今回はサム・クックのランキングを作成しました。
彼は惜しくも若くして亡くなりましたが、ソウル・ミュージック史に大きな足跡を残しました。
完璧超人のようでいて、その実とても人間くさい男。
そんな彼の魅力に迫ってみました。
- 1 1位「A Change Is Gonna Come」(アルバム:Ain’t That Good News)
- 2 2位「Twistin’ the Night Away」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
- 3 3位「Cupid」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
- 4 4位「Chain Gang」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
- 5 5位「Having a Party」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
- 6 6位「Medley: Try a Little Tenderness / (I Love You) For Sentimental Reasons / You Send Me」(アルバム:Sam Cooke at the Copa)
- 7 7位「Yeah Man」(アルバム:Keep Movin’ On)
- 8 8位「What A Wonderful World」(アルバム:The Man and His Music)
- 9 9位「Twistin’ in the Old Town Tonight」(アルバム:Twistin’ the Night Away)
- 10 10位「Nothing Can Change This Love」(アルバム:Mr. Soul)
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1位「A Change Is Gonna Come」(アルバム:Ain’t That Good News)
■曲名:A Change Is Gonna Come
■曲名邦題:ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム
■アルバム名:Ain’t That Good News
■アルバム名邦題:エイント・ザット・グッド・ニュース
■動画リンク:「A Change Is Gonna Come」
ウィキペディアのシングル欄に記載はありませんが、彼の中で最も有名な曲です。
この曲は当時アメリカで高まりつつあった公民権運動のアンセムでした。
実際ボブ・ディラン(Bob Dylan)のプロテスト・ソング「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」に影響を受けて書かれたそうです。
本楽曲はボブ・ディランの「風に吹かれて」の影響も受けている。クックは、アメリカにおける人種差別についての痛切な楽曲が、黒人でなかった者によって発表されたことに感激すると同時に、自分自身がそのような曲を未だ書いていないことに悔しさを覚えた[7]。
彼は白人ファンに忖度して臆病になっていた自分を腹立たしく思ったそうです。
その葛藤から生まれたこの曲は、時代を動かす力を持つ曲になりました。
2位「Twistin’ the Night Away」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
■曲名:Twistin’ the Night Away
■曲名邦題:ツイストで踊りあかそう
■アルバム名:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963
■アルバム名邦題:ハーレム・スクエア・クラブ1963
■動画リンク:「Twistin’ the Night Away」
通常このブログでは、ライブ・アルバムからの選曲を少な目にしています。
先にスタジオ録音で親しんでから、ライブ盤を聞いた方がいいと思いますから。
しかし中にはこのアルバムのような例外も。
この曲はスタジオ録音の方も、充分すばらしい出来だと思います。
後でこの曲のスタジオ・バージョンをご紹介しましたので、もしよかったら聞き比べてみてください。
私はCDのセールスを邪魔したくないので、1枚のアルバムからは最大4曲以下に抑えています。
この記事ではこのライブから上限マックスの4曲を選び、しかも2-5位と上位を独占することにしました。
いっそこの記事を読むより、アルバム1枚通して聞いてほしいと思うほどです。
3位「Cupid」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
■曲名:Cupid
■曲名邦題:キューピットよあの娘をねらえ
■アルバム名:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963
■アルバム名邦題:ハーレム・スクエア・クラブ1963
■動画リンク:「Cupid」
このアルバムは1985年に発売されました。
しかしなぜこんな大傑作が22年後にリリースされることになったのでしょうか。
その背景としては、当時彼は白人にも人気があったことが関係しています。
アルバム名にある「ハーレム」は、黒人が多く住んでいる地域です。
彼は同胞たちの前では品行方正な王子様の仮面をかなぐり捨てて、汗だぐになって熱唱していました。
ただその変貌ぶりが強烈すぎて、白人リスナーへの影響を考慮した結果、リリースが見送られたそうです。
代わりに「Sam Cooke at the Copa」という、従来の延長線上に位置するライブ盤がリリースされました。
しかし22年経過してもなお、このアルバムの登場は大きな衝撃をもって受けとめられました。
あまりのすばらしさに山下達郎が自分のラジオ番組で、アルバム全曲を放送したのは有名な話です。
私もその気持ちが分かるような気がします、
4位「Chain Gang」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
■曲名:Chain Gang
■曲名邦題:チェイン・ギャング
■アルバム名:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963
■アルバム名邦題:ハーレム・スクエア・クラブ1963
■動画リンク:「Chain Gang」
このアルバム以後、彼の評価が変わりました。
普段の彼は天才的に歌の上手いシンガーで、優等生的なイメージがあったようです。
しかしこのライブでの彼の歌は、野性味を帯びているほど。
キング・カーティス(King Curtis)を中心としたバンドの演奏もすばらしいです。
しかしふと気づくと、彼の歌ばかり必死に追いかけている自分に気が付きます。
以前クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の記事で、彼がラフなセッションに参加した時の様子を、下校途中の生徒会長が不良たちに囲まれる中涼しい顔をして倒す漫画のようだと書いたことがありました。
いかにも優等生っぽいのに、ラフな展開で随分生き生きしているのだなと。
このアルバムでのサム・クックにも同じ印象を受けます。
5位「Having a Party」(アルバム:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963)
■曲名:Having a Party
■曲名邦題:パーティを開こう
■アルバム名:One Night Stand: Sam Cooke Live At The Harlem Square Club 1963
■アルバム名邦題:ハーレム・スクエア・クラブ1963
■動画リンク:「Having a Party」
彼はミュージシャンズ・ミュージシャンです。
ジャンルや人種を問わず、尊敬するアーティストとして名前が挙げられることが最も多い内の1人。
有名どころでは、オーティス・レディング(Otis Redding)やボビー・ウーマッ(Bobby Womack)、日本でもトータス松本などが知られています。
私が真っ先に思い浮かぶのは、オヴェイションズ(The Ovations)。
以下の曲などはかなりの名カバーだと思います。
The Ovations – Having A Party (Medley)
人気の秘密は天才的な歌の上手さで、時にディープな歌唱によるところが大きいと思います。
普段の彼はポピュラーシンガー風で、クセのない抑えた歌い方をしていました。
しかし生来のゴスペル仕込みのディープさは、この時隠し切れていませんでした。
6位「Medley: Try a Little Tenderness / (I Love You) For Sentimental Reasons / You Send Me」(アルバム:Sam Cooke at the Copa)
■曲名:Medley: Try a Little Tenderness / (I Love You) For Sentimental Reasons / You Send Me
■曲名邦題:メドレー トライ・ア・リトル・テンダネス / センチメンタル・リーズン / ユー・センド・ミー
■アルバム名:Sam Cooke at the Copa
■アルバム名邦題:ライヴ・アット・ザ・コパ
■動画リンク:「Medley: Try a Little Tenderness / (I Love You) For Sentimental Reasons / You Send Me」
私の思い違いだったらすみませんが、確か彼の正規のライブ・アルバムは2枚だけだったと思います。
ハーレム・スクエアのライブ盤がリリースされるまでは、このアルバム1枚だけでした。
しかしその2枚は、内容が大きく異なります。
「Copa」とはバリー・マニロウ(Barry Manilow)のヒット曲で知られる「コパカバーナ(Copacabana)」のこと。
コパカバーナは、ブラジルでも高級住宅地として知られています。
当時ブラジルではアメリカと同様、富裕層の多くが白人でした。
成功した白人が美しい海に面したコパカバーナで家を持つことは、一種のステータスだったそうです。
このライブはそういう場所で開催されました。
貧困層の黒人が多いハーレムで行われたライブとは、真逆の環境といえるでしょう。
正直私はハーレム盤の方が好みかもしれません。
しかしここでの彼はプロフェッショナルに徹していて、ハーレムとは異なるすごみのある美しい歌を披露しています。
熱気ではハーレムの圧勝ですが、歌の上手さと美しさではコパに軍配を上げます。
7位「Yeah Man」(アルバム:Keep Movin’ On)
■曲名:Yeah Man
■曲名邦題:イエー・マン
■アルバム名:Keep Movin’ On
■アルバム名邦題:キープ・ムーヴィン・オン
■動画リンク:「Yeah Man」
この曲は、以下の有名曲の元ネタとして知られています。
Arthur Conley ~ Sweet Soul Music
元ネタというには、かなり似ていますが。。。
このアルバムは、晩年の曲をチェックするのに最適な編集盤です。
彼が早死にしなかったらと想像する方にとっては、とても興味深い作品かもしれません。
1964年12月11日彼は射殺という非業の死を迎えました。
その日彼は酒場で出会った女性をモーテルに誘ったそうです。
しかし身の危険を感じた女性は管理人室に駆け込み、彼女を追ってきた彼は管理人によって射殺されました。
享年33歳。
裁判で管理人は正当防衛が認められて無罪になりました。
しかしこの死の経緯に疑問を持つ人は少なくないようです。
8位「What A Wonderful World」(アルバム:The Man and His Music)
■曲名:What A Wonderful World
■曲名邦題:ワンダフル・ワールド
■アルバム名:The Man and His Music
■アルバム名邦題:ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック
■動画リンク:「What A Wonderful World」
ここで彼のベスト盤について少し触れておきましょう。
彼のベスト盤は沢山ありますが、1枚ものではこのアルバムがおすすめです。
ただ入手しにくいですし、今後はより良い選曲のCDが出てくるかもしれませんが。
彼が在籍していたゴスペル・グループ、ソウル・スターラーズ(The Soul Stirrers)時代の曲も含まれていて、比較的よくまとまっています。
彼はスタジオ・アルバムに収録されていないシングルが多いので、必要に応じてベスト盤や編集盤で補完するといいでしょう。
この曲はスタジオ録音にも収録されていますが、ベスト盤ではヒット曲をまとめて聞けます。
もし私が最初の1枚を聞かれたら、ハーレムのライブ盤かこのベスト盤のどちらかをおすすします。
三番手はコパのライブ・アルバム。
ちなみにスタジオ・アルバムでは、「Twistin’ the Night Away」がおすすめです。
9位「Twistin’ in the Old Town Tonight」(アルバム:Twistin’ the Night Away)
■曲名:Twistin’ in the Old Town Tonight
■曲名邦題:今夜のツイスト・パーティ
■アルバム名:Twistin’ the Night Away
■アルバム名邦題:ツイストで踊りあかそう
■動画リンク:「Twistin’ in the Old Town Tonight」
とても楽しいアルバムです。
このアルバムは、ツイスト用の曲ばかりを取り上げています。
ツイストとは1960年代前半に流行したダンスのこと。
どういう曲で踊っていたかは、この曲や1位の曲を聞いていただければ分かっていただけると思います。
今も昔もブラック・ミュージックの醍醐味の一つは、ダンス・ミュージックとしての側面です。
特に昔はダンス・パーティをテーマにしたアルバムがありました。
このアルバムは、マーサ&ザ・ヴァンデラス(Martha and the Vandellas)の「ダンス・パーティ(Dance Party)」と並んで、ダンス・アルバムの頂点といえる作品です。
アルバム・ジャケットも印象的ですね。
10位「Nothing Can Change This Love」(アルバム:Mr. Soul)
■曲名:Nothing Can Change This Love
■曲名邦題:ナッシング・キャン・チェンジ・ジス・ラヴ
■アルバム名:Mr. Soul
■アルバム名邦題:ミスター・ソウル
■動画リンク:「Nothing Can Change This Love」
彼はスロー・ナンバーも絶品です。
この記事を書くにあたり最終候補曲が出そろった時、バラードが少ないことに気が付きました。
そこで急遽この曲を追加することにしました。
もう1曲バラードをご紹介しましょう。
Sam Cooke – That’s Heaven To Me
サム・クックは優れたソングライターでした。
「Nothing Can Change This Love」も、彼が書いた曲です。
しかも彼は様々な面で突出した存在でした。
端正なルックスとソングライティング能力の高さ。
そして何よりシンガーとしての圧倒的な実力。
私は彼の中に2人のシンガーがいたように感じます。
1つは聞く人を選ばない美しく表現力のある歌手、もう1つは野性的で聞き手をノックアウトする歌手。
彼はそのどちらにおいても秀でた存在でした。
つくづく不世出のアーティストだったと思います。
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