今回はモット・ザ・フープルのランキングを作成しました。
このバンドは「グラム・ロック」を象徴するバンドです。
グラムとはグラマラスのことなので、グラマラスなロックということになります。
グラム・ロックとは、音楽の特徴というよりも、中性的でけばけばしい衣装を身に付けるイメージから名付けられた言葉です。
音楽面を指した言葉ではありません。
ただ一般的にいえば、この人たちのような派手めのロックンロールが多いように思います。
彼らは派手な衣装で派手なロックンロールを演奏しているだけですが、それがやたらとかっこいいです。
このバンドはイエロー・モンキーを始めとした日本のバンドにも、多大な影響を与えています。
男も女も熱狂させる彼らの魅力を、ぜひご堪能ください。
- 1 1位「All the Young Dudes」(アルバム:All the Young Dudes)
- 2 2位「The Golden Age of Rock ‘n’ Roll」(アルバム:The Hoople)
- 3 3位「Jerkin’ Crocus」(アルバム:All the Young Dudes)
- 4 4位「All the Way from Memphis」(アルバム:Mott)
- 5 5位「Sweet Jane」(アルバム:All the Young Dudes)
- 6 6位「Roll Away the Stone」(アルバム:The Hoople)
- 7 7位「Honaloochie Boogie」(アルバム:Mott)
- 8 8位「Marionette」(アルバム:The Hoople)
- 9 9位「Walkin’ with a Mountain」(アルバム:Mad Shadows)
- 10 10位「Sea Diver」(アルバム:All the Young Dudes)
1位「All the Young Dudes」(アルバム:All the Young Dudes)
■曲名:All the Young Dudes
■曲名邦題:すべての若き野郎ども
■アルバム名:All the Young Dudes
■アルバム名邦題:すべての若き野郎ども
■動画リンク:「All the Young Dudes」
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この曲はこのバンドの代表曲です。
このアルバムはデヴィッド・ボウイ(David Bowie)がプロデュースしていますが、それだけでなくこの曲も提供しています。
この曲はボウイ自身のバージョンもあって、そちらも同じくすばらしいです。
ちなみにアルバムタイトル「すべての若き野郎ども」は、その後様々な形で流用されていて、ダムドの「地獄に堕ちた野郎ども」、中村一義の「すべてのバカき野郎ども」などの「野郎どもシリーズ」の源流となっています。
この曲は彼らが待ち望んでいた初のシングルヒット(全英3位)となりました。
この曲の歌詞は、若者賛歌の曲といえるかもしれません。
若者は無軌道で、大人からさげすまれたり、時には一晩中自殺を考えることもあるだろう。
しかし俺たちはいかれた野郎で結構、邪魔されるのはうんざり、好きにやらせてもらうぜというような内容です。
この当時彼らは、そのような若者を代表する立場だったようです。
しかし当時ボーカルのイアン・ハンター(Ian Hunter)は33歳ですから、年齢的にはギリギリだったかもしれませんね。
それはともかくこの曲は彼らというより、ロックを代表する名曲の1つです。
ちなみにこの曲は、彼らが解散するという情報を聞きつけたデヴィッド・ボウイが、プロデュースと曲の提供を申し出たそうです。
当初ボウイが提供を申し出たのは、名盤「ジギー・スターダスト」に収録予定だった「サフラジェット・シティ(Suffragette City)」でした。
しかしモット・ザ・フープルはその曲を断ったため、代わり提供されたのがこの曲だそうです。
しかしボウイに曲のチェンジを申し出るとはすごいですね。
2位「The Golden Age of Rock ‘n’ Roll」(アルバム:The Hoople)
■曲名:The Golden Age of Rock ‘n’ Roll
■曲名邦題:ロックンロール黄金時代
■アルバム名:The Hoople
■アルバム名邦題:ロックンロール黄金時代
■動画リンク:「The Golden Age of Rock ‘n’ Roll」
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先程の曲と並ぶ彼らの代表曲です。
この曲は彼らのロックンロールバンドとしての側面を象徴する曲です。
この曲の背景には「音楽が死んだ日」があると言われています。
「音楽が死んだ日」とはバディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、J.P.”ビッグ・ボッパー” リチャードソンという、3人のロックンローラーを飛行機事故で失った日のことです。
1959年のことでした。
才能あるロックンローラーをまとめて失ったことで、ロックの歴史が後退した日だと言われています。
この曲を書いたイアン・ハンターは、当時20歳ぐらいでした。
それから年月が経過して、今や彼自身がスターとなり「今がロックンロールの黄金期だぜ」と宣言しているのですね。
イントロからホーンセクションがグルーヴィーで、リスナーは一気に熱狂の渦に叩き込まれてしまいます。
彼らのロックンロールはとても気分が高揚しますが、その中で最高の1曲でしょう。
聞いていると、本当にこの時がロックンロールの黄金期だと思えてきます。
3位「Jerkin’ Crocus」(アルバム:All the Young Dudes)
■曲名:Jerkin’ Crocus
■曲名邦題:ジャーキン・クローカス
■アルバム名:All the Young Dudes
■アルバム名邦題:すべての若き野郎ども
■動画リンク:「Jerkin’ Crocus」
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最初の数秒で、ガッツポーズが出ます。
この曲は、ミック・ラルフス(Mick Ralphs)によるギターのリフがすべてといっても過言ではありません。
実はこの曲が一番好きだと言う人も少なくないかもしれません。私も同率1位です。
そこはかとなく漂うB級ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)という風情がたまりません。
昔から遡ってアルバムを聞いていくと、ずっと昔から彼らはストーンズの影響を受けていることを確認できます。
ただ自分たちのアイデンティティを模索していたのか何か分かりませんが、素直に影響を表した曲は意外と多くありません。
9位に挙げた「Walkin’ with a Mountain」など、こういう風にストレートにやってくれば、名曲になるのは目に見えているんですけどね。
私は彼らに小難しいことを求めていません。
ストーンズの影響を受けていた彼らは、後に自分たちなりの刹那的なパーティロックンロールという個性を見つけます。
この曲は彼らが自分たちの原点に立ち返った曲です。
4位「All the Way from Memphis」(アルバム:Mott)
■曲名:All the Way from Memphis
■曲名邦題:メンフィスからの道
■アルバム名:Mott
■アルバム名邦題:革命
■動画リンク:「All the Way from Memphis」
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先程私は、後にパーティロックンロールという個性を見つけたということを申し上げました。
その良い例が、「The Golden Age of Rock ‘n’ Roll」やこの曲です。
どちらの曲もイアン・ハンターが作曲しています。
この頃イアン・ハンターは、こういうキャッチーな曲を書く才能を開花し始めていました。
演奏面ではピアノが大きな役割を果たしています。
この曲では小気味良いピアノが、曲の雰囲気を盛り上げています。
弾いているのは、この時点ではまだ正式メンバーではなかったモーガン・フィッシャー(Morgan Fisher)です。
ちなみにこの人は1985年に日本に移住して、数多くのCM曲やアーティストのアルバムに参加しています。
この人は玄人の方には、ラヴ・アフェアー(Love Affair)というバンドのメンバーだったことでも有名です。
2:08ぐらいからのサックスも、陽気な気分を盛り上げてくれますね。
5位「Sweet Jane」(アルバム:All the Young Dudes)
■曲名:Sweet Jane
■曲名邦題:スウィート・ジェーン
■アルバム名:All the Young Dudes
■アルバム名邦題:すべての若き野郎ども
■動画リンク:「Sweet Jane」
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この曲のオリジナルはヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)です。
この曲は多くの人にカバーされていていますが、中でもこのカバーが1位2位を争う出来です。
異論もあると思いますが、私は作曲面が彼らの弱点だと思います。
もちろんイアン・ハンターもミック・ラルフスも良い曲を書いてきました。
しかしアルバムを良い曲ばかりで埋め尽くすことはできていなかったように思います。
しかしロックバンドとしては、とても優秀でした。
なにせあのデヴィッドボウイが、デビュー時からのファンだったぐらいです。
今聞き返しても演奏面では、とても魅力的だったと思います。
しかし彼らには決定的な曲がありませんでした。
彼らはアルバムはそれなりに売れていましたが、シングルは全然売れませんでした。
このアルバムでのプロデュースを担当したボウイは、カバー曲と自分が提供した曲で弱点を補うという英断を下しました。
元々優秀なロックンロールバンドだった彼らは、期待に応えてすばらしい曲に仕上げています。
6位「Roll Away the Stone」(アルバム:The Hoople)
■曲名:Roll Away the Stone
■曲名邦題:土曜日の誘惑
■アルバム名:The Hoople
■アルバム名邦題:ロックン・ロール黄金時代
■動画リンク:「Roll Away the Stone」
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何やらイントロからドラマティックですね。
こういうドラマティックな部分は、イアン・ハンターの持ち味です。
ただ初期から一緒にバンドを引っ張ってきたミック・ラルフスの音楽性とは相容れませんでした。
ミック・ラルフスは前作のレコーディングが終わるとすぐに脱退して、バッド・カンパニー(Bad Company)というブルージーでルーツ寄りのバンドを始めます。
整理してみましょう。
イアン・ハンター →モット・ザ・フープルに残留
ミック・ラルフス →バッド・カンパニー結成
渋すぎるバッドカンパニーのファーストアルバムと、ギラギラしたりドラマティックなこのアルバムは、どちらも同じ1974年に発売されています。
よくも水と油のような2人が、同じバンドに在籍していたなと思います。
袂を分かってから、イアンハンターの作風がふっきれた感じがする名曲です。
分裂自体は残念ですが、それぞれが劣らぬ傑作をリリースしたので、結果的に正解だったかもしれません。
7位「Honaloochie Boogie」(アルバム:Mott)
■曲名:Honaloochie Boogie
■曲名邦題:ホナルーチ・ブギ
■アルバム名:Mott
■アルバム名邦題:革命
■動画リンク:「Honaloochie Boogie」
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彼らは前作「All the Young Dudes」で世界的な人気を獲得しました。
このアルバムはそのヒット作の次作ですが、デヴィッド・ボウイのプロデュースではなく、セルフプロデュースです。
ボウイの後ろ盾がなくなったこのアルバムは、バンドにとって正念場だったことでしょう。
彼らはこのアルバム前に「Lay Down」というシングルを発表していますが、チャートにかすりもしませんでした。
その曲もなかなかの佳曲だと思いますが、昔の彼らを思わせるような、もう一歩足りない感じがします。
彼はアルバムを完成させて、この曲をファーストシングルとして発表したところ、全英シングルチャートで12位にまで上がりました。
この曲のヒットが1973年5月25日で、この曲を収録したアルバムは1973年7月20日のリリースです
このヒットが呼び水となって、アルバムも全英チャートで7位と大ヒットしています。
彼らは人気を維持できるかどうかの正念場を、この曲で乗り切りました。
ちなみに心配したボウイは、ここでも彼らに「ドライブ・イン・サタディ(Drive In Saturday)」という曲を提供しようと申し出たそうですが、バンド側が断ったそうです。
しかしボウイという人は、本当にいい人なんですね。
8位「Marionette」(アルバム:The Hoople)
■曲名:Marionette
■曲名邦題:マリオネットの叫び
■アルバム名:The Hoople
■アルバム名邦題:ロックン・ロール黄金時代
■動画リンク:「Marionette」
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このアルバムは、曲の日本語タイトルが少しやりすぎな感じがします。
「Alice」 →「あばずれアリス」
「Born Late ’58」 →「あの娘はイカしたキャディラック」
そしてこの曲も
「Marionette」→「マリオネットの叫び」
なんだか頭が悪そうな感じがしますね。
気を取りなおして聞いていただければと思います。
これもピアノが鍵盤を連打している曲です。
52秒からホーンがこの曲をグルーヴィーにしています。ここは鳥肌ものですね。
2:05あたりから得体の知れない高笑いが入っていますが、彼らはアリス・クーパー(Alice Cooper)の影響を受けているかもしれないと思いました。
派手なロックンロールをベースしていますが、時々無駄に曲の構成が凝っていて、どこか演劇っぽい要素も感じられます。
この曲の歌詞は、先生のあやつり人形になっている哀れな生徒の話です。
アリス・クーパーも、学校や先生を盛大にディスっていましたから、芸風が少し被っていないでしょうか。
とはいえこの曲は痛快無比な曲で、私のように考えすぎず、単純に楽しんでいただければと思います。
9位「Walkin’ with a Mountain」(アルバム:Mad Shadows)
■曲名:Walkin’ with a Mountain
■曲名邦題:ウォーキン・ウィズ・ア・マウンテン
■アルバム名:Mad Shadows
■アルバム名邦題:マッド・シャドウズ
■動画リンク:「Walkin’ with a Mountain」
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さて今回は彼らの時期を限定したランキングではありません。
しいていえば、イアン・ハンターとミック・ラルフスの2人が不在で、残りメンバーだけでリリースしたアルバムは除外しました。
というよりも持っていません。
それなのに選曲元のアルバムが、かなり偏ってしまいました。
彼らがブレイクするまでには、以下の4枚のアルバムを出しています。
「モット・ザ・フープル(Mott the Hoople)」
「マッド・シャドウズ(Mad Shadows)」
「ワイルドライフ(Wildlife)」
「ブレイン・ケイパーズ(Brain Capers)」
どれもなかなか悪くありません。
むしろ後年は音の装飾が過剰になったきらいがあるので、シンプルなサウンドを好む方は、前期の方が気に入るかもしれません。
ただこれぞという曲がないのですね。
私がブレイク後の名曲群に比肩していると思ったのは、この曲だけです。
実際にこの曲は「華麗なる煽動者〜モット・ライブ(Live)」でも取り上げられていますが、私はこちらのシンプルなオリジナルバージョンの方がいいと思いました。
先程彼らは売れる前から魅力のあるロックンロールバンドだったと書きました。
この曲などはストーンズの影響がストレートでほほえましい、初期の彼らを代表する名曲だと思います。
10位「Sea Diver」(アルバム:All the Young Dudes)
■曲名:Sea Diver
■曲名邦題:潜水夫
■アルバム名:All the Young Dudes
■アルバム名邦題:すべての若き野郎ども
■動画リンク:「Sea Diver」
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この頃から次第にイアン・ハンターの存在が大きくなってきました。
この曲などはバンドサウンドではなく、彼の独り舞台です。
ピアノとストリングスをバックに、イアン・ハンターが盛大に歌い上げています。
この人は歌がうまいわけではありませんが、湿り気を帯びた声質のせいか、不思議と人を惹きつけるところがあります。
この人は初期の頃、ボブ・デイランの影響が強い人でした。
後期でも「Mott」に入っている「母になりたい(I Wish I Was Your Mother)」などで、その影響がかなり色濃く残っています。
一方で彼にはドラマティックに歌い上げる、初期デヴィッドボウイ型ともいえるパターンもあります。
この曲は後者を代表する曲です。
このアルバム以降ではこういう曲が入っていますし、ソロでもこの路線で名曲を量産しています。
この曲は神に救済を求めている内容です。
このアルバム前にバンドはじり貧で、一度は解散を決めたが、ボウイの支援を受けて撤回するという有様でした。
願いが通じてこのアルバムはヒットしました。
バンドの復活にイアン・ハンターが果たした役割はとても大きいと思います。