今回はジノ・ヴァネリのランキングを作成しました。
この人はAORに分類されることが多いように思います。
確かに一部のヒット曲はそうかもしれません。
しかし時に彼の音楽は、AORの枠に収まりきらない奔放なところも魅力です。
- 1 1位「I Just Wanna Stop」(アルバム:Brother to Brother)
- 2 2位「Living Inside Myself」(アルバム:Nightwalker)
- 3 3位「Fly into This Night」(アルバム:The Gist Of The Gemini)
- 4 4位「Venus Envy」(アルバム:These Are The Days)
- 5 5位「People Gotta Move」(アルバム:Powerful People)
- 6 6位「Brother to Brother」(アルバム:Brother to Brother)
- 7 7位「Put the Weight on My Shoulder」(アルバム:The Best And Beyond)
- 8 8位「Jack Miraculous」(アルバム:Powerful People)
- 9 9位「Summers of My Life」(アルバム:The Gist Of The Gemini)
- 10 10位「Where Am I Going」(アルバム:Storm At Sunup)
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1位「I Just Wanna Stop」(アルバム:Brother to Brother)

■曲名:I Just Wanna Stop
■曲名邦題:アイ・ジャスト・ワナ・ストップ
■アルバム名:Brother to Brother(1978年)
■アルバム名邦題:ブラザー・トゥ・ブラザー
■動画リンク:「I Just Wanna Stop」
この人を代表する傑作です。
本国カナダではシングルチャート1位、アメリカでも4位を記録しました。
好き嫌いが分かれがちなこの人の中でも、最も万人受けする曲の1つかもしれません。
さてアルバム名の「Brother to Brother」は「兄弟から兄弟へ」という意味。
実際このアルバムには、ジノ・ヴァネリの兄弟が参加しています。
この曲での兄弟の役割を整理しておきましょう。
・ジョー・ヴァネリ(Joe Vannelli):キーボード、アレンジ(兄)
・ジノ・ヴァネリ(Gino Vannelli):歌(本人)
・ロス・ヴァネリ(Ross Vannelli):作詞、作曲(弟)
ちなみにプロデュースもこの3人ですから、兄弟が一致団結してつくり上げた作品なのですね。
このアルバムには参加していませんが、父親もシンガーでした。
さてこの曲は、情熱的なサビが聞きものです。
特に2:59ぐらいからドラマティックに歌い上げる展開が最高です。
2位「Living Inside Myself」(アルバム:Nightwalker)

■曲名:Living Inside Myself
■曲名邦題:リヴィング・インサイド・マイセルフ
■アルバム名:Nightwalker(1981年)
■アルバム名邦題:ナイトウォーカー
■動画リンク:「Living Inside Myself」
「I Just Wanna Stop」と並ぶ彼の有名曲です。
前作「Brother to Brother」の成功を機に、彼はA&Mから大手のアリスタ・レコード(Arista Records)に移籍することになりました。
ただアリスタとの契約は、彼にとって悪夢だったに違いありません。
一部では有名な話ですが、この作品後「Twisted Heart」というアルバムをリリースしました。
しかしジノはアリスタ社長のクライヴ・デイヴィス(Clive Davis)と衝突して、そのせいで発売一週間で回収されてしまいました。
そんなことがあるのですね。
このクライヴ・デイヴィスという人物は、強烈に現場介入することで知られる剛腕社長です。
サンタナ(Santana)などそのやり方がうまくいったケースもありますが、一方で多くのアーティストと衝突しました。
結局ジノは、多額のお金を支払ってアリスタとの契約を破棄しました。
ちなみに回収された幻のシングルは、現在ベスト盤で聞くことができます。
リンクを貼っておきましょう。
Gino Vannelli-The Longer You Wait
しかしこの騒動の爪跡は大きく、彼は全盛期の数年を無駄にしてしまいました。
次作の「ブラック・カーズ(Black Cars)」はヒットこそしましたが、内容的にはかんばしくありませんでした。
3位「Fly into This Night」(アルバム:The Gist Of The Gemini)

■曲名:Fly into This Night
■曲名邦題:フライ・イントゥ・ディス・ナイト
■アルバム名:The Gist Of The Gemini(1976年)
■アルバム名邦題:ジスト・オブ・ジェミニ
■動画リンク:「Fly into This Night」
ジノの魅力はダイナミックな歌唱です。
この人の音楽には様々なジャンルの影響を感じますが、特にジャズやソウルの影響が強いかもしれません。
この曲のファルセット・ボーカルも、ソウル・ミュージックっぽいですし。
ファルセットは音程のコントロールが難しいものですが、ここでの彼の歌は奔放でも安定感がありますね。
そしてその歌を受け止めるサウンドも、負けじとダイナミックです。
この曲のアレンジは、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonde)の影響を受けているかもしれせん。
彼の音楽の魅力の半分は、バックの演奏にあります。
AORではサウンドに凝る人は少なくありませんが、彼のこだわりはスティーリー・ダン(Steely Dan)にも匹敵します。
ただ次作の「ア・ポーパー・イン・パラダイス(A Pauper In Paradise)」では、オーケストラと共演したり、いささかサウンド重視になりすぎた感もありますが。
4位「Venus Envy」(アルバム:These Are The Days)

■曲名:Venus Envy
■曲名邦題:ヴィーナス・エンヴィ
■アルバム名:These Are The Days(2006年)
■動画リンク:「Venus Envy」
2000年以降、彼の活動はファン以外にはあまり知られていません。
2003年には「Canto」というカンツォーネを歌ったアルバムを発表しています。
その作品ではマービン・ゲイ(Marvin Gaye)のポピュラー・ソング集のように悪い出来ではないものの、ファンの期待とは違っていたかもしれません。
その次作となるのがこのアルバム。
昔の再録音を含んだアルバムですが、これが意外と掘り出し物でした。
この曲はサビの魅力という点では、彼の中でも1、2争う曲かもしれません。
ちなみに現在彼は音楽教師で生計を立ってながら、精力的に音楽活動を続けているそうです。
この頃の彼は第二の全盛期といえる時期で、次の「A Good Thing」も充実作でした。
5位「People Gotta Move」(アルバム:Powerful People)

■曲名:People Gotta Move
■曲名邦題:ピープル・ガッタ・ムーヴ
■アルバム名:Powerful People(1974年)
■アルバム名邦題:パワフル・ピープル
■動画リンク:「People Gotta Move」
この人はオランダや南アフリカなど、意外な国でヒットを飛ばしています。
ちなみにこの曲はセカンド・アルバムの収録曲ですが、本国カナダとアメリカは共に60位と、まだブレイクしたとはいえませんでした。
一方オランダでは11位とヒットを記録しています。
どうやら道路や旅行情報提供する団体のCMに使われたようですね。
曲名の「People Gotta Move」は「人々は移動しなければいけない」という意味ですし。
おそらくテーマと合致していたことから採用されたと思われますが、曲自体の魅力もアピールしたのでしょう。
この曲はオランダで2008年に再ヒットしています。
そしてやはりアレンジにはスティーヴィー・ワンダーの影響を感じます。
6位「Brother to Brother」(アルバム:Brother to Brother)

■曲名:Brother to Brother
■曲名邦題:ブラザー・トゥ・ブラザー
■アルバム名:Brother to Brother(1978年)
■アルバム名邦題:ブラザー・トゥ・ブラザー
■動画リンク:「Brother to Brother」
先程彼の特徴について、サウンド重視だと書きました。
それはつまり、レコーディングに参加するプレイヤーにも質が求められるということです。
実際このアルバムの参加メンバーは手練れぞろいです。
まずギターのカルロス・リオス(Carlos Rios)は、当時サウント面の要ともいえる人でした。
試しに2:50からのギターをお聞きください。
そのギター・ソロは、この曲の最大の聞きどころかもしれません。
その後プログレのような展開が続きますが、兄のジョー・ヴァネリによるアレンジがさえています。
続いて4:36からは、ベースのジミー・ハスリップ(Jimmy Haslip)とドラムのマーク・クラニー(Mark Craney)が躍動しています。
7位「Put the Weight on My Shoulder」(アルバム:The Best And Beyond)

■曲名:Put the Weight on My Shoulder
■曲名邦題:ウェイト・オン・マイ・ショルダーズ
■アルバム名:The Best And Beyond(2009年)
■アルバム名邦題:ベスト・アンド・ビヨンド
■動画リンク:「Put the Weight on My Shoulder」
「Nightwalker」に収録された曲の再録音です。
私は基本的に再録音を好みませんが、このバージョンは素直に良い出来だと思います。
さて私はこの人の音楽を理解するのに、結構時間がかかりました。
すごいのは分かるけれど、熱いというか無駄に暑苦しいように感じたのですね。
しかし聞き込んでいく内に、彼の音楽にねじ伏せられていきました。
この記事で初めて彼の音楽を聞く方も、私と同じような苦手意識を持つといけません。
そこでこういうシンプルな曲で、一息入れられるようにしてみました。
8位「Jack Miraculous」(アルバム:Powerful People)

■曲名:Jack Miraculous
■曲名邦題:ジャック・ミラクラス
■アルバム名:Powerful People(1974年)
■アルバム名邦題:パワフル・ピープル
■動画リンク:「Jack Miraculous」
彼はミュージシャンズ・ミュージシャンと呼ばれています。
彼はマギル大学というカナダのエリート大学で、音楽理論を学んできた人です。
ファースト・アルバムの「クレイジー・ライフ(Crazy Life)」は、それ以降とはかなり音楽性が違います。
マイケル・フランクス(Michael Franks)のようなメロウな曲が多く、まだ彼のダイナミズムや濃厚さは目立っていません。
現在に至る彼のキャリアは、実質的にこのセカンド・アルバムから始まったと言ってもいいでしょう。
この頃からはよりグルーヴィーで、プログレっぽい曲が増えてきました。
歌にも野性味が出てきましたし。
彼は野性や情熱が理知的な面を上回った時、名曲が生まれるように思います。
9位「Summers of My Life」(アルバム:The Gist Of The Gemini)

■曲名:Summers of My Life
■曲名邦題:戦争組曲:サマーズ・オブ・マイ・ライフ
■アルバム名:The Gist Of The Gemini(1976年)
■アルバム名邦題:ジスト・オブ・ジェミニ
■動画リンク:「Summers of My Life」
彼はA&Mと契約するのにとても苦労しました。
彼は毎日のようにA&Mのオフィスに出没し、時には警備員に捕まえられながらもハーブ・アルパート(Herb Alpert)にデモテープを渡し、ようやくチャンスをつかみました。
その甲斐あって、彼はA&Mで成功を収めることができました。
ただジノはとても真面目な人らしく、アイドル路線で売ろうとしたA&Mの方針にはかなり不満だったようです。
この曲は彼の硬派な面がよく表れているかもしれません。
「戦争組曲」という組曲のラストを飾った曲です。
歌詞で彼は戦争の愚かさやむなしさを訴えています。
昔のロックバンドは、とかく組曲というものをやりたがる傾向にありました。
そういったアーティストには「自分には世界に伝えたいことがある」という使命感があったかもしれません。
今は昔ほど自分のメッセージを伝えることが重視されていない感じもします。
私はそういった風潮を少し残念に思います。
彼の音楽が現在もなお多くの人に評価されているのは、彼がストイックに自分の理想を追求したからかもしれません。
10位「Where Am I Going」(アルバム:Storm At Sunup)

■曲名:Where Am I Going
■アルバム名:Storm At Sunup(1975年)
■アルバム名邦題:夜明けの嵐
■動画リンク:「Where Am I Going」
実は前作「Powerful People」には、ギタリストが参加していません。
今でこそギターが入っていない曲は珍しくありませんが、当時はギターがサウンド面で重要な役割をはたしていました。
先程ご紹介した「People Gotta Move」もギターなしで、キーボードのみでしたし。
しかしこのアルバムにはギターが入っています。
しかもギタリストはAORの大物、ジェイ・グレイドン(Jay Graydon)です。
4:21からのギターは名演の多いグレイドンの中でも、最も熱い演奏の1つではないでしょうか。
しかしジノにかかわるとプレイヤーもリスナーも、誰も彼も熱くなるのですね(笑)。
この人の音楽はスケールが大きく、単なるロック・ポップスの枠に収まりきらないところがあります。
その過剰ではみ出るところが、この人の最大の魅力かもしれません。
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