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ケヴィン・エアーズ(Kevin Ayers)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はケヴィン・エアーズのランキングを作成しました。

彼は万人受けする人ではありません。

特にアヴァンギャルドな初期のアルバムは。

ただ一方で彼にはポップなところがあって、この記事ではそこに焦点を当ててみました。

その合間に初期の名曲を織り交ぜています。

 

1位「Blaming It All on Love」(アルバム:Rainbow Takeaway)

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■曲名:Blaming It All on Love
■曲名邦題:ブレイミング・イット・オール・オン・ラヴ
■アルバム名:Rainbow Takeaway
■アルバム名邦題:レインボウ・テイクアウェイ
■動画リンク:「Blaming It All on Love」

この曲はボサノヴァ、フリー・ソウル、もしくはAORが好きな人にも気に入ってもらえるかもしれません。

私は初期の3作が好みですが、それ以降ではこのアルバムがすばらしいと思います。

既に前作の時点でポップ路線に舵を切っていましたが、このアルバムは更に一歩進めた感じがします。

その立役者はプロデューサーのアンソニー・ムーア(Anthony Moore)。

彼はスラップ・ハッピー(Slapp Happy)というアヴァンポップ・バンドのメンバーで、前衛とポップの両面に造詣が深い人です。

このアルバムには、こういう聞きやすい曲もある一方で「ア・ビュー・フロム・ザ・マウンテン(A View from the Mountain)」みたいな音響的に冒険している曲もあります。

そのさじ加減は実に絶妙で、単に聞きやすくなっただけではありません。

 

2位「Song for Insane Times」(アルバム:Joy of a Toy)

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■曲名:Song for Insane Times
■曲名邦題:狂気の歌
■アルバム名:Joy of a Toy
■アルバム名邦題:おもちゃの歓び
■動画リンク:「Song for Insane Times」

ファースト・アルバムの曲です。

この作品では「続・おもちゃの歓び(Joy of a Toy Continued)」「ぶらんこの少女(Girl on a Swing)」「レディ・レイチェル(The Lady Rachel)」あたりが有名曲です。

どれもすばらしい曲ですが、ケヴィン初心者の方にはこの曲を推します。

比較的聞きやすく、曲名ほど狂気を感じませんし。

ケヴィンはカンタベリー・ロック(Canterbury Rock)を代表するバンド、ソフト・マシーン(Soft Machine)の元メンバーでした。

どうやら円満脱退だったらしく、このアルバムにはソフト・マシーンのメンバーがサポートしています。

まずロバート・ワイアット(Robert Wyatt)のドラムがすばらしいですね。

あと3:05からのデヴィッド・ベッドフォード(David Bedford)のピアノと、マイク・ラトリッジ(Mike Ratledge)のハモンド・オルガンの絡みも聞きものです。

 

3位「Strange Song」(アルバム:Rainbow Takeaway)

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■曲名:Strange Song
■曲名邦題:ストレンジ・ソング
■アルバム名:Rainbow Takeaway
■アルバム名邦題:レインボウ・テイクアウェイ
■動画リンク:「Strange Song」

彼は1970年代後半からポップな曲が増えてきました。

ポップ路線になるとコアなファンは難色を示すものですが、この人の場合は少し事情が異なります。

というのは彼の理解者であればあるほど、元々彼がポップな資質の持ち主であったことは知っているはずですから

以前から彼の音楽は聞きやすいとはいえませんでしたが、根底にはポップな部分が見え隠れしていました。

後期にはそれが表に現れてきただけです。

グラハム・プレスケット(Graham Preskett)のヴァイオリンが、この曲をより気品高い曲にしています。

このアルバムは「Rainbow Takeaway」というタイトルですが、直訳すると「虹を持ち帰り」といった感じでしょうか。

アルバム・ジャケットを見ると、虹がプリントされたバックを持っています。

紙バックっぽいですけども(笑)

それとジャケットの上下を分割して逆にした構図も少し変かもしれません。

このようにどこまで天然でどこまで計算しているのか分からないようなところも、この人らしいと思います。

 

4位「Hymn」(アルバム:Bananamour)

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■曲名:Hymn
■曲名邦題:ヒム
■アルバム名:Bananamour
■アルバム名邦題:いとしのバナナ
■動画リンク:「Hymn」

このアルバムは「Bananamour」という造語のタイトルです。

邦題は「いとしのバナナ」ですが、直訳すると「バナナ愛」といった感じでしょうか。

ちなみに元々このアルバムは「Banana Follies」というミュージカルのために書かれた曲が収録されています。

最初からバナナがテーマだったのですね。

しかしこの人の場合は、たまたまバナナだったのではありません。

この人はバナナが大好きすぎて、常にバナナをアピールしないと気が済まないようなところがあります(笑)

「ミスター・クール(Mr.Cool)」という曲でも唐突にバナナと連呼していますし、「グールー・バナナ(Guru Banana)」つまり「導師バナナ」という曲もあります。

ちなみに彼が主催しているプロダクションの名前もバナナ・プロダクション。

さて話題は変わりますが、この曲は「Hymn」つまり「讃美歌」というタイトルです。

この曲はヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ(The Velvet Underground and Nico)で有名なニコ(Nico)に向けて書いた曲だと言われています。

ただ歌詞を読むと、あまり讃美しているようには思えません。

何があったのか分かりませんが「あなたはもっと学んで、物事の見方を変えなければいけない」という箇所もあります。

バナナ愛という名前のアルバムでニコに苦言を呈しているというのも、やはりどこか奇妙かもしれません。

 

5位「Farewell Again」(アルバム:Sweet Deceiver)

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■曲名:Farewell Again
■曲名邦題:フェアウェル・アゲイン
■アルバム名:Sweet Deceiver
■アルバム名邦題:スウィート・デシーヴァー
■動画リンク:「Farewell Again」

彼は前作から大手のアイランド・レコード(Island Records)に移籍しました。

彼はかなりの美形ですから、初期のデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のようなトリック・スター的ポジションを期待されていたようです。

ただ前作の「夢博士の告白(The Confessions of Dr. Dream and Other Stories)」はプログレっぽい良曲があるものの、方向性に迷いがあるように感じられました。

その点こちらは売り方が定まってきた感じがします。

さてアイランド・レコードは、以前所属していたハーヴェスト・レコード(Harvest Records)に比べて、資金力がありました。

豊富な予算は共演者にも表れています。

前作のライブ・アルバムでは豪華なゲストを呼んでいますし、このアルバムではエルトン・ジョン(Elton John)がピアノで参加していて、話題づくりに一役買っています。

ちなみにエルトンはゲイであることを公言していますが、ケヴィンによるとエルトンは自分好みにしようとしていたようだとのこと。

この曲はアルバムのラストを飾る曲ですが、こういうボッサな路線も悪くありませんね。

アイランド時代に様々な試行錯誤をしたからこそ、後期のポップ路線が花開いたように思います。

 

6位「May I?」(アルバム:Shooting at the Moon)

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■曲名:May I?
■曲名邦題:メイ・アイ
■アルバム名:Shooting at the Moon
■アルバム名邦題:月に撃つ
■動画リンク:「May I?」

初期の彼はサイケ・ポップとでもいえる音楽性でした。

初期の曲はアヴァンギャルドなポップスである一方で、内向的でダウナーな魅力がありました。

どことなく閉鎖的な感じがしましたが、その分親密に感じられたものです。

より病みつき度が高い音楽といえるかもしれません。

たとえばこの曲の1:47からをお聞きください。

私はこういう厭世的な部分も大好きですが、人にすすめる時には少々ためらいを感じます。

それでもおすすめしているわけですが(笑)

さてこの時期彼をサポートしていたのは、ザ・ホール・ワールド(The Whole World)と呼ばれるバンドでした。

あのマイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)もメンバーの1人で、この曲ではアシッド・フォークっぽいギターを弾いています。

涅槃の一歩手前でダウナー・トリップできる曲です。

 

7位「Shouting in a Bucket Blues」(アルバム:June 1, 1974)

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■曲名:Shouting in a Bucket Blues
■曲名邦題:バケツに叫ぶブルース
■アルバム名:June 1, 1974
■アルバム名邦題:悪魔の申し子たち – その歴史的集会より
■動画リンク:「Shouting in a Bucket Blues」

アルバム邦題がすごいです。

「悪魔の申し子たち – その歴史的集会より」とは何でしょうか。答えは参加メンバーにあります。

A面:ブライアン・イーノ(Brian Eno)、ジョン・ケイル(John Cale)、ニコ
B面:ケヴィン・エアーズ

以上が悪魔の申し子たち一同です。

まあ同じイメージの人を狙って集めたのでしょうね。

特に暗黒度が高いと思うのは、ニコによるドアーズ(The Doors)の「ジ・エンド(The End)」をカバー曲。

Nico – The End

何かが憑依しているかのような歌ですが、結構私は好きです。

ニコ、ジョン・ケイル、ブライアン・イーノのファン層に訴求する意図があったかもしれません。

聞きやすいとはいえないA面を聞いた後に、相対的に暗黒度の低いケヴィンの曲でフォローをする流れのような感じがしないでもありません。

私も初めてこのアルバムを聞いた時、B面になって少しホッとしたものです。

ケヴィンによるB面は、特に演奏面で充実した楽曲が並んでいます。

この曲でも3:01からのオリー・ハルソール(Ollie Halsall)のギターソロは大変すばらしく、このアルバムに新鮮な空気を吹き込んでいますね。

オリーは元々パトゥ(Patto)というバンドのギターだった人。

1970年代後半のケヴィンをサウンド面で支えてきた相棒といえる人です。

 

8位「Love’s Gonna Turn You Round」(アルバム:Yes We Have No Mananas)

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■曲名:Love’s Gonna Turn You Round
■曲名邦題:恋に夢中
■アルバム名:Yes We Have No Mananas
■アルバム名邦題:きょうはマニャーナで
■動画リンク:「Love’s Gonna Turn You Round」

このアルバムから彼はアイランド・レコードを離れ、元々在籍していたハーヴェスト・レコードに戻っています。

若干曲が小粒かなという気がしないでもありませんが、ストレンジ・ポップ名盤だと思います。

彼の音楽はよくストレンジ・ポップと表現されます。

ストレンジ・ポップとは、ヒットしそうなポップスとは少し違ったポップスのことです。

商業音楽としては変なところがあったり、過剰なところがあったり、根本的にアピールの方法を間違えているような。

この曲もポップですが、一般大衆の方を向いていない感じがしないでしょうか。

イントロでのつかみが微妙な感じですが、これは商業ポップスとしては致命的かもしれません。

ただこの人のファンになると、そういう商業的なツメの甘ささえ魅力的に思えてくるから不思議です。

 

9位「I’m So Tired」(アルバム:That’s What You Get Babe)

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■曲名:I’m So Tired
■曲名邦題:アイム・ソー・タイアード
■アルバム名:That’s What You Get Babe
■アルバム名邦題:ザッツ・ホワット・ユー・ゲット・ベイブ
■動画リンク:「I’m So Tired」

さて1980年に発表されたアルバムからご紹介します。

このアルバムはサウンド面で変化がありました。急にロックっぽい楽風に変化しています。

ちなみに私は次作「Diamond Jack and the Queen of Pain」を聞いたことがありません。

ただ駄作と言われていて、廃盤になって久しいにも関わらずなかなか再発されていません。

このアルバムまでが一区切りといえるでしょう。

さて今回改めて思ったことがあります。

彼の歌をヘタウマと言う人もいますが、おそらくそれは脱力して歌っているからで、言われるほど下手とは思いません。

ただ声質が地味な印象はぬぐえません。

その声質がはまる曲もあるので弱点とは思いませんが、演奏面で変化や彩りを加える必要があるように思います。

たとえばこの曲のように。

この曲ではグラハム・プレスケット(Graham Preskett)のマンドリンが大きくフィーチャーされています。

心なしかケヴィンの声も少し明るく感じられますね。

 

10位「Whatevershebringswesing」(アルバム:Whatevershebringswesing)

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■曲名:Whatevershebringswesing
■曲名邦題:彼女のすべてを歌に
■アルバム名:Whatevershebringswesing
■アルバム名邦題:彼女のすべてを歌に
■動画リンク:「Whatevershebringswesing」

この曲は本来10位に置く曲ではありません。

長い曲だからということもありますが、幸せな余韻が残したいと思って、あえて最後に置いてみました。

この曲は「Whatevershebringswesing」という曲名ですが、分割してみると「What ever she brings we sing」。

邦題は「彼女のすべてを歌に」、シンプルで良い翻訳だと思います。

ここでの彼の主張は極めてシンプルで「人生を楽しもう」ということ。

この曲でもワインを飲んで、楽しい時間を過ごそうではないかと歌っています。

この人は根っからのボヘミアン気質で、最初に放浪の旅に出たのはわずか16歳の時です。

それから彼は世界中を放浪しながら、自由人として生きました。

我々が旅行を楽しむのと同じ感覚で、人生を楽しんでいたのかもしれません。

彼の最後について引用しておきましょう。

2013年2月18日、フランスの自宅で死去。68歳歿。枕元には「燃えないと、輝くことはできない」というメモがあったという。

ケヴィン・エアーズ ウィキペディア

意味深な言葉ですが、最後の瞬間まで人生を楽しもうとしていた感じがします。

 

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