ですし、何よりも曲の出来が良いと思います。

特にこのアルバム・タイトル曲はすばらしく、アコーデイオン、スキャット、彼のボーカルの三位一体に気分が高揚します。

アーティストの評価は、意外とレーベルによって左右されるものかもしれません。

特に大手の配給力は大変なもので、売れる売れないに関係なく、市場に供給されるCDの量が一気に増えます。

届けられる人が多くなると、評価も高まりやすくなります。

残念ながらこのアルバムから彼の注目度は下がりますが、それは単純に聞かれる機会が少なくなったことが影響しているかもしれません。

中古でもほとんど見かけませんが、見つけたら買っておいて損はありません。

というより再発してほしいです。

奇跡的に担当者がこのブログを見ていたら、ぜひともお願いたします。

 

7位「Corpos」(アルバム:Chama Acesa)

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■曲名:Corpos
■曲名邦題:コルポス
■アルバム名:Chama Acesa
■アルバム名邦題:シャーマ・アセーザ
■動画リンク:「Corpos」

EM時代にブレイクする直前のアルバムです。

当時彼はRCA Victorに在籍していていましたが、前作「Modo Livre」で作風を確立したと思ったら、この作品では少し路線を変えてきました。

地味ですが、とても美しいアルバムです。

前作のようなポップな路線を期待すると肩透かしを食らいますが、メロウな音楽をお好きな方にはおすすめです。

たとえばこの曲などはいかがでしょうか。

イントロから彼のスキャットと、ペランゼッタの転がるようなエレピがたまりません。

ブラジルのアーティストは、ほとんど全員スキャットが上手いのですが、イヴァンもなかなかです。

ただ彼のスキャットには、それほどキレはありません。

その分叙情性と味わい深いところが魅力です。

スキャット以外でもハイトーンを活かしたボーカルがすばらしく、美しい歌声がワルツのリズムに溶け込んでいっています。

 

8位「Me Deixa em Paz」(アルバム:Deixa O Trem Seguir)

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■曲名:Me Deixa em Paz
■曲名邦題:ミ・デイシャ・エン・パイス
■アルバム名:Deixa O Trem Seguir
■動画リンク:「Me Deixa em Paz」

初期の彼は音楽性が異なります。

後の時期ほどポップでもありませんし、メロディもまだ際立っていません。

特に大きく異なるのは、ボーカル・スタイルです。

今の彼とは違って、少しダーティな声でシャウトするのは、初期ならではの特徴です。

その例として、ファーストアルバムから1曲ご紹介しておきましょう。

エリス・レジーナ(Elis Regina)に提供した有名曲「マデレーナ(Madalena)」のセルフカバーです。

Ivan Lins – Madalena

この作品はセカンド・アルバムです。

このアルバムでもまだ前作の名残を残すボーカル・スタイルの曲がありますが、この曲は比較的後年に近い歌い方です。

EMI時代に比べると、まだ少しボーカルに野性味がありますが。

この後彼は「僕は誰?(Quem Sou Eu)」でこの曲の路線を踏襲し、その後「Modo Livre」で個性を確立しています。

この曲は彼が自分のスタイルを確立する上で、大きなターニングポイントになった曲だと思います。

 

9位「Dona Palmeira」(アルバム:Somos Todos Iguais Nesta Noite)

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■曲名:Dona Palmeira
■曲名邦題:ドナ・パルメイラ
■アルバム名:Somos Todos Iguais Nesta Noite
■アルバム名邦題:今宵楽しく
■動画リンク:「Dona Palmeira」

このブログで取り上げる人には、手が付けられないぐらい絶好調な作品があるものです。

この人の場合は、このアルバムです。

彼は後に様々なゲストと共演して過去の曲を再演した「ジュントス(Juntos)」というアルバムをリリースしました。

そのアルバムも良いのですが、私はこのアルバムの方を推します。

ベスト盤以上の品質ですから。

今回このアルバムから3曲を選びましたが、他にもご紹介したい曲があります。

もう1曲だけご紹介しておきましょう。

Ivan Lins – Quadras De Rodas Medley

MPBのアーティストは、ボサノヴァから出てきた人が少なくありません。

しかし彼は必ずしもそうではありません。

あまりに独創的すぎて、イヴァン・リンス・ミュージックとしか言えないところがあります。

ありとあらゆるブラジル音楽の要素を詰め込んでいて、自由奔放すぎるあまり、時には過激ともいえるほど。

しかしそれら雑多な要素は、最終的にポップスのフォーマットにまとめ上げられています。

全盛期のプリンスなど、数少ない天才だけが可能な音楽だと思います。

 

10位「Pano De Fundo」(アルバム:Daquilo Que Eu Sei)

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■曲名:Pano De Fundo
■アルバム名:Daquilo Que Eu Sei
■動画リンク:「Pano De Fundo」

この曲も再発が待たれる「Daquilo Que Eu Sei」からの曲です。

温かみのあるピアノが心地よい曲ですね。

このアルバムは、その後の彼の出発点になったかもしれません。

その後彼は比較的クセのないフュージョンやAORの方向にシフトしていきました。

また曲の構成も以前ほど複雑ではなく、メロディやコード進行もより自然な形になってきています。

後に彼は「ラブ・ダンス(Love Dance)」が大ヒットしますが、このアルバムにはその原曲にあたる「Lembranca」という曲が入っています。

そちらのリンクも貼っておきましょう。

Ivan Lins – Lembrança

今回はこのアルバムまでを対象期間としましたが、その後も充実した活動をしています。

2000年以降もラテン・グラミー賞の常連ですし。

その起点となったこのアルバムは、廃盤のままではもったいないと思います。

 

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