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ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)の名曲名盤10選【代表曲・隠れた名曲】

今回はビリー・ホリデイのランキングを作成しました。

この記事は初めて聞いた方、又は聞いても良さが分からなかった方を対象に書きました。

聞きやすい曲を多めにして、シリアスな面を強調しすぎないようにしています。

ただ最後の曲は、ぜひ聞いていただきたいと思います。

 

1位「When You’re Smiling」(アルバム:Musical Romance)

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■曲名:When You’re Smiling
■曲名邦題:君微笑めば
■アルバム名:A Musical Romance
■アルバム名邦題:ミュージカル・ロマンス
■動画リンク:「When You’re Smiling」

この曲は村上春樹の「ポートレイト・イン・ジャズ」で、以下のように紹介されています。

「あなたが微笑めば、世界そのものが微笑む」

When you are smiling, the whole world smiles with you.

そして世界は微笑む。信じてもらえないかもしてないけれど、ほんとうににっこりと微笑むのだ。

『君微笑めば』~ビリー・ホリデイ

私は彼女の音楽が悲しみや悲劇の文脈で語られすぎているように感じます。

もちろんそうした側面はあるでしょう。

ただ私はもっと気軽に聞いていただきたいと思い、この記事を書くことにしました。

村上春樹は、この曲に楽天性を見出しています。

確かに彼女の人生は波乱と悲劇の連続でした。

しかしそれにもかかわらず、彼女の音楽はすばらしい。

その点で単なる悲劇ではありません。

 

2位「A foggy Day」(アルバム:Songs For Distingue Lovers)

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■曲名:A foggy Day
■曲名邦題:ア・フォギー・デイ
■アルバム名:Songs For Distingue Lovers
■アルバム名邦題:アラバマに星落ちて
■動画リンク:「A foggy Day」

死の2年前に録音された曲です。

このアルバムの頃は、まだ体調悪化が歌に表れていませんでした。

むしろ円熟の境地に達していたといえるかもしれません。

ただこの時期、既にビリーの身体は悲鳴をあげていました。

前年彼女は麻薬の不法所持で逮捕されましたが、それでも麻薬から足を洗うことができないでいました。

本当に彼女の悪化が歌に表れるのは、翌年からです。

この曲でも彼女の歌は安定していますし、バックも好サポートをしていますね。

バーニー・ケッセル(Barney Kessell)のギターは、特に印象的です。

プロデューサーのノーマン・グランツ(Norman Granz)らしい人選だと思います。

 

3位「I Get a Kick Out of You」(アルバム:Music for Torching)

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■曲名:I Get a Kick Out of You
■曲名邦題:アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー(君にこそ心ときめく)
■アルバム名:Music for Torching
■アルバム名邦題:ミュージック・フォー・トーチング
■動画リンク:「I Get a Kick Out of You」

彼女にしては珍しいラテンっぽい曲です。

カフェ・アプレミディに収録されていてもおかしくありません。

こういう曲から彼女の魅力に気付くのも一興だと思います。

私は「Strange Fruit」から聞かれることが、良くないのではないかと考えています。

もちろん「Strange Fruit」と収録されているアルバムは、世紀の傑作といえるでしょう。

しかし初心者向きではありません。

最初の1曲としては、あまり最適ではないように感じています。

この記事を書いたのは、そうした問題意識からでした。

そこで気軽に聞ける曲で慣れてから「Strange Fruit」を聞いてもらえるよう、曲の並び順を考慮しました。

今回の記事では、形式的に順位を割り振っています。

私が初めての方はこの並びで聞いたらどうかと思う順番にしています。

 

4位「Mean To Me」(アルバム:A Musical Romance)

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■曲名:Mean To Me
■曲名邦題:ミーン・トゥ・ミー
■アルバム名:A Musical Romance
■アルバム名邦題:ミュージカル・ロマンス
■動画リンク:「Mean To Me」

このアルバムは、ビリー・ホリデイとレスター・ヤング(Lester Young)が共演した曲を集めた編集盤です。

この曲を始めとして、テディ・ウィルソン(Teddy Wilson)が参加している曲も少なくありません。

そうした人選もあってか、聞きやすい曲が多いように思います。

ちなみにビリーとレスターは、恋人関係にあったと言われています。

2人は互いに尊敬し合っていました。

レスターはビリーのことを「レディ・デイ」と呼び、ビリーは彼を「サックス奏者の代表」という意味で「プレジデント」、時には略して「プレズ」と呼んだ。

ビリー・ホリデイ ウィキペディア

男運が悪すぎるビリーにとって、レスターは唯一誠実な男だったと言われています。

 

5位「Strange Fruit」(アルバム:Greatest Interpretations Of Billie Holiday)

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■曲名:Strange Fruit
■曲名邦題:奇妙な果実
■アルバム名:Greatest Interpretations Of Billie Holiday
■アルバム名邦題:奇妙な果実
■動画リンク:「Strange Fruit」

この曲はルイス・アレン(Lewis Allen)によって書かれた、人種差別を告発した曲です。

「Strange Fruit」とは「奇妙な果実」という意味。

白人にリンチを受けて、木に吊るされた黒人の死体を指した言葉です。

私はそうした写真を見たことがあります。

ピューリッツァー賞を受賞した写真で、血だらけの2人の黒人が、首にロープをかけられて吊るされていました。

二度と見たくないので、ここでその写真を引用するつもりはありません。

彼女がこの曲をリリースした頃も、そういうことが行われていたようです。

だからこそ彼女は大きなリスクがあるにもかかわらず、この曲を歌わなければいけませんでした。

淡々と歌うことで、リアルな悲しみが浮かび上がっています。

 

6位「I’ll Get By」(アルバム:Greatest Interpretations Of Billie Holiday)

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■曲名:I’ll Get By
■曲名邦題:アイル・ゲット・バイ
■アルバム名:Greatest Interpretations Of Billie Holiday
■アルバム名邦題:奇妙な果実
■動画リンク:「I’ll Get By」

このアルバムは、彼女の最高傑作と言われています。

「Music for Torching」「Songs For Distingue Lovers」の方が気軽に聞けるかもしれません。

しかしやはり最高傑作といえば、この作品に尽きると思います。

このアルバムは1939年から1944年の録音ですから、初期の作品集ということになります。

その後中期から後期にかけて、彼女の歌はより成熟していきました。

しかし逆に初期のフレージングの妙味は、控えめになったかもしれません。

このアルバムは他にも「イエスタデイズ(Yesterdays)」「恋人よ我に帰れ(Lover, Come Back to Me)」「明るい表通りで(On the Sunny Side of the Street)」など名唱ぞろいです。

今回は記事のテーマを考慮して、明るめのこの曲を選んでみました。

それにしても、この歌の甘さは格別です。

やはりこのアルバムを聞かずして、彼女を語ることはできません。

 

7位「Solitude」(アルバム:Lover Man)

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■曲名:Solitude
■曲名邦題:ソリチュード
■アルバム名:Lover Man
■アルバム名邦題:ラヴァー・マン
■動画リンク:「Solitude」

デューク・エリントン(Duke Ellington)が書いた中でも、屈指の美しい曲です。

ビリーはそのジャズ・スタンダードの名曲を、精神性を感じさせる歌に昇華しました。

私はジャズ以外の人がこの曲をカバーする時、ビリーのバージョンを参考にしていると感じることがあります。

例えば以下の曲は、明らかにビリーの影響下にあります。

Malia – Solitude

それにしても、すばらしい解釈ですね。

そういえばザ・ザ(The The)もカバーしていました。

The The – Solitude

ビリーがこの曲に加えた精神性は、脈々と受け継がれているようです。

 

8位「Good Morning heartache」(アルバム:Lady Sings The Blues)

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■曲名:Good Morning heartache
■曲名邦題:グッド・モーニング・ハートエイク
■アルバム名:Lady Sings The Blues
■アルバム名邦題:レディ・シングス・ザ・ブルース
■動画リンク:「Good Morning heartache」

「Lady Sings The Blues」というアルバム名は、同名の彼女の自伝から名付けられました。

その自伝はダイアナ・ロスの主演で映画化されました。

さてビリーは、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)やサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)と並ぶ、女性ジャズ・ボーカルの頂点と言われています。

特にエラは「ジャズの女王」と呼ばれる絶対的な存在です。

私もその称号に異論はありません。

しかしその一方で私はビリーを別格だと思っています。

エラの歌には華があり、どんな難しい曲でも優雅さを失わない、まさに女王そのものです。

エラのふくよかな歌は戦力分析をすれば全項目満点ですが、ビリーの歌はやせっぽちでバランスも良くありません。

しかしビリーは誰よりもジャズの本質、コアを表現できる人でした。

感情を奥底から震わせることにおいて、ビリー以上の人はいません。

ビリーの歌唱には魂の重みがあります。

 

9位「Them There Eyes」(アルバム:Billie Holiday At Storyville)

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■曲名:Them There Eyes
■曲名邦題:ゼム・ゼア・アイズ
■アルバム名:Billie Holiday At Storyville
■アルバム名邦題:ビリー・ホリデイ・アット・ストリーヴィル
■動画リンク:「Them There Eyes」

ライブ盤からの曲です。

さてここで彼女の人生について少し触れておきましょう。

自伝によると、彼女は15歳の父と13歳の母から生まれたそうです。

しかし父親はすぐに行方をくらませ、母親も家には寄り付かず、彼女を親族に預けました。

母親は成長した彼女を売春宿に預け、母子共に売春で逮捕される始末でした。

しかしビリーは悲惨は生い立ちは、両親のせいではなく、環境のせいだと考えていたようです。

実際彼女は両親を慕っていました。

「Strange Fruit」は、病院に受け入れられなかった父親の死をきっかけに歌うことを決心した曲です。

また母親が亡くなると、彼女はうつを患いました。

本人も最後まで酒や麻薬を止められないまま、生涯を終えました。

享年44才。

彼女は不誠実な男たちに寄生され、人種差別を告発したことでFBIのターゲットになっていたそうです。

 

10位「I’m a Fool to Want You」(アルバム:Lady In Satin)

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■曲名:I’m a Fool to Want You
■曲名邦題:恋は愚かだというけれど
■アルバム名:Lady In Satin
■アルバム名邦題:レディ・イン・サテン
■動画リンク:「I’m a Fool to Want You」

死の前年に録音された曲です。

この曲のエピソードをご紹介します。

一番感動的だったのは、「恋は愚かというけれど」のプレイバックを聴いていた時だろう。彼女の目からは涙が溢れていた。

ビリー・ホリデイ ウィキペディア

しかし一体何なのでしょうか、この異様に訴えかける圧は。

既に体調の悪化は歌にも表れており、声は更にやせ細り、全盛期とは比べるべくもありません。

ただ唯一情感だけは最後まで失われず、逆にここにきてピークに達した感があります。

この曲に感じる凄みの正体は、テクニックのその先の世界かもしれません。

異形の深み。捨て身でしかたどり着けない境地。

この曲はとても危険です。

特に深夜にお酒を飲みながら聞くべきではありません。

酒が進みすぎてしまいますし、過去の様々なことを思い出すともういけません。

私はこの曲を聞くと、しらふの時でさえ涙が出そうになります。

 

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