今回はライ・クーダーの名曲ランキングを取り上げます。
この人は世界中のルーツ音楽を探求して、自分の音楽に取り入れています。
主に彼のアルバムは偉大な先人との共演が多いのですが、まるで直接教えを乞うているみたいな感じがします。
世界中の音楽を養分にする人は他にもいますが、ライ・クーダーの方法には、相手に対してのリスペクトが感じられます。
また彼のギターは大変すばらしく、時にはボーカル曲を凌ぐインストナンバーがあります。
今回もボーカル無しの曲を2曲選びました。
天然の栄養素が豊富な彼の音楽を、ぜひお楽しみください。
- 1 1位「He’ll Have to Go」(アルバム:Chicken Skin Music)
- 2 2位「Cherry Ball Blues」(アルバム:Boomer’s Story)
- 3 3位「Ditty Wah Ditty」(アルバム:Paradise and Lunch)
- 4 4位「Little Sister」(アルバム:Bop till You Drop)
- 5 5位「Alimony」(アルバム:Ry Cooder)
- 6 6位「Get Rhythm」(アルバム:Get Rhythm)
- 7 7位「Tattler」(アルバム:Paradise and Lunch)
- 8 8位「Teardrops Will Fall」(アルバム:Into the Purple Valley)
- 9 9位「Women Will Rule the World」(アルバム:Get Rhythm)
- 10 10位「I Think It’s Going to Work Out Fine」(アルバム:Bop till You Drop)
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1位「He’ll Have to Go」(アルバム:Chicken Skin Music)
■曲名:He’ll Have to Go
■曲名邦題:浮気はやめなよ
■アルバム名:Chicken Skin Music
■アルバム名邦題:チキン・スキン・ミュージック
■動画リンク:「He’ll Have to Go」
この曲のアルバム名は「Chicken Skin Music」つまり「鳥肌音楽」です。
その名前通りの曲です。
この曲では、フラコ・ヒメネス(Flaco Jimenez)と共演しています。
私はフラーコ・ヒメネスという発音で呼んでいます。
この人はテキサスのアコーディオン奏者で、メキシコ国境の音楽テックス・メックス(もしくはテハノミュージック)を得意とする人です。
イントロはとろけてしまいそうなアコーディオンから始まります。
全編に渡ってほぼアコーディオンばかりですが、その活躍の時間を与えたライのフラーコに対する敬意が伺えます。
フラーコもすばらしいけれど、音楽の土壌はライ・クーダーです。
あまりシングルカットということを意識するような人ではありませんが、この曲はシングルカットされてオランダでヒットしたそうです。
2位「Cherry Ball Blues」(アルバム:Boomer’s Story)
■曲名:Cherry Ball Blues
■曲名邦題:チェリー・ボール・ブルース
■アルバム名:Boomer’s Story
■アルバム名邦題:流れ者の物語
■動画リンク:「Cherry Ball Blues」
この曲はギターとドラムのからみを聞く曲です。
ドラムのジム・ケルトナー(Jim Keltner)は、ルーツ音楽やシンガーソングライター系の人との共演でよく名前を見かける人です。
彼のドラムは当たり前のことを当たり前にこなすというような堅実なところがあって、一聴してどこがいいのか分かりにくいかもしれません。
そういう方は、この演奏を聞いてみていただければと思います。
名手ライのギターは当然すごいのですが、時にはドラムの存在がギターを上回っている感すらします。
ジム・ケルトナーって、地味で玄人受けする人かと思っていたら、こんな才気あふれるドラムを叩ける人なんですね。
この曲のオリジナルは、スキップ・ジェイムス(Skip James)というブルースシンガーの曲です。
私はライ・クーダー経由でフォーキーブルースの魅力を知りました。
こういう曲に興味があれば、スキップ・ジェイムスやミシシッピ・ジョン・ハート(Mississippi John Hurt)なども聞いてみてはいかがでしょうか。
3位「Ditty Wah Ditty」(アルバム:Paradise and Lunch)
■曲名:Ditty Wah Ditty
■曲名邦題:ディティ・ワ・ディティ
■アルバム名:Paradise and Lunch
■アルバム名邦題:パラダイス・アンド・ランチ
■動画リンク:「Ditty Wah Ditty」
この曲では、ジャズ・ピアニストのアール・ハインズ(Earl Hines)と共演しています。
ここでもライは脇役として、アール・ハインズを支えている感じがします。
アール・ハインズはモダンジャズ以前から活躍していた人で、一般的には躍動的な右手のシングルトーンをジャズに持ち込んだとされています。
私はこの人のピアノスタイルがよく分からない時期がありました。
モダンジャズのピアニストが驚くような斬新でモダンな演奏をすることもあれば、この曲のように古いスタイルで情感豊かな演奏することもあります。
このオールドタイミーな曲でも、奔放で遊び心たっぷりの演奏です。
特に最後の1分間ぐらいは天上の音楽です。
ギターとピアノの絡みを聞いていると、ジャズだとかロックだとか雑食だとか関係ない、単なる良質な音楽といった感じがします。
4位「Little Sister」(アルバム:Bop till You Drop)
■曲名:Little Sister
■曲名邦題:リトル・シスター
■アルバム名:Bop till You Drop
■アルバム名邦題:バップ・ドロップ・デラックス
■動画リンク:「Little Sister」
この曲はとてもポップです。
確かに表面上はポップだけど、私はゴスペル的高揚感とでも表現したいと思います。
特にリズムが軽快で楽しいです。
このアルバムぐらいから、明らかにライの音楽が変わり始めてきました。要するに。ポップになってきたのですね。
しかしこれが悪くありません。
この曲の感じが誰かに似ているような気がしてしばらく考えましたが、判明しました。
デヴィッド・リンドレー(David Lindley)のソロアルバムの曲に、曲調が似ています。
しかも彼もこの曲に参加しています。
この曲が気に入った方は、ぜひデヴィッド・リンドレーのソロアルバムに直行してみてください。
間違いなく気に入ると思います。
5位「Alimony」(アルバム:Ry Cooder)
■曲名:Alimony
■曲名邦題:アリモニー
■アルバム名:Ry Cooder
■アルバム名邦題:ライ・クーダー・ファースト
■動画リンク:「Alimony」
この曲は過小評価されているファーストアルバムからの選曲です。
ファーストにはこの曲以外にも、ウディ・ガスリー(Woody Guthrie)の「ドレミ(Do Re Mi)」カバーなど、多くの名曲が収録されています。
後に比べると雑食なところはなく、純粋なアメリカンロックといった感じです。
音の感じとしては、リトル・フィート(Little Feat)の初期あたりに似ているかもしれません。
いい感じに力の抜けたボーカルと、そしてやはりギターの存在感が半端ありません。
バックのコーラスもデラニー&ボニー(Delaney & Bonnie)あたりを思い起こさせるような、土くさいゴスペルの香りがします。
この曲が気に入った人は、ライの最初の3枚をチェックしてみてください。
6位「Get Rhythm」(アルバム:Get Rhythm)
■曲名:Get Rhythm
■曲名邦題:ゲット・リズム
■アルバム名:Get Rhythm
■アルバム名邦題:ゲット・リズム
■動画リンク:「Get Rhythm」
ライのアルバムは1曲目がすばらしいものが多いのですが、この曲もいい曲です。
イントロのギターの絡み、そしてフラーコ・ヒメネスのアコーディオンが始まるところが最高です。
原曲はジョニー・キャッシュの曲で、ガッツのある曲を、ここでは明るく伸びやかに解釈しています。
先程私はライのポップ路線はそれほど悪くないと書きました。
ここで聞けるように、ルーツ音楽も忘れていませんし、より躍動的でポップな魅力を獲得しているからです。
この曲を聞いていただければ、分かっていただけると思います。
曲の間中ずっと楽しそうに鳴り響いているライのギター演奏を聞くと、とても幸せな気持ちになります。
7位「Tattler」(アルバム:Paradise and Lunch)
■曲名:Tattler
■曲名邦題:おしゃべり屋
■アルバム名:Paradise and Lunch
■アルバム名邦題:パラダイス・アンド・ランチ
■動画リンク:「Tattler」
ライが音楽の幅を広げようとしていた時期の傑作です。
このアルバムでは1曲目の「タンペム・アップ・ソリッド(Tamp ‘Em up Solid)」とどちらにしようか迷いましたが、時にはこの曲のように地味でじんわり感動させてくれる曲も必要だと思いました。
一般的にこの人の代表作は、このパラダイス・アンド・ランチ(Paradise and Lunch)か、チキン・スキン・ミュージック(Chicken Skin Music)あたりが選ばれることが多いです。
おそらく人気の秘密は音の表情が明るくなってきたところにもあるような気がします。
この人はルーツ音楽に対する真摯な姿勢ゆえ、時にきまじめな音になってしまうことがあります。
この曲は、いわゆる「抜け感」のある曲かもしれません。
この頃からルーツ音楽の要素をうまく活用して、音楽に包容力が感じられるようになってきました。
8位「Teardrops Will Fall」(アルバム:Into the Purple Valley)
■曲名:Teardrops Will Fall
■曲名邦題:ティアドロップス・ウィル・フォール
■アルバム名:Into the Purple Valley
■アルバム名邦題:紫の峡谷
■動画リンク:「Teardrops Will Fall」
セカンドアルバムからの選曲です。
初期にしては珍しく洗練された曲調です。
楽曲の魅力を活かそうとしたのか分かりませんが、ギターは少しひかえめです。
この曲は楽曲がすばらしいのに、もっとライのギターが活躍してくれれば最強の曲になったのにと、少し残念に思います。
中盤のギターソロも、もっと暴れていいんですけどね。
ライは「Show Time」などライブアルバムも秀逸ですが、この曲は収録されていません。
とはいえ名曲には違いなく、彼にしては珍しく楽曲の魅力で聞かせてくれます。
9位「Women Will Rule the World」(アルバム:Get Rhythm)
■曲名:Women Will Rule the World
■曲名邦題:女が世界を支配する
■アルバム名:Get Rhythm
■アルバム名邦題:ゲット・リズム
■動画リンク:「Women Will Rule the World」
この曲でもフラーコ・ヒメネスのアコーディオンが活躍しています。
今回の選曲からも分かる通り、はっきり言って私は、ライとフラーコの組み合わせが大好きです。
これでも偏らない様に配慮したぐらいです。
この曲でもイントロからフラーコが大活躍しています。
もはやライ・クーダーを紹介しているのか、フラーコ・ヒメネスを紹介しているのか、自分でも分からなくなりそうです。
時々ジム・ケルトナーが大きな音でアクセントをつけているところもいいですし、中盤のロマンティックな展開も最高すぎます。
歌詞では、昔気質の老人らしき男性が、女性が力を付けてきた風潮を嘆いています。
「そのうち女に世界を支配されちまうぞ」という内容がユーモラスに語られています。
ただ曲を聞くと、むしろ支配されたがっているようにしか聞こえませんけどね。
10位「I Think It’s Going to Work Out Fine」(アルバム:Bop till You Drop)
■曲名:I Think It’s Going to Work Out Fine
■曲名邦題:ワーク・アウト・ファイン
■アルバム名:Bop till You Drop
■アルバム名邦題:バップ・ドロップ・デラックス
■動画リンク:「I Think It’s Going to Work Out Fine」
最後に、はし休め的な曲をご紹介します。
名曲とはいえないことは重々承知していますが、極私的な名曲を選んでみました。
ライ・クーダーの音楽はあまりにも栄養価が高いので、少し密度を下げておいた方がいいかもしれません。。
聞いてのとおり、ギターを中心としたインストで、メロディが美しい曲です。
その分あまりかまえずに聞けるところがあります。
ちなみに曲名は「すばらしい結果になると思うよ」というような意味です。
曲名も後味が良いですね。
名曲ランキングなので曲単位で取り上げましたが、本来この人はアルバム単位で聞いた方がいい人です。
とりあえず今回は、1987年ぐらいまでのアルバムを対象にしました。
曲を選んでいない「ジャズ(Jazz)」「ボーダーライン(Borderline)」「スライド・エリア(The Slide Area)」を含めて、オリジナルアルバムには一切ハズレはありません。
この記事が彼の音楽を楽しむきっかけになればと思っております。
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