今回はアスワドのランキングを作成しました。
彼らは一般的に「ドント・ターン・アラウンド(Don’t Turn Around)」や「シャイン(Shine)」などのヒット曲で知られています。
しかしそれらのヒット曲は、純粋なレゲエとは言い難いかもしれません。
今回は、初期に絞って選曲しました。
正統派ブリティッシュ・レゲエバンドだった頃のアスワドをご堪能ください。
- 1 1位「Back To Africa」(アルバム:Aswad)
- 2 2位「African Children」(アルバム:New Chapter)
- 3 3位「Not Guilty」(アルバム:Live and Direct)
- 4 4位「Judgement Day」(アルバム:Hulet)
- 5 5位「Behold」(アルバム:Hulet)
- 6 6位「No More Living a Lie」(アルバム:Not Satisfied)
- 7 7位「Dub Fire」(アルバム:A New Chapter of Dub)
- 8 8位「I A Rebel Soul」(アルバム:Aswad)
- 9 9位「Love Has It’s Ways (Peel Session 0/10/1978 Programme Number: 99YJ7008)」(アルバム:Complete BBC Sessions)
- 10 10位「It’s Not Our Wish」(アルバム:Showcase)
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1位「Back To Africa」(アルバム:Aswad)
■曲名:Back To Africa
■曲名邦題:バック・トゥ・アフリカ
■アルバム名:Aswad
■アルバム名邦題:アスワド
■動画リンク:「Back To Africa」
この曲は何度もレコーディングされています。
おそらく自信作なのでしょう。
確かにこの曲以外1位はありえない感じがします。
哀愁含みコーラスがたまりませんね。
加えてクールでメロウな質感が、ブリティッシュ・レゲエの醍醐味かもしれません。
この曲で彼らは、自分たちのルーツであるアフリカに帰ろうと訴えています。
このグループは1975年に結成され、1976年このアルバムでデビューしました。
レーベルはアイランド・レコード(Island Records)系列のマンゴ・レコード(Mango Records)。
初期はラヴァーズ・ロックとルーツ・レゲエの魅力を合わせ持ったようなところがありました。
私は彼らの最高傑作はこの「Aswad」か2枚目「Hulet」のどちらかだと思っています。
2位「African Children」(アルバム:New Chapter)
■曲名:African Children
■曲名邦題:アフリカン・チルドレン
■アルバム名:New Chapter
■アルバム名邦題:ニュー チャプター
■動画リンク:「African Children」
先程の曲と並ぶ彼らの代表曲で、どちらの曲もアフリカに対してシンパシーを寄せています。
こちらはアフリカの子供達が、貧しい環境に置かれている現実を訴えています。
しかしなぜアフリカばかりなのでしょうか。
答えはラスタの思想にあります。
ラスタファリ運動は聖書を聖典としてはいるが、特定の教祖や開祖は居らず、教義も成文化されていない。
それゆえ宗教ではなく、思想運動であるとされる[1]。
基本的にはアフリカ回帰運動の要素を持ち、エチオピア帝国最後の皇帝、ハイレ・セラシエ1世をジャーの化身、もしくはそれ自身だと解釈する。
宗教みたいな側面も感じられますが、ある種の世界観みたいなもののようです。
ちなみに赤、黄、緑は、エチオピア帝政時代の国旗のカラー。
ライオン(ユダのライオン)は、ラスタファリアニズムのシンボルです。
3位「Not Guilty」(アルバム:Live and Direct)
■曲名:Not Guilty
■曲名邦題:ノット・ギルティ
■アルバム名:Live and Direct
■アルバム名邦題:ライヴ・アンド・ダイレクト
■動画リンク:「Not Guilty」
1983年ノッティング・ヒル・カーニバルで行われたライブの模様を収録したアルバムです。
ノッティング・ヒルといえば彼らの出身地ですから、地元で行われたライブということになります。
レゲエには名ライブと呼ばれる作品が何枚かありますが、このアルバムもその1枚に加わったかもしれません。
この曲の聞きどころはドラム。
3:12からのドラムは、ライブなのにダブっぽい叩き方をしています。
あまりよく聞こえませんが、後半のベースもすばらしい演奏です。
彼らはサード・アルバム以降、プレイヤビリティを前面に出す機会が減りました。
しかし彼らはリントン・クウェシ・ジョンソン(Linton Kwesi Johnson)やデニス・ボーヴェル(Dennis Bovell)などのアルバムに、プレイヤーとして参加している腕自慢ぞろいです。
このアルバムでは演奏面の魅力を確認できます。
4位「Judgement Day」(アルバム:Hulet)
■曲名:Judgement Day
■曲名邦題:ジャッジメント・デイ
■アルバム名:Hulet
■アルバム名邦題:ハレット
■動画リンク:「Judgement Day」
セカンド・アルバム「Hulet」からの曲です。
このアルバムの前にメンバーチェンジがありました。
ここで一旦バンドの中心人物をご紹介しておきましょう。
・ドラミー・ゼブ(Drummie Zeb):ドラム
※本名:アンガス・ゲイ(Angus Gaye)
・ブリンズレー・フォード(Brinsley Forde):リズムギター
※別名:ブリンズレー・ダン(Brinsley Dan)
デビュー時のアスワドの重要人物は、この2人です。
セカンドアルバムでは、そこに第三の男が加わりました。
・トニー・ガッド(Tony Gad):キーボード、ベース
※別名:トニー・ロビンソン(Tony Robinson)
ただ彼らは曲によってボーカルが変わりますし、楽器を持ち変えることもあります。
上の情報はあくまで参考程度とお考えください、
この曲は1:42からのギターが絶品です。
おそらく新加入のドナルド・ベンジャミン(Donald Benjamin)の演奏だと思いますが、曲毎のクレジットが分からず断定はできません。
ともあれ彼らはこのアルバムから役者がそろい、その後も充実作を連発しました。
5位「Behold」(アルバム:Hulet)
■曲名:Behold
■曲名邦題:ビホールド
■アルバム名:Hulet
■アルバム名邦題:ハレット
■動画リンク:「Behold」
初期の彼らはルーツ色が強いと呼ばれます。
たとえばこの曲をお聞きください。
1:08から始まるシンプルなリズムは、とても中毒性が高いです。
イギリスで同時期に活躍したミスティ・イン・ルーツ(Misty In Roots)っぽい曲かもしれません。
もしこの曲のリズム・パターンが気に入った方は、そちらもチェックしてみてください。
ルーツ・レゲエ屈指の超絶名盤ですから。
さてこちらのジャケットにも、ユダのライオンが描かれていますね。
よく見るとライオンの身体に「ASWAD」と書かれています。
ライオンがこちらを見ていますが、曲名の「Behold」からして「見ろ」という意味。
更にジャケットの背景が黒ですが、これは彼らのバンド名に由来しています。
「Aswad」とは、アラビア語で「黒」を意味する言葉なのだとか。
7分半と長い曲ですが、病みつき度が高いリズムのせいか全く苦になりません。
6位「No More Living a Lie」(アルバム:Not Satisfied)
■曲名:No More Living a Lie
■アルバム名:Not Satisfied
■アルバム名邦題:ノット・サティスファイド
■動画リンク:「No More Living a Lie」
彼らはファーストから「Live and Direct」までが全盛期と言われていますが、私も異論はありません。
その全盛期で最もポップなのが、このアルバムです。
どちらにするか迷った「Pass the Cup」のリンクも貼っておきましょう。
この曲の頃は、まだレゲエ・バンドとしての矜持を保っていたように思います。
雲行きがあやしくなるのは「レベル・ソウルズ(Rebel Souls)」あたりから。
その次作「トゥ・ザ・トップ!!:(To the Top)」では、イーグルス(Eagles)の「我が愛の至上(Best Of My Love)」をカバーしていますが、出来はあまりよろしくありません。
その後彼らはヒット曲を連発し、商業的な意味では全盛期に突入します。
一般的に彼らの代表曲は「ディスタント・サンダー(Distant Thunder)」に収録された「ドント・ターン・アラウンド」です。
今聞くとそれほど悪くないかもしれません。
ただ当時は一部のレゲエ・ファンから不満の声が挙がったものです。
7位「Dub Fire」(アルバム:A New Chapter of Dub)
■曲名:Dub Fire
■曲名邦題:ダブ・ファイヤー
■アルバム名:A New Chapter of Dub
■アルバム名邦題:ニュー・チャプター・オブ・ダブ
■動画リンク:「Dub Fire」
「New Chapter」のダブ・アルバムの曲です。
原曲の「Love Fire」については、リンクだけ貼っておきましょう。
より音の重心を下げて、ダークな色彩を深めています。
原曲も良いですが、私はこのダブ・バージョンの方に軍配を挙げます。
切り裂かれたホーンを挟みながら進んでいきますが、音の手触りを含め1980年代特有のダブといった印象を受けます。
ダブ・ミックスを担当したのは、マイケル・キャンベル(Michael “Reuben” Campbell)。
この人について、クラッシュのプロデューサーとしても有名なマイキードレッド(Mikey Dread)のことだと言っている人もいます。
しかしマイキー・ドレッドの別名は、Michael “George” Campbellですから、別人だと思われます。
レゲエのクレジットを読み解くのはなかなか大変です。
8位「I A Rebel Soul」(アルバム:Aswad)
■曲名:I A Rebel Soul
■曲名邦題:アイア・レベル・ソウル
■アルバム名:Aswad
■アルバム名邦題:アスワド
■動画リンク:「I A Rebel Soul」
まず曲名「I A Rebel Soul」の「A」が大文字になっていることに、ご注目ください。
つまり「俺は1人の反逆の魂だ」という意味だと思われます。
彼らはロンドンのノッティング・ヒル出身のバンドです。
ノッティング・ヒルは、今でこそ高級住宅地として知られています。
映画「ノッティングヒルの恋人」の舞台として有名で、おしゃれなイメージを持つ方も少なくないかもしれません。
しかし昔は移民や黒人が多い地域で、多くは貧しい生活を強いられていました。
1958年にはイギリス人とカリブ系移民の間の争いが発展し、ノッティング・ヒル暴動といわれる大暴動があったほど。
そういう歴史的な背景もあって、当時のブリティッシュ・レゲエはレベル・ミュージック、つまり反逆音楽としての色彩を帯びていました。
彼らと並んでシーンのけん引役だったスティール・パルス(Steel Pulse)も、当時は戦闘的姿勢の強いバンドでした。
この曲の歌詞には、以下のような箇所があります。
全てのアイデンティティをはく奪されて、俺は凝視される中で裸になった
しかしうつむいて歩くことはできない
レゲエが熱を帯びていた時代を象徴する曲といえるかもしれません。
9位「Love Has It’s Ways (Peel Session 0/10/1978 Programme Number: 99YJ7008)」(アルバム:Complete BBC Sessions)
■曲名:Love Has It’s Ways (Peel Session 0/10/1978 Programme Number: 99YJ7008)
■アルバム名:Complete BBC Sessions
■動画リンク:「Love Has It’s Ways (Peel Session 0/10/1978 Programme Number: 99YJ7008)」
隠れ名曲をご紹介します。
この曲はBBCのスタジオ・ライブ音源で、オリジナル・アルバム未収録曲です。
私の感覚でいえばスタジオ・ライブは、ライブという感じはしませんが。
この曲が録音されたのは1978年ですから「Hulet」の頃です。
当然悪かろうはずがありません。
ラヴァーズ・ロックの曲ですが、なかなかすばらしい仕上がりです。
他のアルバムの曲ですが、ラヴァーズ系では以下の曲もおすすめです。
ちなみにこのBBCライブには、1976年から1988年を対象にしたものと、1976年から1994年までを対象にしたコンプリート盤があります。
購入時にご注意ください。
10位「It’s Not Our Wish」(アルバム:Showcase)
■曲名:It’s Not Our Wish
■曲名邦題:イッツ・ノット・アワー・ウィッシュ
■アルバム名:Showcase
■アルバム名邦題:ショーケース
■動画リンク:「It’s Not Our Wish」
このアルバムはショーケース・スタイルのアルバムです。
ショーケースとは最初は歌もので始まって、その後ダブへ移行する曲の構成のことです。
この曲では、2:48からダブに突入していますね。
このアルバムでは有名曲「Back To Africa」とシングル・オンリーの曲が、ショーケース・スタイルで再録音されています。
単なるアルバ未収録曲集とは、違った趣向のアルバムかもしれません。
さて最後にその後の彼らの活動をご紹介します。
彼らは1990年代「トゥー・ウイッキド(Too Wicked)」「ライズ・アンド・シャイン(Rise and Shine)」などのヒット作を連発しました。
しかしその後2000年に入るとペースダウンし、2009年の「City Lock」を最後に音沙汰がなくなりました。
ただ今のところ解散はしていないようです。
彼らは1988年から1999年まで12枚のアルバムをリリースし、かなりハードな毎日だったと思われます。
そのおかげで仕事をセーヴしてもやっていけるのかもしれません。
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