今回はジェームス・テイラーのランキングを作成しました。
少し鼻にかかった歌、そして独特のフィンガー・ピッキングのギターが魅力の人です。
彼は声とギターという最小構成だけでも、自分の世界をつくりあげることができます。
まさにシンガーソングライターのお手本といえるかもしれません。
- 1 1位「You’ve Got a Friend」(アルバム:Mud Slide Slim and the Blue Horizon)
- 2 2位「One Man Parade」(アルバム:One Man Dog)
- 3 3位「Your Smiling Face」(アルバム:JT)
- 4 4位「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」(アルバム:One Man Dog)
- 5 5位「Hard Times」(アルバム:Dad Loves His Work)
- 6 6位「Fire and Rain」(アルバム:Sweet Baby James)
- 7 7位「How Sweet It Is (To Be Loved by You)」(アルバム:Gorilla)
- 8 8位「Her Town Too」(アルバム:Dad Loves His Work)
- 9 9位「Sunny Skies (Demo)」(アルバム:James Taylor)
- 10 10位「Long Ago and Far Away」(アルバム:Mud Slide Slim and the Blue Horizon)
- 11 11位「Shower the People」(アルバム:In The Pocket)
- 12 12位「Only One」(アルバム:That’s Why I’m Here)
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1位「You’ve Got a Friend」(アルバム:Mud Slide Slim and the Blue Horizon)
■曲名:You’ve Got a Friend
■曲名邦題:君の友だち
■アルバム名:Mud Slide Slim and the Blue Horizon
■アルバム名邦題:マッド・スライド・スリム
■動画リンク:「You’ve Got a Friend」
ジェームスの親友であるキャロル・キング(Carole King)が書いた曲です。
オリジナルは彼女の名作「つづれおり(Tapestry)」に収録されています。
彼女自身のバージョンもシングルカットされていますが、ヒットしたのはこちらの方。
このカバーは全米シングル・チャートで1位を獲得し、ジェームスの代表曲になりました。
実はこの曲はアンサー・ソングです。
キャロル・キングは、ジェームスのもう1つの代表曲「Fire and Rain」に触発されて、この曲を書いたそうです。
「Fire and Rain」では、大切な友達を失った心情が切々と歌われていました。
一方この曲の主人公は、心を痛めている友達をなぐさめようとしています。
君が落ち込んでいる時は、私のことを思い出してほしい
君のところに駆けつけるから
君の真っ暗な夜を照らすために
冬、春、夏、秋、いつでもかまわない
矢野顕子の「ひとつだけ」を思わせる歌詞です。
ちなみにこの曲を書いたキャロル・キングは、この曲の価値をよく分かっていなかったそうです。
ジェームスがこの曲を絶賛したことで、彼女はこの曲の魅力を認識したのだとか。
この曲はキャロル単独作ではなく、2人の関係性の中から生まれた曲かもしれません。
2位「One Man Parade」(アルバム:One Man Dog)
■曲名:One Man Parade
■曲名邦題:ワン・マン・パレード
■アルバム名:One Man Dog
■アルバム名邦題:ワン・マン・ドッグ
■動画リンク:「One Man Parade」
アルバム名「One Man Dog」とはどういう意味か調べてみました。
どうやら「1人の男と1匹の犬」という説と「飼い主にしかなつかない犬」という2つの説があるようです。
次に曲名の「One Man Parade」の方は「1人のパレード」という意味。
この曲の歌詞では「私が望むのは、小さな犬が私の右側を歩いていることだけ」と歌われています。
アルバム・ジャケットではその言葉の通り、彼の右手に犬がいますね。
しかしこの曲で彼は「僕は抱きしめるのが得意だ」とも歌っています。
どうやら犬以外に、誰かがいるようですね。
お相手は、カーリー・サイモン(Carly Simon)だと思われます。
その年彼と犬の他に彼女が加わり、2人と1匹の家族ができました。
2人はこのアルバムがリリースされた1972年11月に結婚しています。
当時ジェームスは2作連続でアルバムを大ヒットさせ、タイム誌の表紙にもなりました。
彼は人気絶頂期に結婚して、幸せの真っただ中にありました。
3位「Your Smiling Face」(アルバム:JT)
■曲名:Your Smiling Face
■曲名邦題:きみの笑顔
■アルバム名:JT
■アルバム名邦題:JT
■動画リンク:「Your Smiling Face」
コロムビア・レコード(Columbia Records)移籍後第一弾のアルバムです。
前3作では離れていましたが、今作ではピーター・アッシャー(Peter Asher)がプロデューサーに復帰しています。
アルバム・タイトルに、自分の愛称である「JT」と名付けました。
どことなく原点回帰を感じさせるアルバムです。
ジェームス・テイラーの魅力の1つは、ハート・ウォーミングなボーカルです。
マイケル・フランクス(Michael Franks)の洗練をそのままに、少し鼻声にして丁寧に歌っている感じかもしれません。
2:13からのスキャットなども、実にすばらしい出来です。
彼はこの後に「フラッグ(Flag)」というアルバムをリリースしました。
そちらにもキャロル・キングの良いカバーがあるので、ご紹介しておきましょう。
ランキングに入れるか最後まで迷った曲です。
4位「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」(アルバム:One Man Dog)
■曲名:Don’t Let Me Be Lonely Tonight
■曲名邦題:寂しい夜
■アルバム名:One Man Dog
■アルバム名邦題:ワン・マン・ドッグ
■動画リンク:「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」
曲名の邦題は「寂しい夜」ですが、直訳の方が伝わるかもしれません。
「今夜は一人にしないでほしい」。
この方がグッとこないでしょうか。
訴えている相手は、カーリー・サイモンだと思われます。
ただそれほど切実な感じはしません。
初期の彼のアルバムにはある種の切迫感があって、それがリスナーに訴えかける源泉になっていました。
しかしこのアルバムあたりから、彼のアルバムには幸福感が漂い始めます。
シンガーソングライターの作品は、私小説に似ているかもしれません。
中には私生活を赤裸々に暴露しなくても、自然とその人の心の状態が音楽に表れることがあります。
この曲のおだやかな表情は、その後しばらく彼のアルバムに通底する基調となりました。
後半のマイケル・ブレッカー(Michael Brecker)のサックス・ソロも感動的です。
5位「Hard Times」(アルバム:Dad Loves His Work)
■曲名:Hard Times
■曲名邦題:ハード・タイムス
■アルバム名:Dad Loves His Work
■アルバム名邦題:ダディーズ・スマイル
■動画リンク:「Hard Times」
アルバム名の「Dad Loves His Work」は「お父さんは自分の仕事を愛している」という意味です。
ジャケットでもドヤ顔をしていますね。
このアルバム名は当時の妻カーリー・サイモンが、もっと家族との時間をつくってほしいと訴えた時の返答だと言われています。
そしてこの曲名は「Hard Times」つまり「困難な時期」。
彼はこの曲で、家庭内に問題があることをにおわせています。
中には「私を愛することは、あまり意味がないかも」という気弱な心情の告白も。
「我々はこの困難な時を乗り越えなければいけない」と歌われていますが、このアルバムが発売されたのと同じ1981年、彼は妻から別れを切り出されました。
妻によると「一緒にいることは不可能に思える」のだとか。
以前ジェームスの「自分の経験をそのまま歌にしているわけではない」という発言を読んだことがあります。
しかし私からみると、彼は私生活と音楽のシンクロ率がかなり高い気がしますけどね。
6位「Fire and Rain」(アルバム:Sweet Baby James)
■曲名:Fire and Rain
■曲名邦題:ファイアー・アンド・レイン
■アルバム名:Sweet Baby James
■アルバム名邦題:スウィート・ベイビー・ジェームス
■動画リンク:「Fire and Rain」
この曲はジェームスの幼馴染の死をテーマにした曲です。
歌詞にも名前が出てくるスザンヌという女性が亡くなった時、ジェームスはファースト・アルバムのレコーディング中でした。
彼女の死因は自殺でした。
友人たちは大事な時なので、悪影響となることを心配し、すぐには彼女の死を伝えなかったそうです。
その後彼は彼女の死を知り、この曲を書き上げました。
この曲を書く前、彼は精神を病んでいました。
「Fire and Rain」の「Fire」とは精神治療のショック療法のことで、「Rain」とは治療の後の冷たいシャワーの意味するのだそうです。
その治療を終えた後、この曲でジェームスはこう歌っています。
様々な災難を乗り越えてきた今、また君に会いたい
「You’ve Got a Friend」は、ふさぎ込むジェームスを見てキャロル・キングが書いた曲です。
とてもパーソナルな曲ですが、全米3位を獲得し彼の成功のきっかけとなりました。
7位「How Sweet It Is (To Be Loved by You)」(アルバム:Gorilla)
■曲名:How Sweet It Is (To Be Loved by You)
■曲名邦題:君の愛につつまれて
■アルバム名:Gorilla
■アルバム名邦題:ゴリラ
■動画リンク:「How Sweet It Is (To Be Loved by You)」
彼は前作「ウォーキング・マン(Walking Man)」から路線を変えました。
プロデューサーにデヴィッド・スピノザ(David Spinozza)を迎え、フュージョン/ソウル色の強いサウンドになりました。
今回「Walking Man」の曲を選んでいませんが、1曲だけリンクを貼っておきましょう。
James Taylor – Let It All Fall Down
しかし上のアルバムは13位に終わり、セールス的には停滞しました。
次作となるこのアルバムでは、ラス・タイトルマン(Russ Titelman)とレニー・ワロンカー(Lenny Waronker)というワーナー・ブラザーズ(Warner Bros.)らしい2人がプロデュースを担当しています。
この作品でもウィリー・ウィークス(Willie Weeks)やアンディ・ニューマーク(Andy Newmark)を起用した曲では、前作に近い作風です。
ただ一方でこの曲のように、ザ・セクション(The Section)の曲と半々にして、昔からのファンに対しても配慮を見せました。
その配慮のおかげか、アルバム・チャートで6位と復調しています。
この曲はマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)有名なヒット曲のカバーです。
出だしから声の表情が明るいのがいいですね。
8位「Her Town Too」(アルバム:Dad Loves His Work)
■曲名:Her Town Too
■曲名邦題:憶い出の町
■アルバム名:Dad Loves His Work
■アルバム名邦題:ダディーズ・スマイル
■動画リンク:「Her Town Too」
この曲はJ.D.サウザー(John David Souther)とのデュエット曲です。
このアルバムでは、バックのメンバー構成に変化がありました。
ザ・セクションからは、リーランド・スクラーだけが参加しています。
一方ギターはほとんどの曲で、ワディ・ワクテル(Waddy Wachtel)が弾いています。
AORやウェストコースト・サウンド色を強める意図があったのかもしれません。
ただ元々ジェームスは、AORの先駆けみたいなところがありました。
彼の持ち味は普通のシンガーソングライターとは、かなり異なっています。
当時の多くのSSWにはルーツ志向が感じられますが、この人は最初からポップで洗練されていました。
プレAORっぽい資質を、当初からごく自然に備えていたように思います。
彼が自分の資質に忠実であればあるほど、AORに接近するのは自然なことかもしれません。
この作品はAORファンを中心に人気が高く、彼の代表作の1つに数えられています。
私は彼の最高傑作は「Mud Slide Slim and the Blue Horizon」「One Man Dog」そしてこのアルバムのどれかだと思います。
9位「Sunny Skies (Demo)」(アルバム:James Taylor)
■曲名:Sunny Skies (Demo)
■曲名邦題:サニー・スカイズ(デモ)
■アルバム名:James Taylor
■アルバム名邦題:ジェームス・テイラー
■動画リンク:「Sunny Skies (Demo)」
デビュー・アルバムからの曲です。
レーベルはアップル・レコード(Apple Records)で、1968年にリリースされました。
音楽的にもピートルズの影響が感じられます。
特にアレンジ面ではその傾向が顕著で、チェンバー・ポップっぽい曲も散見されます。
そうした曲「思い出のキャロライナ(Carolina in My Mind)」をご紹介しておきましょう。
James Taylor – Carolina in My Mind
今回は隠れ名曲として、デモ・バージョンの曲をご紹介します。
実はこのアルバムの前に彼は、フライング・マシン(Flying Machine)というバンドを結成していました。
しかし当時のジェームスは重度のヘロイン中毒で、バンドは空中分解してしまいました。
彼は薬物中毒の治療を受け、その後リリースされたのがこのアルバムです。
しかし当時のアップルは問題が多く、このアルバムもさほど宣伝されず、アップルとはこの1枚限りで終わりました。
このアルバムには、その後の活躍を予感させる曲が数多く収録されています。
10位「Long Ago and Far Away」(アルバム:Mud Slide Slim and the Blue Horizon)
■曲名:Long Ago and Far Away
■曲名邦題:遠い昔
■アルバム名:Mud Slide Slim and the Blue Horizon
■アルバム名邦題:マッド・スライド・スリム
■動画リンク:「Long Ago and Far Away」
このアルバムから、ザ・セクションのメンバーがそろいました。
ザ・セクションは、初期の縁の下の力持ちといえるバック・バンドです。
メンバーは以下の通り。
・ダニー・コーチマー(Danny Kortchmar):ギター
・リー・スクラー(Leland Sklar):ベース
・ラス・カンケル(Russ Kunkel):ドラム
ちなみにこの曲では、ピアノはキャロル・キングで、バック・コーラスはジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)です。
特にジョニのコーラスは、この曲の印象を決定づけています。
エリック・アンダーソン(Eric Andersen)の「ブルー・リヴァー(Blue River)」の時もそうでしたが、ジョニのコーラスは存在感がありますね。
しかしジェームスの場合、豪華なメンバーの中にあっても、埋没することはありません。
彼はアコースティック・ギターの名手ですが、この曲でも彼のギターは主役という感じがします。
ジェームスは演奏面でも、セッションを仕切ることができる人でした。
11位「Shower the People」(アルバム:In The Pocket)
■曲名:Shower the People
■曲名邦題:愛の恵みを
■アルバム名:In The Pocket
■アルバム名邦題:イン・ザ・ポケット
■動画リンク:「Shower the People」
シンガーソングライターは、次第に洗練された魅力を打ち出すようになるものです。
ジェームスも例外ではありませんでした。
ただ彼は元々都会風の人ではありません。
初期のジャケットを見ると、青いダンガリー・シャツのジャケットが多いですし。
しかし時を追うと共に、スーツ姿のジャケットが増えました。
このジャケットもスーツですしね。
私はこのスーツ時代のジェームスに、アンビバレントな感情を持っています。
エレピが入った都会的なサウンドは好きですし、彼の音楽にも合っているように感じます。
しかし初期の頃に比べて、情感が損なわれてきている気がしないでもありません。
ハンサムだけどあか抜けない青年が、ナイーヴな心情を歌っていた頃にあった何かが失われていないかと。
とはいえこの曲のように、この時期にも大好きな曲が沢山ありますが。
12位「Only One」(アルバム:That’s Why I’m Here)
■曲名:Only One
■曲名邦題:オンリー・ワン
■アルバム名:That’s Why I’m Here
■アルバム名邦題:ザッツ・ホワイ・アイム・ヒア -変わりゆく人々へ-
■動画リンク:「Only One」
昔ガース・ブルックス(Garth Brooks)は、ジェームスの最高傑作はこのアルバムだと言っていました。
なぜそれを覚えているかというと、そのインタビューを読んで、私はこのアルバムを買ったからです。
おでこは多少広くなりましたが、いつも通り良質なJT印の作品です。
彼はこの後も「アワーグラス(Hourglass)」など、良作をコンスタントに出し続けました。
今回彼のアルバムを聞き返して、ひとつ思ったことがあります。
この人のアルバムは、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の「ペット・サウンズ(Pet Sounds)」型の傑作が多いということ。
地味な曲が多く、派手な曲は多くありません。
それでも不思議とアルバム・トータルでは傑作と感じさせます。
もしかしたらこの人の魅力のコアは、地味な曲の方にあるのかもしれません。
時にアルバムの地味な曲が宝石のような曲だと気が付くことがあります。
その意味で今回のランキングは、この人の音楽の入り口にすぎません。
あくまで主戦場は個々のアルバムだと思います。
もし気に入った曲が見つかったら、そのアルバムからじっくり聞いてみていただければと思います。
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