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スフィアン・スティーヴンス(Sufjan Stevens)の名曲名盤12選【代表曲・隠れた名曲】

今回はスフィアン・スティーヴンスのランキングを作成しました。

名前は知っていても曲を聞いたことがない方が多いかもしれません。

特に聞いていただきたいのは、エリオット・スミスが好きな人です。

聞かないでいるのは惜しい人です。

 

1位「Chicago」(アルバム:Illinois)

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■曲名:Chicago
■曲名邦題:シカゴ
■アルバム名:Illinois
■アルバム名邦題:イリノイ
■動画リンク:「Chicago」

アルバム・タイトルはイリノイ州、曲名はイリノイ州で一番大きな都市シカゴです。

この曲の主人公はシカゴに向かう車内、自分にこう言い聞かせています。

これまで多くの過ちを犯してきたけれど、今度の恋はきっとうまくいく。

この曲はシカゴである必然性が感じられません。

しかし彼はこのアルバムを製作するにあたり、イリノイ州とシカゴについてかなり調べたそうです。

アルバムジャケットには「Sufjan Stevens Invites You To: Come On Feel the ILLINOISE」つまり「スフィアン・スティーヴンスがあなたを招待します:さあ、イリノイを感じてください」と記載されています。

ご当地ソング路線が功を奏したのか、この作品は初めてアルバムチャートにランクインしました。

その後このアルバムは様々な音楽誌の年間ランキングで上位を獲得しました。

 

2位「You Are the Rake」(アルバム:A Sun Came)

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■曲名:You Are the Rake
■アルバム名:A Sun Came
■アルバム名邦題:ア・サン・ケイム
■動画リンク:「You Are the Rake」

この曲はラブ・ソングで、様々な「君は〇〇だ」という言い方で、彼女がどういう存在かを言い表そうとしています。

ちなみに曲名の「You Are the Rake」とは「君は熊手だ」という意味です。

熊手は枯葉や干し草などを集める時に使用される道具。

正直何を言いたいのか意味が分かりません。

そもそもこの人の歌詞はイメージが飛躍しすぎて、意味がわかりにくいです。

ただ以下の箇所は比較的分かりやすいかもしれません。

「戦争が近づいた時、彼女は洞窟になった」

主人公にとって彼女は避難場所のような存在のようです。

この人は自分のウェブサイトに小説を掲載するような人です。

もし興味のある方は彼のオフィシャル・サイトで小説を読んでみるといいかもしれません。

 

3位「Should Have Known Better」(アルバム:Carrie & Lowell)

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■曲名:Should Have Known Better
■アルバム名:Carrie & Lowell
■アルバム名邦題:キャリー・アンド・ローウェル
■動画リンク:「Should Have Known Better」

彼はエリオット・スミス(Elliott Smith)っぽいと言われることがあります。

確かにこの曲などはメロディの肌触りが似ています。

ちなみに私は以前エリオット・スミスのランキング記事を書いています。

エリオット・スミス(Elliott Smith)の名曲名盤10選

さてこのアルバム名の「キャリー・アンド・ローウェル」とは、彼の母親キャリーと、義父のローウェル・ブラムス(Lowell Brams)のこと。

両親はスフィアンが幼い頃に離婚しています。

母親は精神を病んでいたため、スフィアンは実の父親の下で育てられました。

母親は離婚後すぐに元クラスメートのローウェルと再婚しましたが、それもすぐに離婚しています。

しかしその後もスフィアンと義父ローウェルの交流は続き、共同名義で「アポリア(Aporia)」というアルバムを製作したり、彼が設立したインディレーベル「Asthmatic Kitty」の運営責任者を任せています。

スフィアンにとってローウェルは、義父という存在を超えて、心の支えだったかもしれません。

一方離婚後の母親は、ずっと音信不通の状態でした。

彼は2012年にようやく母親と再会しましたが、その時彼女は末期がんで病床にいました。

このアルバムは母親が亡くなったことを受けて、気持ちを整理するために製作されたんだそうです。

曲名は「Should Have Known Better」は「もっと知っておくべきだった」という意味。

3歳か4歳の頃ビデオ店に置き去りにされた心の傷ついて語られたり、それでも手紙ぐらいは書くべきではなかったかと自問自答しています。

母親に対する愛憎入り乱れる気持ちが歌われている曲です。

 

4位「The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!」(アルバム:Illinois)

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■曲名:The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!
■アルバム名:Illinois
■アルバム名邦題:イリノイ
■動画リンク:「The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!」

彼の曲は、曲名が少し長いと思われるかもしれません。

しかしこのアルバムにはもっと長い曲名が多く、この曲は短い方です。

ちなみに一番長い曲名はこんな感じです。

「The Black Hawk War, or, How to Demolish an Entire Civilization and Still Feel Good About Yourself in the Morning, or, We Apologize for the Inconvenience but You’re Going to Have to Leave Now, or, ‘I Have Fought the Big Knives and Will Continue to Fight Them Until They Are Off Our Lands!」

もはや曲名とは思えません(笑)

こんな長い曲名ばかり22曲収録されているのですから、曲名を読むだけでちょっとした読書気分が味わえます。

しかしこの人は歌詞だけでなく、音楽的にも情報量が多いかもしれません。

この人の音楽は、チェンバー・ロックとかチェンバー・ポップと言われています。

この曲などはオーケストラル・ポップとでも言えるかもしれません

彼はブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)が目指したポケット・シンフォニーの系譜を、正しく受け継いだ人だと思います。

 

5位「For the Widows in Paradise, for the Fatherless in Ypsilanti」(アルバム:Michigan)

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■曲名:For the Widows in Paradise, for the Fatherless in Ypsilanti
■アルバム名:Michigan
■アルバム名邦題:ミシガン
■動画リンク:「For the Widows in Paradise, for the Fatherless in Ypsilanti」

この少し前彼はアメリカ全州をテーマにしたアルバムをつくるという「The 50 State」計画を発表しました。

しかしそれは宣伝として言っただけで、はなっから実行するつもりはなかったようですが。

アメリカは50州もありますから、普通に考えたら現実的ではありません。

結局ご当地シリーズは、このアルバムと「Illinois」2枚だけで終わりました。

こういう言動から、いい加減な人のように思われるかもしれません。

ただ彼はわざと自分を悪く見せたり、悪趣味なジョークを言うことがあります。

末期がんで病床に伏している母と再会した後のインタビューでも、こんな調子です。

「母親と疎遠だったことを恥じているのか?」とインタビュアーに訊かれた彼は、こんな風に答えている。

「いや、僕は彼女のことを恥じていた」

翼の折れた鳥の帰る場所はオレゴン州の失われた金鉱

また「Illinois」を発表した時も、イリノイはただの素材にすぎないと言っています。

しかし実際には、数多くの歴史書を読んだり、イリノイ州の様々な場所を訪れたりなど、かなり熱心に研究していました。

彼の言動を判断する際は、偽悪的な傾向を割り引いた方がいいかもしれません。

さてこのアルバムで取り上げられているミシガン州は、彼が生まれ育った土地のこと。

確かに先程の壮大な計画はでまかせでしたが、ミシガンを紹介したいという気持ちは伝わってくる感じがします。

アルバムジャケットには「Greetings From Michigan the Great Lake State」「偉大なる五大湖の州、ミシガン州からのご挨拶」と記載されています。

 

6位「The Henney Buggy Band」(アルバム:The Avalanche)

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■曲名:The Henney Buggy Band
■アルバム名:The Avalanche
■アルバム名邦題:ジ・アヴァランチ
■動画リンク:「The Henney Buggy Band」

このアルバムは「Illinois」のアウトテイク集です。

実際聞くと、なぜこれがお蔵入りとなったのかと不思議に思う曲ばかりです。

ちなみに彼は20年以上のキャリアがありながら、ベスト盤がありません。

「The Greatest Gift」というアルバムもありますが、ベスト盤ではありません。

ただベスト盤はなくとも、シングルはリリースされています。

今回私が選んだ曲とシングル曲を照合してみましたが「Should Have Known Better」1曲だけしか重複していませんでした。

もし彼がベスト・アルバムをリリースしたとしても、本来の意味でベストかどうか疑わしいと思います。

そもそもこのレベルの曲でさえ、一度はアルバム収録を見送られたのですから。

 

7位「Vesuvius」(アルバム:The Age of Adz)

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■曲名:Vesuvius
■アルバム名:The Age of Adz
■アルバム名邦題:ジ・エイジ・オブ・アッズ
■動画リンク:「Vesuvius」

このアルバムは全米アルバムチャートで7位の大ヒットを記録しました。

耳障りの良い曲ばかりではありませんが、彼の天才ぶりがよく分かるアルバムです。

ベック(Beck)でいえば「オディレイ(Odelay)」みたいなアルバムかもしれません。

さてその中で私は少し地味めな曲を選んでみました。

私はこの人について、以下のような感じで人に説明したことがあります。

エリオット・スミスのようなメロディセンスと、時々パッション・ピット(Passion Pit)みたいなサビの曲を書く人。

サウンドはフォーク・ミュージックにチェンバー・ポップやエレクトロニカを混ぜ込んだような感じ。

ただそうした説明でどの程度彼の音楽を補足できたのか疑わしいと思っています。

彼の音楽は言葉では捕捉しがたいかもしれません。

 

8位「A Winner Needs a Wand」(アルバム:A Sun Came)

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■曲名:A Winner Needs a Wand
■アルバム名:A Sun Came
■アルバム名邦題:ア・サン・ケイム
■動画リンク:「A Winner Needs a Wand」

彼は最初バンドの一員として音楽キャリアを始めています。

彼は1990年代半ばから後半、マルズキ(Marzuki)というバンドのメンバーでした。

マルズキというバンド名は、プロ・マラソンランナーであるスフィアンの兄のファースト・ネームです。

その頃の音源のリンクを貼っておきましょう。

Marzuki – No One Likes A Nervous Wreck

既にチェンバー・ロックの萌芽がありますね。

今回取り上げた「A Winner Needs a Wand」はデビューアルバムからの選曲ですが、既にこの頃にはやりたい音楽の方向性が定まっていたことが分かります。

ただこの頃ならではの魅力もあって、オルタナ・ロックの影響が少し垣間見える瞬間があります。

たとえばこの曲の出だしなどは、まるでニルヴァーナ(Nirvana)みたいではないでしょうか。

またサビも彼にしてはロックっぽいのですが、その後の彼の音楽を知る身としては、逆に興味深いと思いました。

民族音楽っぽい笛が入るところが異色ですが、こういう展開もデビューの頃からだったのですね。

 

9位「Adlai Stevenson」(アルバム:The Avalanche)

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■曲名:Adlai Stevenson
■アルバム名:The Avalanche
■アルバム名邦題:ジ・アヴァランチ
■動画リンク:「Adlai Stevenson」

私はこの人のミュージシャンとしての立ち位置が理想的だと思っています。

彼は自ら設立したAsthmatic Kittyという自主レーベルから、ほとんどのアルバムをリリースしています。

自主レーベルとのことですので、中抜きが少なく、おそらく収入の多くがそのまま収入に直結しているのではないでしょうか。

それほどヒットしなくても生活は困らないでしょうし、ビジネス的な制約に縛られず、自分のやりたい音楽を追求しやすい立場だと思います。

私はミュージシャンがあまり中抜きされず、創作上の自由を確保して活動するのが理想だと思っています。

またこの人はマルチ・インストゥルメンタリストとして有名です。

このアルバムで彼が担当している楽器を、ウィキペディアから引用しておきましょう。

Sufjan Stevens – acoustic guitar, piano, Wurlitzer, bass guitar, drums, electric guitar, oboe, alto saxophone, flute, banjo, glockenspiel, accordion, vibraphone, alto recorder, Casiotone MT-70, sleigh bells, shaker, tambourine, triangle, electronic organ, vocals, arrangement, engineering, recording, production, photography, art direction, artwork

Sufjan Stevens The Avalanche (album) Wikipedia

普通の楽器だけでなくテクノロジーにも精通していますから、壮大な曲でも一人でつくり上げることができます。

色々な意味で自由な創作が可能で、その自由さが彼の音楽をより魅力的にしているように思います。

 

10位「From the Mouth of Gabriel」(EP:All Delighted People EP)

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■曲名:From the Mouth of Gabriel
■EP名:All Delighted People EP
■EP名邦題:オール・ディライテッド・ピープルEP
■動画リンク:「From the Mouth of Gabriel」

このジャケットを見て、ケツメイシのジャケットを思い出しました。

ketsumeishi-familier

さて彼のアルバムをそろえている人は、このEPを素通りしていないでしょうか。

EPとはいえ59分もありますから、ほぼアルバムと同等と考えても良いように思います。

リリースは「The Age of Adz」と同じ2010年でEPですが、曲は重複していません。

アルバムとしては「The Age of Adz」よりも「Michigan」や「Illinois」に近い音楽性だと思います。

まあこの曲はエレクトロニカ色が強いですが。

今回この記事を書くにあたり日本語のウィキペディアを参考にしました。

しかし最大のヒット曲「Call Me By Your Name」にも触れられていないなど、ディスコグラフィーの資料としてはいま一つでした。

そこで彼のオフィシャルサイトを参照することにしました。

曲の試聴もできますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

Sufjan Stevens Official Website
※アルバム一覧のページ

 

11位「Video Game」(アルバム:The Ascension)

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■曲名:Video Game
■曲名邦題:ビデオ・ゲーム
■アルバム名:The Ascension
■アルバム名邦題:ジ・アセンション
■動画リンク:「Video Game」

このアルバムでは、フォーキー色が全くなくなりました。

レディオヘッド(Radiohead)のようだと評する人もいますが、確かにサウンドの手触りは近いものがあるかもしれません。

アルバム名の「The Ascension」は「昇天」という意味で、宗教・スピリチュアル色の強い言葉のようです。

アルバム名が示す通り、アルバム全体としては、シリアスで求道的な雰囲気が感じられますね。

ただこの曲は少し異色かもしれません。

クラフトワークに近いポップな曲で、少しレトロでひんやりとした肌触りが魅力的です。

曲名を含めて、クラフトワークへのオマージュといえる曲ではないでしょうか。

少し軽めですが、こういういエレポップな曲もなかなか悪くありません。

 

12位「Mystery of Love」(アルバム:Call Me By Your Name)

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■曲名:Mystery of Love
■曲名邦題:ミステリー・オブ・ラブ
■アルバム名:Call Me By Your Name
■アルバム名邦題:君の名前で僕を呼んで
■動画リンク:「Mystery of Love」

オリジナルアルバムだけではチェックできない曲を、もう1曲ご紹介しておきましょう。

「君の名前で僕を呼んで(Call Me By Your Name)」という映画の主題曲として提供された曲です。

この人の場合ご紹介していない中にも、このクラスの曲がゴロゴロしています。

今回ご紹介できなかった初期の「セヴン・スワンズ(Seven Swans)」やインスト中心の「エンジョイ・ユア・ラビット(Enjoy Your Rabbit)」にもすばらしい曲が収録されています。

またクリスマス・アルバムの2枚「ソングス・フォー・クリスマス(Songs for Christmas)」「シルバー&ゴールド(Silver & Gold)」も、クリスマスとは関係なく楽しめますし。

今回の選曲は難航しましたが、うれしい悲鳴みたいなところがありました。

私はこれからもこの人に注目していきたいと思っています。

 

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