今回はジェフ・ベックのランキングを作成しました。
この人は奇才という言葉が似合う、孤高のギタリストです。
長いキャリアを振り返るため、文中に参考曲のリンクを多めに貼りました。
お時間のある方は、そちらも合わせてお聞きください。
- 1 1位 「Led Boots」(アルバム:Wired)
- 2 2位 「Scatterbrain」(アルバム:Blow by Blow)
- 3 3位 「Cause We’ve Ended as Lovers」(アルバム:Blow by Blow)
- 4 4位 「What Mama Said」(アルバム:Who Else!)
- 5 5位 「So What」(アルバム:Jeff)
- 6 6位 「Sweet Sweet Surrender」(アルバム:Beck, Bogert & Appice)
- 7 7位 「Plynth」(アルバム:Beck-Ola)
- 8 8位 「New Ways / Train Train」(アルバム:Rough and Ready)
- 9 9位 「Stroll On」(アルバム:Blow-Up)
- 10 10位 「People Get Ready」(アルバム:Flash)
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- 13 他ブログ・SNS等
1位 「Led Boots」(アルバム:Wired)
■アーティスト名:Jeff Beck
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック
■曲名:Led Boots
■曲名邦題:レッド・ブーツ
■アルバム名:Wired
■アルバム名邦題:ワイアード
■動画リンク:「Led Boots」
通常ロック系のアーティストでは、ボーカル入りのシングル曲を1位にしています。
しかしこの曲はインストでシングルカットもされていません。
それなのにこの曲を1位に推したくなるのが、この人の特異性と言えるかもしれません。
加えてこの人は他のロック・ギタリストほど、リフを重視していない感じがします。
この曲はそういうこの人の特徴をよく表しているかもしれません。
ナラダ・マイケル・ウォルデン(Narada Michael Walden)の手数の多いドラムが良いですね。
またこの曲を書いたマックス・ミドルトン(Max Middleton)のクラビネットが生み出すリズムが、リフのような役割を果たしています。
ではジェフ・ベックは何をしているのかといえば、そこに鋭角で切り込んでいます。
そこが最も彼らしさを感じる部分。
この人の一番のカッコよさは、その鋭角で切り込む感覚かもしれません。
2位 「Scatterbrain」(アルバム:Blow by Blow)
■アーティスト名:Jeff Beck
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック
■曲名:Scatterbrain
■曲名邦題:スキャッターブレイン
■アルバム名:Blow by Blow
■アルバム名邦題:ブロウ・バイ・ブロウ
■動画リンク:「Scatterbrain」
ジェフ・ベック初のソロ・アルバムです。
彼の在籍していたバンド遍歴を整理しておきましょう。
ヤードバーズ
第1期ジェフ・ベック・グループ
第2期ジェフ・ベック・グループ
ベック・ボガート・アンド・アピス
その後1976年リリースされたこのアルバムからは、ソロ活動に以降しています。
ちなみにウィキペディアではディスコグラフィ欄にヤードバーズがありませんが、入れてもいいと思いますけどね。
さて満を持して発表したこのソロは、全米アルバムチャート4位を記録する大ヒットになりました。
また音楽性もフュージョン、クロスオーバーと呼ばれる音楽に変わりしました。
ただこの人の場合フュージョンをやりたいというより、単に弾きまくりたかっただけのような気もしますが。
弾きまくるギタリストを嫌う人は少なくないと思いますが、彼はこういう人です。
『ローリング・ストーン』誌の選ぶ「最も偉大な100人のギタリスト」において2003年は第14位、2011年の改訂版では第5位。
弾きまくった結果、彼はこうした評価を得ています。
3位 「Cause We’ve Ended as Lovers」(アルバム:Blow by Blow)
■アーティスト名:Jeff Beck
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック
■曲名:Cause We’ve Ended as Lovers
■曲名邦題:哀しみの恋人達
■アルバム名:Blow by Blow
■アルバム名邦題:ブロウ・バイ・ブロウ
■動画リンク:「Cause We’ve Ended as Lovers」
この人はジミー・ペイジ(Jimmy Page)、エリック・クラプトン(Eric Clapton)と並ぶ、3大ギタリストの1人です。
しかし他の2人が作曲にも才能を発揮したのに対して、ジェフ・ベックはあまり曲を書きません。
そのため誰かに良い曲を提供してもらわなければいけません。
その点この曲は最強です。
この曲のオリジナルは、スティーヴィーワンダー(Stevie Wonder)がシリータ(Syreeta)に提供した曲。
Syreeta – ‘Cause We’ve Ended As Lovers
さてこの曲ではスティーヴィー以外に、もう1人感謝を捧げている人がいます。
それはアメリカ人のギタリスト、ロイ・ブキャナン(Roy Buchanan)。
ロイ・ブキャナンの名演を引用しますので、興味のある方は聞いてみてください。
Roy Buchanan – The Messiah Will Come Again
ジェフ・ベックが影響を受けていることがよく分かります。
彼はこの後同じ路線で「Wired」「Jeff Beck with the Jan Hammer Group Live」「There and Back」を発表しました。
4位 「What Mama Said」(アルバム:Who Else!)
■アーティスト名:Jeff Beck
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック
■曲名:What Mama Said
■曲名邦題:ホワット・ママ・セッド
■アルバム名:Who Else!
■アルバム名邦題:フー・エルス!
■動画リンク:「What Mama Said」
偉大なアーテイストは晩年に本質が表れるものです。
お金のために音楽をする必要がなくなっている場合も多いですし、名声は既に手にしています。
最も多いパターンは落ち着いたり、シブくなるパターン。
ブルースをカバーしたアルバムを出す人も少なくありませんが、おそらくセールスは二の次でしょう。
その点ジェフ・ベックは落ち着くどころか、更に攻める姿勢を鮮明にしました。
このアルバムではデジロックみたいですし。
この曲のメタリックな部分は、私の感じだと「ギター・ショップ(Jeff Beck’s Guitar Shop)」に収録された以下の曲の延長線にあります。
私はハードロックをやっている時のジェフ・ベックが一番好きです。
5位 「So What」(アルバム:Jeff)
■アーティスト名:Jeff Beck
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック
■曲名:So What
■曲名邦題:ソー・ホワット
■アルバム名:Jeff
■アルバム名邦題:ジェフ
■動画リンク:「So What」
こちらもヘヴィでメタリックな曲です。
同じアルバムから、もう1曲ご紹介しておきましょう。
「So What」とは「だから何」という意味ですが、こんな言葉が似合うのは、マイルス・デイビス(Miles Davis)とこの人ぐらいです。
この曲のリズムも、ドラムンベースを太くした感じがしますね。
この人はジャズのソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)と同じ。
つまり自分が演奏する音の空間を広く確保したいタイプで、必ずしもベースは必要ではありません。
それどころかボーカルすら必要ありませんし。
しかし競合しないドラムは超重要です。
ジェフ・ベックはドラムとの相互作用によって、最高のパフォーマンスを発揮できる人だと思います。
6位 「Sweet Sweet Surrender」(アルバム:Beck, Bogert & Appice)
■アーティスト名:Beck, Bogert & Appice
■アーティスト名カナ:ベック・ボガート・アンド・アピス
■曲名:Sweet Sweet Surrender
■曲名邦題:スウィート・スウィート・サレンダー
■アルバム名:Beck, Bogert & Appice
■アルバム名邦題:ベック・ボガート・アンド・アピス
■動画リンク:「Sweet Sweet Surrender」
このバンドは、ヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)のティム・ボガート(Tim Bogert)、カーマイン・アピス(Carmine Appice)とのスリーピースです。
当初はこのトリオに、ロッドスチュワート(Rod Stewart)を加えたグループを結成予定でした。
しかしジェフ・ベックが自動車事故に遭ったことで実現できず、その後ポール・ロジャース(Paul Rodgers)を誘いましたが、それも叶いませんでした。
結局メンバー全員が、曲毎にボーカルを担当することになりました。
この曲ではカーマイン・アピスが歌っています。
純朴な荒くれ者風のバラードといった風情の歌は、なかなか悪くありませんね。
このアルバムでは、スティーヴィー・ワンダーのヒット曲「迷信(Superstition)」をカバーしたことで知られています。
ジェフ・ベックとスティーヴィーは「Cause We’ve Ended as Lovers」あたりを含め、繋がりが深いように感じます。
7位 「Plynth」(アルバム:Beck-Ola)
■アーティスト名:Jeff Beck Group(1st period)
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック・グループ(第1期)
■曲名:Plynth
■曲名邦題:プリンス
■アルバム名:Beck-Ola
■アルバム名邦題:ベック・オラ
■動画リンク:「Plynth」
ブルースロック時代の曲です。
このバンドは、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)のヒントになったと言われています。
ジェフ・ベックは、ミュージシャンズ・ミュージシャンかもしれません。
つまり素人ではなく玄人受けする人。
それは彼が型で聞かせるタイプでないことも影響しています。
たとえばジャズで言えば、リー・コニッツ(Lee Konitz)の説明しにくさと似ています。
ただ全く型がないわけではありません。
そこでジェフ・ベックの型を説明するのに、反則技を使うことにしました。
スティーヴィー・ワンダーの「キー・オブ・ライフ(Songs in the Key of Life)」に「負傷(Contusion)」という曲が入っています。
以下のリンクでは、該当のギターソロから再生が始まるように設定しました。
上の曲ではマイケル・センベロ(Michael Sembello)がギターを弾いていますが、かなりジェフ・ベックに似た演奏だと感じます。
8位 「New Ways / Train Train」(アルバム:Rough and Ready)
■アーティスト名:Jeff Beck Group(2nd period)
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック・グループ(第2期)
■曲名:New Ways / Train Train
■曲名邦題:ニュー・ウェイズ/トレイン・トレイン
■アルバム名:Rough and Ready
■アルバム名邦題:ラフ・アンド・レディ
■動画リンク:「New Ways / Train Train」
第二期ジェフベックグループの曲です。
ジェフ・ベック・グループには第一期と第二期がありますが、メンバーも音楽性も全く異なります。
さてここでジェフ・ベックの分かりにくさについて、再度捕捉説明したいと思います。
この人は、かなり感覚的なプレイヤーです。
確かCharがこの人のファンという記事を読んだことがありますが、よく分かると思いました。
2人ともセンスで勝負しているタイプのギタリストです。
ただ2人を比べると、ジェフ・ベックは変なフレーズも多いですし、それは必ずしもロック的とはいえないかもしれません。
たとえば上の曲では1:17からをお聞きください。
実はジェフ・ベックは指弾きの人なのですが、瞬間にエッジが立っています。
加えて言うと、尖っているだけでなくどことなく変な感じがしますね。
たとえ鋭角ではなくても不思議なフレーズが多いですが、その魅力を言葉で説明するのは困難です。
説明しにくい、似ている人もいない、唯一無二のギタリストだと思います。
9位 「Stroll On」(アルバム:Blow-Up)
■アーティスト名:The Yardbirds
■アーティスト名カナ:ヤードバーズ
■曲名:Stroll On
■曲名邦題:ストロール・オン
■アルバム名:Blow-Up
■アルバム名邦題:欲望
■動画リンク:「Stroll On」
ヤードバーズ時代の曲です。
ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画「欲望」に使われた曲です。
この記事で一番新しい曲「So What」と、そう変わらない感じがしますね。
どちらも完全なるギターのための音楽です。
現代はギター冬の時代だと言われます。
それだけでなく、ギターの役割も昔と変わってきました。
単音のソロよりもカッティング、またはアレンジと調和する音響的な役割、ソロは短く効果的であることが求められるなど。
昔ながらのタイプのギタリストは、急速に居場所を失いつつあります。
そんな逆風の時代の中で、彼はギターを持ったラストサムライだったかもしれません。
そもそも彼は子供の頃、逆風を経験しています。
子供の頃のジェフ・ベックはお金がなく、両親がギターを嫌っていることもあって、ギターを買えませんでした。
それでも彼はギターを自作して演奏していたそうです。
尊敬を込めて、永遠のギター小僧と呼びたい人です。
10位 「People Get Ready」(アルバム:Flash)
■アーティスト名:Jeff Beck
■アーティスト名カナ:ジェフ・ベック
■曲名:People Get Ready
■曲名邦題:ピープル・ゲット・レディ
■アルバム名:Flash
■アルバム名邦題:フラッシュ
■動画リンク:「People Get Ready」
この人のギターは主役感が半端ありません。
ボーカルは不要と感じさせる、稀有なギタリストでした。
この人は主役を張れるギタリストですし、そのためインストが似合います。
偉大なギタリストであっても、ボーカルがあった方が良いタイプと、なくてもいいタイプがあります。
たとえばキース・リチャーズ(Keith Richards)は同じ位偉大だと思いますが、やはりボーカルがあった方がいいと感じます。
もちろんリフ・タイプとソロ・タイプの違いはありますが。
彼は組織力重視のサッカーチームにおいて、個人技で勝負する選手に似た異端の存在でした。
ジェフ・ベックは、脇役が似合わない異端のままギタリストの頂点まで昇りつめました。
さて最後に一般の人にも好かれやすいこの曲をご紹介します。
ちなみにこのアルバムでは、以下の曲もおすすめです。
Jeff Beck – Back on the Streets
「People Get Ready」では、ボーカルとギターどちらも主役みたいな感じがします。
彼と対等に渡り合えたボーカリストは、この曲で歌っているロッド・スチュワート(Rod Stewart)だけだったかもしれません。
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