今回はヨ・ラ・テンゴのランキングを作成しました。
このバンドの曲は、順位を付けることになじまない感じがします。
そこで便宜上順位を割り振りましたが、曲の良し悪しではなく、この順序で聞いてほしいと考えて決めました。
前半は聞きやすい曲を中心にしました。
レコードのA面とB面を意識して、それぞれの最後に長尺曲を選びました。
特に最後の「Blue Line Swinger」は、大傑作だと思います。
- 1 1位「Season of the Shark」(アルバム:Summer Sun)
- 2 2位「Beanbag Chair」(アルバム:I Am Not Afraid of You and I Will Beat Your Ass)
- 3 3位「Stockholm Syndrome」(アルバム:I Can Hear the Heart Beating as One)
- 4 4位「All Your Secrets」(アルバム:Popular Songs)
- 5 5位「I Heard You Looking」(アルバム:Painful)
- 6 6位「Our Way to Fall」(アルバム:And Then Nothing Turned Itself Inside-Out)
- 7 7位「Ohm」(アルバム:Fade)
- 8 8位「Sugarcube」(アルバム:I Can Hear the Heart Beating as One)
- 9 9位「Tom Courtenay (acoustic version)」(アルバム:Prisoners of Love: A Smattering of Scintillating Senescent Songs: 1985–2003)
- 10 10位「Blue Line Swinger」(アルバム:Electr-O-Pura)
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1位「Season of the Shark」(アルバム:Summer Sun)
■曲名:Season of the Shark
■曲名邦題:シーズン・オブ・ザ・シャーク
■アルバム名:Summer Sun
■アルバム名邦題:サマー・サン
■動画リンク:「Season of the Shark」
彼らはこのアルバムからポップ路線に舵を切りました。
前作「And Then Nothing Turned Itself Inside-Out」は夜、しかも深夜の空気感を持った作品でした。
しかし一転して次作にあたるこのアルバムは「Summer Sun」、つまり「夏の太陽」というアルバム名通り、明るい曲が多いように思います。
特にこの曲などは、ギターポップと言えそうではないでしょうか。
イントロからしてキラキラした光の粒子を感じますね。
曲名の「Season of the Shark」は「鮫の季節」という意味です。
変なタイトルだと思い、歌詞を読んでみたところ、こんな内容でした。
時には誰かの助けが必要だよ
あなたには背中に隠してくれる人が必要
私はあなたにとって、そういう存在でありたい
こういう穏やかでやさしい目線は、アルバム全体から感じられます。
2位「Beanbag Chair」(アルバム:I Am Not Afraid of You and I Will Beat Your Ass)
■曲名:Beanbag Chair
■曲名邦題:ビーンバッグ・チェアー
■アルバム名:I Am Not Afraid of You and I Will Beat Your Ass
■アルバム名邦題:アイ・アム・ノット・アフレイド・オブ・ユー・アンド・アイ・ウィル・ビート・ユア・アス
■動画リンク:「Beanbag Chair」
彼らの曲でも屈指の楽しい曲です。
このアルバムは前作「Summer Sun」のポップ路線を更に進めた感があります。
他にも「ザ・ウィーケスト・パート(The Weakest Part)」 「ブラック・フラワーズ(Black Flowers)」など、良い曲が多数収録されています。
ちなみに「Beanbag Chair」とは、こういう椅子のこと。
いわゆる人をダメにするソファのことみたいです。
歌詞を読んでみたところ、いまひとつ意味がつかめませんでした。
私の英語力と読解力では、安定した関係に安住することに対して、危機感を持っている内容だと読み取れました。
「若い頃はあなたを好きだったけれど、今は、、、」みたいな一節もありますし。
彼らはスリーピースのバンドで、3人中2人が夫婦です。
・アイラ・カプラン (Ira Kaplan) :ボーカル、ギター
・ジョージア・ハブレイ (Georgia Hubley) :ボーカル、ドラム
2人はレコード屋でよく顔を合わせることがきっかけで交際が始まり、その後結婚しています。
確かスワン・ダイヴ(Swan Dive)の2人も、レコード屋で出会ったはず。
日本でこういうことは、あまりないかもしれません。
日本のレコ屋では誰かに話しかけませんし、そもそもレコード屋に女性客が少ないですから。
3位「Stockholm Syndrome」(アルバム:I Can Hear the Heart Beating as One)
■曲名:Stockholm Syndrome
■曲名邦題:ストックホルム・シンドローム
■アルバム名:I Can Hear the Heart Beating as One
■アルバム名邦題:アイ・キャン・ヒア・ザ・ハート・ビーティング・アズ・ワン
■動画リンク:「Stockholm Syndrome」
彼らは3人ともボーカルを担当することができます。
先程その内の2人をご紹介しましたが、1992年に第三の男、ジェイムズ・マクニュー(James McNew)が加入しました。
彼の加入で全盛期といえる時期が始まりました。
彼はベースを担当しています。
それほど多くありませんが、彼が歌っている曲もあります。
その中で私が一番好きなのがこの曲。
アイラ・カプランとは少し違った線の細いボーカルが、哀感をにじませています。
さて曲名の「Stockholm Syndrome」とは「ストックホルム症候群」のこと。
「ストックホルム症候群」とは、立てこもり事件の犯人と被害者が長い時間を過ごす中で、恋愛感情や信頼関係が築くようになることを指した言葉です。
英米のアーティストが好むテーマらしく、ミューズ(Muse)やワン・ダイレクション(One Direction)を筆頭に、時々曲名として取り上げられています。
私は言葉の意味を知る前に、曲名で知っていましたが。
この曲は1:23からのアイラ・カプランのギターがすばらしいです。
4位「All Your Secrets」(アルバム:Popular Songs)
■曲名:All Your Secrets
■曲名邦題:オール・ユア・シークレッツ
■アルバム名:Popular Songs
■アルバム名邦題:ポピュラー・ソングス
■動画リンク:「All Your Secrets」
アルバム名の通り、ポップな楽曲が収録されています。
ただ彼らの場合、ポップになったからといって、売れ線を狙った感じはしません。
そもそもこの曲もポップで聞きやすいですが、ヒットしそうな感じはありませんし(笑)
とびっきり良質でポップでも押しが弱くて売れ線にならない感じは、グラスゴー出身のバンドと少し似ています。
彼らの最高傑作は「I Can Hear the Heart Beating as One」か「And Then Nothing Turned Itself Inside Out」のどちらかと言われることが多いです。
どちらもポップな作品ではありません。
彼らの場合、ギターがゆらゆら漂っている曲や、フィードバック・ノイズの曲の方が高く評価されています。
「Summer Sun」からポップになったのは、単にやりたい音楽を優先した結果だと思われます。
しかしこの曲などは、ドリーム・ポップといった感じがしますね。
この曲は後に「スタッフ・ライク・ザット・ゼア(Stuff Like That There)」で再演していますが、彼らにとってもお気に入りの曲なのでしょう。
私は先にこのアルバムで刷り込まれたせいか、こちらのバージョンの方がいいと思ってしまいますが。
曲の中盤からのオルガンが胸を突く名曲です。
5位「I Heard You Looking」(アルバム:Painful)
■曲名:I Heard You Looking
■曲名邦題:アイ・ハード・ユー・ルッキング
■アルバム名:Painful
■アルバム名邦題:ペインフル
■動画リンク:「I Heard You Looking」
昔の彼らは少しシューゲイザーっぽいところがありました。
今でもまだその名残が少し残っていますが、昔の方がより顕著だったかもしれません。
即効性のあるポップな楽曲の後に、ジワジワくるこの曲を聞くと、一旦耳がリセットされる感じがします。
この触れ幅の大きさこそが、このバンドの魅力かもしれません。
このバンドの演奏面の要は、アイラ・カプランのギターです。
この曲を聞くとアメリカン・オルタナティヴのバンド、たとえばソニック・ユース(Sonic Youth)のサーストン・ムーア(Thurston Moore)などとイメージが重なります。
しかし時に彼のプレイには独特の浮遊感があって、プレイスタイルこそ違えども、ジェリー・ガルシア(Jerry Garcia)っぽい時もありますね。
彼は過小評価されがちですが、2012年スピン誌で「最も偉大なギタリスト」に選ばれています。
私は彼らのライブを見たことがありませんが、この曲はライブで聞いてみたいです。
お酒を飲みながら聞くと、軽く昇天してしまうかもしれません。
またこの曲は、ティーンエイジ・ファンクラブ(Teenage Fanclub)がカバーしたことでも知られています。
Teenage Fanclub – I Heard You Looking
あまりにも似ていてほほえましい好カバーです。
6位「Our Way to Fall」(アルバム:And Then Nothing Turned Itself Inside-Out)
■曲名:Our Way to Fall
■曲名邦題:アワー・ウェイ・トゥ・フォール
■アルバム名:And Then Nothing Turned Itself Inside-Out
■アルバム名邦題:アンド・ゼン・ナッシング・ターンド・イットセルフ・インサイド-アウト
■動画リンク:「Our Way to Fall」
「Painful」と並んで、深夜に聞きたくなるアルバムです。
そういえばジャケットも少し似ていますし。
これまでの彼らはギターが中心でしたが、このアルバムではキーボードが目立っています。
この曲でも浮遊感漂うキーボードが、全体のカラーを印象づけていますね。
昼間に散らかった感情の欠片が、沈殿していく真夜中のような雰囲気を持った曲です。
淡い音像の中、モノローグのようなボーカルが始まります。
このアルバムは、アンビニエントとかポストロックとか音響系などと言われますが、そういうキーワードが気になる方は聞いて損はありません。
何気ない音のすき間が、とてもイマジネイディヴな空間を醸し出しています。
深夜の静謐でモラトリアムな時間を、1人で過ごす密かな楽しみを大切にする人にとって、最高のBGMになるはず。
彼らの曲の中で最も鎮静効果、鎮痛効果が高い曲かもしれません。
7位「Ohm」(アルバム:Fade)
■曲名:Ohm
■曲名邦題:オーム
■アルバム名:Fade
■アルバム名邦題:フェイド
■動画リンク:「Ohm」
この曲を聞くと毎回必ずストーン・ローゼズ(The Stone Roses)のファーストを思い出します。
両者は共に、ザ・バーズ(The Byrds)などフォーク・ロックの影響を受けています。
アイラ・カプランは元々、音楽評論家をやっていました。
かなり多くの音楽を聞いてきたと思いますが、実際彼らの曲には様々な音楽の影響が感じます。
彼らはよくカバーしていますが、カバー・アルバム「フェイクブック(Fakebook)」を聞くと、種明かしされている気がしてとても興味深いです。
「Fakebook」には、ザ・バーズのジーン・クラーク(Gene Clark)のカバーが入っていました。
さてこのアルバムはポップ路線の集大成といった感じがします。
同じアルバムから、もう1曲ご紹介しておきましょう。
こちらはベル・アンド・セバスチャン(Belle and Sebastian)でしょうか。
彼らの音楽を聞く時には、溶け込んでいる様々な影響を読み解いていく楽しさがあります。
8位「Sugarcube」(アルバム:I Can Hear the Heart Beating as One)
■曲名:Sugarcube
■曲名邦題:シュガーキューブ
■アルバム名:I Can Hear the Heart Beating as One
■アルバム名邦題:アイ・キャン・ヒア・ザ・ハート・ビーティング・アズ・ワン
■動画リンク:「Sugarcube」
私はこのアルバムが最高傑作だと思います。
中でもこの曲は、定番で有名曲の1つ。
「メイ・アイ・シング・ウィズ・ミー(May I Sing with Me)」あたりから始まった流れは、ここで頂点を迎えました。
激しさと静寂が同居した刺さる系の頂点を記録した作品だと思います。
彼らは典型的なアルバム・アーティストです。
アルバムが1曲目らしくない曲から始まることが多くて、アルバム後半に良い曲が大量に投入されていたりしますし。
ただこのアルバムは名曲だらけで唯一2曲選びましたが、選びたい曲はまだまだあります。
特に「ウィ・アー・アン・アメリカン・バンド(We’re an American Band)」後半のノイズの嵐が終って、下のラスト・ナンバーが始まる瞬間は、このアルバムの白眉といえます。
Yo La Tengo – My Little Corner of the World
とはいえ曲単位でいえば、やはりこの曲を選ぶのが妥当かもしれません。
この頃の彼らは少しローファイなところも聞きものです。
9位「Tom Courtenay (acoustic version)」(アルバム:Prisoners of Love: A Smattering of Scintillating Senescent Songs: 1985–2003)
■曲名:Tom Courtenay (Acoustic Version)
■曲名邦題:トム・コートニー (アコースティック・バージョン)
■アルバム名:Prisoners of Love: A Smattering of Scintillating Senescent Songs: 1985–2003
■アルバム名邦題:プリズナーズ・オヴ・ラヴ :ザ・ベスト・オヴ・ヨ・ラ・テンゴ 85-03
■動画リンク:「Tom Courtenay (acoustic version)」
3枚組ベスト・アルバムからの選曲です。
彼らはオリジナル・アルバム未収録曲が多いので、こういうベスト盤で補うことをおすすめいたします。
特にこのアルバムについては、3枚目の「Outtakes and Rarities」が聞き逃せません。
この曲もその1曲。
原曲は「Electr-O-Pura」に収録されていますが、こちらはアコースティック・バージョンで、ボーカルもジョージア・ハブレイが担当しています。
オリジナル・バージョンとは違った、ネオアコっぽいところがいいですね。
彼らは別バージョンを発表することが多いのですが、かなり大胆にアレンジしています。
中にはこの曲のように、原曲を上回りそうな曲も散見されます。
このランキングで気に入った方は、まずオリジナル・アルバムとこのベスト盤まで必携ですが、余力があれば「Genius + Love = Yo La Tengo」などもチェックしてみてください。
ちなみに今回は曲数の関係で、初期のアルバムは取り上げていません。
しかしファースト・アルバム「Ride the Tiger」もすばらしく、どれも買って損はありません。
10位「Blue Line Swinger」(アルバム:Electr-O-Pura)
■曲名:Blue Line Swinger
■曲名邦題:ブルー・ライン・スウィンガー
■アルバム名:Electr-O-Pura
■アルバム名邦題:エレクトロピューラ
■動画リンク:「Blue Line Swinger」
普通長い曲は当たり外れが大きいものですが、このバンドの場合、長い曲はどれも傑作ばかりです。
この曲もイントロが長いなと思っている内に、ジワジワと心の奥底に浸透してきます。
9分超とかなり長い曲ですが、この曲の場合、むしろこのぐらいの長さが必要かもしれません。
非常にトリップ感と中毒性が高い曲で、お酒なしでも酩酊してきそうです。
本来は1位相当の曲ですが、最後にじっくり聞いていただきたいと思い、あえて最後にしてみました。
アメリカはインディーズ市場が大きく、メイン・ストリームにいなくても、熱狂的なファンを獲得できたら音楽一本で食べていけます。
彼らは前作「Painful」からずっと、インディーズのマタドール・レコード(Matador Records)に所属しています。
インディーズの場合は、メジャーに比べてやりたい音楽を純粋に追求できるメリットがあります。
マタドールは、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(The Jon Spencer Blues Explosion)やペイヴメント(Pavement)などが所属していたことで知られています。
どちらのバンドも、メジャー・レーベルで成功したかどうか。
ヨ・ラ・テンゴもそんな環境の中で、思う存分やりたい音楽に取り組むことができました。
その最大の成果といえそうなのが、規格外といえるこの曲。
歌が始まるまでが長いですが、カタルシスを得るにはそこを飛ばしたらいけません。
私にとってとても大切な曲ですが、皆様にも同じように感じていただけたらうれしいです。
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