今回はピーター・トッシュのランキングを作成しました。
この人はとにかく破天荒な人です。
天衣無縫というか型にはまらないところがあって、時には傍若無人とさえいえます。
しかしレゲエという音楽の体現度においては、ボブ・マーリーを上回るかもしれません。
レゲエのコアを伝えてくれる人です。
- 1 1位「Why Must I Cry」(アルバム:Legalize It)
- 2 2位「Downpressor Man」(アルバム:Equal Rights)
- 3 3位「Get Up, Stand Up」(アルバム:Equal Rights)
- 4 4位「Brand New Second Hand」(アルバム:Legalize It)
- 5 5位「Oppressor Man」(アルバム:Black Dignity)
- 6 6位「Ketchy Shuby」(アルバム:Legalize It)
- 7 7位「400 Years」(アルバム:Live & Dangerous: Boston 1976)
- 8 8位「Pick Myself Up」(アルバム:Bush Doctor)
- 9 9位「Stepping Razor」(アルバム:Equal Rights)
- 10 10位「Jah Say No」(アルバム:Mystic Man)
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1位「Why Must I Cry」(アルバム:Legalize It)
■曲名:Why Must I Cry
■曲名邦題:ホワイ・マスト・アイ・クライ
■アルバム名:Legalize It
■アルバム名邦題:解禁せよ
■動画リンク:「Why Must I Cry」
この曲は彼のナイーヴな一面がよく表れた曲です。
彼は元々ボブ・マーリー(Bob Marley)のいたコーラス・グループ、ウェイラーズ(The Wailers)に所属していました。
このアルバムは1974年に脱退してから発売された初のソロアルバム。
この曲では自分だけを愛していると思っていたのに、裏切られたと嘆く男性の心境が歌われています。
「もう誰も愛さない」とか「俺の最大の罪は希望を抱いたことだ」などと歌われています。
それでも彼は、すぐに次の女性へと関心を移したと思いますが。
写真の通り彼はかっこよかったですし、実際かなりもてたようです。
さてこの曲は、ピーター・トッシュとボブ・マーリーの共作曲です。
マーリーは「ノー・ウーマン、ノー・クライ(No Woman, No Cry)」という曲が有名ですが、同じく涙をテーマにしたこの曲は、トッシュ版「ノー・ウーマン、ノー・クライ」といえるかもしれません。
2位「Downpressor Man」(アルバム:Equal Rights)
■曲名:Downpressor Man
■曲名邦題:抑圧者
■アルバム名:Equal Rights
■アルバム名邦題:平等の権利
■動画リンク:「Downpressor Man」
この曲はリズムに注目です。
リズムを担当しているのは以下の2人です。
・ロビー・シェイクスピア(Robbie Shakespeare):ベース担当
・スライ・ダンバー(Sly Dunbar):ドラム担当
いわゆるスライ&ロビー(Sly and Robbie)と呼ばれる最強コンビです。
前作のバックは、ほぼマーリー抜きのウェイラーズでした。
前作はかなりの高評価でしたが、それにもかかわらず彼は要となるリズムセクションを交代するという賭けに出ました。
どうやらその賭けは成功したようですね。
この曲を聞けば、彼がより先鋭的なリズムを求めていたことが分かります。
またこのアルバムではメッセージも先鋭化しています。
アルバムタイトルは「平等の権利」ですが、タイトル曲で彼は「平和はいらない、平等と正義がほしいだけだ」と訴えています。
同じ年マーリーは「ワン・ラヴ/ピープル・ゲット・レディ(One Love/People Get Ready)」で、世界平和を訴えていましたが(笑)
それはともかく簡素で尖ったこのリズムは、彼のメッセージを乗せるにふさわしい鋭さを有していました。
3位「Get Up, Stand Up」(アルバム:Equal Rights)
■曲名:Get Up, Stand Up
■曲名邦題:ゲット・アップ・スタンド・アップ
■アルバム名:Equal Rights
■アルバム名邦題:平等の権利
■動画リンク:「Get Up, Stand Up」
この曲もボブ・マーリーとの共作です。
「バーニン(Burnin’)」や「ライヴ!(Live!)」など、ボブ・マーリーのバージョンで知られている曲ですが、こちらのバージョンも出来では負けていません。
この人の存在が興味深いのは、ボブ・マーリーと正反対に思えるところです。
マーリーがレゲエを代表する世界的なヒーローだとしたら、トッシュはジャマイカ・ローカルのヒーローです。
また音楽的にもマーリーが万人に愛されるものだとしたら、トッシュは一部のディープな人を強く惹きつけます。
たとえばこの曲を聞き比べても、両者の違いが分かります。
マーリーの方がポップなのに対して、トッシュの方はもっとテンポを落としています。
しかしスローになったのに、よりエッジが立っているように感じられるのは、いかにもレゲエらしいですね。
トッシュという人は、レゲエのコアを表現できる人でした。
4位「Brand New Second Hand」(アルバム:Legalize It)
■曲名:Brand New Second Hand
■曲名邦題:ブランニュー・セカンド・ハンド
■アルバム名:Legalize It
■アルバム名邦題:解禁せよ
■動画リンク:「Brand New Second Hand」
この曲の歌詞はすごいです。
気が多い女性に対して、言いたい放題です。
「ガール、君がその顔の下に隠しているのは恥知らずな一面」とか「君のようなおしゃべり女には、さるぐつわが必要だな」などと歌われています。
そもそも曲名からして「新しい中古品」ですし。
浮気がちな女性に対して「中古品」呼ばわりとは、ほとんど暴言みたいなものかもしれません。
先程の「Why Must I Cry」でもそうでしたが、彼はそういうタイプの女性を心底嫌っているようです。
しかし彼は晩年、マリーン・ブラウンという信頼できる女性を得ることができたようです。
1987年トッシュは強盗に銃撃されて亡くなりました。
その時マリーンも一緒にいたのですが、彼女はかろうじて一命をとりとめました。
マリーンは退院許可が出ていないのに頭に包帯を巻いたまま病院を抜け出し、トッシュの博物館を建設しようと奔走しました。
博物館は2016年に完成しています。
5位「Oppressor Man」(アルバム:Black Dignity)
■曲名:Oppressor Man
■曲名邦題:オプレッサー・マン
■アルバム名:Black Dignity
■アルバム名邦題:ベスト・オブ・ピーター・トッシュ(1967-1972)
■動画リンク:「Oppressor Man」
さてこの曲は「Sinner Man」というアフリカ系アメリカ人に親しまれたスピリチュアル・ソングが原曲です。
実は先程ご紹介した「Downpressor Man」も同じ曲を参考にしているようですが、違う曲のように感じられますね。
この作品はベスト盤なのですが、当時はまだウェイラーズに在籍していました。
ソロ活動初期の曲をまとめた、いわゆるアーリー・ベストという位置づけの盤です。
ちなみに彼はウェイラーズ脱退前、既に自分のレーベルを立ち上げていました。
1973年、トッシュは自身のレーベル「Intel-Diplo HIM」を立ち上げる。Intel-Diplo HIMとは「Intelligent Diplomat for His Imperial Majesty(皇帝陛下の諜報外交官)」の略称であった。
元々彼はウェイラーズに加入した時も、周囲には自分がリーダーだと話してしていたようです。
元々自分が中心でやりたいタイプなのでしょう。
しかし当時ウェイラーズは、マーリーを前面に押し出したプロモーション戦略が練られていました。
ピーター・トッシュとバニー・ウェイラー(Bunny Wailer)は、ただのコーラス要員になりつつあったようです。
1974年に、アイランド・レコード社のクリス・ブラックウェル社長はピーター・トッシュのソロ・アルバムを発売することを拒否し、これを不公平な処遇と感じたトッシュとバニーはウェイラーズを去ることになる。
この曲などを聞くと、もっと早く独立しても良かったように思いますけどね。
6位「Ketchy Shuby」(アルバム:Legalize It)
■曲名:Ketchy Shuby
■曲名邦題:ケチ・シュビ
■アルバム名:Legalize It
■アルバム名邦題:解禁せよ
■動画リンク:「Ketchy Shuby」
この曲もすごいです。
まず出だしから「さあ、俺たちと一緒に原始的なセックスを楽しもうぜ」と始まっています。
このアルバムで彼は、ぶっちゃけすぎているかもしれません。
そもそもアルバムタイトルからして「解禁せよ」ですが、これは「マリファナを解禁せよ」ということ。
医者も裁判官もみんなマリファナやっているんだから、もうそろそろ解禁してもいいだろうと訴えています。
ジャケットもマリファナ畑でマリファナを吸っている写真ですし。
まあこういうところが、マーリーのような世界的スターになり損ねた原因かもしれませんが。
私は彼の訴えていることが、必ずしも正しいことばかりとは思いません。
異を唱えたいと思うこともあります。
ただそんな私でも、彼のぶっちゃけんぶりに痛快な気分になります。
7位「400 Years」(アルバム:Live & Dangerous: Boston 1976)
■曲名:400 Years
■曲名邦題:400 イヤーズ
■アルバム名:Live & Dangerous: Boston 1976
■動画リンク:「400 Years」
この曲もウェイラーズ時代の再録音曲です。
といってもオリジナルもトッシュが書いてボーカルも担当していましたから、元々彼の曲でした。
彼の硬派な一面を代表するメッセージソングです。
「これまで400年も我慢を強いられてきた。自由のために立ち上がろう」と訴えています。
彼は唯我独尊なところがある一方で、とても生真面目なメッセージを伝えようとしました。
先程の「原始的なセックスを楽しもう」という曲の前曲は「イグザビエール(ジャーを称えよ)」という曲名ですし。
聖と俗の両方がある人なのですね。
さてこの作品は「Legalize It」の後すぐにリリースされたライブ・アルバムで、とかく見落とされがちですが、かなりの傑作だと思います。
この時点で既にリズムは、スライ&ロビーに変わっています。
ちなみにこのライブの1曲目はボーカル無しですが、かなりの名演なのでリンクだけ貼っておきましょう。
8位「Pick Myself Up」(アルバム:Bush Doctor)
■曲名:Pick Myself Up
■曲名邦題:ピック・マイセルフ・アップ
■アルバム名:Bush Doctor
■アルバム名邦題:ブッシュ・ドクター
■動画リンク:「Pick Myself Up」
このアルバムはローリング・ストーンズが運営するレーベル、ローリング・ストーンズ・レコード((Rolling Stones Records)からリリースされています。
キース・リチャーズ(Keith Richards)が気に入ったのだろうと思っていたら、ミック・ジャガー(Mick Jagger)が発掘したのだそうです。
さてこの曲は彼のかわいらしい一面がよく表れています。
鳥の鳴き声も入っていますし。
この人は天然というか無邪気なところがあります。
「Mystic Man」の裏ジャケットなどはこんな写真ですし。
時にはどうかと思うところがある人ですが、不思議と憎めないところがあります。
9位「Stepping Razor」(アルバム:Equal Rights)
■曲名:Stepping Razor
■曲名邦題:歩くカミソリ
■アルバム名:Equal Rights
■アルバム名邦題:平等の権利
■動画リンク:「Stepping Razor」
曲名「歩くカミソリ」とは、彼自身のニックネームです。
キレやすく、いつもイライラしているところから名付けられたそうです。
「まず言いたいのは、ピーターは行動が読めないということ。火が付くと、言いたいことを遠慮なしに言う…ピーターはそういう人間だった」
取り扱い注意な人だったようですね。
しかし彼自身もそんなイメージを嫌がっていなかったかもしれません。
わざわざ自分に付けられた悪名を曲名にして歌っているのですから。
この曲でも「命が惜しいなら、俺をまともに扱ってくれ」とか「俺は危険人物」などと得意げに歌っています。
ワル自慢は少しイタくないでしょうか。
ただそうしたパーソナリティゆえに可能な音楽があるかもしれません。
この曲は削ぎ落しまくったソリッドなリズムが、とてもスリリングです。
10位「Jah Say No」(アルバム:Mystic Man)
■曲名:Jah Say No
■曲名邦題:ジャー・セイ・ノー
■アルバム名:Mystic Man
■アルバム名邦題:ミスティック・マン
■動画リンク:「Jah Say No」
さてトゲトゲした曲から一転、ハート・ウォーミングな曲で締めくくりましょう。
今回は彼のソロキャリア前半の曲が多くなりました。
しかしその後の「ウォンテッド・ドレッド・アンド・アライヴ(Wanted Dread And Alive)」「ママ・アフリカ(Mama Africa)」「ノー・ニュ-クリア・ウォー(No Nuclear War)」は、どれも聞きごたえのあるアルバムばかりです。
後期の彼は、アフリカン・ レゲエ色が強くなりました。
明るくナチュラルな曲が多くなり、よりスケールが大きなアーティストへと変貌を遂げようとしていました。
その頃の曲をもう1つリンクご紹介しておきましょう。
この曲や上の曲が気に入るようであれば、後期を深堀してみてください。
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