今回はフェアポート・コンヴェンションのランキングを作成しました。
彼らは、英国の伝統音楽とロックを融合しました。
彼らの音楽には、古い音楽をエレクトリックで演奏する以上の魅力があります
- 1 1位「Who Knows Where the Time Goes?」(アルバム:Unhalfbricking)
- 2 2位「Walk Awhile」(アルバム:Full House)
- 3 3位「Matty Groves」(アルバム:Liege & Lief)
- 4 4位「No Man’s Land」(アルバム:What We Did on Our Holidays)
- 5 5位「Wizard of the Worldly Game」(アルバム:Angel Delight)
- 6 6位「Staines Morris」(アルバム:House Full)
- 7 7位「Sir Patrick Spens」(アルバム:Full House)
- 8 8位「Million Dollar Bash」(アルバム:Unhalfbricking)
- 9 9位「Crazy Man Michael」(アルバム:Liege & Lief)
- 10 10位「Matty Groves」(アルバム:House Full)
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1位「Who Knows Where the Time Goes?」(アルバム:Unhalfbricking)
■曲名:Who Knows Where the Time Goes?
■曲名邦題:時の流れを誰が知る
■アルバム名:Unhalfbricking
■アルバム名邦題:アンハーフブリッキング
■動画リンク:「Who Knows Where the Time Goes?」
通常このブログでは分かりやすい曲を1位にしています。
そもそも理解が難しい曲を1位に置く意味があるのかと思いますし。
しかしこの曲は分かりにくいですし、即効性もありません。
少なくとも初めて聞いた若い頃の私には、単なる地味な曲にすぎませんでした。
しかしこの寂寥感は、尋常ではありません。
この曲歌っているのは、サンディ・デニー(Sandy Denny)。
彼女のボーカルは、独特の霊気と湿り気を帯びています。
素直に歌っているように思われますが、ちょっとしたニューアンスの機微と陰影がすごすぎます。
よく分からないと思ったら、次の曲をお聞きください。
2位「Walk Awhile」(アルバム:Full House)
■曲名:Walk Awhile
■曲名邦題:ウォーク・アワイル
■アルバム名:Full House
■アルバム名邦題:フル・ハウス
■動画リンク:「Walk Awhile」
※「By Popular Request」収録バージョン
この曲の「Full House」バージョンは記事掲載後、突然サブスクとYoutubeで消えてしまい聞くことができなくなりました。
そこで仕方なく「By Popular Request」収録バージョンの動画に差し替えました。
ただ本来は「Full House」をご紹介したいので、定期的に動画をチェックし、見つかり次第差し替えたいと思います。
このアルバムの前に、サンディ・デニーとベースのアシュリー・ハッチングス(Ashley Hutchings)が脱退しました。
サンディは脱退後、フォザリンゲイ(Fotheringay)というバンドを結成し、その後はソロ活動に転じています。
アシュリーの方は、後にフェアポート、ペンタングル(Pentangle)と並ぶ三大ブリティッシュ・フォーク・ロック・バンドと呼ばれるスティーライ・スパン(Steeleye Span)を結成しました。
前作では、その2人を加えたブリティッシュ・フォーク・ロックの梁山泊といえる布陣でした。
しかし主張メンバー2人が脱退したこの作品でも、前作の水準を維持しています。
この曲を書いたリチャード・トンプソン(Richard Thompson)と、フィドルの達人デイヴ・スウォーブリック(David Swarbrick) を中心にふんばりました。
滋養あふれる瑞々しい音楽です。
3位「Matty Groves」(アルバム:Liege & Lief)
■曲名:Matty Groves
■曲名邦題:マティ・グローヴス
■アルバム名:Liege & Lief
■アルバム名邦題:リージ・アンド・リーフ
■動画リンク:「Matty Groves」
最高傑作として名高いアルバムです。
ただ私としては「Unhalfbricking」「Liege & Lief」「Full House」の3作は甲乙付け難いですが。
このアルバムばかりが代表作として紹介されるのは、メンバーの豪華さゆえかもしれません。
このアルバムのメンバーをご紹介します。
サンディ・デニー – ボーカル
デイヴ・スウォーブリック – フィドル、ヴィオラ
リチャード・トンプソン – エレクトリック&アコースティックギター、バッキングボーカル
サイモン・ニコル – エレクトリック、6弦および12弦アコースティックギター、バッキングボーカル
アシュリー・ハッチングス – ベースギター、バッキングボーカル
デイヴ・マタックス – ドラム、パーカッション
音楽性も演奏力も突出した人ばかりですね。
なぜこんなすごいメンバーが一堂に会したのかと、不思議に思えるぐらいです。
4位「No Man’s Land」(アルバム:What We Did on Our Holidays)
■曲名:No Man’s Land
■曲名邦題:ノー・マンズ・ランド
■アルバム名:What We Did on Our Holidays
■アルバム名邦題:ホワット・ウィー・ディド・オン・アワ・ホリデイズ
■動画リンク:「No Man’s Land」
※動画が消えてしまい、聞くことができません
1969年にリリースされたセカンド・アルバムの曲です。
デビュー時の彼らは、まだ音楽性が固まっていませんでした。
ファースト・アルバムでは、エミット・ローズ(Emitt Rhodes)、ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)、ボブ・ディラン(Bob Dylan)の曲をカバーしています。
当初の彼らは、アメリカのアーティストから影響を受けていました。
しかしこのセカンドから、イギリスの伝承歌を取り上げ始めました。
以下の曲は惜しくも選外になりましたが、このバンド屈指の人気曲にして有名曲です。
Fairport Convention – Meet on the Ledge
「Meet on the Ledge」は伝統歌ではありませんが、少しトラディショナル寄りかもしれません。
一方ランクインした「No Man’s Land」は、アメリカ音楽色が強い曲です。
ウッドストックとかヒッピーとか、そのあたりに近い印象を受けます。
5位「Wizard of the Worldly Game」(アルバム:Angel Delight)
■曲名:Wizard of the Worldly Game
■曲名邦題:ウィザード・オブ・ザ・ワールドリー・ゲーム
■アルバム名:Angel Delight
■アルバム名邦題:エンジェル・ディライト
■動画リンク:「Wizard of the Worldly Game」
このアルバムの前に、リチャード・トンプソンがバンドを脱退しました。
しかしこのバンドは度々重要メンバーが脱退しています。
しかしその割には作品の水準は大きく落ち込んでいません。
デイヴ・スウォーブリック(Dave Swarbrick)を中心に、残ったメンバーが奮闘しています。
アルバム全体の出来としては前作「Full House」に及ばないにしても、この曲など良い曲が散見されます。
この曲は1971年に発表されましたが、1973年の「ロージー(Rosie)」からも1曲ご紹介しておきましょう。
Fairport Convention – Peggy’s Pub
私は数枚を除いて、彼らのほとんどのアルバムを持っています。
1979年にはデイヴ・スウォーブリックも脱退しましたが、その後も佳作を連発しています。
6位「Staines Morris」(アルバム:House Full)
■曲名:Staines Morris
■曲名邦題:ステインズ・モリス
■アルバム名:House Full
■アルバム名邦題:ハウス・フル
■動画リンク:「Staines Morris」
彼らは当初、アメリカのロック・バンドの影響を受けていました。
しかしイギリスの伝統歌、いわゆるトラディショナル・ソングに傾倒し、自分たちのアイデンティティを確立していきました。
ただ彼らは最初からその路線を狙っていなかったようです。
特にアシュリー・ハッチングスはバンドを開始して初めて伝承歌に傾倒し、英国民族舞踏民謡協会の図書館で研究したのだそうです。
さてこのアルバムは、アシュリー脱退後の作品です。
この記事では好き嫌いが分かれると思い、伝承歌を少な目にしました。
ただこの曲は伝承歌です。
他にも伝承歌はランクインしていますが、彼らの色彩に染まっているためトラディショナルだと気付きにくいかもしれません。
7位「Sir Patrick Spens」(アルバム:Full House)
■曲名:Sir Patrick Spens
■曲名邦題:サー・パトリック・スペンス
■アルバム名:Full House
■アルバム名邦題:フル・ハウス
■動画リンク:「Sir Patrick Spens」
※動画が消えてしまい、聞くことができません
この曲は彼らの代表曲ですが、原曲は伝承歌です。
さてこのバンドを語る時、プロデューサーのジョー・ボイド(Joe Boyd)について触れないわけにはいきません。
ジョー・ボイドは、フォーク・ロック・シーンのキーマンです。
ちなみにフォークといっても、アメリカのフォークとはかなり異なります。
いわゆるブリティッシュ・フォークといわれるもの。
ちなみに以下の金字塔といえる名盤は、すべてジョー・ボイドがプロデュースしています。
「Five Leaves Left」Nick Drake
「Just Another Diamond Day」Vashti Bunyan
「The 5000 Spirits or the Layers of the Onion」The Incredible String Band
ジョー・ボイドはこのアルバムまでプロデュースしていますが、その時期はこのバンドの全盛期と一致します。
メンバーの変動が激しかったこのバンドにおいて、彼の存在は要石みたいな存在だったかもしれません。
8位「Million Dollar Bash」(アルバム:Unhalfbricking)
■曲名:Million Dollar Bash
■曲名邦題:ミリオン・ダラー・バッシュ
■アルバム名:Unhalfbricking
■アルバム名邦題:アンハーフブリッキング
■動画リンク:「Million Dollar Bash」
このバンドの名前は、多くのロック・ファンに知られています。
「レッド・ツェッペリン IV(Led Zeppelin IV)」にサンディ・デニーが参加したことで、このバンドも知られるようになりました。
ロック名盤の雑誌記事やディスクガイドでは、よく「Liege & Lief」が掲載されています。
また以下の曲はシングル・チャートで21位を記録し、このアルバムも12位まで上がりました。
Fairport Convention – Si Tu Dois Partir
次作「Liege & Lief」も15位を記録しており、ヒットチャートでもある程度評価されています。
ただバンド名は知っていても、聞いたことがない方は少なくないかもしれません。
私はそのギャップを埋めたいと思い、この記事を書きました。
このアルバム・ジャケットも英国的ですばらしいですね。
9位「Crazy Man Michael」(アルバム:Liege & Lief)
■曲名:Crazy Man Michael
■曲名邦題:クレイジー・マン・マイケル
■アルバム名:Liege & Lief
■アルバム名邦題:リージ・アンド・リーフ
■動画リンク:「Crazy Man Michael」
このアルバムは、ブリティッシュ・フォークとロックを融合した画期的な作品でした。
彼らはこのアルバムでオリジナリティを確立しました
私が思う彼らの独自性とは、伝統音楽を熱心に研究し、その魅力を損なうことなくロック的な解釈を施したこと。
そして伝統歌とその影響下にある新感覚のオリジナル曲を、アルバムに違和感なく共存させたことでした。
前作「Unhalfbricking」で彼らは、片足を入れていた英国の伝統音楽に軸足を移しました。
このアルバムからアメリカのバンドのカバー曲がなくなったのは、変化しようという決意の表れだったかもしれません。
その代わりに彼らは、英国フォークの深い森に足を踏み入れています。
両要素を折衷をしようとした彼らの試みは、当時新しい音楽と評価されました。
思えばアメリカのウッドストック・サウンドも、ルーツ音楽と新しさが共存していました。
10位「Matty Groves」(アルバム:House Full)
■曲名:Matty Groves
■曲名邦題:マティ・グローヴス
■アルバム名:House Full
■アルバム名邦題:ハウス・フル
■動画リンク:「Matty Groves」
※動画が消えてしまい、聞くことができません
ライブ・アルバムの曲です。
先程この曲の原曲をご紹介しました。
しかしこちらは男性ボーカルですし、ライブならではのラフさが良い方向に働いているので、2曲とも取り上げることにしました。
彼らは「イギリスのジェファーソン・エアプレイン」と呼ばれているそうです。
確かにジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)やグレイトフル・デッド(Grateful Dead))に近いかもしれません。
どのバンドも演奏力が強味で、プログレッシヴな演奏になりがちです。
ただジェファーソンはブルース、デッドはカントリー、フェアポートは英国トラッドと、それぞれ土台が異なります。
この曲では、リチャード・トンプソンを中心に演奏が尖っています。
ルーツ音楽とロック的なエッジの立った感性の融合。
それこそが彼らの特異性を表すエレクトリック・トラッドでした。
このバンドは、英国伝統音楽から見たら異端の存在かもしれません。
しかしその保守的な伝統から外れた感覚は、ロックを好むリスナーからすると、とても魅力的に響きました。
そうした折衷主義的立ち位置こそが、このバンドの魅力だったかもしれません。
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