今回はU2のランキングを作成しました。
このバンドはグラミー賞の受賞回数やライブの観客動員数など、数多くの記録を持っています。
1980年代以降では、世界一のロックバンドといえるかもしれません。
しかし私は、彼らが売れたから今のようになったのではないように思います。
彼らなりの理想を追いかけていたら、後から伝説が付いてきたようなところがあります。
愚直に理想を追い求めることの大切さを思い出させてくれるバンドです。
今回はデビューから「Pop」ぐらいまでの時期を対象に選曲してみました。
- 1 1位「With or Without You」(アルバム:The Joshua Tree)
- 2 2位「New Year’s Day」(アルバム:War)
- 3 3位「I Still Haven’t Found What I’m Looking for」(アルバム:The Joshua Tree)
- 4 4位「Pride (In The Name Of Love)」(アルバム:The Unforgettable Fire)
- 5 5位「Where the Streets Have No Name」(アルバム:The Joshua Tree)
- 6 6位「One」(アルバム:Achtung Baby)
- 7 7位「Gloria」(アルバム:October)
- 8 8位「Sunday Bloody Sunday」(アルバム:War)
- 9 9位「Wire」(アルバム:The Unforgettable Fire)
- 10 10位「Two Hearts Beat as One」(アルバム:War)
- 11 11位「I Will Follow」(アルバム:Boy)
- 12 12位「Staring At The Sun」(アルバム:Pop)
- 13 ランキング一覧
1位「With or Without You」(アルバム:The Joshua Tree)
■曲名:With or Without You
■曲名邦題:ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー
■アルバム名:The Joshua Tree
■アルバム名邦題:ヨシュア・トゥリー
■動画リンク:「With or Without You」
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このアルバムの冒頭の3曲は、すべてシングルカットされていて、3曲とも1位を獲得しています。
この曲では「君がいてもいなくても、僕は生きていくことができない」と歌われています。
この曲の解釈については、宗教的な背景を持っているなど諸説あるようですが、確かにとても分かりにくい内容です。
ここでは私の解釈を書きます。
当時彼らは様々なチャリティイベントに参加したり、社会的な問題に関心を寄せていました。
このアルバムにも政治的な内容の曲が数多く収録されています。
アメリカの外交政策を批判した曲、過酷な労働問題、不自然な失踪者の問題など。
彼らはとても生真面目なバンドで、そうした様々な問題から目を背けることなく、積極的にコミットしようとしていました。
「君がいてもいなくても、僕は生きていくことができない」という箇所は、たとえ個人的な恋愛で充足していたとしても、問題が山積しているこの世界では、どうやって生きていけばいいのかと訴えているように思いました。
私は「みんなの幸せなくして個人の幸せもない」、そういう意味で解釈しています。
2位「New Year’s Day」(アルバム:War)
■曲名:New Year’s Day
■曲名邦題:ニュー・イヤーズ・デイ
■アルバム名:War
■アルバム名邦題:WAR(闘)
■動画リンク:「New Year’s Day」
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彼らの人気が高まるきっかけとなった曲です。
この曲で彼らは初めて、イギリスのシングルチャートでトップ10に入りました。
単純に新年について歌った曲ではなく、政治的な主張を持った曲です。
この曲は後にポーランド大統領となったワレサ議長の労働組合「連帯」を支援する目的で書かれています。
当時社会主義国だったポーランドにも、民主化の波が押し寄せていました。
U2はこの曲で民主化運動を支持する姿勢を表明しています。
海外では多くのセレブが、自分の持つ影響力を背景に政治的な発信をすることがあります。
しかし当時のU2はそれほど有名ではなく、影響力もありませんでしたが、それでも発信をしていたというわけです。
このアルバムがレコーディングされた1982年、ポーランドでは戒厳令が施行されていました。
そういう中でも「連帯」は勢力を伸ばしていましたが、すると今度は「連帯」のメンバーが次々と当局に拘束されてしまいました。
この曲ではそういう弾圧に対して、抗議の意思を示しています。
新年が始まっても何一つ状況は変わらないように見える。しかし俺たちはこの状況を打破できるはずだ。
そう訴えている曲です。
おそらくこの曲のヒットによって「連帯」のメンバーは随分励まされたことでしょう。
3位「I Still Haven’t Found What I’m Looking for」(アルバム:The Joshua Tree)
■曲名:I Still Haven’t Found What I’m Looking for
■曲名邦題:アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー (終りなき旅)
■アルバム名:The Joshua Tree
■アルバム名邦題:ヨシュア・トゥリー
■動画リンク:「I Still Haven’t Found What I’m Looking for」
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この曲は彼らの代表作「The Joshua Tree」からの選曲です。
そもそも「The Joshua Tree」とはどういう意味の言葉か調べてみました。
アメリカのカルフォルニア南東部に「ジョシュア・ツリー国立公園」というところがありますが、そこに生息している木のことだそうです。
こんな感じの木です。
国立公園とあるので緑豊かな場所かと思いきや、砂漠に近い場所のようですね。
しかしそうした土地にありながら、意外なほど太く立派な枝や幹を持った木です。
私の勝手な解釈ですが「The Joshua Tree」とは荒涼とした土地でもたくましく生きていくというイメージなのかなと思いました。
さてこの曲は「I Still Haven’t Found What I’m Looking for」という曲名ですが、直訳すると「俺はまだ探し物を見つけられていない」という意味です。
彼らはこの砂漠のような場所で、どのような希望を探そうとしていたのでしょうか。
4位「Pride (In The Name Of Love)」(アルバム:The Unforgettable Fire)
■曲名:Pride (In The Name Of Love)
■曲名邦題:プライド
■アルバム名:The Unforgettable Fire
■アルバム名邦題:焔
■動画リンク:「Pride (In The Name Of Love)」
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この曲はアメリカの公民権運動の指導者、キング牧師に捧げられています。
キング牧師は人々が肌の色に関係なく平等に暮らせる社会を訴えていました。
キング牧師には「私には夢がある(I Have a Dream)」という有名な演説があって、昔私は英語の勉強で随分お世話になりました。
音楽面でいえば、このアルバムは大きな節目を迎えていました。
前作「War」で彼らは人気バンドの仲間入りを果たしましたが、このアルバムから彼らはプロデューサーを変更するという賭けに出ました。
スティーヴ・リリーホワイト(Stephen Lillywhite)からブライアン・イーノ(Brian Eno)とダニエル・ラノワ(Daniel Lanois)のコンビに替わっています。
この当時の彼らはまさしく伸び盛りで、窮屈な殻を脱皮するかのように変化していました。
「War」が大ヒットしたのにプロデューサーや路線を替え、「The Joshua Tree」が大成功したのに、またプロデューサーと路線を変更しています。
彼らはあることを達成したら、次の段階に進むためには変わらなければいけないと思っているのかもしれません。
5位「Where the Streets Have No Name」(アルバム:The Joshua Tree)
■曲名:Where the Streets Have No Name
■曲名邦題:ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム(約束の地)
■アルバム名:The Joshua Tree
■アルバム名邦題:ヨシュア・トゥリー
■動画リンク:「Where the Streets Have No Name」
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彼らの前進しようという姿勢は音楽にも表れています。
この曲の始まりは「僕は逃げ出したい、僕は隠れたい、僕を閉じ込めているこの壁を壊したい」という言葉から始まります。
では彼らは壁を壊してどこに向かおうとしているのでしょうか。
彼らは曲名にもなっている「名前のない場所」に向かおうとしているようです。
「ここでないどこかへ」というふわふわした気持ちは、誰にでもあるかもしれません。
ただ彼らは愚直なほど一直線です。
「黙って行けよ。行けばわかるさ」みたいなところがあります。
この曲ではジ・エッジ(The Edge)のギターのカッティングが、愚直と思えるほど執拗に繰り返されています。
この曲の最後は、次のような言葉で締めくくられています。
「僕にできるのはそれだけ」
理想を追い求める彼らの姿勢がよく表れている曲だと思います。
6位「One」(アルバム:Achtung Baby)
■曲名:One
■曲名邦題:ワン
■アルバム名:Achtung Baby
■アルバム名邦題:アクトン・ベイビー
■動画リンク:「One」
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私はこの曲までの6曲が「6大名曲」だと思います。
便宜上順位を付けましたが、どれが1位でもおかしくありません。
このアルバムで彼らは大きく変わりました。ダンス・ミュージックへの接近です。
私はそうしたテクノロジーを活かした音楽も好きですが、同じ基準では判断しにくいと思い、今回はロック系の曲だけに限定しました。
ダンス三部作である「Achtung Baby」「Zooropa」「Pop」で、これまでのファンは大変混乱しました。
賛否両論がありましたが、当時は賛が3割、否が7割ぐらいかもしれません。
しかし今では彼らの偉大な業績の一部として認識されています。
その三部作を改めて聞きなおすと、スローな曲では意外と従来のような曲が多いことに気が付きます。
しかも名曲ばかりです。
この曲はそうした曲の代表格といえるかもしれません。
この曲で父親は自分が同性愛者であることを打ち明けた息子に対して、こう言い聞かせます。
我々は一体だ。しかし同じではない。
含蓄のある言葉だと思います。
この歌詞を書いたボノ(Bono)が追い求める理想の一端が垣間見えてくる気する曲です。
7位「Gloria」(アルバム:October)
■曲名:Gloria
■曲名邦題:グロリア
■アルバム名:October
■アルバム名邦題:アイリッシュ・オクトーバー
■動画リンク:「Gloria」
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初期の彼らには、後の時代にはない魅力がありました。
青くささとかシンプルなロックサウンドです。
失礼を承知でいえば、こじんまりとしたまとまりの良さみたいなところも感じられます。
しかし誰かとU2について話すと、このセカンドアルバムが一番好きだという声が意外と少なくありません。
ちなみに「魂の叫び(Rattle and Hum)」が一番好きだという人には出会ったことがありませんけどね。
ところがウィキペディアではこのアルバムは、人気がないと書かれています。
確かにこのアルバムは地味です。
ただ曲が粒ぞろいなため、自分だけの名曲が見つかりやすいアルバムでもあります。
またこのアルバムは、宗教的な葛藤がテーマの曲が多く、彼らの主張が伝わりにくいところがあるかもしれません。
ちなみにメンバーは敬虔なクリスチャンばかりです。
ただアダム・クレイトン(Adam Clayton)だけは、1人全く違うタイプのようです。
アダムはU2のメンバーの中では一番外向的ですが、スキャンダルも多く、いわゆるロックスター気質の人のようです。
上のアルバムジャケットでは、一番左の金髪がアダムです。
髪色のせいかもしれませんが、他の3人が悩める青年みたいな感じなのに対して、アダムだけ少しやんちゃな感じがしないでしょうか。
8位「Sunday Bloody Sunday」(アルバム:War)
■曲名:Sunday Bloody Sunday
■曲名邦題:ブラディ・サンデー
■アルバム名:War
■アルバム名邦題:WAR(闘)
■動画リンク:「Sunday Bloody Sunday」
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曲名からも想像できるように、この曲は政治的なテーマを扱っています。
イギリス陸軍が非武装の市民に向けて発砲し死者を出した「血の日曜日事件」を取り上げています。
「多くの命が失われた。教えてほしい。誰が勝利したというのだ」
そう訴えています。
しかし彼らはアイルランドの反イギリス運動を擁護しているわけではなく、武力が行使されたことを非難しているようです。
変に誤解されないよう、ライブでこの曲が演奏される時には、非暴力を示す白旗を掲げています。
上に挙げた動画でも3:01から白旗が登場していますが、その際にマーチのリズムを刻むラリー・マレン・ジュニア(Larry Mullen, Jrの)ドラムがすばらしいです。
ラリー・マレン・ジュニアはマーチングバンドに所属していたキャリアの人ですから、その時の経験がこの曲に活きているかもしれません。
彼らは政治色が強い曲が多いので、過激な主張をしていると思われがちです。
しかし彼らの考え方を知っていくと、それほど過激なことを言っているとは思えません。
ただ非暴力を訴える姿勢が熱血的なので、誤解されやすいと思いますけどね。
9位「Wire」(アルバム:The Unforgettable Fire)
■曲名:Wire
■曲名邦題:ワイヤー
■アルバム名:The Unforgettable Fire
■アルバム名邦題:焔
■動画リンク:「Wire」
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彼らはこのアルバムからブライアン・イーノとダニエル・ラノワのプロデュースになりました。
このアルバムからの変化では、音響面ばかりが言及されがです。
私は確かに音響面の変化もあるとは思いますが、それほど大きい変化とは思いません。
「New Year’s Day」などのように、以前からエッジのギターには、特徴的な音響処理が施されていました。
カミソリのようなギターのカッティング、そしてディレイやエコーなどを駆使した音響効果は、スティーヴ・リリーホワイトとエッジがつくり上げました。
ただブライアン・イーノとダニエル・ラノワは、熱い部分はより熱く鋭く、クールなところはより冷ややかにしているように思います。
たとえばこの曲です。
この曲はほぼキターが主役といってもいい曲ですが、エッジの特徴を抜き出して、それだけを徹底的にクローズアップしています。
彼らの個性を活かしたまま、よりメリハリのあるプロデュースをしていているのはさすがです。
10位「Two Hearts Beat as One」(アルバム:War)
■曲名:Two Hearts Beat as One
■曲名邦題:トゥー・ハーツ・ビート・アズ・ワン
■アルバム名:War
■アルバム名邦題:WAR(闘)
■動画リンク:「Two Hearts Beat as One」
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彼らが一番熱血で暑苦しい時期の曲です。
このアルバムジャケットはとても有名ですが、このモデルはボノの友人の弟らしいです。
この少年はファーストアルバムだけでなく、このサードアルバムのジャケットに再登場しています。
ファーストアルバムの頃はまだ子供っぽかったのですが、それから3年経過して、この頃は眼光鋭い少年へと成長しています。
その変化はバンドの成長と社会派な姿勢を強めたことを、そのまま表しているかのようです。
ちなみに上に引用した動画では、47秒のところでこの少年が登場していています。
彼の名前はピーター・ローウェン(Peter Rowen)といって大変な美少年ですが、後に彼は俳優や写真家としても活躍しています。
さてこの曲は彼らにしては珍しく、ストレートなラブソングです。
2つのハートが1つの鼓動を刻むという、情熱的ですが少し暑苦しい曲かもしれません。
11位「I Will Follow」(アルバム:Boy)
■曲名:I Will Follow
■曲名邦題:アイ・ウィル・フォロー
■アルバム名:Boy
■アルバム名邦題:ボーイ
■動画リンク:「I Will Follow」
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ファーストアルバムからの選曲です。
プロモーションビデオのメンバーの姿は、とても初々しいですね。
ボノは毛先を遊ばせていて、デュラン・デュランのメンバーにいてもおかしくないルックスです。
今では風格のあるボノは、当時童顔のイケメンだったのですね。
ボノは子供の頃に母親を亡くしていますが、この曲は母親に対する思慕の気持ちがテーマの曲です。
空想の中で彼は母親に出会いますが、母親はボノがこちらの世界に来てはいけないと思い、その場を立ち去ろうとします。
しかしボノは母親に付いていこうとします。
少し切ない内容ですね。
アルバムジャケットも、この曲のテーマに沿って無垢な少年が掲載されています。
12位「Staring At The Sun」(アルバム:Pop)
■曲名:Staring At The Sun
■曲名邦題:ステアリング・アット・ザ・サン
■アルバム名:Pop
■アルバム名邦題:ポップ
■動画リンク:「Staring At The Sun」
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彼らは当初、音楽にそれほど造詣が深かったわけではなかったようです。
昔読んだインタビューで、誰もが知っている有名アーティストすら知らず恥ずかしい思いをしたという発言を読んだことがあります。
デビュー時彼らは20歳ぐらいでしたから、詳しくなくても仕方ありません。
しかしその後彼らは、様々な音楽を貪欲に吸収していきました。
彼らには様々な音楽を知っていく過程で、自らの血肉を通して消化していくようなところがあります。
彼らの音楽的変遷は、彼らが自らの身体を通して学んだ歴史でもあります。
だからこそ彼らの音楽には借り物という感じはなく、リアルな説得力が感じられます。
彼らの音楽が本物だということは、この曲を聞くだけでご理解いただけると思います。
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