今回はエルトン・ジョンのランキングを作成しました。
選曲していて改めて思ったのは、この人はやはり卓越したソングライターだということです。
ビートルズ(The Beatles)でいえば、「レット・イット・ビー(Let It Be)」クラスの曲を、いくつか書いています。
普通のシンガーソングライターが一生に一度も書けないような曲を、コンスタントに書いている感じがします。
しかもそこに表現力豊かなボーカルとビアノ演奏。バーニー・トーピン(Bernie Taupin)の含蓄のある歌詞が加わるのですから、もう鬼に金棒です。
ただ彼の良い曲の多くは、1970年代に集中しているように思います。
私の感覚では彼の名曲のうち、70%から80%は1970年代に集中しているように思います。
そこで今回はその時期だけに絞って選曲してみました。
- 1 1位「Goodbye Yellow Brick Road」(アルバム:Goodbye Yellow Brick Road)
- 2 2位「Your Song」(アルバム:Elton John)
- 3 3位「Someone Saved My Life Tonight」(アルバム:Captain Fantastic & the Brown Dirt Cowboy)
- 4 4位「Crocodile Rock」(アルバム:Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player)
- 5 5位「Bennie and the Jets」(アルバム:Goodbye Yellow Brick Road)
- 6 6位「Are you ready for love」(アルバム:The Complete Thom Bell Sessions)
- 7 7位「Daniel」(アルバム:Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player)
- 8 8位「Rocket Man」(アルバム:Honky Chateau)
- 9 9位「Part-Time Love」(アルバム:A Single Man)
- 10 10位「Don’t Let the Sun Go Down on Me」(アルバム:Caribou)
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1位「Goodbye Yellow Brick Road」(アルバム:Goodbye Yellow Brick Road)
■曲名:Goodbye Yellow Brick Road
■曲名邦題:グッバイ・イエロー・ブリック・ロード
■アルバム名:Goodbye Yellow Brick Road
■アルバム名邦題:黄昏のレンガ路
■動画リンク:「Goodbye Yellow Brick Road」
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この曲は「Yellow Brick Road」つまり「黄色いレンガの道」に別れを告げている内容の曲です。
「黄色いレンガの道」とは何でしょうか。
それは都会の道のことで、その道を歩いていけば、きらびやかな成功や富に繋がるとされています。
この言葉は小説や映画で有名な「オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)」から取られているそうです。
つまりはこの時彼は、都会で成功へと続く道を歩くのを止めて、本来の自分に戻れる田舎暮らしに戻ると表明したということです。
ジャケットでもがれきの向こうには、緑豊かな田園がありますね。
この当時エルトンは絶頂期でした。
アルバムやシングルを出せば、大ヒットは当たり前です。
一説によるとこの曲は、エルトンの作詞パートナーバーニー・トーピンが、エルトンに向けたメッセージだと言われています。
つまり「エルトン、お前は成功のために音楽をやっているんじゃないだろう。一度原点に戻ろうぜ」ということです。
ちなみにバーニーは電気も通っていないぐらいの田舎の出身で、エルトンとは17歳からという古くからの友達です。
単なるビジネスパートナーではありません。
おそらく2人が自分らしくいられる場所は、都会ではなく田舎ということなのでしょう。
エルトンはその意を汲んで見事なメロディを書き、しかもアルバムタイトルにしました。
しかしこの曲は本当に沁みる曲です。
エルトンの曲は迷っている人の背中を押してくれるようなところがありますが、この曲はその筆頭に位置する名曲です。
人生の節目に聞いてみてはいかがでしょうか。
2位「Your Song」(アルバム:Elton John)
■曲名:Your Song
■曲名邦題:僕の歌は君の歌
■アルバム名:Elton John
■アルバム名邦題:僕の歌は君の歌
■動画リンク:「Your Song」
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この曲はエルトンがまだ駆け出しだったセカンドアルバムに収録されています。
彼がスターの仲間入りをしたのは、このアルバムからです。
プロデューサーのガス・ダッジョン(Gus Dudgeon)、作詞パートナーのバーニーとの鉄壁のトライアングルが生み出した、最初の大ヒットでした。
この曲にはおもしろい逸話があります。
今では不朽の名作との呼び声が高いこの曲は、元々シングルのB面にすぎませんでした。
A面は「パイロットにつれていって(Take Me to the Pilot)」で、この曲は裏面でした。
当時の音楽業界ではラジオが大きな影響力を持っていて、いかにディスクジョッキーに好まれる曲をシングルカットするかが、レコード会社の関心事でした。
そのあたり雰囲気は、クイーン(Queen)の大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」でも描かれていましたね。
しかしこの曲がB面だったにもかかわらず、ラジオのDJはこちらの方ばかりかけていたそうです。
そこで今ではこちらがA面となって「パイロットにつれていって(Take Me to the Pilot)」がB面と、立場が逆転してしまいました。
エルトンはこの時若干23歳です。
その若さでこういう普遍性を感じさせるメロディが書けるとは、本当に恐ろしい才能です。
3位「Someone Saved My Life Tonight」(アルバム:Captain Fantastic & the Brown Dirt Cowboy)
■曲名:Someone Saved My Life Tonight
■曲名邦題:僕を救ったプリマドンナ
■アルバム名:Captain Fantastic & the Brown Dirt Cowboy
■アルバム名邦題:キャプテン・ファンタスティック
■動画リンク:「Someone Saved My Life Tonight」
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この曲が生まれる背景にも、有名な逸話があります。
エルトンはデビュー当時女性の婚約者がいましたが、エルトンは結婚に前向きになれなかったようです。
そこで飲みに行った時に友人のロング・ジョン・ボルドリー(Long John Baldry)に悩みを打ち明けたところ、結婚を取りやめた方がいいのではないかとアドバイスされたそうです。
ちなみにエルトン・ジョンという名前は芸名ですので、本名ではありません。
「エルトン」は、後にソフト・マシーン(Soft Machine)で活躍するエルトン・ディーン(Elton Dean)から取られて、「ジョン」は、この時アドバイスしたロング・ジョン・ボルドリー(Long John Baldry)から取られています。
信頼していた友人なのですね。
エルトンは友人のアドバイスを受けて、婚約を破棄をします。
この曲のタイトルは直訳すると「今夜誰かが僕の人生を救った」ですが、「プリマドンナ」と呼ばれる女性は、むしろ婚約を破棄された方です。
つまり「僕を救ったプリマドンナ」というのは、歌詞の意味を取り間違えて付けられたということになります。
婚約を破棄された女性には同情しますが、当時エルトンは自殺を考えるぐらい悩んでいたそうですから、仕方ない気もしますね。
この曲はエルトンのボーカルの切実さが聞きどころです。まさに絶唱です。
4位「Crocodile Rock」(アルバム:Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player)
■曲名:Crocodile Rock
■曲名邦題:クロコダイル・ロック
■アルバム名:Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player
■アルバム名邦題:ピアニストを撃つな!
■動画リンク:「Crocodile Rock」
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エルトン中でも屈指の楽しい曲です。
私はこの曲でこの人を知りました。
当時パンクを聞いていた中学生の私は、変な帽子を被ってド派手なサングラスをかけていたファッションが、到底受け入れられませんでした。
まあリアルで中二病真っ只中だったのですね。
この曲も最初カッコ悪いと思っていました。
直訳すると「ワニロック」って何だよと思いましたし、歌も裏声で変な弾け方をしているように思われましたし。
ただその割には聞いていましたけどね(笑)
なんだかとても楽しい曲だと思っていました。
この曲は架空のヒットソング「Crocodile Rock」があったことを、後から振り返って懐かしく思い出すという設定の曲です。
若い頃は「Crocodile Rock」を聞いて、彼女がドレスを着ていれば、最高の金曜日の夜が過ごせたという内容です。
凝った設定がおもしろいです。
当時斜に構えていた私はそんな歌詞のことなど知りもしませんでしたが、まんまと歌詞の通り聞いて過ごしていたというわけです。
5位「Bennie and the Jets」(アルバム:Goodbye Yellow Brick Road)
■曲名:Bennie and the Jets
■曲名邦題:ベニーとジェッツ (やつらの演奏は最高)
■アルバム名:Goodbye Yellow Brick Road
■アルバム名邦題:黄昏のレンガ路
■動画リンク:「Bennie and the Jets」
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このアルバムは2枚組で、彼の代表作と言われています。
確かにすばらしい曲が多く、ほぼ同レベルの曲が他にもいくつかあります。
なにせ「土曜の夜は僕の生きがい(Saturday Night’s Alright for Fighting)」や「風の中の火のように(Candle in the Wind)」も収録されているのですから。
それらの輝かしい曲を差し置いてこの曲を選曲してみました。
エルトンの曲は洗練されているというイメージはありません。むしろ少しダサさ寄りの印象があります。
しかし中にはこの曲のようにおしゃれな曲もあります。
この曲はとても洗練されていて、曲名から連想したわけではありませんが、ベニー・シングス(Benny Sings)あたりを思い起こさせるところがあります。
実際にこの曲はリスナーに、以前の曲とは違った受け入れられ方をしています。
エルトンの曲では初めてソウル・チャートのトップ40入りをして、ソウルファンにも人気が高い曲です。
おそらくファルセットボーカルが、受けたのかもしれません。
エルトンは後にフィリーソウルに接近しましたが、この曲あたりからソウルっぽさが表面化してきたように思います。
6位「Are you ready for love」(アルバム:The Complete Thom Bell Sessions)
■曲名:Are you ready for love
■曲名邦題:恋にご用心
■アルバム名:The Complete Thom Bell Sessions
■アルバム名邦題:コンプリート・トム・ベル・セッションズ
■動画リンク:「Are you ready for love」
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「Bennie and the Jets」の延長線上にあると言えそうなのがこの曲です。
この時期エルトンはショービジネスの世界に疲弊して、ほぼ引退状態にありました。
曲を制作していましたが、完成できず頓挫していました。
そうした行き場の失っている曲を、当時破竹の勢いだったフィリーソウルの大物プロデューサー、トム・ベル(Thom Bell)に委ねて完成させたのがこの曲です。
オリジナルアルバムとしてはカウントされないこの6曲入りミニアルバムは、隠れた名盤といえる出来です。
他にも「カントリー・ラヴ・ソング(Country Love Song)」など珠玉のナンバーが入っています。
しかしエルトンのアルバムのクレジットに、トム・ベルやM.F.S.B.、スピナーズ(The Spinners)の名前があるなんて、不思議な感じがしないでしょうか。
ちなみにこの曲は、後にクラブヒットして、30年近く経過してからチャートの1位を獲得するという珍現象を引き起こしています。
昔のエルトン・ジョンしか知らない方はご存知ない曲かもしれませんが、現時点で代表曲を選ぶとしたら欠かせない曲です。
7位「Daniel」(アルバム:Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player)
■曲名:Daniel
■曲名邦題:ダニエル
■アルバム名:Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player
■アルバム名邦題:ピアニストを撃つな!
■動画リンク:「Daniel」
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この曲はバーニーの歌詞を堪能したい曲です。
この曲の主人公が慕う兄は、ベトナム戦争で視力を失ってしまいます。
戦争から帰還した兄は祖国から英雄扱いされていて、弟にとっては自慢の兄です。
しかし兄はそうした喧噪に巻き込まれることを避け、自国を去ってスペインに旅立とうとしています。
おそらく戦争の悲惨さを訴えた歌詞だと思われますが、直接的な表現は避けられています。
ここにあるのは、兄がいなくなることを寂しがる弟の視点だけです。
「あなたは僕にとって今でも大空に輝く星のような存在だよ」という箇所が、とても切ないです。
エルトン・ジョンの音楽では、歌詞の比重はとても大きいと思います。
時にはこの曲のように小説の一部分を切り取ったような歌詞があって、歌詞だけでも堪能することができます。
この曲の歌詞は、兄が飛行機で旅立つ場面だけですが、そこから様々な背景が見えてくる広がりがすばらしいです。
その歌詞に対して、穏やかで繊細なメロディ書いて応え、アルバムの1曲目に配置したエルトンもさすがです。
8位「Rocket Man」(アルバム:Honky Chateau)
■曲名:ロケット・マン
■曲名邦題:Rocket Man
■アルバム名:Honky Chateau
■アルバム名邦題:ホンキー・シャトー
■動画リンク:「Rocket Man」
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この曲は以前政治的に大きく取り上げられたことがあります。
アメリカのトランプ大統領が、ミサイルを飛ばして挑発する北朝鮮の金正恩に対して「ロケットマン」と呼んだことがありました。
ただこの曲の歌詞はそういう内容ではありません。
この曲では、宇宙飛行士が家族の元を離れて寂しい思いをしている心情が歌われています。
主人公は宇宙飛行士としての名声よりも、一人の家庭人、父親としての幸せを望んでいるのかもしれません。
「火星は子供を育てるのに良い環境とは言えないね」というブラックジョークを言っている箇所もあります。
バーニーの歌詞を読んでいくと、一貫したメッセージがあると感じることがあります。
「いくら成功したり名声を得たとしも、一人の人間として、本来の自分らしくいることが大切ではないか」というメッセージです。
そしてそれは、エルトン自身も共有していることでしょう。
同じ感覚を共有するシンガー兼作曲家と作詞家の出会いが、全盛期のエルトンマジックを生み出しました。
ちなみにエルトンがバイセクシャルであることは、ご存知の方も多いと思います。
一方バーニーの恋愛対象は女性だけのようですので、そういう関係ではないようです。
なお上で取り上げたオフィシャル動画ですが、とても美しい映像です。
オフィシャルビデオにしては珍しくアニメです。
とてもすばらしい作品なので、この曲を知っているという人も、ぜひご覧になってみてください。
9位「Part-Time Love」(アルバム:A Single Man)
■曲名:Part-Time Love
■曲名邦題:パート・タイム・ラヴ
■アルバム名:A Single Man
■アルバム名邦題:シングル・マン
■動画リンク:「Part-Time Love」
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1曲だけ超ポップな曲を選びたいと思って選曲してみました。
このアルバムの前にエルトンは大きな決断をしています。
全盛期のヒットを飛ばしてきたガス・ダッジョン、バーニー・トゥピンから離れています。
このアルバムの前にエルトンは一度引退宣言をして、サッカークラブの経営やプロデュースを中心とした生活をしていました。
ロックスターという立場から離れたかったのかもしれません。
このアルバムジャケットは、トレードマークの派手グラサンではなく素顔をさらしています。
髪が薄くなったのを隠すためだと揶揄される帽子を被り、見晴らしの良い場所にポツン一人たたずむエルトン。
そこに書かれている文字は、「独身男 エルトン・ジョン」
この捨て身の自虐センスはなかなかではないでしょうか。
プロデュースは、エルトン自身とクライヴ・フランクス(Clive Franks)に変わったせいか、音づくりも以前とは違って洗練されてきています。
作詞はゲイリー・オズボーン(Gary Osborne )と組んでいますが、個人的にはバーニーに及ばないように思います。
この曲は「Part-Time Love」つまり不倫というテーマです。
「みんな不倫を求めているのさ」というフレーズもあって、やはりエルトンはこの時期不安定だったのかなと思ったりもします。
ただこの曲は英国ポップと呼ぶには少々ひねりが少ない気もしますが、エルトンのポップセンスがよく出た佳曲だと思います。
10位「Don’t Let the Sun Go Down on Me」(アルバム:Caribou)
■曲名:Don’t Let the Sun Go Down on Me
■曲名邦題:僕の瞳に小さな太陽
■アルバム名:Caribou
■アルバム名邦題:カリブ
■動画リンク:「Don’t Let the Sun Go Down on Me」
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私は若い頃この曲の良さが分かりませんでした。
長くてかったるい曲だと思っていましたし、このアルバムも全盛期にしては今一つな感じがして、ほとんど聞かずにいました。
ジャケットも大阪のおっちゃんみたいですしね。
しかし今回聞き返したところ、初めて良さが理解できた気がしました。
この曲はジワる曲なのですね。
若い頃は手っ取り早く良さが伝わる曲に飛びつきがちです。
一方この曲はピークに至るまでの時間がとても長いです。全体で5分半ですが、盛り上がり始めるのは2分過ぎぐらいからです。
昔の私はこの間に、曲を飛ばしたくてウズウズしていたのですね。
昔の私は、ひたすら聞く枚数をこなしたいと思っていて「はい次」という感じで、次の曲や次のアルバムに飛びついていました。
ただそういう性急なメンタルでは、理解が難しい曲があるということでしょう。
それから年月が経過して、今では多くの曲を聞き進むフェーズは終わり、純粋に音楽を楽しむことを重視するフェーズに移行しています。
ようやく私もこの曲の良さを理解できるようになってきたようです。
この曲はただ浸ればいいだけなのですね。
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