今回はケヴィン・エアーズのランキングを作成しました。
この人は本来、万人受けする人ではないと思います。
アヴァンギャルドな初期のアルバムは、10人中9人は受け入れられないかもしれません。
しかし残りの1人には、熱狂的に支持されるというタイプの人です。
今回私は、気に入る人の割合をもう少し増やせないかと考えました。
そこで1970年代後期の聞きやすい曲をメインにして、合間に過激すぎない初期の曲を織り交ぜてみることにしました。
彼の魅力が少しでも多くの方に伝わればと思っています。
- 1 1位「Blaming It All on Love」(アルバム:Rainbow Takeaway)
- 2 2位「Song for Insane Times」(アルバム:Joy of a Toy)
- 3 3位「Strange Song」(アルバム:Rainbow Takeaway)
- 4 4位「Hymn」(アルバム:Bananamour)
- 5 5位「Farewell Again」(アルバム:Sweet Deceiver)
- 6 6位「May I?」(アルバム:Shooting at the Moon)
- 7 7位「Shouting in a Bucket Blues」(アルバム:June 1, 1974)
- 8 8位「Love’s Gonna Turn You Round」(アルバム:Yes We Have No Mananas)
- 9 9位「I’m So Tired」(アルバム:That’s What You Get Babe)
- 10 10位「Whatevershebringswesing」(アルバム:Whatevershebringswesing)
- 11 関連記事
- 12 ランキング一覧
- 13 Spotifyの登録方法(無料)
- 14 その他のリンク
1位「Blaming It All on Love」(アルバム:Rainbow Takeaway)
■曲名:Blaming It All on Love
■曲名邦題:ブレイミング・イット・オール・オン・ラヴ
■アルバム名:Rainbow Takeaway
■アルバム名邦題:レインボウ・テイクアウェイ
■動画リンク:「Blaming It All on Love」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
この曲はボサノヴァ、フリー・ソウル、もしくはAORと感じる人がいてもおかしくありません。
どう分類するにしても、純粋に良い曲ではないでしょうか。
私は初期の3作が好みですが、それを除くとこのアルバムが気に入っています。
既に前作でポップ路線に舵を切っていましたが、このアルバムはその線を更に進めた感があります。
その立役者はプロデューサーのアンソニー・ムーア(Anthony Moore)。
アンソニーはスラップ・ハッピー(Slapp Happy)というアヴァン・ポップバンドのメンバーで、前衛とポップの両面に造詣が深い人です。
このアルバムには、こういう聞きやすい曲もある一方で「ア・ビュー・フロム・ザ・マウンテン(A View from the Mountain)」みたいな音響的に冒険をしている曲もあります。
そのさじ加減は実に絶妙で、単に聞きやすくなっただけにはなっていません。
まずはこのあたりから聞いてみてください。
2位「Song for Insane Times」(アルバム:Joy of a Toy)
■曲名:Song for Insane Times
■曲名邦題:狂気の歌
■アルバム名:Joy of a Toy
■アルバム名邦題:おもちゃの歓び
■動画リンク:「Song for Insane Times」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
とはいえファーストアルバムの曲もご紹介しておきましょう。
一般的には「続・おもちゃの歓び(Joy of a Toy Continued)」「ぶらんこの少女(Girl on a Swing)」「レディ・レイチェル(The Lady Rachel)」あたりが有名曲です。
どれもすばらしい曲だと思いますが、ケヴィン初心者の方にはこの曲がおすすめしたいと思います。
比較的聞きやすく、曲名ほど狂気を感じませんしね。
ケヴィンはカンタベリー・ロック(Canterbury Rock)を代表するバンド、ソフト・マシーン(Soft Machine)の元メンバーでした。
どうやら円満脱退だったらしく、このアルバムにはソフト・マシーンのメンバーがサポートしています。
まずロバート・ワイアット(Robert Wyatt)のドラムがすばらしいです。
あと3:05からのデヴィッド・ベッドフォード(David Bedford)のピアノと、マイク・ラトリッジ(Mike Ratledge)のハモンド・オルガンの絡みも最高ではないでしょうか。
3位「Strange Song」(アルバム:Rainbow Takeaway)
■曲名:Strange Song
■曲名邦題:ストレンジ・ソング
■アルバム名:Rainbow Takeaway
■アルバム名邦題:レインボウ・テイクアウェイ
■動画リンク:「Strange Song」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
彼は1970年代後半からポップな曲が増えてきました。
ポップ路線になるとコアなファンは難色を示すものですが、この人の場合は少し事情が異なります。
というのは彼の理解者であればあるほど、ポップな資質については既に知っていたはずですから
初期の彼は表面上聞きやすいとはいえませんでしたが、根底にポップな部分が見え隠れしていました。
後期にはそれが分かりやすくなったというだけです。
しかしそれにしても、この曲のメロディはすばらしい。
グラハム・プレスケット(Graham Preskett)のヴァイオリンが、この曲をより気品高い曲にしています。
このアルバムは「Rainbow Takeaway」というタイトルですが、直訳すると「虹をお持ち帰り」とでもいえるでしょうか。
アルバム・ジャケットを見ると、虹がプリントされたバックを持っています。
紙バックっぽいですけども(笑)
それとジャケットの上下を分割して逆にした構図も少し変かもしれません。
こういうどこまで天然で、どこまで計算しているのか分からないようなところも、実にこの人らしいと思います。
4位「Hymn」(アルバム:Bananamour)
■曲名:Hymn
■曲名邦題:ヒム
■アルバム名:Bananamour
■アルバム名邦題:いとしのバナナ
■動画リンク:「Hymn」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
このアルバムは「Bananamour」という造語のタイトルです。
邦題は「いとしのバナナ」ですが、直訳すると「バナナ愛」とでもなるでしょうか。
ちなみにこのアルバムは「Banana Follies」というミュージカルのために書かれた曲を収録しています。
元々からバナナがテーマだったのですね。
しかしこの人の場合は、たまたまバナナだったのではありません。
この人はバナナが大好きすぎて、常にバナナをアピールしないと気が済まないようなところがあります。
「ミスター・クール(Mr.Cool)」という曲でも唐突にバナナと連呼していますし、「グールー・バナナ(Guru Banana)」つまり「導師バナナ」という曲もあります。
ちなみに彼が主催しているプロダクションの名前もバナナ・プロダクション。
ほとんどバナナ教みたいですね。
さて話題は変わりますが、この曲は「Hymn」つまり「讃美歌」というタイトルです。
この曲はヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ(The Velvet Underground and Nico)で有名なニコ(Nico)向けて書かれた曲だと言われています。
ただ歌詞を読むと、あまり讃美しているようには思えません。
何があったのか分かりませんが「あなたはもっと学んで、物事の見方を変えなければいけない」とまで忠告しています。
バナナ愛というアルバムで、ニコへの苦言を呈しているというのも、やはりどこか変かもしれませんね。
5位「Farewell Again」(アルバム:Sweet Deceiver)
■曲名:Farewell Again
■曲名邦題:フェアウェル・アゲイン
■アルバム名:Sweet Deceiver
■アルバム名邦題:スウィート・デシーヴァー
■動画リンク:「Farewell Again」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
彼は前作から大手のアイランド・レコード(Island Records)に移籍しました。
彼は見ての通りかなりの美形ですから、初期のデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のようなトリック・スター的ポジションを期待されていたようです。
もちろん純粋に才能を買われていたのもあるでしょう。
ただ前作の「夢博士の告白(The Confessions of Dr. Dream and Other Stories)」はプログレっぽい良曲があるものの、方向性に迷いがあるように感じられました。
その点こちらは売り方が定まってきたような気がします。
さてアイランド・レコードは、以前所属していたハーヴェスト・レコード(Harvest Records)に比べて、資金力がありました。
豊富な予算は共演者にも表れています。
前作のライブアルバムでは豪華なゲストを呼んでいますし、このアルバムではエルトン・ジョン(Elton John)がピアノで参加して、話題づくりに一役買っています。
ちなみにエルトンはゲイであることを公言していますが、ケヴィンによると、どうやらエルトン・ジョンは自分好みのイメージをつくり上げようとしていたのではないかと。
もちろん真相は分かりませんが。
この曲はアルバムのラストを飾る曲ですが、こういうボッサな路線も悪くありませんね。
アイランド時代に様々な試行錯誤をしたからこそ、後期のポップ路線が花開いたのではないかという気がします。
6位「May I?」(アルバム:Shooting at the Moon)
■曲名:May I?
■曲名邦題:メイ・アイ
■アルバム名:Shooting at the Moon
■アルバム名邦題:月に撃つ
■動画リンク:「May I?」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
初期の彼は、いわゆるサイケ・ポップとでもいえる音楽性でした。
初期の曲はアヴァンギャルドなポップスである一方で、内向的でダウナーな魅力がありました。
どことなく閉鎖的な感じがしましたが、その分親密に感じられたものです。
より病みつき度が高い音楽といえるかもしれません。
たとえばこの曲の1:47からを聞いてみてください。
私はこういう厭世的な部分も大好きですが、人にすすめる時には少しためらいを覚えてしまいます。
それでもおすすめしているわけですが(笑)
さてこの時期彼をサポートしていたのは、ザ・ホール・ワールド(The Whole World)と呼ばれるバンドでした。
あのマイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)も一員で、この曲でもアシッド・フォークっぽいギターを弾いています。
涅槃の一歩手前でダウナー・トリップできる名曲です。
7位「Shouting in a Bucket Blues」(アルバム:June 1, 1974)
■曲名:Shouting in a Bucket Blues
■曲名邦題:バケツに叫ぶブルース
■アルバム名:June 1, 1974
■アルバム名邦題:悪魔の申し子たち – その歴史的集会より
■動画リンク:「Shouting in a Bucket Blues」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
まずアルバム邦題がすごすぎです。
「悪魔の申し子たち – その歴史的集会より」とは何でしょうか。答えは参加メンバーにあります。
A面:ブライアン・イーノ(Brian Eno)、ジョン・ケイル(John Cale)、ニコ
B面:ケヴィン・エアーズ
以上が悪魔の申し子たちです。
まあ狙って同じイメージの人を集めた感じがしますね。
私が特に暗黒度が高いと思うのは、ニコがドアーズ(The Doors)の「ジ・エンド(The End)」をカバーしている曲です。
何かが憑依しているとしか思えません。
おそらくニコ、ジョン・ケイル、ブライアン・イーノのファン層を、ケヴィンの側に取り込みたい意図があったのではないでしょうか。
うがった見方をすると、暗黒度が高いA面を聞いた後に、相対的に暗黒度の低いケヴィンの曲でフォローをする流れではないかと。
初めてこのアルバムを聞いた時の私も、B面になって少しホッとしたものです。
ケヴィンはB面すべてを使っていますが、特に演奏面で充実したが楽曲が並んでいます。
この曲でも3:01からのオリー・ハルソール(Ollie Halsall)のギターソロは大変すばらしく、このアルバムに新鮮な空気を吹き込んでいますね。
オリーは元々パトゥ(Patto)というバンドのギターだった人で、1970年代後半のケヴィンをサウンド面で支えてきた、いわば相棒といえる人です。
8位「Love’s Gonna Turn You Round」(アルバム:Yes We Have No Mananas)
■曲名:Love’s Gonna Turn You Round
■曲名邦題:恋に夢中
■アルバム名:Yes We Have No Mananas
■アルバム名邦題:きょうはマニャーナで
■動画リンク:「Love’s Gonna Turn You Round」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
このアルバムで彼は、アイランド・レコードから元々在籍していたハーヴェスト・レコードに戻っています。
若干曲が小粒かなという気がしないでもありませんが、ストレンジ・ポップ名盤だと思います。
彼の音楽はよくストレンジ・ポップと表現されます。
ストレンジ・ポップとは、ヒットしそうなポップスとは少し違う性質を持ったポップスのことです。
商業音楽としては変なところがあったり、過剰なところがあったり、根本的にアピールの方法を間違えているというような。
この曲もポップですが、一般大衆の方を向いていない感じがしないでしょうか。
イントロでのつかみが微妙な感じですが、これは商業ポップスとしては致命的なエラーでしょう。
ただこの人のファンになると、そういう商業的なツメの甘ささえ魅力的に思えてくるから不思議です。
9位「I’m So Tired」(アルバム:That’s What You Get Babe)
■曲名:I’m So Tired
■曲名邦題:アイム・ソー・タイアード
■アルバム名:That’s What You Get Babe
■アルバム名邦題:ザッツ・ホワット・ユー・ゲット・ベイブ
■動画リンク:「I’m So Tired」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
さて1980年に発表されたアルバムからご紹介します。
このアルバムはサウンド面で変化がありました。急にロックっぽいサウンドに変化しています。
ちなみに次作「Diamond Jack and the Queen of Pain」は、私は聞いたことはありません。
ただ駄作といわれていて、CDが廃盤になって久しいにも関わらず、なかなか再発されません。
このアルバムまでが一区切りといえるでしょう。
さて今回改めて彼の曲を聞きまくって思ったことがあります。
彼の歌をヘタウマみたいに言う人もいますが、おそらくそれは脱力気味で歌っているからで、言われるほど下手とは思いません。
ただ声質が地味な印象はぬぐえません。
その声質がはまる曲もあるので弱点とは思いませんが、バックの演奏で変化や彩りを加える必要があるように思います。
たとえばこの曲のように。
この曲ではグラハム・プレスケット(Graham Preskett)のマンドリンが大きくフィーチャーされています。
心なしかケヴィンの声も少し明るく感じられますね。
10位「Whatevershebringswesing」(アルバム:Whatevershebringswesing)
■曲名:Whatevershebringswesing
■曲名邦題:彼女のすべてを歌に
■アルバム名:Whatevershebringswesing
■アルバム名邦題:彼女のすべてを歌に
■動画リンク:「Whatevershebringswesing」
■Amazon:このアルバムについて、他のレビューを読みたい方はこちらから
この曲は本来10位の曲ではありません。
長い曲だから最後に回したということもありますが、幸せな余韻が残したいと思い、あえて最後にしました。
この曲は「Whatevershebringswesing」という曲名ですが、単語を分割してみると「What ever she brings we sing」。
邦題は「彼女のすべてを歌に」、シンプルな名訳だと思います。
ここでの彼の主張は極めてシンプルで「人生を楽しもう」ということ。
この曲でもワインを飲んで、楽しい時間を過ごそうではないかと歌っています。
この人は根っからのボヘミアン気質で、最初に放浪の旅に出たのは若干16歳の時です。
それから世界中を放浪しながら、自由人として生きていきました。
我々が旅行を楽しむような感覚で、人生を楽しんでいたのかもしれません。
彼の最後について引用しておきましょう。
2013年2月18日、フランスの自宅で死去。68歳歿。枕元には「燃えないと、輝くことはできない」というメモがあったという。
意味深な言葉ですが、最後の瞬間まで人生を楽しもうとしていた感じがしないでしょうか。
関連記事
ランキング一覧
Spotifyの登録方法(無料)
その他のリンク
■トップページに戻る
※お気に入りに登録お願いいたします!