今回は倉橋ヨエコのランキングを作成しました。
彼女は8年という短い期間にもかかわらず、強烈な印象を残したシンガーソングライターです。
ポジティブとネガティブの間を揺れ動く楽曲の数々は、かなり病みつき度が高いです。
初めて聞く方は試しに1曲目を聞いて、気に入ったら残りも聞いてみてください。
1位「感謝的生活」(アルバム:礼)
■曲名:感謝的生活
■アルバム名:礼
■動画リンク:「感謝的生活」
私はこの曲の歌詞が気に入っています。
ありがとうが出てこないのを
人のせいにしていませんか
ありがとうの練習はきっと
恥ずかしくはない
感謝的生活(作詞:倉橋ヨエコ)
感謝の気持ちを持つことの大切さを歌っているようです。
しかしそんな道徳的なテーマでも退屈な感じがしないのは、彼女が自分の言葉で語りかけているからかもしれません。
どことなく不器用な感じもしますね。
彼女の歌詞を読むと、感情は豊かですが、振れ幅の大きい人のような気がします。
後で述べますが、ネガティヴ時の放出エネルギーもすさまじいですし。
それでも嫌な印象を受けないのは、彼女が純粋な人だと思えるからです。
彼女の写真をご紹介しておきましょう。
大きな花の髪飾りに、彼女のこだわりが感じられますね。
2位「聴こえたから」(アルバム:礼)
■曲名:聴こえたから
■アルバム名:礼
■動画リンク:「聴こえたから」
このミニ・アルバムが出た時、私は時々DJをやっていました。
彼女の登場に大きな衝撃を受けた私は、試しにこの曲をこじんまりしたクラブでかけてみることにしました。
するとかけた瞬間何人かがDJブースにやってきて、この曲は何だと詰め寄ってきました。
クラブに来るような人ですから、音楽に敏感な人たちだとは思いますが、彼らの多くも知らなかったようです。
このアルバムは、当時インディーズレーベルからリリースされました。
当時はサブカル系雑貨店のヴィレッジヴァンガードでも売られていたようですね。
さてこの曲は、ベン・フォールズ(Ben Folds)みたいなピアノが楽しいです。
こんな楽しそうにピアノを弾く人は、なかなかいません。
同じアルバムから、もう1曲ご紹介しておきましょう。
このミニ・アルバムは傑作だと思います。
3位「アンドーナツ」(アルバム:婦人用)
■曲名:アンドーナツ
■アルバム名:婦人用
■動画リンク:「アンドーナツ」
アンドーナツをつくって食べようという曲です。
川本真琴の「やきそばパン」と並ぶ、パン・ソングの最高峰ではないでしょうか。
彼女の音楽キャリアは、とても小さな一歩から始まりました。
ウィキペディアを引用しておきましょう。
2000年、初の手作りCD「お帰りなさい」を発表[4]
「手作りCD」とは何だと思うかもしれません。
これは自分の曲を焼いたCD-Rのことです。
後で復刻されていますが、当時のCD-Rは、現在高値で取引されているようですね。
その後2000年11月に「礼」、翌年2001年6月には「思ふ壺」と、ミニ・アルバムを2枚発表しています。
こうした小さなステップを踏んでから、ようやくこの作品でフル・アルバム・デビューを果たしました。
当時彼女は25歳。
この頃から彼女の名前を目にする機会が増えてきました。
4位「桜道」(アルバム:色々)
■曲名:桜道
■アルバム名:色々
■動画リンク:「桜道」
このアルバムでは、サウンド面で変化がありました。
バンドサウンドが導入されていて、J-POPに近い音づくりかもしれません。
この変化によって、個性が薄れたと残念がる人もいるようです。
確かに私もピアノが比重が減ったことについては、残念に思っています。
私は彼女の魅力の半分は、ピアノの演奏にあると思っていますから。
彼女は武蔵野音楽大学でクラシック・ピアノを学んだ人で、技術も確かですし、表現力も申し分ありません。
しかしサウンドの変化自体、私は否定しません。
この曲はいきなりストリングスから始まっていて、最初聞いた時は面を食らいました。
ただこのニック・ドレイク(Nick Drake)のようなストリングスは、なかなかすばらしいですね。
その後の彼女の晴れやかなボーカルも絶品です。
この時点で既に名曲確定ではないでしょうか。
その後はオルタナ色の強いサウンドになりますが、こういうバックだと椎名林檎っぽく聞こえる時があります。
5位「楯(グランドピアノ弾き語りバージョン)」(アルバム:御中元)
■曲名:楯(グランドピアノ弾き語りバージョン)
■アルバム名:御中元
■動画リンク:「楯(グランドピアノ弾き語りバージョン)」
ウィキペディアでこのアルバムは、フル・アルバムに分類されています。
ただ6曲入りで収録時間も23分ぐらいですから、ミニ・アルバムに分類した方がいいと思います。
しかも新曲は1曲だけですし。
他の5曲は既発表曲の別バージョンですが、これもその1曲です。
オリジナルは「ただいま」に収録されていますが、こちらの方が良い出来かもしれません。
曲名の「楯」とは、戦場で身を守る防具のこと。
彼女には守りたい人がいたようですね。
今はその人を失ってしまったようですが。
言い回しは少々行き過ぎているものの、それも彼女なりの愛情表現なのでしょう。
6位「ラジオ」(アルバム:モダンガール)
■曲名:ラジオ
■アルバム名:モダンガール
■動画リンク:「ラジオ」
このアルバムで彼女は、ジャズ歌謡に挑戦しています。
以前からそういうところはありましたが、このアルバムでは1曲目からシャバダ歌謡が炸裂しています。
リンクを貼っておきましょう。
彼女は自分を「昭和の捨て犬」「平成のシャバダ女」と呼んでいますが、その面目躍如といった曲ではないでしょうか。
このアルバムは名曲ぞろいです。
「流星」「雨宿り」もかなりの名曲ですので、興味がある方はアルバム単位でチェックしてみてください。
このアルバムでは、彼女のスキャットが目立っています。
全体にテンション高めで、そこはかとなく場末感が漂っています。
病みつき度が一番高いアルバムかもしれません。
その中でこの曲は、前作に一番近い曲です。
彼女の最高傑作については、人によって意見が分かれるかもしれません。
私は「礼」「婦人用」「モダンガール」の内、どれかだと思っています。
7位「ラブレター」(アルバム:婦人用)
■曲名:ラブレター
■アルバム名:婦人用
■動画リンク:「ラブレター」
最初に彼女の歌を聞いた時、随分オペラチックな歌い方をする人だなと思いました。
それだけでなく、クセの強さをそのままに、ただひたすら歌い上げているといいますか。
あまり他にないタイプのシンガーで、しいていえばローラ・ニーロ(Laura Nyro)が少し似ているかもしれません。
ヨエコ・ファンでご存じない方は、以下の曲を聞いてみてください。
彼女の声はインパクトがありますし、人の興味を惹きつける何かがあります。
さて彼女がCMソングを歌っていることはご存知でしょうか。
CM曲を引用しておきましょう。
確かに彼女の人を惹きつける声は、CMソングにうってつけかもしれません。
8位「梅雨色小唄」(アルバム:婦人用)
■曲名:梅雨色小唄
■アルバム名:婦人用
■動画リンク:「梅雨色小唄」
彼女はネガティブな曲が多いです。
この曲もこんな感じですし。
私の日課は被害妄想(中略)
私の特技は自信喪失(中略)
私の魅力は魅力ないこと(中略)
お願いよ
悪くないんだよ 悪くないんだよって
言って 言って梅雨色小唄(作詞:倉橋ヨエコ)
この歌詞から自己評価が低いことが読み取れます。
自虐が極まっている感じがしますが、それを笑いに転化しきれていません。
引用部最後の方は、読んでいて辛くなります。
自己肯定感が低く、承認欲求の高い人みたいですね。
「東京ピアノ」に収録されている「不安のお山」の歌詞も引用しておきましょう。
私 不安の山でぺっちゃんこ
朝よそんなに輝くな 私が惨めに映るじゃない太陽にも嫌われちゃった
ああ 明日も駄目でしょう不安のお山(作詞:倉橋ヨエコ)
「不安のお山」を聞きたい方は、以下のリンクからどうぞ。
こちらも不安な気持ちが歌われています。
ここまで歌詞にするかと言いたくなりますね。
ネガティブな感情が暴走気味かもしれません。
あまりにもネガティブな内容すぎて、Youtubeで再生する時にネガティブな内容が含まれていると警告文が出るほどです。
きっと明日は大丈夫ですよと言ってあげたくなります。
9位「春の歌」(アルバム:ただいま)
■曲名:春の歌
■アルバム名:ただいま
■動画リンク:「春の歌」
彼女はこのアルバムでメジャー・デビューを果たしました。
それまではインディーズでしたから、自分の意見が通りやすかったと思います。
彼女はメジャー・デビュー前、こう考えていたそうです。
『ただいま』では思った言葉やメロディーを先行させて曲を制作しており、「自分の世界観は絶対譲らないぞ」という意思が貫かれたセルフ・プロデュースの作品となった[2]。
彼女の世界観とは「言葉やメロディ」であることに、ご注目ください。
つまりアレンジが含まれていません。
彼女はサウンド面にあまりこだわりがなかったらしく、プロデューサーなど周囲の意見を聞いて決めていたそうです。
だから昭和歌謡風になったり、バンドサウンドになったりしていたのですね。
この曲の歌詞をご紹介しましょう。
元気は出るまで出すな
って自分にお手紙を書きました
倉橋ヨエコ – 春の歌(作詞:倉橋ヨエコ)
自分に対する手紙とは、発想がおもしろいですね。
しかもそのアドバイスも適切な気が。。。
彼女が守りたかった言葉の聖域は守られたようです。
10位「輪舞曲(ロンド)」(アルバム:解体ピアノ)
■曲名:輪舞曲(ロンド)
■アルバム名:解体ピアノ
■動画リンク:「輪舞曲(ロンド)」
彼女は2008年に廃業宣言しました。
「すべてを出し切ることができた」という引退理由なので、こちらも残念がってばかりはいられません。
このアルバムからもう1曲ご紹介しておきましょう。
しかし「解体ピアノ」というアルバム名には、ギクリとしました。
彼女の大好きなピアノを解体するというのですから、これでお終いだという強い決意が感じられます。
あるアメリカのシンガーソングライターでも、彼女と同じことを言って引退した人がいました。
その分残された楽曲はすばらしいものばかりでしたが、それは倉橋ヨエコにもいえることです。
この曲の最後の部分を、引用しておきましょう。
甘いよ しょっぱいよ 甘いよ しょっぱいよ
シュークリーム食べながら、ぽろぽろ泣いて
甘いよ しょっぱいよ 人生 これの繰り返し
だからいいんじゃないって思います
「輪舞曲」歌詞(作詞:倉橋ヨエコ)
最後の行でかなり良いことを言っていますね。
彼女の音楽には、晴れやかな曲とネガティヴな曲とが、入り混じっているように思います。
それが彼女の音楽の醍醐味といえるかもしれません。
本人的には気持ちの浮き沈みに振り回されて大変だったと思いますが、彼女はそれでいいと結論づけています。
さて彼女にとって音楽の存在は、以下のようなものだったようです。
曲を生み出すために、苦しみながらも暗い森で走ることがあるという[2]。
曰く「締め切りとかじゃなくて、書かないと生きていられないから」[2]。
廃業を決意したということは、音楽に救いを求めなくてよくなったということかもしれません。
取り残されたこちら側からすると、少々寂しいものがありますが。
しかし上の言葉からすると、便りがないのは良い便りと考える他ありません。
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